第5話『不完全で、未完成』
PART 7
さやか | んっ……。 |
さやか | ここは……。 |
小鈴 | ぐすっ、うう……ぁ、さやか先輩……。 |
さやか | 小鈴さん……。 あ、あれ? わたしは……。 |
小鈴 | 食事のあと、倒れて。 |
さやか | ……そう、でしたか。 これは……熱が出てるんですかね。 かなりぼーっとして……。 |
さやか | ……申し訳ありません、自己管理をないがしろにしてしまい。 |
小鈴 | そんなことないです、さやか先輩のおかげで撮影は。 |
さやか | 夕食の準備を誰かに任せて、とっととお風呂にでも入れば良かったんです。 すみませんでした。 |
がたっと立ち上がって小鈴が言う。聞きたくないとばかりにぶんぶん勢いよく首を振る。 | |
小鈴 | 謝らないでください! もとはと言えば、徒町がもっとうまくやれてたら、雨の降る前に終わってて。 |
さやか | そんなの、チャレンジを成功させるためなら、当たり前です。 今、何時ですか。 |
小鈴 | 夜の10時を回ったところです。 その……スケジュール的にはもう。 |
さやか | ……ごめんなさい。 |
小鈴 | だから先輩の謝ることじゃ。 |
小鈴 | そもそも、こんな無茶なスケジュールで徒町のわがままに 付き合ってもらうだけで、徒町は……。 |
小鈴 | だったら、最初から……。 |
さやか | やらなきゃよかったなんてことはありません! この映画は、みんなの想いを……夢を、乗せられる……本当にーーぅっ…く! |
小鈴 | 先輩! 寝ててください、凄い熱なんですよ! |
さやか | く、うう……! |
小鈴 | さやか先輩……うぅ。 な、なんとかします! 絶対、なんとかしますから! |
小鈴 | 徒町は諦めないことだけが取り柄なんです、だから、絶対……絶対! |
綴理 | あ。 |
小鈴 | あっ……。 |
綴理 | ……さやは、どう? |
小鈴 | ……目は、覚めました。 でもやっぱり熱は……。 |
綴理 | そっか……。 |
小鈴 | えっと……看病とか……行きます? |
綴理 | ボクじゃ何もできないから。 寝てるさやの、邪魔もしたくない。 |
綴理 | 今日はもう病院開いてないらしいから、 明日になったらすぐ連れてく。 |
小鈴 | ……ごめんなさい。 |
綴理 | なんですずが謝るの? |
小鈴 | こんなことに、なっちゃって。 |
綴理 | ……こんなことに、なっちゃったね。 |
小鈴 | はい……。 でも……。 |
綴理 | でも? |
小鈴 | ……どうにか、したくて。 |
綴理 | 映画を? |
小鈴 | ……どうにかする方法は、わかんなくて。 みんなが思いつかないものを、徒町が思いつくわけもなくて。 |
綴理 | そっか。 |
小鈴 | 先輩……先輩! |
小鈴 | どうにか、できませんか……! これでダメだったら、きっと、さやか先輩も……! |
綴理 | ん……そうだね。 さやはきっと、自分のせいだって。 |
小鈴 | さやか先輩は、徒町の思いつきに、 もうみんなの夢が乗ってるって言ってくれたんです。 |
小鈴 | 徒町も、この合宿でそれを痛いほど感じました。 |
小鈴 | 映画を作る中で見た、みんなの楽しそうな顔を……憶えてるんです……! なのに、終わっちゃう……! |
綴理 | すず、ボクにはどうすればいいのかは、分からない。 |
小鈴 | うぅ。 |
綴理 | 夢が終わるって、つらいね。 |
小鈴 | ぁ……。 |
小鈴 | そっか。 雪佳ちゃんも、同じ気持ちだったのかな……。 こんな風に、どうしようもなくなって、それで……もう、終わりだって。 |
小鈴 | ……。 |
小鈴 | なら。 だったら。 |
綴理 | すず? |
小鈴 | だったらなおさら、諦めちゃだめだ! 終わらせちゃだめだ! だって、諦めたくないからあの映画を撮ったんだもん! |
小鈴 | たとえ何度失敗したって諦めない、そういう気持ちで頑張ったんです。 だから、だから……! |
綴理 | ……あぁ、そっか。 |
小鈴 | ……綴理先輩? |
綴理 | あの映画がすずなんだとしたら。 |
綴理 | あの映画にすずの気持ちが込められているんだとしたら。 すず、これはきみにしか思いつけない。 |
小鈴 | 先輩、なにを。 |
綴理 | 今、ボクたちは失敗したんだ。 |
綴理 | 「次」、どうすればいい? |
小鈴 | あ……。 |
小鈴 | ……考えろ、考えろ! |
小鈴 | 失敗したんだ、すぐに次に行けるのが徒町の唯一の…… これは終わってない、失敗しただけ。 |
小鈴 | これまでやってきたことは、終わってない……! |
小鈴 | ……綴理先輩。 |
綴理 | 何か、思いついた? |
小鈴 | はい。 これは、スクールアイドルの映画なんです。 |
綴理 | うん。 |
小鈴 | たとえどんな失敗をしたって…… 諦めなければ何度だってチャレンジできるのが スクールアイドルだと思うんです! |
小鈴 | まだ、まだ終わってません! お願いします、協力してください! |
吟子 | でも小鈴。 まだって言ったって。 |
小鈴 | これを、見てください。 今まで出来た……みんなで作った映画です。 |
小鈴 | 伝えたい想いは、全部込めました。 |
小鈴 | それは……諦めないってこと。 どんなことがあっても、諦めないってことです! |
姫芽 | それは……でも。 |
小鈴 | もう終わりだって、思いました。 |
小鈴 | でも、きっと雪佳ちゃん……徒町の友だちも、 同じ気持ちになったと思うんです。 |
小鈴 | それを励ましたくて作って……その気持ちも分かった。 |
小鈴 | だからこそ、出来ませんでしたで終わっちゃいけないんです! 大事なのは、終わらないこと。 いつか成功するって信じること! |
花帆 | ……うん、なんとなく、言いたいことは分かったよ! |
瑠璃乃 | えっ? ……ど、どうするの? |
小鈴 | はい、だから……作りたいんです。 “終わらないエンディング”を! |
吟子 | 終わらないエンディング……? |
小鈴 | このままでは終わらない、 まだまだ続く……スクールアイドルみたいに! |
慈 | 一度その映画のエンディングは作る。 でも、まだまだ続く。 そういうこと? |
小鈴 | はい! ……どう、でしょうか! |
梢 | ……待っていて、考えるから。 |
梢 | そうね。 これは、ラブライブ!に挑戦するスクールアイドルたちの映画。 |
花帆 | 続きは本当のラブライブ!で! |
梢 | は、少し大げさだけれど……でも、そうね。 私たちの挑戦はこれから。 いえ、チャレンジ、かしらね。 |
瑠璃乃 | ルリは小鈴ちゃんの気持ちがその友だちに届くならなんでもいいよ。 まだ終わりじゃないよって、伝えてあげたいんだね? |
小鈴 | ぁ……はい! |
綴理 | 任せて、すず。 頑張るから。 |
小鈴 | はい! さやか先輩のためにも……徒町も、できることを全力でやります! |
小鈴 | それが、みんなの夢を乗せたチャレンジだから! |