第7話『わがまま色の存在証明』
PART 5
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小鈴視点継続。前半最終シーンと地続き。
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大倉庫を沙知と小鈴のふたりで訪れる。
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小鈴は楽しそうに大倉庫を見渡している。
- 小鈴
へー、さっちゃんは大倉庫詳しいんだねえ!
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沙知は得意げに小鈴に笑いかける。
- 沙知
なにせ大倉庫の妖精と呼ばれたこともあるからねぃ。
- 小鈴
あはは、なにそれ可愛い。 さっちゃんにぴったりだね。
- 沙知
それは嬉しいねぃ。
- 沙知
さて、このあたりにあったはずだ。
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にこにこと沙知が受け答えをしながら、大倉庫を見渡す。
- 小鈴
103期の竜胆祭……さやか先輩の、一世一代のステージ……。
そうだ、これがあった……! - コメント
と、沙知がちょっと焦ったように小鈴の前に手をかざす。
- 沙知
あ、102期までの資料は今は関係ないから見なくていいよ。
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そっかそっかと沙知の近くを探し始める小鈴。
- 小鈴
ふぇ? あ、うん。 分かってるよそのくらーい。
あ、この辺まだ102期なのか。 - 沙知
っと……これだこれだ。 はい、103期竜胆祭の録画。
今のきみには、あの年のさやかのソロステージは絶対参考になる。 - コメント
そう言ってディスクファイルを小鈴に手渡す沙知。
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小鈴、沙知を振り向いて。
- 小鈴
ありがと! ……あ!
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呼び捨てしちゃだめだぞ。
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お姉さんぶる小鈴に対して沙知もノリノリで頷く。
- 小鈴
こーら、さやか先輩は先輩なんだからね。
- 沙知
おっとごめんごめん。 さやか先輩ね。
いやあ、推しの名前ってついつい呼び捨てにしちゃうこと、あるよねぃ。 - 小鈴
分かるけどね。
姫芽ちゃんもついつい先輩抜けて、るりちゃんって言ったりするし……。 - コメント
沙知が感慨深そうに目を細める。
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小鈴は受け取ったディスクを抱きしめて、沙知に向き直る。
- 沙知
そうそう、瑠璃乃先輩ね。
……もう三年生の大先輩、か。 - 小鈴
でも本当にありがとう、さっちゃん!
これで徒町もしっかり特訓できるよ! - コメント
そう言ってさっそく大倉庫を出て行こうとする小鈴。
- 沙知
あ、ちょい待ち!
- 小鈴
?
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帰ろうとする小鈴を呼び止める沙知。
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沙知がにやりと笑う。
- 沙知
小鈴はさ、一世一代のダンスステージをさやか先輩に見せたいんだろう?
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小鈴はその言葉に頷き、上機嫌に両手を広げる。
- 小鈴
うん! さやか先輩が徒町を見て、もう大丈夫って思うだけじゃない……
一緒に、隣に立てる仲間だって思ってくれるようなステージ!! - 沙知
なるほど、なるほどねぃ。
うむうむ。 その特訓……あたしが見てあげようか。 - コメント
ふふふ、と沙知が笑う。我に秘策あり、みたいな感じで。
- 小鈴
えっ。
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驚いて目を丸くしてから、小鈴は首を振る。
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そしてさらっと断る。
- 小鈴
いいよ。 会ったばっかりのさっちゃんにそこまでさせるのは悪いし。
竜胆祭、楽しみにしてて! - コメント
まさか袖にされるとは思わず慌てて沙知が止める。そうだ今の自分はただの可愛い大倉庫の妖精だった、小鈴の信頼が勝ち取れていない!
- 沙知
わー、待て待て待て待て!
- 小鈴
さっちゃん?
- 沙知
あたしは……その資料に残っていない、
当時のさやか先輩がくぐり抜けた三つの試練だって知っているんだよ……? - 小鈴
な、なんだって……!?
