第3話『星に憧れて、花は舞う』
S.R.K.2
さやか | これはいったい……。 |
吟子 | 舞台の使用時間について、生徒会の方で手違いが起きたみたいで。 |
花帆 | ええ!? |
吟子 | ダブルブッキングというかトリプルブッキングというか。 |
さやか | この時期は生徒会も忙しいですからね……。 |
花帆 | でも、どうりで空気が最悪だあ……。 |
さやか | 吟子さんが焦っているということは、まさか。 |
小鈴 | か、徒町たちも流石に使いたいと言いますか……あう……! |
花帆 | し、仕方ない! |
花帆 | みんなー! 聞いてー! |
花帆 | みーんなー……! |
花帆 | だーめだ、全然聞いてもらえないよ! |
さやか | わたしたちも場所を奪い合う当事者ですからね……。 |
吟子 | 私たちが何を言っても、 自分の主張を通したいだけだと思われてしまっていると……? |
さやか | え? |
花帆 | 瑠璃乃ちゃん、充電切れたままじゃ……。 |
小鈴 | 瑠璃乃先輩……? |
瑠璃乃 | えなちゃん。 麗子ちゃん。 みなつちゃん。 こもりん。 ゆうきちゃん、沙都葉ちゃん。 聞いて。 |
えな | 瑠璃乃ちゃん……? |
瑠璃乃 | 何があったのか聞かせてよ。 ルリ、みんなの役に立ちたいからさ。 |
花帆&さやか | ……。 |
瑠璃乃 | うん。 うん。 ミスっちゃったのはしょうがないし…… しっかりみんなで相談しよ。 ね。 |
瑠璃乃 | 去年、イベントの配置換えとか、 ここにいるみんなに協力してもらったみたいにさ。 |
瑠璃乃 | やりたいことができなくなるのは、困るもんね。 したらそのやりたいこと、言い合おっか。 |
瑠璃乃 | もしかしたら、一緒に大きなことができるかもだよ? |
瑠璃乃 | せっかくの撫子祭なんだからさ……楽しくやろう? きっとできるよ、今考えていることより、もっともっと楽しいこと。 |
瑠璃乃 | だから気持ちを……ルリに、聞かせて。 |
えな | ありがとねー、瑠璃乃ちゃーん!! |
瑠璃乃 | はあ。 |
姫芽 | 頑張りましたね、るりちゃんせんぱい。 |
瑠璃乃 | あはは、まあ……。 |
花帆&さやか | 瑠璃乃ちゃーん!/瑠璃乃さん! |
瑠璃乃 | もうひとがんばり、させてほしいな。 |
姫芽 | ……。 |
瑠璃乃 | 花帆ちゃん、さやかちゃん。 |
瑠璃乃 | ちょっと、時間あるかな。 |
花帆 | 話って……? |
さやか | 今日はもう休まれては……。 |
瑠璃乃 | ……聞いてほしいことがあるんだ。 ふたりに。 |
さやか | ……なんでしょう。 |
瑠璃乃 | 今月、大変だったよね。 |
花帆 | それは……うん。 |
さやか | 瑠璃乃さんにも、ご迷惑をおかけしました。 |
瑠璃乃 | ううん。 そんなことはないよ。 そんなことない。 |
瑠璃乃 | むしろ……迷惑は、かけてもらえなかった。 |
花帆 | それは、どういうこと……? |
花帆とさやかが顔をあげると、瑠璃乃は空を見上げて呟く。シーン1と同じ構図。 | |
瑠璃乃 | ふたりが大変だった時……ふたりとも言ったんだ。 ルリは優しいから巻き込みたくないって。 |
瑠璃乃 | でも、それは違う。 ルリが優しいからじゃない。 ルリの充電が切れるから、でしょ? |
花帆&さやか | ……。 |
瑠璃乃 | だから思ったんだ。 ーールリは、強くならなきゃって。 |
花帆 | それは……。 |
瑠璃乃 | 漠然とさ。 思ってたんだ。 |
瑠璃乃 | 花帆ちゃんとさやかちゃんがダブル部長で突っ走るなら、 その後ろを今まで通り支えればいいって。 |
瑠璃乃 | でも、そうじゃなかった。 |
瑠璃乃 | ……強くならなきゃいけなかったんだ。 |
瑠璃乃 | 喧嘩してるふたりにすら、 信頼より心配されるようなルリのままじゃダメなんだ。 |
さやか | ……瑠璃乃さん。 |
さやか | わたしも、強く後悔しています。 |
さやか | 今までと同じで良いと思っていた。 だから、花帆さんに無理をさせた。 無理をしている自分にも気づかなかった。 |
さやか | 何も見えなくなって、 瑠璃乃さんに頼るべきところでも頼れなかった。 |
花帆 | ……あたしも。 無茶してることにすら気づかないで、身体壊して、みんなに心配かけて。 |
花帆 | ……あたしが新しい夢を目指すって言ったんだから……。 みんなを巻き込んだんだから頑張らなきゃって、そればっかりで……。 |
瑠璃乃 | ……そっ、か。 そう、だったんだ。 |
瑠璃乃 | そうだったんだね。 |
花帆 | え……? |
さやか | あ……。 |
瑠璃乃 | ルリはやっぱり、めぐちゃんに守られてたんだなあ。 |
