第5話『不完全で、未完成』

PART 8

小鈴
拝啓
雪佳ちゃんへ。
小鈴
スクールアイドルクラブの映画、見てくれてありがとう。
込めた気持ちが伝わって、本当に良かったです。
小鈴
お互いまだこれからだけど……これからも頑張ろうね!
小鈴
ふう。
小鈴
雪佳ちゃんのおかげで、
徒町はチャレンジすることの大事さを学びました。
小鈴
徒町が頑張ると、元気が出る……初めて言われた時は、
もしかしたらピンと来てなかったのかもしれない。
小鈴
でも今なら分かるんだ。 徒町はスクールアイドルだから。
だからーー。
小鈴&綴理
ありがとう。
小鈴
えっ?
綴理
やほ。
小鈴
綴理先輩、びっくりさせないでくださいよー。
綴理
ごめんね。
綴理
……。
小鈴
……えっと、何か用事です?
あ、寝に来ました?
綴理
ボクなんなの。
じゃなくて……お礼を、言いに来たんだ。
小鈴
え、徒町にですか?
綴理
そう。 今回の映画、すごく楽しかった。
楽しかったんだ。
小鈴
え!?
いえこちらこそ大変すばらしいものにしていただいて!
綴理
それはね。 すずが頑張ってくれたからだよ。
かほとひめが、あんなに楽しそうにお話のことで盛り上がってたのも。
綴理
ぎんが衣装を縫いながら、嬉しそうに笑っていたのも。
……めぐが、あんなに張り切ってて……みんながまとまっていたのも。
小鈴
それはでも、みんなが。
綴理
かほは子どもの頃からの憧れに、手が届いた。
ひめも、今回のおかげで、かほとたくさん話が出来たって言ってた。
綴理
ぎんだって、衣装をまた使えるって言って喜んでた。
……めぐが、誰かの話をあんなに素直に聞いてたのも、初めて。
綴理
こずとるりがさ。 ずっと笑ってたよ。
綴理
すずはもしかしたら、よく分からないかもしれないけど……
あのふたりが笑ってるってことは、なんの心配もないってことなんだ。
小鈴
それが……徒町の……?
綴理
そう。 すずだよ。 すずが一生懸命だったから、
頑張ってるのが伝わったから、みんなはそれについてきてくれた。
綴理
ひとりでやらなくても、すずの気持ちはちゃんと、伝わっていたんだ。
伝わるくらい、頑張っていたんだ。
綴理
それだけでも十分なのに、合宿の終わりまで、最後まで諦めなかったよね。
だからさやも、悲しい気持ちにならずに済んだんだ。
小鈴
先輩……あ、ありがとうございます。
えと、なんて言っていいのか。
綴理
うん、ごめんね。
綴理
ボクは言葉がうまくないから、
すずになんて言えばいいのか、難しいんだけど……
とにかくボクは、すずに胸を張ってほしいんだ。
小鈴
……はい。 先輩の気持ちは、伝わりました。
あの映画は、ちゃんとみんなの夢になれたんだって。
綴理
うん。 みんなの夢。
ボクの夢にも、なったよ。
綴理
あの映画が楽しかったのは、あの映画がスクールアイドルだから。
同じ……不完全でも熱を持ったみんなで作る、芸術だから。
小鈴
先輩も、そこまで……。
綴理
うん、そこまで。
綴理
むしろ……ボクも気付いた。 不完全は、未完成。
でも進んでいくものだ。
綴理
進んでいくから、美しい芸術なんだって……
もっとスクールアイドルが好きになった。
小鈴
先輩……。
小鈴
はい!
未完成でも……いつか成功できるまで、諦めずにチャレンジし続けます!
綴理
うん。 ボクも、未完成。 頑張ろうって、思えた。
すずのおかげで。 だからーーありがとう。
小鈴
お、おぉ……恐縮、です。
綴理
ん。 すず、きみが居てくれて良かった。
小鈴
え、へへへ。
さやか
あー、ここに居ましたねー!!
綴理
あ、さや。 寝てなくていいの?
さやか
いつの話をしているんですか! すっかり治りましたよこの通り!
この度はお騒がせいたしました!
綴理
良かった。
小鈴
良かったですぅ……!
さやか
ってこのやり取りも何度目ですか……。
いえ、これはもう罰として受け入れます……自己管理を怠ったという……。
さやか
ではなく、もう練習は始まりますよ!
なんの話をしていたんですか!
綴理
すずに、お礼。
小鈴
……綴理先輩。
小鈴
徒町こそ、スクールアイドルクラブに入って良かったです。
これからも、精一杯頑張ります! みんなと!
綴理
ん。
さやか
頑張るなら練習に間に合ってくださいね……。
小鈴
あ、先輩がた。
見て欲しいものが、あったんでした。
さやか
……これは?
綴理
動画だ。
小鈴
雪佳ちゃんから届きました。
タイトルを見てあげてください。
さやか&綴理
『続きは今度撮影します』
さやか
これって。
小鈴
はい。 あー………いつになるかは分からないけど、きっと届きます。
夢の続きが。
綴理
良かったね。
小鈴
はい!
さやか
……あの。
風邪をひいたわたしから言うのも何なんですが。
さやか
わたしたちの映画の続きは、いつ撮りましょうか。
綴理
そうだね……すずは、どうしたい?
小鈴
ん~……ぁ、花帆先輩が言ってたことが、頭に残ってるんです。
『続きは本当のラブライブ!で』って。
小鈴
ああ、そうしたいなって思ったんです。
小鈴
徒町の演じた、ラブライブ!を目指す主人公の気持ちを通して……。
小鈴
それに、みんなでひとつの大きなものを
作るって経験を通して、感じたんです。
小鈴
ーーラブライブ!、頑張りたいって。
綴理
同じことだから、かな?
小鈴
はい!
ラブライブ!も映画も、同じことなんです!
小鈴
どっちも、みんなで作る芸術……だから映画でも、
徒町 小鈴でも……みんなと一緒に、チャレンジに成功したい!
小鈴
だからーー映画の続きは、ラブライブ!に優勝してからにしたいです。
その方がきっと、いいものになると思うから。
綴理
ん。
さやか
よい夢だと思います。
また、わたしたちの想いも乗せてくれる。
小鈴
はい! チャレンジし続けましょう!
完成したと胸を張れるその日まで!