第7話『Link to the FRIENDS!』
PART 11
吟子 | 姫芽! 小鈴! |
姫芽 | ……。 |
吟子 | ぁ、私……。 |
小鈴 | うん。 |
吟子 | あ……。 |
吟子 | ……私、ふたりに言ってなかったこと、あった。 |
姫芽 | ……。 |
吟子 | ほんとは苦手なステップがあって、でも見た目でわからないように、 なんとなくごまかしてたりとか……。 |
吟子 | バトンタッチするところが近づくと、いっつも周りを窺って 自分のダンスに集中できなくなったりとか……。 |
小鈴 | ええっ? そうだったの!? |
吟子 | ヘンだって思われたくなくてすぐ周りに流されたり、 そのせいで妙に意固地になったり……。 |
吟子 | 実は金沢おでんじゃなくて普通のおでんも好きだったり、 たまに着物じゃなくてスウェットで出歩いてたり……。 |
小鈴 | ちょっと脱線してきた!? |
吟子 | まだまだ他にもいっぱいある。 だけどなにより。 |
吟子 | 『またうまくいかないんじゃないか』って。 ……いつも、そう思ってた。 |
吟子 | 事前準備が必要なのだって、そう。 失敗したらどうしようって、怖かった。 |
吟子 | だって、裁縫は失敗しても、何度でもやり直せるから……。 |
吟子 | 一度きりのステージは、始まる前から、 失敗したときのことばっかり考えて……。 |
小鈴 | あ……でも、それは……。 |
吟子 | 私、言えなくて……。 言い出して、 うっとうしいやつだって思われたくなくて……。 |
吟子 | 嫌われたくなくて、黙ってたんだ。 ほんとに、ごめん。 |
姫芽 | ……知ってたよ。 |
姫芽 | 吟子ちゃんがそう思ってることも、 小鈴ちゃんがまた次があると思ってることも、ずっと、知ってた。 |
吟子 | ……姫芽は、どうして? |
姫芽 | アタシは……。 |
姫芽 | アタシね、 チームでやる前は友達同士で一緒にゲームやってたんだけどさ……。 |
姫芽 | でも、そういうところで、うまくなるために声を掛け合ってたら、 ひとりが、その、ゲームを辞めちゃって。 |
姫芽 | 言い方が悪かったのか、 アタシが熱くなりすぎちゃったのかわかんない。 |
姫芽 | だけど、アタシが本気なことと、人に本気を押し付けることって、 違うのかなって、いろいろと悩んじゃって……。 |
姫芽 | それから、あんまり人には言わないでおこうって思ってたら……。 肝心なときにも、言えなくなっちゃった。 |
姫芽 | 模擬店のときだって、吟子ちゃんと小鈴ちゃんに、 もっとできることがあったのにさ……。 |
姫芽 | アタシのほうこそ、ごめん。 |
姫芽 | ごめんなさい。 |
吟子 | ……姫芽。 |
小鈴 | そ、そんなこと言ったら! 徒町なんて、なんにも気づいてなくて! |
小鈴 | 徒町、こんなだから、弱音をはく暇があったら少しでも練習して、 何度転んでも、立ち上がるんだって思って……。 |
小鈴 | でも、ラブライブ!大会の本番で、転んじゃだめだから…… ただ、がむしゃらにがんばるしかなくって……。 |
小鈴 | まず最初に、気持ちを言わなきゃいけないのは、徒町だったんだよ。 |
小鈴 | なんにももってない、徒町が言わなきゃいけなかったんだ……。 |
吟子 | 小鈴……。 |
姫芽 | ……二年生のせんぱいって、みんな自然体だよね。 |
姫芽 | 仲が良くて、でもワーワー言い合ったりして。 |
姫芽 | いいところも悪いところもみんな知ってて、 ほんとに、信頼し合ってるって感じがする。 |
姫芽 | アタシも、あれがいいな。 |
小鈴 | ……うん、徒町も。 |
吟子 | ……そんなこと言ったら、三年生の先輩なんて、 ものすごいストロングポイントも、ウィークポイントも一緒にもってるよね。 |
