第7話『わがまま色の存在証明』
PART 4
- さやか
ここでっ……!
- つかさ
綺麗なジャンプ……もうわたしよりずっと高く飛べるんだね……。
- さやか
ふう……ありがとう、お姉ちゃん。
- つかさ
うん?
- さやか
練習時間空いてるよって、呼んでくれたこと。
おかげで、なんというか。 空いた時間を作らずに済んだというか……! - つかさ
あはは、なにそれ。
大会も近いしちょうどいいかなって思っただけだよ。 - つかさ
でもうん、確かに気合入ってるようには見えるよ。
ジャンプも見違えた。 - さやか
ありがと。
気合、気合かあ。 - つかさ
何かあったの?
- さやか
スクールアイドルクラブの方でちょっとね。
- さやか
一度、自分のことで忙しくすることにしたの。
レッスンもフィギュアも自分のこと以外は全部シャットアウト! - つかさ
なんか面白いことしてるね?
- さやか
人のお世話をしすぎだ、って心から身に沁みまして。
だから今はフィギュアに集中。 - さやか
……おかげで、小鈴さんも竜胆祭のダンスステージに向けて準備は
ばっちりみたいだし、これで良かったんだ。 - つかさ
小鈴ちゃん……? さやかの可愛い後輩ちゃんの?
あの子のお世話をしすぎって話? - さやか
それだけでもないんだけど。
- さやか
わたしから離れた小鈴さんの成果とか、
みなさんに迷惑をかけたことを思うと……
わたしは人のお世話そのものが向いてなかったんじゃないかなあって。 - さやか
今さら気づくのかって、思われちゃったかな。
- さやか
だから今はフィギュアに誘ってもらえて良かった。
- さやか
まずはわたしに向いてることをしっかりやろうって思えたんだ。
- つかさ
向いてる、向いてない、ねー。
- つかさ
……ね、さやか。
卒業後もフィギュアは続けるんだよね? - さやか
え、うん。 そりゃね。
せっかくこうして、ちゃんとやれてるし。 - つかさ
ねえ、さやか。
フィギュアを続けるのも……向いてるから? - さやか
えっ?
……またなんか、わたし無意識にまずいこと言ってる? - つかさ
そこまでは言ってないけど!
- つかさ
ただ、わたしはずっと、
さやかにはやりたいことをやって欲しいと思ってるから。 - さやか
……やりたい、こと?
- つかさ
わたしのためにフィギュアを続けなくてもいい、って、昔言ったみたいにさ。
- さやか
わたしのやりたいことは、お姉ちゃんとか、みんなの期待に応えることだよ。
それこそ、今度のフィギュアの大会でもね。 - つかさ
……そっか。
うん、なら良いんだ。 変なこと言ったかも。 ごめんねー。 - さやか
……ん。
- さやか
やりたいこと、かあ。
何がやりたいことなのかなあ。 - 小鈴
うへあ~~、頑張った~~~!!
- 小鈴
付き合ってくれて、ありがと。 ふたりとも。
- 泉
気力十分だね、小鈴さん。
こちらとしても今日は心地良い疲労を感じられたよ。 セラスなんか、ほら。 - セラス
ぜえ……ぜえ……。
- 小鈴
だ、大丈夫!?
- コメント
小鈴が顔を覗き込むと、セラスはただ親指を立てるのみ。
- 泉
それなりに体力がついてきたと思っていたんだが。
小鈴さんには及ばないみたいだね。 - 小鈴
徒町だってへろへろだよ。
ただ……。 - 泉
ただ?
- 小鈴
さやか先輩に、徒町は大丈夫だって思ってほしいからさ。
- 小鈴
この竜胆祭で……
徒町はさやか先輩がいなくてもやれるってところを見せないと! - セラス
さやか先輩がいなくても……ですか……。
- 小鈴
もちろんこうやって仲間は頼るけど。
- 小鈴
でも……来年はもうさやか先輩はいないんだ。
……分かってる。 - 泉
……だね。
半年後にはもう、私たちが最上級生だ。 - 小鈴
来年の自分のためにも、頑張らなきゃだ。
これは、さやか先輩からの試練なんだと徒町は思ってる! - 小鈴
おわ。
- さやか
!
小鈴さん。 - 小鈴
さ、さやか先輩!
