第4話『太陽を目指した背中』
PART 9
小鈴 | 徒町小鈴です! スクールアイドル、徒町小鈴です!! 今日はお集まりいただき、本当に嬉しいです! |
小鈴 | ここは――スクールアイドルになりたい人のためのステージ! |
小鈴 | どんなことがあったとしても……もし学校に通っていなくても! スクールアイドル活動は、みんなのものです!! |
小鈴 | そうじゃなかったら、徒町はここに立つことはできませんでした。 |
小鈴 | だからこそ……今! 徒町の後輩にも、徒町と同じように、スタートを切ってほしいんです!! |
花帆 | みんながスクールアイドルになれるステージ……! 小鈴ちゃん、頑張ったかいがあったんだね……! |
泉 | うまくいったようで良かったね。 ただ。 |
花帆 | ? |
泉 | こういう時、真っ先に小鈴さんに協力しそうなものだが。 |
セラス | あ、それはわたしも思った。 花ちゃん、このステージのこと知らなかったの? |
花帆 | 小鈴ちゃんが広実ちゃんのために頑張ってるってことは知ってたよ。 でも、さやかちゃんと瑠璃乃ちゃんが小鈴ちゃんのために動いてたからね。 |
花帆 | あたしは部長として、ふたりの分も事務仕事をしておりました。 …………しょうじきたいへんでした。 |
セラス | 花ちゃんが事務仕事を……。 |
花帆 | 瑠璃乃ちゃんとさやかちゃんがやるなら大丈夫って、 あたしは信じてたしね。 |
セラス | おー、流石蓮ノ三連華。 花ちゃんも一皮むけた気がするね。 |
花帆 | そう? ありがと! |
泉 | 偉そうだな、セラス……。 |
セラス | さ、小鈴先輩のステージが始まるよ。 |
広実 | ……夢みたいだ。 |
広実の友達 | スクールアイドルって、すごいなー。 や、さんざん広実から言われてたけどさ。 |
広実 | だろ? ああやってスクールアイドルは輝くんだ。 中でも徒町小鈴は、最高のスクールアイドルだよ。 |
広実 | ……。 |
広実 | どした。 |
広実の友達 | あのさ。 これ、あたしも立っていいやつ? 衣装も貸し出し自由……飛び入り参加もいけるって……。 |
広実 | ああ。 一緒に行こうぜ、みんなで!! |
小鈴 | やりきったー!! |
吟子 | 本当にやりきったね。 先輩たちもびっくりしてたよ。 |
姫芽 | ね~。 大成功じゃ~ん。 |
小鈴 | うん、ふたりのおかげだよ! |
吟子 | いや……どう考えても今回のは小鈴のおかげだって。 まさか……私のも姫芽のも一緒のステージにできると思わないじゃん。 |
小鈴 | え、えへへ、そうかなあ。 |
姫芽 | 吟子ちゃんの、貸し出し自由のスクールアイドル衣装! 会場のみんなを巻き込んでのイベントっていうアタシの案も入れてくれて……。 |
姫芽 | 徒町小鈴ぷれぜんつ、ステージと会場の垣根を飛び越えた、 みんなスクールアイドルになれる、小三角スクールアイドルカーニバル! |
姫芽 | もう会場全体がスクールアイドルみたいな感じだったねえ~。 |
小鈴 | そ、そんな、徒町だけがやったわけじゃっ。 |
姫芽 | 一緒にやろうって言い出したのは小鈴ちゃんなんだから、誇れ誇れ~。 |
小鈴 | う、あ……がっ、がんばりました~……! |
小鈴 | で、でも。 |
姫芽 | でも禁止~。 |
小鈴 | や、そうじゃなくて! ほんとにうまくいったのは……姫芽ちゃんと……瑠璃乃先輩のおかげだから。 |
吟子 | 瑠璃乃先輩? |
姫芽 | ヒーローのお節介、かな。 広実ちゃんのことで、ちょいとね。 |
姫芽 | でも、もう何度もお礼言われてるから、 るりちゃんせんぱいもいい加減疲れちゃうよ? |
小鈴 | で、でも、本当に嬉しかったから! 広実さんのこと、本当にありがとう! |
広実 | 師匠!! |
姫芽 | お、言ったそばから、みんなが来たね~。 |
