第3話『星に憧れて、花は舞う』
S.R.K.1
瑠璃乃 | そっかそっか。 ちゃんと話せたんだね。 |
さやか | はい、ご心配をおかけしました。 瑠璃乃さんにはご報告をと。 |
花帆 | ごめんね。 瑠璃乃ちゃんには、本当に心配かけちゃったよね。 |
瑠璃乃 | うん。 めっちゃ心配したよー。 |
花帆 | 正直、友達と喧嘩したのも初めて、みたいな感じだったから…… あたしもどうしていいか分からなくなっちゃってて。 |
花帆 | でももう大丈夫だから! 安心して! |
瑠璃乃 | ……。 |
瑠璃乃 | そうだねえ。 安心した。 やっぱり、せっかく夢に向かって頑張るんだから、みんな笑ってたいよね! |
さやか | はい。 お互いに。 全員が笑って。 |
花帆 | 身に沁みました……。 |
瑠璃乃 | あはは。 それじゃあ、ルリちょっとやることあるから。 撫子祭に向けてもね! |
さやか | はい、よろしくお願いします。 |
花帆 | また明日ね、瑠璃乃ちゃん! |
瑠璃乃 | 花帆ちゃんとさやかちゃんが、仲直りできて良かったなー。 |
瑠璃乃 | 一時はどうなることかと思ったけど、うん。 ふたりが笑ってるのが一番。 夢のステージに向けて、頑張ろー! |
瑠璃乃 | ……。 |
瑠璃乃 | …………それで、いいじゃん。 |
瑠璃乃 | それでいいのに、べつにやることなんてないのに、ルリはなんで。 |
瑠璃乃 | 一緒に帰れなかったのかな。 |
花帆 | なにかあったとしても、言えないよ。 |
瑠璃乃 | なんでっ……。 |
花帆 | 瑠璃乃ちゃんは、優しいから。 嫌なことには巻き込みたくない。 |
さやか | ……瑠璃乃さんは優しいですからね。 |
瑠璃乃 | ーーなんにもできなかったからだよ。 |
瑠璃乃 | ふたりを支えるって、そう言ったのに。 本当に支えなきゃいけない時に、なんにもできなかったからだ。 |
瑠璃乃 | 今回は良かったよ、ふたりが仲直りできたから。 |
瑠璃乃 | じゃあーー次は? 次もまた、ルリじゃ何もできなくて……そのまま、ダメになったら? |
瑠璃乃 | ……強く、ならなきゃ。 |
その台詞とともに夜空が映って〆。 | |
瑠璃乃 | 次は……頼ってもらえるくらいに。 |
しいな | ありがとねー、瑠璃乃ちゃん! |
瑠璃乃 | 良いってことよ! また困ったことがあったら、ルリちゃんがなんでも解決してやるぜ!? |
姫芽 | るりちゃんせんぱーい。 |
姫芽 | うちのクラスメイトが、お礼言っておいて~って、 やたら嬉しそうだったんですけど~……なにしたんですか~? |
瑠璃乃 | ひめっちのクラスメイト? ……どれだろ。 |
姫芽 | え、おぼえてない? |
瑠璃乃 | や、二年生の子を手伝った記憶はちょこちょこあるんだけどね。 どの子だろーって。 |
姫芽 | 心当たりが多すぎたタイプでしたか~。 |
瑠璃乃 | なにせ昨日今日で100個くらいやることあるからね! |
姫芽 | ええ、お手伝い大繁盛じゃないですか~……。 |
姫芽 | ……るりちゃんせんぱい、何かありました~? |
瑠璃乃 | ってーと? |
姫芽 | あの子、けっこう遠慮がちな子なので、 るりちゃんせんぱいに頼ったことそのものがびっくりなんですよね~。 |
姫芽 | るりちゃんせんぱいも、 無理やり何かを手伝うタイプではないですし~? |
瑠璃乃 | ああうん……投書箱作ってね、困ってること募集したんだ。 直接言うよりやりやすいかなって思って。 |
姫芽 | あ~……そういうことだったんですねえ~。 どおりで見知らぬ箱が置いてあると思いました~。 |
