第10話『ゆえに、ルリあり。』
PART 7
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どんどんどん、と花火が上がり、イベントは大盛りあがり。
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屋外ステージがたくさん装飾され、そんなステージを私服の慈が見上げている。
- 慈
いよいよ、私の日本凱旋ライブがやってきたわけだ。
- 慈
めぐ党さんもたっくさん来るだろうから、そりゃもう、気合入れなくっちゃ。
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スマホを見て。
- 慈
なのに! るりちゃんはまだ、来ない!
- 慈
うう、信じてるからね、るりちゃん……。
あと使える手は……よし、ママに急病になってもらおう……! - 慈
そしたらもう少し時間を稼げる……!
- 慈
でもなるべく早く来てー!
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遠くに向かって叫ぶ慈。
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そこに瑠璃乃が駆け込んでくる。
- 瑠璃乃
めぐちゃーーーん!!
- 慈
るりちゃん!! 来た!! 信じてたよ!!
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息も絶え絶えで疲れ切っている瑠璃乃。
- 瑠璃乃
ま、間に合った……!?
- 慈
うん! ママも無事で済んだ! ありがとー!
- 瑠璃乃
んん……? と、ともあれ……例のブツです……。
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そう言ってスマホを手渡す瑠璃乃。
- 慈
わ、るりちゃん充電ギリギリじゃん……。
……私のために、ありがとね。 休んでて! - コメント
微笑む慈。
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実際疲労困憊の瑠璃乃だが、今はそれよりも慈に曲を確認してほしいとまっすぐ慈を見上げる。
- 瑠璃乃
……ルリは、大丈夫。
だから、確認お願い。 - コメント
慈、その意気を買って頷く。
- 慈
わかった。 後は任せて。
- 瑠璃乃
頑張ってね、めぐちゃん。
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しっかり見られる席を先に確保していた姫芽が、瑠璃乃を待っている。
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瑠璃乃が向かってくるのに気づいて手を振る。
- 姫芽
るりちゃんせんぱ~い! こっちです~!
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瑠璃乃はへろへろながら健気に姫芽に笑顔で接する。
- 瑠璃乃
ありがとー。
姫芽は身長高くて助かるよー。 - 姫芽
いえいえ、るりちゃんせんぱいだって
人混みに揉まれていようとオーラでばっちりとですね~……。 - コメント
通常運転の姫芽に、瑠璃乃は安心感を覚えて笑う。
- 瑠璃乃
はいはい。
- 姫芽
めぐちゃんせんぱいにはしっかり渡せましたか~?
- 瑠璃乃
うん、ぎりぎりだったし、渡すだけになっちゃったけど。
大丈夫かな。 - 姫芽
めぐちゃんなら大丈夫ですよ!
さ、あとはめぐちゃんのステージをふたりで見守りましょう!
それから、そうそう。 - コメント
ふと記憶を呼び起こした姫芽に、瑠璃乃は首を傾げる。
- 姫芽
さっきアタシのところに、
るりちゃんの作った曲を目当てに来たって人が何人か来ましたよ。 - 姫芽
以前ヒーロー活動でお世話になったとかで。
めぐちゃんには申し訳ないですが、誇らしいですね、相棒~。 - コメント
そう言われて目を見開く瑠璃乃。
- 瑠璃乃
そ、っか。
- 姫芽
るりちゃんせんぱい?
- 瑠璃乃
ううん。 めぐちゃんがさ、前に配信で言ってたじゃん。
今日披露する曲をルリが作ったって。 - 瑠璃乃
あれ、めぐちゃんからの信頼のメッセージかなあ、
くらいに思ってたんだけど。 - 瑠璃乃
ルリのことを応援してくれてる子たちへの言葉でもあったんだね。
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しみじみと瑠璃乃は頷く。
- 姫芽
かもしれませんね。
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姫芽は微笑んでから、ふとステージの様子の変化に気づく。
- 姫芽
お、始まるみたいですよ~。
- 瑠璃乃
めぐちゃんに期待してきた子も、
ルリの曲を楽しみにしてくれてた子も、みんなが楽しめるといいな。 - 慈
いえーい、みんなハロめぐー!!
1曲目、ハロめぐ讃歌!! 楽しんでくれたかな~!? - コメント
爆発的な歓声。さすがバズ曲。
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姫芽はすでにノリノリでテンションをあげている。
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瑠璃乃も楽しそうに眩しそうに見つめている。
- 姫芽
うおおおおおおおめぐちゃあああああん!!
