第3話『星に憧れて、花は舞う』

PART 8

花帆
スクールアイドル以外のイベント……なんだ、
色んなの集めれば毎週やってるって言ってもいいくらい多い。
花帆
これなら、あたしが挑戦していけば……みんなは。
さやか
花帆さんが笑ってくれていないと……花咲くなんてとてもできません……。
花帆
……さやかちゃんのばか。
あたしは……あたしは。
ちらっと横を見ると、梢と花帆が一緒に笑っている写真が目に入る。(スマホのホーム画面などでも)。
花帆
蓮ノ空に来て、最初の最初に知ったんだ。
あたしが花咲くためには、みんなが花咲いてくれること……。
花帆
だからこれまで……頑張ってきたのに……。
そこで、ノックの音が響く。
花帆
誰だろう……。
さやか
さやかです。
開けてください。
花帆
っ。
……さやか、ちゃん。
さやか
花帆さん。
扉に手をかけようか迷うように、花帆が手を伸ばす描写。ためらいを現す。
花帆
……。
さやか
……では、周囲の迷惑になるかもしれませんが、ここで。
花帆
えっ。
驚く花帆の声と、そこに間髪入れずにさやかが声を上げる。
さやか
わたしは!
みんなを花咲かせようと頑張る花帆さんが好きです!!
さやか視点。さやかが扉の前で己の気持ちを発露する。
さやか
その先に実る、その人の笑顔を願って頑張る花帆さんが好きです!
それがあなた自身を花咲かせるものだとも知っています!
さやか
だからでしょうか……
わたしはいつからか、あなたなら大丈夫。
さやか
あなたが困っている時に助ければそれでいいと、
そう思ってしまっていたんです。
さやか
あなたがやることばかりに目がいって、
あなたがどうしてそうしたいのかを疎かにして……
その結果が、あなたの気持ちをないがしろにしたこのありさま……。
さやか
花帆さんならうまくやるでしょうと、そんな風に考えていた。
さやか
でも……そうじゃない。
わたしは今から、とんでもないことを言います。
花帆の口元が映る。
花帆
っ。
さやかに戻って。
さやか
正直わたしは、花咲くステージ自体がどうなろうと二の次です!
花帆
えっ……。
さやか
わたしは……わたしはただ、花帆さんが夢に向かって、
きらめきながら頑張っているのが好きなだけです!!
さやか
だから、あなたの犠牲だけはごめんなんです!
さやか
わがままでもむちゃくちゃでも、
あなたが心の底からしたいことだけを聞かせてほしい!!
さやか
わたしは、何を差し置いてでも、その望みに応えてみせますから!!
と、その瞬間がちゃっと扉が開く。
花帆が飛び出してきて、さやかにぶつかる。
花帆
あたしはっーー!
さやか
っ。
花帆
あたしは……さやかちゃんが思うほどすごくない。
さやか
はい。
花帆
あたしだって、みんなのために何ができるか、なんにも思いつかない。
さやか
それでも、良いです。
花帆
あたしは……あたしは。
花帆
みんなと一緒に、花咲きたい……。
さやか
はい。
さやか
ね、花帆さん。
さやか
みなさんに、教えてもらいました。
さやか
見るべきは、ひとりひとりが花咲けたかどうか。
みなさんが、笑えているかどうか。
さやか
わたしは、花帆さんが笑っていないと笑えない。
だから、笑っていてください。 あなたが笑えるなら、わたしも笑える。
花帆
さやかちゃんが笑うために、あたしが笑う。
あたしが笑うために、さやかちゃんが笑う……。
さやか
はい、そこに順番なんてないんです。
自分が笑顔でできることだけを、探しましょうよ。
花帆
……うん。
うん、そうだね。
花帆
あたし……みんなを花咲かせなきゃって、思い込んでた。
花帆
そのみんなに、あたしは居て良いんだね。
さやか
いなきゃダメなんです。
さやか
今年……円陣を組む時に重ねる手は、あなたが最初。
さやか
あなたの気持ちにみんなで重ねた想いが花開く……
それがBloom the dreamなんですから。
花帆
うん……。
花帆
あたし、分かったよさやかちゃん!
さやか
なんですか?
花帆
……ステージがあるから、人が集まるんじゃない。
花帆
あたしの差し出した手に、みんなの手が重なる……
その手を差し伸べてくれる人を、
ひとりひとり増やしていくことが大事なんだ。
花帆
だったら……みんなが集まった場所を、ステージにしよう!!
いつでも、どこでも。
花帆
みんながやりたいと思った時に集まれれば、どこだっていい!