さやか | ……。 |
花帆 | あたしも。 |
花帆 | 梢センパイがいたら、きっとあたしの無茶は止めてくれてた。 |
さやか | 綴理先輩は、こうなる前におかしいって言ってくれたでしょうか。 |
花帆 | また絶対一緒にライブやるって、約束したけどさ。 |
瑠璃乃 | うん。 |
花帆 | もう学校では会えないんだって、 困った時にすぐ部屋に遊びにいったりできないんだって思うと…… 寂しいね。 |
瑠璃乃 | ……だね。 |
さやか | ……もう、先輩方の住んでいた寮は、新一年生の部屋ですからね。 |
瑠璃乃 | 初々しい一年生たちの付けてるスカーフ見ると……ね。 |
瑠璃乃 | でも……受け入れなきゃいけないんだ。 |
さやか | はい。 今までは、目を逸らしていただけかもしれません。 ですが。 |
花帆 | うん、今ははっきり見えるよ……星が。 |
瑠璃乃 | ……ねえ、花帆ちゃん。 さやかちゃん。 ルリ、分かったよ。 |
瑠璃乃 | ……ルリのことは、心配しないで。 |
花帆&さやか | ! |
花帆 | でも、それとこれはっ。 |
瑠璃乃 | いやなんだ。 |
瑠璃乃 | ルリは、入った時からふたりに心配かけて、 助けてもらって、ここに居る。 |
瑠璃乃 | もうそれじゃ嫌なんだ! |
瑠璃乃 | 肝心な時に、ルリが弱くて何もできないのは嫌なんだ!! |
瑠璃乃 | お節介って嫌がられてもいい、頑張って充電切れになるならそれでいい! つらいことがあったら、どんな時でも飛び込んでいきたい、 |
瑠璃乃 | ルリはっ……寄り添うだけじゃもう足りない! ……そうだ。 |
瑠璃乃 | ルリは、ふたりの、みんなの、ヒーローでありたいんだ!! |
花帆 | ……。 |
さやか | 寄りそうだけじゃない……お節介でも飛び込む、ヒーロー……。 |
さやか | ……分かりました。 |
花帆 | さやかちゃん。 |
さやか | では瑠璃乃さんは……いえ……。 |
瑠璃乃 | 言って。 |
さやか | 充電切れを克服するのは難しいかもしれません。 ですが……そうなった時は、ご自身でどうにかしてください。 |
瑠璃乃 | あ……。 |
瑠璃乃 | うん! 自分のことは、自分でやるよ! |
さやか | そのことをわたしは考えずに、やって欲しいことを要求しますからね。 |
瑠璃乃 | 覚悟はできてる。 ありがと、さやかちゃん。 |
花帆 | うー……うー……瑠璃乃ちゃん……! |
瑠璃乃 | ルリは花帆ちゃんに助けてもらいっぱなしだったからね。 |
瑠璃乃 | だからこそ、お願いだよ。 助けられるだけじゃ嫌……梢先輩にも、そうだったでしょ。 |
花帆 | っ。 |
瑠璃乃 | ルリは三か月だけ、ふたりより後輩だけど。 でも、対等な仲間でいたいんだ。 |
花帆 | そう、だね。 分かった。 それが、瑠璃乃ちゃんが花咲くってことだもんね! |
瑠璃乃 | うん! |
瑠璃乃 | めぐちゃんたち蓮ノ大三角みたいに……ううん、 それ以上に、ルリたちが大きなことを成し遂げるために。 |
瑠璃乃 | これからは、本音で。 |
さやか | はい。 |
花帆 | うん。 |
花帆 | あ、じゃあさ。 何か、証が欲しいな。 |
瑠璃乃 | 証? |
さやか | 小鈴さんのバッジみたいな……? |
瑠璃乃 | あ、そういう……? |
花帆 | じゃなくて! あたしたちのーーあたしたちだけのチーム! やっぱり作ろうよ! あたしたちだけの呼び名! |
さやか | 自分でつけるんですか……? |
花帆 | うん。 三人が、三人であるっていう……決意。 これは決意だよ。 |
さやか | と言われても……ぱっと名前……。 |
瑠璃乃 | ーー三連華。 |
花帆 | え? |
瑠璃乃 | 蓮ノ……三連華。 |
瑠璃乃 | 空の星に憧れてた。 でも星になりたいんじゃない。 ……大地に花咲く三人なんでしょ。 |
花帆&さやか | ーー。 |
さやか | えっ……。 |
花帆 | す、すごい! 今すっと出てきたの!? |
瑠璃乃 | うん。 ふたりにアイディアがあるなら待った方がいいかなとも思ったけど。 ……最初に思いついた本音は、言っておこうと思ってさ。 |
瑠璃乃 | 空の星から見ても綺麗に見えるくらい、花咲こうよ。 |
花帆 | る、瑠璃乃ちゃんってそういうセンス凄いんだ……!! |
さやか | ……蓮ノ三連華。 謹んで、拝名しますか。 |
花帆 | えー! もしかしてあたしたちが何か歌詞考えてた時とか、 ふっと浮かんでたのに黙ってたんじゃないの~!? |
瑠璃乃 | さあね。 |
星空にまたカメラが上がっていく。 | |
花帆の声だけが、星の瞬く夜空に聞こえるくらい大きく響く。 | |
花帆 | 本音で話そうよ~~~~~~!? |