広実 | 小三角そろい踏みのとこ、申し訳ねえ。 アタシたちはただ、お礼を言いに来たんだ。 |
小鈴 | お礼? |
広実の友達 | すっごく楽しかった!! まさかあたしたちがスクールアイドルやれるなんてさ……ほんと。 |
広実の友達 | ていうかスクールアイドルって楽しいんだな……。 |
小鈴 | えへへ、そうだよね! |
広実 | こんな楽しい時間をもらえたのは、師匠のおかげだ。 本当に……本当にありがとう。 |
小鈴 | 広実さんが頑張ったからだよ。 おかげで、最高のステージになったと徒町も思うから。 |
広実 | ああ。 |
広実 | それで、なんだけどさ。 |
小鈴 | ? |
広実 | アタシの周りには、アタシみてえなやつがいっぱい居るんだ。 |
広実 | スクールアイドルなんて夢のまた夢…… こいつみたいに楽しいことだって知らないやつも。 |
広実の友達 | まあね。 |
広実 | だから……また、やらねえ? アタシ、なんだって協力するからさ。 |
小鈴 | うん! やろう! 何度でも! |
小鈴 | 何度、でも……ああ、うん。 そっか。 |
小鈴 | 徒町は……DOLLCHESTRAに入れて、本当に嬉しかった。 徒町が広実さんの、受け入れる居場所になれて嬉しかった。 |
小鈴 | うん、やろうね広実さん! 徒町……、これからもみんなの居場所になるよ!! |
広実 | はっ。 |
広実 | さっすが師匠だ!! |
広実 | アタシにとっても……師匠と一緒に居た時間が大事な居場所だ! 次……楽しみにしてるからな!! |
小鈴 | うん!! だから……またね、広実さん!! みんなも! |
広実 | おう!! |
広実の友達 | またねー! |
吟子 | やっぱり、すごいよ小鈴は。 |
小鈴 | えへへ。 ……ありがと!! |
さやか | えっ……外国……!? |
れいかさん | そうなのよー。 バイトで貯めたお金がね、ついに目標に辿り着いて! ちょっくら行ってくるわ! 世界一周! |
小鈴 | す、すごいです……!! スケールが……!! |
れいかさん | ふふふ、今から楽しみよ。 |
さやか | でも大丈夫なんですか? こう言ってはなんですが、れいかさんが抜けると、穴が……。 |
れいかさん | ああ、うん。 最近までそれが一番の悩みだったんだけど、ね。 あれあれ。 |
広実 | あいよー、会計な! 今行くから待っててくれ! |
さやか | あれは……。 彼女、バイト復帰したんですね。 |
れいかさん | そりゃあもう。 店長には辞表なんて渡せなかったわ。 なにか事情があるってことくらい、分かってたしね。 |
さやか | あはは。 さすがですね、れいかさん。 |
小鈴 | 広実さんが、みんなの前で仕事してる……。 |
れいかさん | 戻ってきた時、あの子が言ってたの。 「ここが自分の居場所だから、ちゃんと向き合いたい」って。 |
れいかさん | もうすっかり、近江町市場のアイドルね。 ……小鈴ちゃんたちのおかげかしら。 |
小鈴 | え、徒町は……その。 ど、どうでしょう。 |
さやか | ふふ。 徒町なんか全然、って言わなくなっただけえらいですよ。 |
さやか | でも……うん。 確かにあの働きぶりを見ていたら、 れいかさんも安心して旅立てますか。 |
れいかさん | ええ。 もちろんふたりも、これからも近江町市場をよろしくね。 |
小鈴 | はい、広実さんと一緒に頑張ります! れいかさんも、帰ってきたら色々聞かせてください! |
れいかさん | ええ! っとと、それじゃあ私は仕事に戻るから! |
さやか | はい、また。 |
さやか | それにしても……小鈴さん。 今回は本当に、お疲れさまでした。 |
小鈴 | へ? あ、はい、こちらこそ!! 色々ご迷惑をおかけしてしまって!! |