さやか
はい。
……もう一度、いちから始めましょう。
花帆
うん!
あたしたちが花咲いて……だから花咲けるみんなと!!
さやか
ね、花帆さん。
花帆
さやか
わたしも、分かったことがひとつあります。
わたしの夢についてです。
花帆
……聞きたいな。
さやか
わたしの夢は、あなたを支えることではありません。
あなたを助けることでもありません。
さやか
あなたを笑顔にすること。
それがわたしの夢です。
花帆
……。
花帆
さやかちゃん、分かってる?
花帆
それって、告白だよ。
さやか
どうでしょう。
さやか
叶うといいなー。
花帆
叶う叶う!
絶対あたしが叶えてあげる!
花帆
あたしが、先に笑って!
さやか
こほん。
えーっと。
花帆
今回は、みんな色々ご迷惑をおかけしました……。
さやか
それから……本当にありがとうございました。
姫芽
いえいえー。
姫芽
おかげで、
アタシたちのやったことも無駄じゃなかったって分かりましたから~。
アドアド~。
小鈴
はい!
ロックフェスだって、全然失敗じゃなかったんです!
花帆
うん。
本当に……本当にありがとう。
セラス
花ちゃんが、とてもしおらしく……。
花帆
な・の・で!!
吟子
なかったね。
セラス
それでこそだね。
花帆
再出発が、したいんだ!!
小鈴
再出発……。
花帆
そう、再出発。 あたしの夢は、みんなで花咲くステージ。
“ステージ”も大事だけど、もっと大事なのは“みんなで花咲く”こと。
花帆
ここにいる、ひとりひとり。 応援してくれる、ひとりひとり。
そしてーー今回のことであたしたちに興味を持ってくれた、ひとりひとり。
花帆
まずはその人たちと、一度“みんなで花咲くステージ”がしたい。
撫子祭の、Fes×LIVEで!
花帆
なんたって撫子祭は、今年の各部活のお披露目の場。
みんなに知ってもらうための場所だからね!
セラス
そっか、そうだね。
花帆
だから、ここから始めたい。
ここから今年の蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブが
始まるんだって示すんだ!
さやか
小鈴さん。
小鈴
はい!
さやか
小鈴さんが声をかけたみなさんも、お誘いできませんか?
ひとりひとりの輪を、広げるために。
小鈴
! もちろんです!
そしたらその人たちのお友達も誘ってもらいます!!
さやか
はい、とても素敵ですね。
花帆
よっし……!
花帆
ーー改めて、あたしたち蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブは、
ここに“みんなを花咲かせるステージ”の再出発を誓います!!
花帆
……あたしは二年前、漠然と100万人でライブがしたいって言ってました。
それが、みんなで花咲くってことだと思って。
花帆
でも、ただがむしゃらにそれを目指すことが、
花咲くってことじゃないって分かった。
花帆
やらなきゃいけないのは……
一度にみんなを集めるステージを手に入れるんじゃなくて、
ひとりひとりを花咲かせること。
さやか
……100万人が集まれるステージを用意するんじゃなくて、
ひとりひとりを笑顔にして広がる輪。
さやか
それを繰り返して、いつか100万人にとどいたらいい。
花帆
うん、そのためだったら、ひとりひとりのために100万回ライブをするよ!
そうして集まった100万人は、ただの100万人じゃない。
花帆
あたしにとって、お互いに笑い合える100万人だから!
ふふ……大きな夢だ。
花帆
みんなの笑顔を花咲かせて、みんなで夢を叶える、みんなで花咲くイベント。
みんな、手を出して。
花帆
これは夢の花に想いを届ける一本の茎。
笑顔がいつか花開く蕾。
花帆
あたし気づいたんだ。
花帆
ここからみんなに繋がって、広がって、
誰もが花咲くそんなイベントにしたいんだって。
花帆
だから名前も決めたよ。
あたしたちのライブはーーBloom Garden Party!!
セラス
ぶるーむがーでんぱーてぃ。
花咲く園の宴、か。
瑠璃乃
フラワーガーデンじゃなくて、ブルームガーデンなんだね。
花帆
そう! 花が咲くことが、一番大事なの!
花帆
これをね……まずは次のFes×LIVEでみんなに伝えて……
みんなで花咲くステージの足掛かりにする!
小鈴
めちゃくちゃすごいです!!
さやか
……では、決意表明と行きましょうか。
花帆
よーっし!
今この瞬間を大切に! Bloom the smile!!
全員が手を上げる。天井が映ったまま、花帆が声を上げる。
全員
Bloom the Dream!!
花帆
本気で夢を追っていくよー!!!