- 瑠璃乃
やっぱすごいな、めぐちゃん。
改めて見ても大盛り上がり、世界中を夢中にしてるって感じがする。 - 慈
それじゃあ、えっと……。
- 瑠璃乃
めぐちゃん……?
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どうしたんだろう、という不安を覗かせる瑠璃乃。
- 慈
……ああいやごめん、次の曲は、私の大好きな幼馴染、
るりちゃんに作ってもらったーー私がずっと言ってた、次のバズ曲!
予定! です!! - コメント
うおおおお、と盛り上がる歓声。
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生唾をのみこむ瑠璃乃が映る。
- 慈
それじゃ、聴いてくださいーー!
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暗転。
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暗転した中で、瑠璃乃のか細い疑問だけがぽつりと呟かれる。
- 瑠璃乃
……あれ?
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慈視点。出演を終えた慈が、私服に着替えてスタッフと話している。
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スタッフたちと「お疲れ様でしたー」と言い合うような時間のイメージ。
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慈はよそ行きの笑顔できちんと受け答えしている。
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瑠璃乃がさっきのライブで満足してくれたか早く確認したいが、それを表に出さずに。
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暗転。
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暗転した中で、瑠璃乃のか細い疑問だけがぽつりと呟かれる。
- 慈
スタッフの皆さんもお疲れ様でしたー!
ありがとうございましたー! - 慈
あ、ほんとですか! 新曲、再生数伸びてる? さっそくすごい勢いで!?
私も感激ですー! さすがはるりちゃんって感じで! - 慈
はい、では今日はお疲れ様でした!
それじゃ、お先失礼しまーす! - 慈
……ふう。
まだ残ってるかな、ふたり。 - 慈
私が作った曲なら、これで手放しに喜べるんだけど。
るりちゃんにとっては、どうだったかな……。 - コメント
姫芽は慈を待っていた。慈が駆けつけてくると、振り向く。
- 慈
あ、姫芽ちゃん!
- 姫芽
お疲れ様です、めぐちゃんせんぱい。
すっごくいいステージでした~。 - 慈
おかげさまでね。
姫芽ちゃんも、るりちゃんの曲作り手伝ってくれたんだよね。ありがとね。 - 姫芽
いえいえ~……。
- 慈
あれ、るりちゃんは?
- 姫芽
るりちゃんせんぱいは、
アタシにここでめぐちゃんせんぱいを待つように言って、
自分は……確かめなきゃいけないことがあるって。 - コメント
なんだそれは、と慈が目を丸くするところで〆。
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ステージの上に瑠璃乃が立っている。
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表情には隠しきれない不安。
- えな
みんな集めてきたよー、瑠璃乃ちゃん。
- 瑠璃乃
急だったのに、ごめんね。
- しいな
全然いいけど。 瑠璃乃ちゃんこそさっきまで東京居たんだよね?
疲れてないの? - コメント
心配するしいなにも、首を振る。
- 瑠璃乃
ルリは大丈夫。 むしろ、今だからやりたいんだ。
みんなも集まってくれて嬉しいよ。 - しいな
そういうことなら了解!!
いつだって集まりますとも!
瑠璃乃ちゃんの歌が聴きたい子は、いっぱいいるんだから! - びわこ
最近の瑠璃乃ちゃんの活動でお世話になった子たちなんか、特にねー。
- 瑠璃乃
うん……そういう子たちに、聴いてほしいんだ。
ルリの作った……今回の曲を。 - 慈
るりちゃん……?
- 瑠璃乃
すー……それじゃ、行くよ。
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真剣な表情の瑠璃乃で〆。
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暗転。
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誰もいなくなったステージに、瑠璃乃だけが座り込んでいる。
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そこにやってくる姫芽と慈。両サイドから瑠璃乃を覗き込む。
- 慈
るりちゃん。
- 瑠璃乃
あ……めぐちゃん……。
わざわざ金沢まで……。 - 慈
ううん。
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慈は優しく首を振る。瑠璃乃が心配ならこのくらいへでもない。
- 姫芽
今のライブは……めぐちゃんせんぱいのための曲を披露したんですね。
- 瑠璃乃
……めぐちゃんと並び立てるように、
なれると思ったんだ。 でも。 - 瑠璃乃
今までのるりちゃんじゃないみたい……って。
寂しそうに。 - コメント
姫芽は純粋にその言葉が心無い言葉として映り、怒る。
- 姫芽
な、なんですかそれ……。
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その姫芽の怒気を感じて、瑠璃乃はうつむいたまま力なく首をふる。
- 瑠璃乃
わかってたんだ。 さっきのめぐちゃんのステージでも……
ルリの曲を楽しみにしてくれてた子……何人か見てたよ。 - 瑠璃乃
でも……がっかりしてた。
たぶん、期待してたものと違ったんだ。 - 姫芽
……それでるりちゃんせんぱい、ここでもう一度試したってことですか?