姫芽 | いや~相変わらず配慮の鬼……いや聖女……。 |
瑠璃乃 | 言い過ぎ言い過ぎ。 |
姫芽 | 本人はすっごく喜んでました。 |
姫芽 | だからそれ自体はアタシもいいことだとは思うんですけどね~……? 急にやりだしたことの説明にはならないかにゃ~、なんて~。 |
瑠璃乃 | ……ひめっちに隠し事はできないなあ。 |
瑠璃乃 | まあ、手伝おうと思ったのは、心境の変化があったというか。 ちょっとした事情があったのは事実だよ。 |
瑠璃乃 | ……強くならなきゃって思ったんだ。 |
瑠璃乃 | ひめっちはこう……その。 |
瑠璃乃 | ど、どのくらい本気かは分かんないけど、 ルリのことをなんたらの聖女とかなんとか言ってたしょ? |
姫芽 | 現代に爆誕せし博愛の聖女ですね。 |
瑠璃乃 | 爆誕だっけ!? |
瑠璃乃 | ま、まあいいや。 でも……それじゃダメなんだって気付いたんだ。 |
姫芽 | じゃあ聖母に。 |
瑠璃乃 | 呼び方はなんでもいいんだけど!!! |
瑠璃乃 | でもさ……待ってるだけじゃ、ダメなんだよ。 困ってるんだって言ってくれる人にしか、届かない。 |
姫芽 | じゃあ……。 |
姫芽 | それで、自分から人助けをしよう、ってことですか~? |
瑠璃乃 | うん。 踏み込めない弱さを変えたい。 強くなりたい。 寄り添うだけじゃないルリに、なりたい。 |
瑠璃乃 | だから……自分から無理やりにでも、 お節介でも、誰かの手伝いがしたいんだ。 |
瑠璃乃 | 強いて言うなら、便利屋るりちゃん? みたいな。 |
姫芽 | なるほど~。 |
瑠璃乃 | ……ルリ、ひめっちの解釈違いなことしてる? |
姫芽 | いえいえ、本物の行動に解釈違いも何もあったもんじゃないんで。 便利屋るりちゃん、良いと思います! |
瑠璃乃 | そっか。 良かった! |
瑠璃乃 | そんじゃまだまだやること残ってっから! またあとで! |
姫芽 | は~い。 |
姫芽 | でも、100件って……。 |
姫芽 | ほんとに大丈夫かな、るりちゃんせんぱい。 |
吟子 | これ以上派手にすると他のクラブの迷惑になるかも。 |
セラス | ステージの飾り、塩梅難しいんですね。 |
瑠璃乃 | なになに聞かせてー。 |
セラス | あ、瑠璃乃先輩。 |
吟子 | 撫子祭での、ステージの飾りのバランスが難航してて。 |
瑠璃乃 | あー、片づけの時間とかも考えなきゃだしね。 |
セラス | ほんとはもっと爆発するくらい派手にしたいんですけど。 |
吟子 | 爆発は比喩です、ご安心を。 |
吟子 | 当日のステージは他のクラブも使うので、あまり無理はできないですよね。 |
瑠璃乃 | まあ……どのクラブがどのくらいの時間使うかは、 けっこうデリケートな問題だとルリも思う。 |
セラス | 確かに……みんな最近けっこうぴりぴりしてる感じが。 戦場の空気……。 |
吟子 | そう。 芸術系の学校だなあ、ってこういう時改めて思う。 |
瑠璃乃 | ああ、じゃあ当日の参加希望リスト見せてよ。 |
吟子 | え? どうするんですか? |
瑠璃乃 | みんなと相談してくるよ。 ふたりはのびのびやってて! |
セラス | いいのですか。 |
吟子 | 流石にそれは。 |
瑠璃乃 | いいからいいから。 できること、させてほしいんだ。 |
吟子 | で、では……お願いします。 できれば、爆発するくらい派手なものにしたいらしいので。 |
セラス | 爆発なんてしないけど、お願いします。 |
