第7話『Link to the FRIENDS!』
PART 10
吟子 | どうしてこうなったんだろ……。 あんなにいっぱい、練習したのに……。 |
小鈴 | そ、それじゃあ、もっともっと練習すれば! |
吟子 | ……でも、ずっとやってたのに、ぜんぜん成果が出なかったんだよ。 だったら、努力の方向が間違ってたってことに……。 |
小鈴 | うっ……それは、そうかも……。 適当なこと言って、ごめん……。 |
吟子 | あ。 いや。 小鈴を責めたかったわけじゃ……ごめん。 |
姫芽 | ごめん……これ、アタシが悪いや。 |
小鈴 | え? |
吟子 | ……姫芽? |
姫芽 | ごめん、ほんとに。 |
吟子 | どういうこと? |
小鈴 | ひ、姫芽ちゃんに悪いとこはないよ! |
小鈴 | だって、歌もダンスも上手だし、その上、 徒町のサポートまでしてくれて……。 |
小鈴 | やっぱり、徒町の力不足が……。 |
姫芽 | ……そうじゃなくて。 |
吟子 | なんなの? 姫芽。 |
吟子 | ……そういえば、竜胆祭のステージの時から、様子がおかしかったよね。 なにかわかるんだったら……。 |
姫芽 | ……。 |
吟子 | ……姫芽。 |
吟子 | 姫芽! |
吟子 | 私は、チームプレイとかよくわかんないから! |
吟子 | ずっとやってきた姫芽がなにに悩んでるのか、 なんでごめんなのか、わかんないよ! |
吟子 | 足引っ張ってるんだったら、ちゃんと言って! 足引っ張ってるって! |
姫芽 | そんなことない! |
姫芽 | そんなこと……ない。 |
小鈴 | あっ、姫芽ちゃん! ま、待って! |
吟子 | なんなん……。 |
吟子 | ……。 |
泉 | おや、吟子さん? |
吟子 | え? あ……桂城さん。 来てたんだ、竜胆祭。 |
泉 | うん。 あなたたちのステージを見てから、帰ろうと思ってね。 |
吟子 | ……そっか。 |
泉 | おや……。 その様子だと、あまり手ごたえを感じられなかったのかな。 |
吟子 | ……ごめんなさい。 桂城さんに、いろいろとアドバイスをもらったのに。 |
泉 | ふぅ。 |
泉 | 仕方ないよ。 あなたはうまくやった。 |
泉 | 他のふたりが足を引っ張ったんだ。 |
吟子 | ……え? |
泉 | チームの難しいところだね。 足手まといがいると、どうしても総合的な完成度が下がってしまう。 |
吟子 | 待って。 |
泉 | うん? |
吟子 | 桂城さん、今の、なに? |
泉 | なにって? |
吟子 | 足を引っ張ったとか、足手まとい、とか。 ……それ、小鈴と姫芽のこと言ってるの? |
泉 | そう言ったつもりだけれど? |
吟子 | ……どんなつもりなんか知らんけど。 |
吟子 | そんなんじゃないよ。 うまくいかなかったのは、ぜんぶ私のせいで。 |
吟子 | 小鈴は普段は頼りないところだってあるけど、でも誰より練習がんばってて、 ステージの上ではDOLLCHESTRAのひとりとしてすごくかっこいいし! |
吟子 | 姫芽は憧れの人の隣でも胸を張ってて、ダンスだって本当に上手で! 見習わなきゃいけない部分は、いっぱい、いっぱいあって! |
吟子 | あのふたりは、私なんかよりずっとすごくて……。 ふたりのことを知らないのに、勝手なこと言わないでよ! |
泉 | でもあなたは、ふたりを信じ切れなかったんだろう? |
吟子 | え? |
泉 | 例えば小鈴さんの大きな欠点は、失敗を前提に行動していることだ。 |
泉 | 不屈の意思の裏表だろうね。 もしだめでも次がある。 だから何度でもチャレンジする。 |
泉 | それって、失敗しても構わないと思っているってことだろう。 |
泉 | 一度きり。 もう後がないという状況を、ほとんど経験してこなかったんだ。 |
泉 | だから彼女はどんなに成功率が低い賭けにだって、ベットしてしまう。 勇気と蛮勇の違いを、わかっていない。 |
吟子 | それが、小鈴の欠点……? |
泉 | ああ。 もしかしたら、本人も自覚はできていないのかもしれないけどね。 |
泉 | そして、姫芽さんだ。 ある意味では、彼女がもっともたちが悪い。 |
吟子 | 姫芽に弱点なんて……。 |
泉 | 彼女は、あなたたちの弱点に気づいている。 なのに、それを言い出すことができなかった。 |
泉 | どうしてあえて黙っていたのか、理由は私にもわからないけどね。 そうだな。 言っても無駄だと最初から諦めていたのかもしれない。 |
吟子 | ……なに、それ。 |
吟子 | そんな話、一度も……。 |
泉 | だろうね。 |
泉 | あなたたちは、自分たちの強みに関しては、 確かに共有していたのかもしれない。 |
泉 | でも、『なにができないのか』『どんなことが苦手なのか』って、 一度でも話し合ったかな? |
吟子 | ……それは。 |
吟子 | なんで……。 |
吟子 | なんで、あなたにそんなことがわかるの!? |
泉 | 見ていればわかるさ。 あなたが、自分の弱点をふたりに隠して、黙っていることもね。 |
吟子 | ーー! |
吟子 | 私の、隠してること……。 |
吟子 | だから、私たちはうまくいかなかった……? |
吟子 | ああ、そうか……そうだったんだ……。 |
吟子 | 当たり前だ……。 そんなんで、先輩たちみたいにできるはずがなかったんだ……。 |
泉 | うん? |
吟子 | ……好き放題言ってくれて、ありがとう。 ライブも見に来てくれて、ありがとう。 けど、だけど! |
吟子 | 私たち、まだまだこんなもんじゃないから! |
吟子 | 次は、なんにも言わせなくしてやるから! じゃあね! |
泉 | ……やれやれ。 |
泉 | さて、あとのふたりはどこにいるかな。 |