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慈は観念したように呟く。
- 慈
……ちゃんと話した方が、いいみたいだね。
- 慈
本当はさ、新曲発表の時、迷ったんだ。
るりちゃんが作ったって言うかどうか。 - 姫芽
えっ。
- 慈
強かったんだよ。 この曲。ーー強くて、眩しくて、私は好き。
でも……そうだな。 シャッフルユニットの時、覚えてる? - 瑠璃乃
あ……。
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ここで瑠璃乃が思い出すのは綴理とのステージではなく、慈との喧嘩のところ。東京で思い返していたからこそ余計にその場面が鮮明に。
- 慈
あの時の私と、同じになってたんだ。
- 慈
あの時るりちゃんがやろうとしてた、
ひとりひとりに手を差し伸べるような曲では……なかった。 - 姫芽
もしかしてそれって……
東京行った時にるりちゃんせんぱいが言ってた、2年前の、話……? - 瑠璃乃
そう、だね。そうなんだ。
- 瑠璃乃
ルリは、強くなろうとばかりして……いつの間にか、
めぐちゃんみたいにって気持ちばかりになって、 - 瑠璃乃
ルリのやりたかったことを、忘れていた。
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そこで瑠璃乃は顔を上げる。つらそうな表情。
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慈を見つめて。
- 瑠璃乃
ルリはただ、これまでじゃ手が届かなかった人にも、
強引にでも手を引けるような強さが欲しかったんだ。 - 瑠璃乃
でも、今までのルリの思いを捨てたかったわけじゃない!
- 瑠璃乃
どっちかにしか、届かないってこと……?
ルリには、どっちかしかできないってこと……? - コメント
慈もなんて言えばいいのか、という表情。
- 慈
……。
- 瑠璃乃
はっきり言ってよ、めぐちゃん。
もとのルリの曲が好きなみんなも……無理なら無理って、そう言ってよ……。 - 慈
るりちゃん。
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瑠璃乃の肩に手をおく慈。
- 慈
言えない子もいる……じゃないの?
- 瑠璃乃
あっ……。
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そこで瑠璃乃は気づいてしまう。言ってくれれば? それは、強者の理屈だ。
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言えない人にも手を差し伸べたいと思っていたのは自分自身ではないか。
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今までの瑠璃乃だったら、こんなことは言わなかったはずだ。
- 瑠璃乃
そ……か。 はは、それが答えじゃんね。
- 瑠璃乃
言えない子にも手を差し伸べたいと思っていたのはルリ自身なのに。
ルリの中から、そういう大事なものが、いつの間にか消えてたんだ。 - コメント
落ち込む瑠璃乃に慈は言う。
- 慈
るりちゃん、どうしてほしい?
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何か力になれることがあればなんでもするよ、という慈の優しさに、一瞬瑠璃乃は甘えそうになる。
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だが首を振って、瑠璃乃は言う。
- 瑠璃乃
めぐちゃんと離れた1年で、
自分が成長できたことを乗せたかったんだ。 でも足りなかった。 - 瑠璃乃
これじゃあ、世界中を夢中にしてるめぐちゃんの隣には立てない。
だから、頑張る……。 - コメント
よろりと立ち上がって、瑠璃乃はふらふらと立ち去っていく。
- 慈
……。
るりちゃん。 - コメント
ふたりで世界中を夢中にする、という夢に対しての瑠璃乃のこの言葉に、慈は今は自分が何を言っても届かないと思う。
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それでも行動しない理由にはならない。慈は前に歩み出そうとして、そこで姫芽が行く手を塞ぐ。
- 姫芽
……あの、めぐちゃんせんぱい。
- 慈
姫芽ちゃん、私ねーー。
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慈がなにかを言い出して、姫芽が目を見開く。
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ここでの話は、エピローグで回収します。
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しばらく慈が語り、そうして姫芽が強くうなずいて、それから姫芽が瑠璃乃を追いかけて、駆け出してゆく。
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瑠璃乃がダンボールにこもっている。
- 瑠璃乃
誰も取りこぼさない。 誰も見捨てない。 そう思ってたはずなのに。
- 瑠璃乃
でも強くなれなきゃ……ルリはこうやって……何もできないまま……。
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徐々に疲れからかうつらうつらとし始める。
- 瑠璃乃
すぐに新しい曲作るべきなのに……わかってるのに……。
- 瑠璃乃
どうしてルリは……いつもうまくいかないんだ……。
- 瑠璃乃
あの頃から……ずっと……。
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眠ってしまった瑠璃乃が見る夢。
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パシフィコ横浜ライブの幕間のような夢空間のイメージ。
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幼少期の瑠璃乃はただうずくまっている。
- 瑠璃乃
ねえ。 どうして、俯いてるの?
