第6話『対よろ!!!』

PART 1

その画面を中学生の姫芽
このアパートは姫芽の実家。1DKを想定。姉と一緒の寝室+ダイニングしかなく、パソコンはダイニングにある。
できれば画面に、「本日の配信は終了しました」を映したい。終わったあとも呆然としていた、という演出のため。
with×meetsを見終えた、部屋着の姫芽が呆然としているところから。
がた、と立ち上がる姫芽。
そのままよろよろと床に倒れる。
姫芽
なに、これ……。
↑ころころ右へ左へ転がる。
姫芽
えー! なにこれなにこれなにこれ!
ばっと転がったまま大の字になる。
姫芽
なにこれ!
がばっと上体を起こして叫ぶ。
姫芽
かわいい!!
迫真の表情で叫ぶ。
姫芽
めっちゃ、かわいい!!!
姫芽
そしてーーめっちゃ、たのしい!!!!!!!
最大限に力を溜めて、空を仰ぐ。
姫芽
んーーーーー………。
姫芽
うああああ~~~~。
姫芽
たのしすぎた……あまりにも……。
がたっと立ち上がる姫芽。
飛び上がり、パソコンをカタカタやる。画面にるりめぐが映る。画面に向かってがばっと身を乗り出して、
ホームページを見ているイメージで、右へ左へ視線を動かしながら、ぽつりぽつり呟く。
姫芽
み、みみみ、なんだっけ、そう、
わたしたちのテンションはここからここまでみらくらぱーく!、です!
姫芽
……! 出てきた!
姫芽
スクール、アイドル……蓮ノ空、女学院……。
対戦よろしくお願いします!!!!!!!!!!
姫芽
とりあえず……アーカイブ全部見るか!!!
時間経過の演出。
姫芽
すごい……なんでこんなに……。
アタシまで楽しくなるんだろ……。
姫芽
めぐちゃんと、るりちゃん……かあ。
姫芽が胸いっぱいの気持ちを吐き出すようにそう言って、過去回想終了。
姫芽
アタシもこんな風に、楽しいを伝えられたら……いいなあ。
部屋がアパートから寮に変わっただけで、デスクに座る姫芽の構図はまったく同じ。現在時間軸に来たことを示す。
死んだ顔でゲームをしている姫芽。既に何連敗もしており、ランク落ち寸前に追い込まれている。
姫芽
やばい……ランク落ちる……!
今度こそ全力で勝つぅ~……!
カタカタとプレイ中のキーボードとマウスの打鍵音。
そこに、姫芽のヘッドホンから瑠璃乃の声。ふたりは一緒のチームで潜っている。
瑠璃乃
ま、まあまあ、今回こそ頑張ろうよ。
だいじょうぶだいじょうぶ。
姫芽
うう……がんばりますぅ~。
姫芽
ありがとうございます、るりちゃんせんぱい……
付き合ってもらっちゃって……。
瑠璃乃
いいよいいよー。
瑠璃乃
まさか同じランク帯になるとは思ってなかったケド……。
瑠璃乃
ひめっち、ルリ右のエリア行くねー。
姫芽
はーい。
かちかちとキーボードとマウスの音。ふたりとも真剣な様子。
姫芽&瑠璃乃
……。
姫芽
はあ……勝てるといいなあ。
瑠璃乃
調子悪そうだねえ。
姫芽
お恥ずかしい限りです~。
ゲームだけじゃなくて、部活でもちょっと調子悪いじゃないですか~。
瑠璃乃
んー、まあ、そう、かな?
姫芽
ダンス中うまく体が動かなくて、
こう、ゲームみたいにドラッギングできればいいのにーとか思っちゃって。
瑠璃乃
そう、うまくは、いかない、よね!
姫芽
……あれ、今思ったんですけどこのフィールド、
ステージにしたら凄い楽しそうだと思いません~?
瑠璃乃
ひめっち!? そんなことより前前!!
姫芽
に゛ゃ!?
姫芽
クリアリング忘れた!?
あ、待って待っ……また負けた~!?
みらくらぱーく!の練習日。既に慈と瑠璃乃は練習着に着替え、体操などで身体を温めている感じ。
扉が開く音がして、瑠璃乃が笑顔で振り返る。
瑠璃乃
あ、おはよーひめっ、ち……?
