第5話『眠れる海のお姫様!』
PART 3
セラス | そ、それでは合宿ふつかめ~……。 |
セラス | 昨日はあと一歩だったのに……。 というわけで、きょうこそ泉の、フィジカルの限界に、ちょうせん~……。 |
泉 | どちらかというと、あなたがものすごくギャフンという感じなんだけれど。 |
セラス | こ、こんなの、大したことないやい……。 うっ……。 脚と肩と腰と腕が……! |
泉 | 日陰で休んでいたら? |
セラス | 突然ですが、桂城 泉さん! スクールアイドルにおいてもっとも必要なことと言えば!? |
泉 | なんだろうね。 いろいろあるけれど、 他者を魅了する圧倒的なパフォーマンス力、とかかな。 |
セラス | ぜんぜん違います! |
泉 | 違くはないんだよ。 |
セラス | スクールアイドルの魅力とは、そう、笑顔! というわけで、今回はこちら! |
吟子 | ……こんにちは。 |
泉 | おや。 |
泉 | 意外なチョイスだね。 笑顔といったら、花帆先輩や小鈴さんが来るものだと。 |
セラス | あんなこと言ってますよ、吟子パイセン……! ナメられてますよ……!? |
吟子 | いや、いいよ……私もそう思うし……。 ムリに敵意を煽らなくても。 |
泉 | それで、今回はなにをやるのかな? 吟子さんが相手となると……手先の器用さ、とか? |
セラス | くすぐりです。 |
泉 | ……なんだって? |
セラス | わたしと吟子先輩で、泉をめちゃくちゃにくすぐります。 泉はひたすらガマンし続けること。 |
セラス | 制限時間は、永遠。 泉が『ギブアップ』って言うまで、やり続けます。 |
泉 | 2戦目にして早くも手段を選ばなすぎじゃないか? |
セラス | わたし考えたんだ。 泉の余裕をなくすためには、 そっか、余裕がなくなるまでやり続けてやればいいんだ、って。 |
泉 | 発想が悪辣すぎるだろう……。 |
吟子 | よくわかんないけど…… これがEdel Noteの新曲を作るために、必要なことなんでしょ? |
吟子 | 人の嫌がることをするのは、すごーーく気が進まないけど。 |
吟子 | でも、がんばるね、私。 泉さんのために。 あくまでも泉さんのためにね。 |
泉 | その割には、なんだかやる気満々のように見えるのだけれど……。 |
吟子 | 後輩に頼まれちゃったから。 仕方ないよね、先輩として。 うん、先輩として。 |
泉 | やっぱり楽しんでいるだろう! |
セラス | 泉。 笑顔の限界を超えて、素の泉をわたしたちに見せてね。 |
泉 | わかったよ! もう好きなようにしてくれ! |
吟子 | それじゃ、いくね。 |
セラス | ふふふ。 針仕事で鍛えられた吟子先輩の加賀繍フィンガーの攻撃に、 どれぐらい耐えられるかな……。 |
吟子 | あんまり関係ないと思うけど……! |
セラス | あの泉が大爆笑する姿を見れるなんて、胸がドキワクだよ! |
吟子 | こちょこちょ……。 |
泉 | ……。 |
吟子 | こちょ、こちょ……。 ……あ、あれ? 平気? |
泉 | そうだね。 あんまり。 |
吟子 | むむむ……。 じゃあこれなら! |
泉 | ……ふふっ。 |
吟子 | 鼻で笑われた……!? |
セラス | ちょっと吟子先輩! 本気でやってください! 死ぬ気でくすぐって! |
吟子 | やってるけど! 泉さん、なんなん!? |
泉 | あんまり効かない体質なのかな? |
セラス | 吟子……。 もしかして、ド下手……? |
吟子 | ちょっと!? |
セラス | いいんだよ。 吟子先輩がどんなに人をくすぐるのがドドド下手でも、 わたしは衣装づくりの上手なスリーズブーケの吟子先輩を尊敬してるから。 |
吟子 | セラスさん。 |
セラス | え? |
吟子 | いい? 動かないでね。 |
セラス | えと、あの。 |
セラス | ちょっ! だめっ! やっーー。 あはははははははははははははははは!! |
セラス | ひゅー……、ひゅー……。 |
吟子 | まったく……。 ほら、泉さんがぜんぜん効かないだけだよ。 せっかく泉さんをギャフンと言わせるチャンスだと思ったのに……。 |
泉 | 本音が聞こえてるよ。 |
セラス | な、なら……。 |
セラス | ふたりがかりだよ! 吟子先輩! |
吟子 | よし。 やるよ、セラスさん! |
セラス | お命頂戴~! |
泉 | やれやれ……。 |
セラス | 泉さん、調子はいかがですか。 |
泉 | ん……。 |
泉 | 作詞は、まだ進んでいないね。 申し訳ない。 |