俯いてたって……なんにもできないままだよ……。 - 瑠璃乃
何がしたいの? そのままじゃ……何もわからないよ。
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夢から戻って来る。瑠璃乃は段ボールの中で眠りについている。
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そこに、姫芽が入ってくる。
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姫芽は入ってきて、そのままダンボールを剥ぎ取る。
- 瑠璃乃
んぅ……。
- 姫芽
ありゃ、寝てたんですか。
おはようございます。 - 瑠璃乃
……。
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すぽっともう一度ダンボールを無言でかぶる瑠璃乃。
- 姫芽
るりちゃんせんぱい。
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姫芽がもう一度ダンボールを取る。
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すると瑠璃乃はダンボールを奪い返してかぶる。
- 瑠璃乃
もう無理。
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姫芽は負けじと剥ぎ取る。
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それをもう一度すぽっと取る姫芽。
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奪い返す瑠璃乃。
- 瑠璃乃
なにしにきたの。
- 姫芽
リベンジのために決まってるでしょ。
- 姫芽
るりちゃんせんぱいこそなにしてんですか。
めぐちゃんせんぱいに、頑張るって言ったでしょ。 - コメント
確かにそう言った。言ったけれど、もう動けない。充電切れ。
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それを、瑠璃乃は半ば投げやりに言う。
- 瑠璃乃
……もう、無理だよ。 わかるでしょ。
ただあそこから逃げたかっただけだよ。 - 姫芽
るりちゃん……。
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姫芽としては、思わず出た台詞。そんなるりちゃん見たくないなのもあれば、るりちゃんでもこうなってしまうのか、という思いもある。
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ただ瑠璃乃にしてみれば、いつもファンとして姫芽が口にするるりちゃんという言葉に落胆がまじり、慈からの呼び名とも重なり、今考えたくないことがわーっと出てきてしまって叫ぶ。
- 瑠璃乃
ルリ頑張ったんだ! 曲、何度も調整して、何度も歌って、
充電切れにもなって、それでも頑張ったじゃん! - コメント
その瑠璃乃の叫びを受けて、姫芽は瑠璃乃に寄り添おうとする自分をぐっと堪える。ダンボール引っ剥がすのと同じこと。過去の瑠璃乃に託された役割を捨てることは姫芽の中では許されない。
- 姫芽
頑張りきったあとの充電切れだから、無理ってことですか?
- 瑠璃乃
……。
- コメント
瑠璃乃、無言の肯定。
- コメント
しかし姫芽は動じない。
- 姫芽
そう言っても頑張れるように引っ張れって、
昔のるりちゃんに言われてるもんで。 - コメント
ぐっと瑠璃乃の手を引っ張ろうとする。
- コメント
その手を振り払おうとする瑠璃乃。姫芽の力が強いので振り払えない。
- 瑠璃乃
っ……じゃあもうどうしろっていうんだ!!
- 瑠璃乃
強くなったつもりだったよ。
ただのヒーローじゃない、強いヒーローになったつもりだった! - 瑠璃乃
でも強くなったらヒーローじゃなくなっちゃった!!
- 瑠璃乃
弱かったルリじゃ、誰かに声を届けることはできなかった。
でも、強くなったら今度は届けたい人の声が聞こえなくなった! - 瑠璃乃
ルリのやりたいことは……きっとルリには過ぎたことだったんだ。
- 瑠璃乃
めぐちゃんとふたりで世界中を夢中にするなんて、ルリにはできないんだ。
- 姫芽
そんなことないです。
本当のるりちゃんせんぱいはそんなもんじゃない。 - コメント
瑠璃乃がきっと表情を険しくして姫芽に言う。
- 瑠璃乃
っ!
- 瑠璃乃
本当のルリはしょせん充電切れで何もできなくなって、
みんなに心配されるだけの存在だよ。 - 姫芽
そんなあなたでも、やりたいことをやったからこそ、今があるんです。
失ったってことは、確かにあったってことでしょ。 - 姫芽
るりちゃんの優しさで成し遂げたことが!
- 姫芽
一歩一歩進んできたから、今のるりちゃんせんぱいがある。
アタシをここまで夢中にさせたのは、これまで進んできたるりちゃんだ! - コメント
姫芽の返しに、一瞬言葉が詰まる瑠璃乃。
- 瑠璃乃
っ……でも……でも!