そこに、背中を丸めた姫芽がとぼとぼとやってくる。
姫芽
ふぇ~ん……。
瑠璃乃
ああ……ひめっちがひものっちに……。
いつもビジュ強な後輩がよろよろ状態で現れたのでよっぽどのことがあったのだろうと驚く慈。(※尊敬する自分たちの前によろよろの姿で現れる姫芽が、普段とは違うため)
ええっ、どうしたの? ひものっち!
姫芽
ひものっち、昨日から10連敗かましてランク落ちしましたぁ~……。
10連敗だあ?
そんなの、相手チームの首根っこ捕まえてリベンジ挑むしかないじゃん!
やられっぱなしじゃ終われないよ!
瑠璃乃
ランクマッチは仲間も対戦相手も毎回ランダムなんだよ、めぐちゃん……。
え? あ~、そっか。
じゃあ姫芽ちゃんが単純に弱かったってこと?
姫芽
う゛っ……!
ま、まあ元気出しなよ。 そういう時もあるって。
あれだけずーっと好きでやり続けてるんだから、山あり川ありだよ。
瑠璃乃
それただの悠久の大自然だよめぐちゃん……
でも、そうだね、調子の悪い時はあるよ。 ゲームも練習も。
すがるような瞳で姫芽がふたりを見上げる。
姫芽
せんぱぁい……。
慈は切り替えるようにぱんと手を打つ。
ほら、今から始まるのは姫芽ちゃんのもう1個大好きな、
みらくらぱーく!の練習タイムっ。
楽しんで、嫌なこと塗りつぶしちゃお!
瑠璃乃
そうそう、楽しいが一番! だよ、ひめっち!
姫芽
れ、練習……。
いっぽうで昨日調子悪いことを聞いていた瑠璃乃は、努めて笑ってフォローする。
瑠璃乃
調子悪いならフォローすっからさ。
ゲームもスクールアイドルもチーム戦だよ!
気持ちを吹き飛ばすように気張って、笑顔を作る姫芽だった。
姫芽
チーム……分かりました、がんばります~!
姫芽が、スクールアイドルもうまくいかないことを示すシーン。
練習中のミスは、入り込みすぎてしまって、というよりも少し気が抜けてしまっている印象に。
瑠璃乃と姫芽が踊っているのを、慈が監督しているところからスタート。
慈が手を打ちながらリズムを刻む。
はい、ワン、ツー、スリー、フォー。
はいそこで姫芽ちゃんが前に出てー?
と慈が口にしても姫芽が出てこない。
姫芽ちゃん?
隣の瑠璃乃も止まって、姫芽を見上げている。
申し訳なさにしゃがみ込む姫芽。
姫芽
わ、あ、すみません~!
うーん、やっぱり調子悪い?
前はこんなミスなかったし、寝不足とか?
姫芽
寝てる時間は、変わらないと思うんですけど~……。
じゃあやっぱ、10連敗のショックが尾を引きまくって……。
姫芽
それは……いや、でもあれです。 アタシがほんとによくなくて~……。
よくなくて?
するとがばっと姫芽が立ち上がって、頭を下げる。
姫芽
ゲームも負け続きだし、
しょーじきここ最近スクールアイドルの練習も自分で納得いってないんです。
姫芽の台詞に、瑠璃乃は首をかしげて慈の反応を窺う。瑠璃乃的には最近の姫芽はそこまで気にならなかった感じ。
瑠璃乃
ルリは、そこまで気になってないけど。 めぐちゃんは?
ま、初心者ってのはそれだけなんでも伸びやすいからねぇ。
私がツマヨウ寺軍曹にしごかれたときみたいに。
よく言うじゃん? 勉強も30点から80点はすぐいくけど、
80点を90点に伸ばすのは大変だって。
瑠璃乃
めぐちゃんが言うとものすごく説得力がないんだけど……!
いや、でも、そういうことかもね。
瑠璃乃
スクールアイドルとゲーム、伸び悩みの時期が、
たまたまたかぶっちゃったとか?
先輩の励ましを信じたい姫芽だが、どうしても自分のふがいなさが勝って、受け入れづらい。
姫芽
そう……でしょうか~。
とりあえず、頭で考えるより体使ってみよっか。
結局、行動しなきゃうまくなんないしね!
表向き、慈の励ましに頷く。練習位置につくために姫芽から離れる慈と瑠璃乃。
姫芽
はい~。
一瞬、ぽつりと姫芽の不安を残してこのシーンを〆る。
姫芽
だと……いいなあ。