吟子 | 慈先輩は勉強ダメダメで、梢先輩は機械が苦手で、 綴理先輩なんてできないこといっぱいあるのに。 |
姫芽 | あ、吟子ちゃん言ったな~。 |
吟子 | だけど、お互いを支え合ってて……ううん。 だからこそ、お互いを支え合って、繋がってる。 |
吟子 | 私たちも、あんなふうに、なれないかな? |
小鈴 | なれるよ! |
小鈴 | もう1回、最初から話そうよ。 みんなの苦手なところも、恥ずかしいって思ってるとこも……。 |
小鈴 | 大丈夫だよ、ぜったいに嫌いになんて、ならないから。 |
小鈴 | だって、ふたりがどんなにがんばってるのか、 徒町は誰よりも知ってるから! |
小鈴 | その上でさ、いいところは尊重して、 だめなところはお互いちゃんと、今度こそ! フォローし合って! |
小鈴 | そうしたら、きっとぜんぶうまくいくよ! この3人なら、きっと! |
姫芽 | ……ほんとにごめん、ふたりとも。 竜胆祭はもう、やり直せないけど……。 |
吟子 | いいよ。 |
吟子 | これもそのうち、思い出になるよ。 私たちの、恥ずかしい思い出に。 |
吟子 | それに、今までの姫芽ってちょっと大人っぽすぎたし。 |
吟子 | かわいいとこも見れて、ちゃんと同じ一年生なんだーってわかって、 よかったかな。 |
姫芽 | え~。 そんなこと気にしてたなんて、吟子ちゃん子どもっぽいかも~。 |
吟子 | な、なにそれ! |
小鈴 | 徒町は、ふたりのこと大好きだよ! 蓮ノ空で出会った、親友だから! |
吟子 | ふふっ。 |
姫芽 | あはは。 |
小鈴 | えっ、なんで笑うの!? |
吟子 | ううん、小鈴はかわいいな、って。 |
姫芽 | いいこいいこ~。 |
小鈴 | 本気で言ってるんだけどー! |
吟子 | なんだか……。 Link to the FUTUREの歌詞の意味……。 ようやく、わかった気がする。 |
姫芽 | 『出会えて嬉しい。 本当にありがとう』って? |
吟子 | ……じゃあ、そう。 |
姫芽 | ぁ、ありゃ……。 |
吟子 | たぶん、お互いを理解することが大事なんじゃなくて……。 ほんとに大事なのは、その先にある『信頼』だったのかな、って……。 |
吟子 | いいところも悪いところも知っているから、背中を預けられる。 |
吟子 | 別々だけど、一緒にがんばることが『繋がる』ってことなら……。 『信頼』だって、繋がることなんだ。 |
小鈴 | うん! 徒町たち、繋がった、って感じした! 今! |
小鈴 | ……あ、もしかして姫芽ちゃん。 さっきの泉さんって。 |
姫芽 | ……あ~、そ~かも。 |
吟子 | え、ふたりもなにか言われたの? |
小鈴 | 吟子ちゃんも? |
姫芽 | もしかしたら、わざと悪役をやってくれたのかにゃ~……。 味な真似を~……。 |
吟子 | そっか……。 いい人だったね、泉さん。 |
小鈴 | あとでお礼を言わなくっちゃ。 |
姫芽 | それもだけど~。 恩返しするなら、やっぱライブでしょ~! |
姫芽 | 今度こそ最強のLink to the FUTUREを見せてやろうよ~! |
小鈴 | 見てくれるかな、ラブライブ!予選。 |
吟子 | てか見せる。 なんなら動画を送り付ける。 |
姫芽 | 吟子ちゃん、目が据わってる~。 |
小鈴 | じゃあそのためにも、完成させなくっちゃね! |
小鈴 | 今ならきっとできるよ! 徒町たちなら、きっと! りんくとぅーざー……! |
小鈴&吟子 | ふゅーちゃー! |
姫芽 | えっ、なにそれ~? |
吟子 | 帰って、さっそく練習だよ! ふたりとも、遅れないように! |
姫芽 | なんか吟子ちゃん、キャラ変わってない~?? |
小鈴 | あはは、急げ~! |