その夢中にしてきたものをルリは捨てちゃったんだ! - 瑠璃乃
ルリは失ったものを取り戻せばいいの?
そうしたら強くならなきゃいけないと思ったルリはどうなるの? - 瑠璃乃
もうわかんないよ!
- 姫芽
それでも諦めるな!
まだ何も終わってないんだから! 戦えるりちゃん!! - コメント
これまでの失敗を、乗り越えてきたものだとして返されて。
- コメント
今度も同じように立ち上がれと、姫芽の叱咤がきつく瑠璃乃に刺さる。
- コメント
全部を論破され、まだ動けとそう言われて、瑠璃乃はつらそうに言う。
- 瑠璃乃
きっついよ……姫芽……。
- 姫芽
相棒なんで。
- コメント
疲労をにじませる瑠璃乃に、姫芽は笑う。
- コメント
瑠璃乃の腕をここでようやく離す。
- 姫芽
ね、るりちゃんせんぱい。
覚えてます? - 姫芽
ゲームかスクールアイドルかどっちを取るかって悩んでたアタシに、
るりちゃんせんぱいは両方やっていいんだって言ってくれた。 - 姫芽
るりちゃんせんぱいだって、両方やっていいはずなんですよ。
- 姫芽
強さを手に入れることも、そのうえで失ったものを取り戻すことも。
どっちか取れないなんてことは、ない。 - コメント
姫芽の笑顔を見た瑠璃乃は顔を上げる。
- コメント
おずおずと顔を上げた瑠璃乃に、姫芽は気合を入れるように言う。
- 姫芽
リベンジしましょうよ!! 曲で失敗したんだから、
曲で成功する以外にはるりちゃんは納得できないんですよ!! - 姫芽
このまま引き下がったらるりちゃんの負けです、
でも立ち上がってーーもう一度、成功したらるりちゃんの勝ち!! - 瑠璃乃
もう一度、曲で……。
- 瑠璃乃
ルリも。
- 瑠璃乃
ルリも……姫芽みたいに、もう一度って立ち上がれるかなあ。
- 姫芽
立ち上がれますよ。 そんなの、当たり前じゃないですか。
るりちゃんせんぱいのこれまでが、その証拠です。 - 瑠璃乃
強さを手に入れたうえで……失ったものも……
ルリが、誰かに寄り添う気持ちも……。 ルリの、これまで……。 - コメント
瑠璃乃の脳裏に、幼少期の自分がフラッシュバックする。
- コメント
うずくまって、顔も見えない幼少期の瑠璃乃を。
- コメント
その前に、瑠璃乃が立っている。
- 瑠璃乃
こっちを、向いてくれないんだ。
- 姫芽
……るりちゃんせんぱい?
- コメント
瑠璃乃が目を開く。
- 瑠璃乃
そっか。
- 瑠璃乃
ルリは……ルリは。
ルリのこれまでと……一番弱いルリと……向き合わなきゃいけないんだね。 - 瑠璃乃
ひとりひとり、誰ひとり取りこぼさない。
どうしてそう思ったのか、ルリはちゃんと考えたことがなかった。 - 姫芽
どうするんですか?
- 瑠璃乃
曲を、作るよ。 リベンジだ。
- コメント
やってくれるんですね、と笑顔を見せる。
- 姫芽
! るりちゃんせんぱい!
- 瑠璃乃
誰ひとり、取りこぼさない曲。
ルリ自身も。 - 瑠璃乃
そのために……ちゃんとルリの……ルリの弱さと向き合ってみる。
- 瑠璃乃
姫芽が死ぬほどゲームして、もう一度初心を振り返ったみたいに。
- 瑠璃乃
ルリは……これまでのルリが、
弱くて悔しく思ったことを……もう一度振り返る。 - 姫芽
どうやって?
- 瑠璃乃
さかのぼるんだ。
ルリの思い出を。 ルリが、ひとつひとつ曲にしてきた記憶を。 - 瑠璃乃
そうしたら、きっと取り戻せると思うんだ。
その時の弱さも……それまでの弱さも。 - コメント
そう瑠璃乃が言うと、姫芽は微笑む。
- 姫芽
アタシには、るりちゃんせんぱいのやりたいことは、よくわかりません。
- 姫芽
でも信じてます。 きっと、るりちゃんはやっぱり、
アタシの大好きなるりちゃんなんだって、見せてくれること。 - 瑠璃乃
うん、待ってて。 姫芽の好きなルリが、ちゃんと、リベンジを果たすから。
- 瑠璃乃
一番弱いルリと、向き合って。