さっちゃん、何者……!? - コメント
調子を取り戻す沙知。
- 沙知
さて、何者だろうねぃ。 大倉庫の妖精かもしれないし、
黄色いスカーフの生徒かもしれないし、なんだったら生徒会長かもしれない。 - 小鈴
いや生徒会長じゃないで、しょ……ん?
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取り戻しすぎて余計なことまで言ってしまったせいで、小鈴がふと何かに気付く。
- 沙知
およ?
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小鈴がまじまじと沙知を見つめる。
- 小鈴
せいと……かいちょう……?
- 沙知
ん? あれ? ばかな、知ってるはずがーー。
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おや? と首を傾げる沙知。
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小鈴、はっとした顔で先ほどの102期の資料を漁る。
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そして顔を上げる。
- 小鈴
あーーーー!!
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びっと沙知を指さして驚く小鈴。
- 小鈴
せ、せせせ先輩じゃないですか!!
どっかで見たことあると思ったら!! - 沙知
……ありゃりゃ? どうしてぇ?
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困り笑顔で頭をかく沙知。
- 小鈴
どうしてもなにも!
- 小鈴
綴理先輩たちの卒業の時に、映画みたいなものを作ったんです!!
- 小鈴
その時3年分の資料ひっくり返したら、しっかり先輩の姿もありました!!
- 小鈴
さっちゃん……じゃなかった、
沙知先輩が、とってもすごくて、とっても大事な先輩なんだって!! - 沙知
ーー。
- 小鈴
わー、なんで騙そうとしたんですかー!!
徒町、大先輩の先輩、つまり超先輩をさっちゃん呼び……!? - コメント
ばっと資料を開く小鈴。資料は沙知のカードのアルバムをイメージ。
- 沙知
ふ、はは。
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沙知は参ったといった様子で笑う。
- 沙知
……別れがあれば、出会いがある。
あの子たちにとっても、本当に良い出会いがあったじゃないか。 - 沙知
あたしと入れ替わりの子たちも、
きみたちを心から大事に思ってくれていたんだね。 - 沙知
バレてしまっては仕方がない!
そう、あたしこそ、その沙知超先輩だ! - 小鈴
うわあああごめんなさいいいい!!
- 沙知
あっはっは!
……まあ、先輩の茶目っ気というところで、こちらこそ許してほしい。 - コメント
小鈴、沙知を上から下まで見て頷く。
- 小鈴
……それは、そう!!
- 小鈴
なんで制服なんです……?
ていうかなんでここにいるんです……? - 沙知
ここにいる理由は、ちょっとした事情がある。
色々と考えなきゃいけないことがあってね、深遠な計画のもとに。 - 小鈴
おお……おお?
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なるほど?という頷き。
- 沙知
制服を着ている理由は!
- 小鈴
理由は……!
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溜めてから、沙知はさらっと応える。
- 沙知
きみみたいな子が引っかかってくれると面白いなって。
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小鈴、こけかける。
- 小鈴
それだけ!?
確かに見事に徒町引っかかりましたけど!! - 沙知
なーっはっはっは!
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高笑いしてから、改めて小鈴に微笑みかける沙知。
- 沙知
というわけで、だ。 改めて……さやかに見せる一世一代のダンスステージ。
そのために、あたしと特訓してみないかい? - 小鈴
あ……そっか、特訓……。
- 小鈴
それをやり遂げれば、徒町はさやか先輩の隣に立てますか?
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沙知も自信をもって頷く。
- 沙知
ああ。 そうなるように、付き合ってみせようじゃないか。
きみにふさわしい試練を用意してあげよう。 - コメント
超先輩の指導。願ってもない申し出に、小鈴は居住まいを正して頭を下げる。
- 小鈴
じゃあ……是非!
お願いします! 徒町を、特訓してください! - コメント
その言葉に、どんと自分の胸を叩く沙知。
- 沙知
よく言った!!!
- 沙知
それじゃあきみにも三つの試練を課す!
そしてきみの実力を、さやかが腰を抜かすほどのものにしてやろうぜぃ! - コメント
小鈴、顔を上げて力強く頷く。
- 小鈴
はい!!