瑠璃乃 | あはは、もちろん! |
瑠璃乃 | やっほ、来たよ小鈴ちゃん。 |
小鈴 | わ……すみません、ありがとうございます! 徒町などのために……! |
瑠璃乃 | 撫子祭に向けて頑張ってるんでしょ。 だったらみんなのためでもあるよ。 小鈴ちゃんは、ちょっとステップ遅れてるの気にしてたもんね。 |
小鈴 | はい、でも……本当に良かったんですか! |
瑠璃乃 | 投書してくれてたじゃん。 『優先順位低めで大丈夫ですので!』とも書いてあったけど。 |
小鈴 | うう……瑠璃乃先輩の優しさが身に染みる今日この頃です……! |
瑠璃乃 | きっちり応えたいからね。 |
小鈴 | では、どうか、宜しくお願いします! さやか先輩も撫子祭に向けて、なんだかめちゃくちゃ忙しそうで……! |
瑠璃乃 | うんうん。 言い出しにくいよねえ。 でも大丈夫、ここにルリがいます。 じゃ、さっそくやってこっか! |
その前を、瑠璃乃が右から左へ横切っていく。 | |
えな | 瑠璃乃ちゃーん、お願いしてたやつ大丈夫ー? |
瑠璃乃 | もちできてるよー。 |
びわこ | 瑠璃乃ちゃんごめんねー。 |
瑠璃乃 | 良いってことよー。 |
さやか | 瑠璃乃さんが、便利屋? をやっていると聞いていたんですが。 |
花帆 | 流石瑠璃乃ちゃん、大人気! って喜んでいいのかなあ。 去年の撫子祭も同じようなことなかった? |
さやか | ……というより、 瑠璃乃さんが蓮ノ空に来た時もこんな感じで引っ張りだこで。 |
そこで同時に問題点に気が付くふたりが、顔を見合わせる。 | |
花帆&さやか | 充電! |
さやか | 大丈夫なんでしょうか! |
花帆 | 瑠璃乃ちゃーん! |
八重咲ステージのまま、瑠璃乃が単独で映る。びわこと話しているイメージ。 | |
瑠璃乃の充電はもうすれすれで、それでもなんとか踏ん張って笑顔を保っている。 | |
瑠璃乃 | あ、はは……なんとかなって良かった……。 |
びわこ | こんなことまでやってもらえて、なんてお礼を言っていいのか……。 |
瑠璃乃 | 去年もやったし一緒一緒! 持ちつ持たれつだからね! ……じゃあ、ルリはこれで。 |
びわこ | あ、うん、本当にありがとう~! |
瑠璃乃 | ……。 |
花帆 | 瑠璃乃ちゃーん!! |
瑠璃乃 | あ……花帆ちゃん、さやかちゃん。 |
さやか | やっぱり充電切れてるじゃないですか! |
瑠璃乃 | ううん、だいじょうぶ……もう。 |
瑠璃乃 | もう全部、終わったから……。 |
花帆 | わー! 瑠璃乃ちゃーん!! |
花帆 | 100件、だってさ。 |
さやか | そんなに誰かのお手伝いを……。 |
花帆 | おかげでみんなが凄く喜んでたって話は聞いたけどさ。 それで瑠璃乃ちゃんがこんな風になってたら……。 |
さやか | 撫子祭に向けてやることがあるとは言っていましたが…… 心配になってしまいますね。 |
花帆 | うん……。 |
さやか | 瑠璃乃さんが復活したら、 事情を聞いてわたしたちもお手伝いしましょう。 |
花帆 | そうだね! |
吟子 | 花帆先輩! |
花帆 | わ、なに!? |
吟子 | すみません、ちょっとまずいことが起きてて……! |
さやか | とにかく行きましょうか。 |
吟子 | そ……うですね! お願いします、来てください! |
花帆 | 瑠璃乃ちゃん、すぐ戻ってくるからね! |
さやか | 部室の鍵はここに置いておきますね! |
瑠璃乃 | ……。 |
瑠璃乃 | もしもし、ひめっち? ……頼ってもいいかな。 |