第2話『Dream Match!』
PART 5
姫芽 | え~!?対戦~!? |
瑠璃乃 | そう! |
泉 | だから、瑠璃乃先輩に相談してもらったんだ。 私が何人かのフォローを引き受けられないか、ってね。 |
姫芽 | いやでも、いずみん今まさに吟子ちゃんとコスプレで張り合ってたんじゃ……? |
泉 | あれは負けを認めたよ。 |
姫芽 | 認めた!? |
泉 | 完敗だった。さすが吟子さんだ。あっという間に主要工程を終えてしまった。 このままいけば、問題なく衣装を作り終えることだろう。 |
泉 | だが、面白かった。 私は蓮ノ空に来て、きっとこういうことがしたかったんだ。 |
泉 | そこで瑠璃乃先輩と話し合った結果、 このイベントを成功させるという目的をかけて姫芽ちゃんと勝負すれば、 私はさらにイベントを隅々まで楽しめるだろう、と。 |
姫芽 | でも、泉ちゃん、ゲームには興味なさそうだったのに~。 |
泉 | 夜まで衣装作りをしているわけじゃない。 空いている時間にゲームの知識を詰め込んでいたんだよ。 今の私なら十分やれるはずさ。 |
姫芽 | ほぇ~……。 |
泉 | このイベントの主役は、あなたと瑠璃乃先輩なんだろう? |
泉 | だが、私は司会組と試遊台組を今より確実にいいものへ仕上げてみせる。 それこそ、あなたたちから主役を奪うくらいにね。 |
姫芽 | ……それが、対戦ってこと~? |
泉 | その通り。 |
姫芽 | るりちゃんせんぱい……。 |
瑠璃乃 | ひめっち、全力出せてるか不安だって言ってたよね? 何か、やり残しがあるような気になっちゃうって。 |
瑠璃乃 | だったら何か、ひめっちが、絶対全力出せた!やり残しなんてあるわけな~い! って迷わず言えるような方法がないかな~って思ってさ。 |
瑠璃乃 | で、ピンときたんだよ。 ひめっちだったら、やっぱり対戦じゃね?って。 |
姫芽 | それで、いずみんに……。 |
泉 | 願ってもない話だったよ。 私も、それならもっと面白くなりそうだと思ったからね。 |
姫芽 | ……ありがとうございます、るりちゃんせんぱい。 |
瑠璃乃 | ま、こちとらひめっちをずっと見てきたルリで、 三年生にもなったルリだからね。 |
姫芽 | いずみんも……。 |
姫芽 | だけど相手が悪かったね~! アタシが自分とるりちゃんせんぱいの特訓に集中できるんなら、 ぜ~ったい負けないよ~? |
泉 | そうこなくては。 私も、歯ごたえのない相手と競うなんてご免だからね。 |
姫芽 | ぬふふふ! |
姫芽 | よ~し、ここからはアタシといずみんの勝負だ~! |
姫芽 | いよいよ明日は本番です~! 皆さん、今日までほんっと~にお疲れさまでした~! |
姫芽 | さて、いずみ~ん? 司会組と試遊台組の仕上がりはどうなったかな~? |
泉 | では、その目で確かめてもらおうじゃないか。 |
泉 | さあ、まずは司会組だ。 |
さやか | わたしたちは十分な仕上がりになったと思いますよ。 泉さんが的確なフォローをしてくださいましたから。 |
泉 | 台本にも手を入れさせてもらったよ。 |
姫芽 | おお……。 |
さやか | はい。結果、大爆笑の渦を狙うことはできなくなりましたけど、 代わりに熱い司会で会場を盛り上げる方向となりました。 |
泉 | さやか先輩の良さを最大限に引き出すなら、やはりそちらだろうとね。 |
さやか | これはこれで、とてもやりがいがありますね。 |
さやか | 用語の方も、しっかりと頭に叩き込みました。 |
セラス | では、ここでさやか先輩に問題です。 「IGL」はどういう意味? |
さやか | 「イン」「ゲーム」「リーダー」の略ですね。 ゲームの中でチームを指揮する役割のことです。 |
セラス | 見事です、さやか先輩。 もう師匠から教えることは何もないといっていいでしょう。 |
小鈴 | セラスちゃんがさやか先輩の師匠に……!? |
さやか | ありがとうございます、セラス師匠。 |
セラス | へへへ……。 |