さやか | 迷惑だなんて。 頼られるのが先輩の務めですよ。 むしろ、もっと頼ってもらっても良いんですけどね。 |
さやか | とはいえまさかわたしたちに内緒で小三角のイベントを仕込んでいたとは…… 流石は蓮ノ小三角ですね。 |
小鈴 | す、すみません!! |
さやか | 謝られることではないですよ。 むしろ、わたしたちも小三角のイベントを見て、思ったことがあるんです。 |
小鈴 | わたし、たち? |
さやか | はい。 花帆さんと、瑠璃乃さんと。 |
さやか | それはもうまざまざと小三角の力を見せつけられて…… 花帆さんは言ってました。 |
さやか | これも、“種”だと。 |
小鈴 | 種……。 |
さやか | はい。 姫芽さんと花帆さんが夢をぶつけ合ったことがありましたね。 あの時、ふたりの夢はより大きなものになりました。 |
さやか | Bloom Garden Partyには、ふたりの夢が乗っている。 そして……これが三つ目の、夢の種。 |
さやか | 徒町小鈴の夢が、乗ったと思うんです。 誰もがスクールアイドルになれる場所。 |
小鈴 | お、わあ……。 |
小鈴 | 徒町も……徒町も、先輩たちの力になれたんですか……? |
さやか | はい。 心からそう思います。 |
小鈴 | あ、はは……徒町……徒町、頑張って良かったです!! |
さやか | ね、小鈴さん。 あなたの頑張る姿は、やっぱりみんなに希望を与えるんですよ。 |
小鈴 | ……広実さんにも言われました。 何もないところから頑張ってるのが、一番すごいって。 |
さやか | なるほど? |
さやか | それは少し古い情報ですね。 |
小鈴 | へ? |
さやか | ……できないことが悔しくて、今回頑張ったんですよね。 その時点で、何もない徒町じゃないんですよ。 |
さやか | だって何もなければ、 しょうがないでなんでも諦められるんですから。 |
小鈴 | ……はい、そうですね。 |
小鈴 | もう、ずっと前から、しょうがないで諦められなくなってたんだ。 |
さやか | わたしに追いつきたいと、そう思うのは素敵なことです。 でも、焦っていたとも聞きました。 |
さやか | わたしの背中が遠くて苦しそうにしていると。 |
さやか | そうじゃないんですよ、小鈴さん。 今ならわたしにも言える。 憧れるのと、それと同じになるのは違う。 |
さやか | あなたにはあなただけのきらめきがある。 それを今のあなたなら、分かってくれるのではないですか。 |
小鈴 | 徒町だけの、きらめき……。 |
小鈴 | はい! わかります……わかります、さやか先輩! |
さやか | 良かった。 ……懐かしいな。 |
さやか | 憧れたことは、無駄になりません。 そのうえで、あなたのきらめきは、誰かの憧れに足る、眩しいものですよ。 |
小鈴 | はい……! |
小鈴 | 徒町だけの、きらめき……。 |
小鈴 | さやか先輩! 徒町、ひとつやりたいことがあるんです! 見届けて、くれますか? |
さやか | はい。 |
広実 | ……ふう。 |
小鈴 | 広実さーん!! |
広実 | あ、うっす……師匠も。 |
小鈴 | 広実さん……徒町、受け取ってほしいものがあります! |
広実 | へ? 師匠から? |
小鈴 | はい! ……偉そうかなとか、色々悩むこともあったけど……でも、結局やりました。 |
小鈴 | 徒町から受け取って、喜んでくれるって……そう思えたから! |
広実 | これはっ……! でも、いいのか、こんな……。 |
さやか | 受け取ってあげてください。 これは、小鈴さんの決意の証でもあるんです。 |
広実 | 決意……? |
小鈴 | うん。 徒町が……スクールアイドル徒町小鈴として、これから胸を張って進むための。 |
小鈴 | 徒町の背中を、誰かが見てるんだって、背負うための! |
広実 | ……ああ。 見てるぜ、師匠。 これからも。 |