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さやか視点に戻る。さやかは緊張した面持ちで、フィギュアの衣装を着ている。大会当日のイメージ。
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リンクの中と外を仕切る敷居を挟んで、つかさと言葉を交わす。
- つかさ
いよいよ大会本番だね。
- つかさ
さやか……調子は大丈夫そう?
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つかさ、少しさやかを案じるように問う。前回さやかと会った時に、少し危ういかも、と感じ取っているため。
- さやか
うん。 特にここ何日間かは、ちゃんと準備する時間もあった。
そんなに緊張もしてないよ。 いつも通りやるだけ。 - コメント
それから苦笑いするさやか。
- さやか
あまり良い偶然じゃないけど……最近は自分のことに集中できてたしね。
- つかさ
そっか。 ……それなら良かった。
ごめんね、変なこと聞いて。 試合前は目の前に集中、だよね! - コメント
頑張れ、という風に背中を押すつかさの言葉に、さやかは応える。
- さやか
うん。
……お姉ちゃん。 - つかさ
ん?
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さやかは胸を張る。
- さやか
ちゃんと見せるよ。 わたしがやりたいことをやってるって。
わたしのやりたいことは、ちゃんと……みんなの期待に応えることだから。 - コメント
そう言って、さやかは観客席(リンクの外側)に手を振る。応援されているイメージ。
- さやか
みなさん、見ててくださいねー!
- つかさ
そっか。
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さやかは手を振り終わると、改めてつかさを見て真剣な表情。
- さやか
それじゃあ、行ってくる。
- さやか
みんなの期待に、応えるんだ。
- さやか
ふっ……!
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時間経過の演出。
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ぱちぱちぱち、と拍手が響く中、さやかは結果を受け入れる。四位。今回は表彰台を逃してしまった。
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つかさは電光板を見上げながら呟く。
- つかさ
さやかは、4位……か。
- さやか
そうだね。 ……結果は謹んで受け入れるよ。
わたしよりも頑張ってきた人たちがいた、それだけだから。 - コメント
ぐっと拳を握る。さやかはいつも通り、負けを受け入れて次へ、という気持ち。
- さやか
次こそは、みんなの期待に応えられるわたしに。
- さやか
だから今回はごめんね。 応えられなくて。
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その求めていない謝罪につかさの表情が曇る。
- つかさ
応えられなくて……か。
- さやか
ん?
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何かまずいこと言った?とばかりに首を傾げるさやか。
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そんなさやかに、つかさは気になったことをぶつける。
- つかさ
ねえ、さやか。
悔しいって、思った? - さやか
へ?
- さやか
それはもちろん。 表彰台逃したんだよ。
- さやか
お姉ちゃんは現役の時、一度だって逃したことなかったから
分からないかもしれないけど、すごく悔しいよ。 - つかさ
そ……っか。
- さやか
だって、みんなをがっかりさせたんだから。
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目を見開くつかさが、ついで俯く。
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その俯く理由を勘違いしたさやかは、理由を並べ立てる。
- つかさ
ーー。
- さやか
今回の大会、わたしの調子もすごく良かったし、
今までわたしを応援してくれてた人たちも、 - さやか
今回はいけるって思ってくれてたと思うんだ。
- さやか
なのに、結果が4位だったことは、歯痒いよ。
- さやか
練習していたことはきちんと出せたとは思うけど、
それじゃ足りなかったんだってはっきり分かった。 - さやか
もっと早く練習に集中しておけばよかった、
滑走順に応じた滑り方を意識するべきだった、 - さやか
色んなことを思うくらい悔しいよ。
- さやか
せっかく今回はたくさんの人が見てくれてたんだ。
- さやか
わたしのことを大学でも応援してくれる、
もっとしっかり追いかけてくれるって人も居たのに4位だもん。 - さやか
ちゃんと表彰台に立って、
みんなにわたしがやれるんだってことを伝えたかった。 - さやか
みんなに喜んで欲しかった。
- さやか
わたしを応援していて良かったって、もっともっと思ってほしかった。
みんなの期待に、今回は応えられなかった。 悔しいに決まってるじゃん。 - つかさ
さやか。
- さやか
今回がこうなっちゃった以上、よりいっそう次に向けて練習しないと、
もっとみんなをがっかりさせることになったらわたしは。 - つかさ
さやか。
- さやか
……ん?