- さやか
小鈴さん。 最近の調子はどうですか。
何か困ったことや足りていないところ、気づいたところなどーーはっ。 - 小鈴
はい! おかげさまで、頑張れています!
今日はセラスちゃんと泉ちゃんも一緒に練習してくれて。 - さやか
それは……ありがとうございます。
- セラス
さやか先輩にお礼を言われることじゃないですよー。
- さやか
いえ。 わたしには向いていないことだと痛感したので……
おふたりのご助力が大変ありがたいと言いますか。 - 泉
向いていない?
- さやか
はい。
- 小鈴
さ、さやか先輩に向いてないことなんてあるはずないですよ!
- コメント
その小鈴の気持ちは嬉しいが、達観したようにさやかは微笑む。
- さやか
あるんですよ。
変えられない事実というものはどうしても。 - 小鈴
そう、ですか……?
- さやか
はい。
- 小鈴
……分かりました。
- コメント
納得いかない顔の小鈴。だがさやかに今は踏み込めないということを示したい。
- 小鈴
えっと! 徒町、今は姫芽ちゃんや吟子ちゃんに置いていかれないように、
一歩一歩前に進めている気がします! - 小鈴
今回の竜胆祭のダンスステージを通して、
さやか先輩にちゃんとしたところをお見せしますから! - さやか
はい。 楽しみにしています。
- 小鈴
やってみせますよ!
- 小鈴
……来年は、どのみち徒町が頑張らなきゃいけないんですから!
そうですよね? - さやか
そうですね。
……うん。 やっぱり……小鈴さんは、やればできる子なんです。 - さやか
それでは、邪魔をしないためにも、これで。
これからも頑張ってくださいね! - 小鈴
あ、さやか先輩……。
- さやか
はい?
- 小鈴
……いえ。 なんでも。
- 小鈴
大丈夫ですから!
- さやか
そ、そう、ですか……!
- 泉
何を言いかけたのかな?
- 小鈴
えっ。 いやその……なんでもないんだけど。
行っちゃうと思ったらつい。 - セラス
小鈴先輩。
やっぱり寂しいんじゃないですか? - 小鈴
うぇえ!?
- 小鈴
いや、でもそれとこれとは関係ないというか。
ど、どのみち半年後には寂しくなっちゃうんだし……今から頑張らないと。 - 泉
セラス?
- セラス
わたしは、残り半年を大事にしたい。
- 小鈴
へ?
- セラス
Edel Noteは、残り半年だから。
だから今は、全力でふたりでやるんです。 - セラス
小鈴先輩は、どうですか? 後悔しませんか?
- 小鈴
それ、は。
でも、今の徒町じゃ。 - セラス
いえ、後輩が生意気言ったかもですけど。
- 小鈴
……ううん。
- 小鈴
そう、だね。 そうだよ。 今のままの徒町じゃ、ダメなんだ!!
姫芽ちゃんと吟子ちゃんに置いて行かれないのも大事だけど……徒町は! - 小鈴
ちゃんとしたところじゃない、
もっと、すごいところを見せないといけないんだ!! - セラス
先輩……それはどういう?
- 小鈴
ありがと、セラスちゃん。
徒町も頑張るよ! 残り半年を大切にするために!! ちぇすとー!! - セラス
あ、小鈴先輩?
- 泉
残り半年、大事にしてくれるんだね。
- セラス
あれは小鈴先輩のためだから言ったことだし。
- 泉
それにしても……気になることが増えたな。
- 小鈴
このままじゃダメだ!
姫芽ちゃんと吟子ちゃんに置いていかれたくないのもそうだけど! - 小鈴
でも……徒町は、さやか先輩と一緒に、もう一度!
- 小鈴
そのためにはこのダンスステージ……
さやか先輩に安心してもらうだけじゃだめだ! 伝えなきゃいけないんだ!! - 小鈴
徒町はもうさやか先輩の後ろじゃない、隣に立てる徒町なんだってーー!!
- 小鈴
どわあ!
- 小鈴
いたた……ふぇ?
- ???
廊下は走らないこと。 校則にもあるはずだよ。
- 小鈴
ご、ごめんなさい!
- ???
うんうん。
転んでもすぐ立ち上がれるのは、えらいねぃ。 - 沙知
見たところ何か困っているようだけど……
あたしで良ければ、手伝ってあげようか? - 小鈴
へ?
- 沙知
にひっ。