花帆 | おお~! 司会組は完璧だね! |
小鈴 | でも、徒町たちも負けてはいません! |
泉 | さあ、試遊台組もその見事な仕上がりを披露してくれ。 |
花帆 | ふっふっふ。 |
小鈴 | ふふふのふです! |
姫芽 | おお……? |
花帆 | あたしたち、なんと……銃が当たるようになりました! |
小鈴 | 徒町、気づけば3D酔いを克服してました! |
姫芽 | おお~! |
花帆 | それに、ね! |
小鈴 | 花帆先輩とふたりで、CPU戦にて勝利だって収めました! 基本操作はばっちりです! できないことが、いーっぱいできるようになりました! |
小鈴 | チェックシート埋めチャレンジ、大成功です! |
花帆 | やっぱり教えてくれる人がいると違うんだなあって、花帆は改めて思いました! |
泉 | それはなによりだ。 |
花帆 | この気持ちよさを、遊びに来た人みんなに味わってもらいたいよ~! フラワー! |
姫芽 | おぉ~……。これは、思ってた以上の仕上がりだ~……。 |
泉 | そしてコンパニオン組も、もちろん完璧な仕上がりだと言えよう。 |
吟子 | 衣装は大体完成したけど、ここからまだ調整は加えていくつもり。 ポージングの勉強とかもしないといけないし。 |
泉 | 吟子さんの衣装作りはさすがの一言だった。 |
吟子 | ま、まあ、うん……。 |
泉 | 今回は素直に勝ちを譲るよ。 ありがとう。いい本気を見せてもらった。 |
吟子 | ……まあ、私もちょっと、泉さんのこと誤解してたよ。 |
吟子 | なんでも簡単にうまくなる人だと思ってたけど。 教わり方も、すごく一生懸命だった。 人並み以上に、努力してるんだな、って。 |
泉 | 認めてもらえて光栄だね。 |
セラス | まあね。わたしの泉だからね。 |
吟子 | ……なんでセラスさんが自慢げなの。 |
泉 | そろそろ私のことも『泉』と呼んでくれていいんだよ。 |
吟子 | 一度持ち帰って検討させていただきます。泉さん。 |
泉 | やれやれ。 |
セラス | やれやれ。 |
泉 | さて、私が関わった組の見事な仕上がりは見てもらったわけだが、 そちらの方はどうかな? |
瑠璃乃 | ……がんばるよ~……。 |
小鈴 | 大丈夫なのでしょうか! |
姫芽 | るりちゃんせんぱいなら、大丈夫~! |
姫芽 | それだけの努力を、るりちゃんせんぱいは、してくれましたから~! |
姫芽 | 練習は練習。本番は本番だけど~…… でも練習でやったことは、ぜったい本番に活きてくるはずだから~! |
姫芽 | アタシたち、スクールアイドルみたいに! |
さやか | そうですね。 瑠璃乃さんなら、きっと心配いりません。 |
泉 | では、瑠璃乃先輩の仕上がりも最強というわけだ。 |
姫芽 | もうこれ以上はないっていうくらいに~! |
泉 | それじゃあ、やれることは全部やったことになるかな? |
泉 | それとも、まだ何か、やり残したことがあるかい? |
姫芽 | ないっ! |
姫芽 | おかげで最高の準備ができたよ~! 皆さん、本当に、ありがとうございます~! |
花帆 | 姫芽ちゃん! 明日に向けて、きょうは姫芽ちゃんが締めてよ! |
姫芽 | 分かりました~! |
姫芽 | 改めまして、皆さん、お疲れさまです~! |
姫芽 | いずみんがみんなのフォローに回ってからは、 よ~し、どっちがすごい仕上がりにできるか勝負だ~! みたいな感じになっちゃいましたが~。 |
姫芽 | でも、さっき、みんなの仕上がりを聞いて、 アタシ、何だか熱い気持ちになっちゃいました~。 |
姫芽 | こんな気持ちになれたのも、みんながこのイベントを盛り上げようと、 本気も本気で頑張ってくれたおかげなんですよね~……。 |
姫芽 | 何か、いいですよね~……。 みんなで作り上げるのって……。 |
姫芽 | さあ、明日はいよいよ本番です~! |
姫芽 | 絶対やり残しがないように~! きょうまで準備したものを残さずぶつけて~! |
姫芽 | 最後まで全力で駆け抜けましょう~! |