セラス | まあ、くすぐり大作戦は失敗だったし……。 あとなんかわたしも自分を見失ってた感あるし……。 |
泉 | まあ、そうだね……。 |
泉 | しかし、なかなか難しいものだよ。 自分の殻を破る、というのは。 |
セラス | ……でもね! 次は確実に大丈夫だから! |
セラス | スクラップ&ビルド! これでようやく泉は、 余裕なんてなくなって、自分の本当の声が聞こえるようになるから! |
泉 | それは楽しみだ。 |
セラス | 今回のゲストは、このふたり! お願いします! |
花帆 | おやおや? こんなところに、可憐なお花が咲いてるね。 |
泉 | うん? |
姫芽 | ちょっとまったぁ~! |
姫芽 | そこの美しいお嬢さん。 アタシと一緒に、踊りませんか~? |
泉 | …………ええと。 |
セラス | わたし、気づいちゃったんだよね。 泉だってひとりの“女の子♡”だって。 |
泉 | なんだって? |
セラス | 燃え上がるような恋の先に、泥臭い本当の自分が見えてくる……。 |
セラス | もう自分を取り繕うなんて、ムリ……! あなたが、好きなんです! |
セラス | ああっ、ギブアップっ! このほとばしる熱情を、抑えきれないよぉ……! |
セラス | というわけで、花ちゃん、姫芽ちゃん先輩。 泉をメロメロにしてやってください。 |
セラス | With×MEETSでいつもやってるみたいに。 女の子をたぶらかしてください。 |
花帆 | それはやってないよ!? |
セラス | 心の柔らかいところに無自覚でスルッと入り込んできて 気づけばあなたのことで頭がいっぱい。 |
セラス | そんないつも通りタチの悪い感じでお願いします。 |
花帆 | やってないってば!? |
セラス | この夏、少女は生まれ変わる! 恋に恋した泉が作るのは、恋の歌だー! |
泉 | いやあ……。 セラス、あなたは本当に情熱的だね……。 |
泉 | まさかこの私が誰かに対して『こいつ、どうかしてる』って思うなんて、 初めてだよ。 |
セラス | すごいでしょ! |
泉 | すごいよ。 いろんな意味で。 |
花帆 | じゃ、じゃあ、姫芽ちゃん。 あたしからいくね。 |
姫芽 | どうぞ~。 かほせんぱいのお手並み拝見ですよぉ~。 |
花帆 | 負けないからね! |
泉 | なぜそこでも張り合っているのかな……。 |
花帆 | ねえ、泉ちゃん。 |
セラス | おお……。 |
花帆 | あたし、前から泉ちゃんのこと、いいなって思ってたんだよ。 |
花帆 | これから一緒にさ、海を見に行こうよ。 |
花帆 | 一生に一度の、夏の思い出……。 あたしと、作ろ? |
セラス | 小動物系な先輩が不意に見せてきた強引さ! 誰にでも優しい花帆先輩が、わたしだけに向けてくれた笑顔……! |
セラス | これは強い……! |
姫芽 | じゃあ次は、アタシ~。 |
姫芽 | 愛しのレディちゃん~。 まだ終わらないの~? |
セラス | おお…………。 |
姫芽 | ……ね? 終わったら、アタシの部屋に、おいでよ。 ふたりでゲームしよ~? |
姫芽 | いずみんのこと。 アタシがいっぱい、キャリーしてあげるから……ね? |
セラス | 正統派美少女が耳元で、ゲームのお誘い……! 手取り足取りお願いします! 今年の夏は熱い……っ! |
花帆 | 楽しいこと、しよ? |
セラス | しまーす! |
姫芽 | きみのためなら、セミだって倒してあげるよ~。 |
セラス | 姫芽ちゃん先輩……! |
泉 | うーん。 |
花帆 | あれ!? |
姫芽 | メロメロになってない~!? なんで~!? |
泉 | いや、なんというか。 |
泉 | 花帆先輩も、姫芽ちゃんも、かわいらしいね。 |
花帆 | うっ……! かっこいい……! |
姫芽 | さすが手馴れてる、いずみん……! |
泉 | それは誤解だってば。 |
花帆 | こうなったら、せっちゃん! |
姫芽 | やっぱり、ユニットの相方がやらなくっちゃですよね~。 |
セラス | ……えっ、えっえっ!? |
泉 | お手並み拝見だね。 |
セラス | ぐっ……! |
セラス | ……い、泉! |
泉 | なにかな。 |
セラス | …………か、必ず! わたしが泉のこと、 スクールアイドルにしてみせるから! |
セラス | スクールアイドルのこと、大好きにさせてみせるから! ぜったい! ぜったいに! |
セラス | 覚えておいてよ! |
花帆 | あっ、逃げた!? |
姫芽 | なんかすごい捨て台詞っぽい~! |
泉 | ふっ、ふふふ。 |
泉 | 今のはちょっとだけキュンとしたかもね、セラス。 |