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つかさは俯いたまま、苦しそうに言う。
- つかさ
わたしはね。 銀メダルだった時……
誰もわたしの金メダルを望んでなかったとしても……悔しかったんだよ。 - さやか
……お姉、ちゃん?
- さやか
なにそれ、どういう意味? わたしとお姉ちゃんは違うよ。
それはわたしとお姉ちゃんでやりたいことが違うだけで。 - さやか
わたしは誰かの期待に応えることがーー。
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その言葉を遮るつかさの言葉。
- つかさ
さやか、聞いて。
- さやか
……!
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つかさ、1回目を伏せて、真剣な声で語り始める。
- つかさ
ずっと思ってた。 さやかには謝らなきゃいけない、って。
あなたの人生を歪めてしまってごめんなさい、って。 - さやか
え……?
- つかさ
わたしが怪我をして、フィギュアを諦めていたとき。
さやかはわたしの演技を継ごうとしてくれた。 すごく、すごく嬉しかった。 - つかさ
でも同じくらい心配になった。
さやかが本当にやりたいことを潰してしまったんじゃないかって。 - さやか
そんな、そんなことないよお姉ちゃん。
あれはちゃんとわたしがそうしたいと思って決めたんだから……。 - つかさ
うん、それは知ってる。
でも、いやだからこそ、わたしは今さやかに聞かなきゃいけない。 - つかさ
一度あなたの道を歪めてしまった人間として。
そしてさやかのお姉ちゃんとして。 - コメント
ひたとさやかを見つめるつかさ
- つかさ
さやかの本当の気持ちを。
- さやか
…………。
- つかさ
さやか。
本当にさやかはフィギュアスケートの道を進むの? - さやか
それは。 そう、だよ。
わたしはみんなの期待に応えたいって、思って。 - つかさ
そっか。 ……あのさ、さやか。
昔……ふたつの大会があって、どっちか選ぼうって言ったこと、あったよね。 - さやか
……あった、ね。
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それが何か問題だったのか、と眉を下げるさやか。
- つかさ
さやかは、最初に興味があった大会をやめたよね。
- つかさ
お母さんが昔行ってた思い出のあるスケートリンクでやる大会を、
さやかは選んだ。 - コメント
図星を突かれて押し黙るしかないさやか。
- さやか
っ。
- つかさ
本当にこのままでいいの?
- つかさ
誰かの望みを聞いて、誰かの言う通りにすることが、
さやかにとって向いていることで、期待に応えることで、やりたいことなの? - さやか
なに、それ。
- さやか
……やめてよ。 それじゃまるで、わたしに自分がないみたいな。
- つかさ
ごめんね、さやか。 でも。
- さやか
やめてって! じゃあ今までのわたしはなんだったの!
- さやか
この3年間のわたしは!
ただ誰かに言われたことをやってただけって言いたいの……!? - つかさ
違うって言えるなら、いいの。
- さやか
っ……。
- つかさ
さやか。 わたしはそれでも、さやかに自分でやりたいことを決めて、
自分で幸せをつかんでほしい。 - つかさ
あなたが新しい道を選ぶ今この時だからこそ、考えてほしい。
そう思ってるんだよ。 - さやか
そんな、こと……!
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いてもたってもいられず、さやかはつかさの前から逃げるように駆け出す。
- さやか
そんなこと、わかんない、わかんないよ!!
- つかさ
さやか!!
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手を伸ばし呼び止めるつかさだが、呼び止める以上のことが出来ず、その手をそっと自分の手に重ねて俯く。
- つかさ
……さやか。