第3話『ゆえに、みらくらぱーく!あり』
PART 8
瑠璃乃 | ……。 |
瑠璃乃 | よかった。 ゲームの誘いなら来てくれると思った、姫芽ちゃん。 |
姫芽 | るりちゃんせんぱい……。 なんですか~、これ。 果たし状、って。 |
瑠璃乃 | その名の通りだよ。 ルリね、姫芽ちゃんと真剣勝負しに来たんだぜ。 |
姫芽 | 勝負、って……まさか、ほんとにやるんですか? |
瑠璃乃 | うん、やる。 |
姫芽 | いやですよ、アタシ……。 |
瑠璃乃 | えっ? い、いやなの? |
姫芽 | はい……。 だってアタシ、一対一で勝負を挑まれたら、 手加減とかできませんもん! |
姫芽 | るりちゃんせんぱいのことをボコっちゃいます! |
瑠璃乃 | あ、ああ、そーゆーことか。 ならいいよいいよ、ぜんぜんおっけー。 |
姫芽 | よくないですよ~! |
瑠璃乃 | ていうかね、きょうはボコられにきたんだ。 |
姫芽 | えっ? |
瑠璃乃 | それじゃあ、スタート! |
姫芽 | ちょ、ちょっと~ーー。 |
瑠璃乃 | うわっ! ぎゃっ! |
姫芽 | ……。 |
瑠璃乃 | もう1戦! もう1戦! |
姫芽 | ……。 |
瑠璃乃 | いやあ、手始めに10連敗とは。 ぜんぜん手も足も出ないなあ。 |
瑠璃乃 | 本気で強いんだね、姫芽ちゃん。 なるべく粘れるようにって、ルリもけっこう特訓してきたのになあ……。 |
姫芽 | どうして、こんなこと……。 |
姫芽 | ごめんなさい、るりちゃんせんぱい。 でもあと100回やっても、アタシが勝っちゃいますよ……? |
瑠璃乃 | そっかぁ。 でも、とりあえずがんばるね。 ほら、次の試合始まるよ。 |
姫芽 | ~~っ! |
姫芽 | 楽しいんですか? これ……。 |
瑠璃乃 | いやあ、楽しくはないよね。 姫芽ちゃんとも気まずくて、 バッテリーの減りやばいし。 おまけに、けっこう悔しいし。 |
姫芽 | じゃあ、なんでやってるんですか……! |
瑠璃乃 | こうしなきゃいけない、って思ったから……かな。 |
姫芽 | ……それは? |
瑠璃乃 | 姫芽ちゃん言ってたよね。 ゲームにだけはウソつけない、って。 |
姫芽 | ……はい。 いくら相手がるりちゃんせんぱいでも、 勝負なら手は抜けません。 |
姫芽 | 今もそうです。 |
姫芽 | 負けた方が気持ちは楽になるのかもしれませんけど…… それでも、アタシ自身が本気でやるって決めたことですから。 |
瑠璃乃 | そうだよね。 うん、そうなんだ。 |
瑠璃乃 | ルリにとってのみらくらぱーく!も、おんなじだったんだよ。 |
姫芽 | おんなじ……? |
瑠璃乃 | お互い幼馴染みで、遠慮なんてもうなんにもないから、 ワーワー言い合っちゃってさ。 |
瑠璃乃 | それはときどきつらくて、苦しくて、 めぐちゃんとケンカなんてしたくないなー、 ってホントは思ってるんだけど……。 |
瑠璃乃 | でもね、だからって気まずいから折れちゃうなんて、ナシ。 |
瑠璃乃 | そんなことしたって、めぐちゃんは喜んでくれないし、 応援してくれる人にも失礼だし……。 |
瑠璃乃 | なによりそれは、自分が信じる『本気で楽しいことをするんだ!』 って気持ちに、ウソをつくことだと思うから。 |
姫芽 | あ……。 |
瑠璃乃 | ルリもね、逃げてたんだ。 姫芽ちゃんに向かい合うことを。 |
瑠璃乃 | ゲームで手加減されて勝ったって、姫芽ちゃんは喜ばないって、 ほんとはわかってたはずなのに。 |
瑠璃乃 | だから、ごめんね、姫芽ちゃん。 ルリ、最初から姫芽ちゃんにこう言わなきゃいけなかったんだ。 |
瑠璃乃 | ルリにもやりたいことがあって、 ぜんぶをやるのはすごく大変だと思うけど……。 |
瑠璃乃 | でも、姫芽ちゃんと一緒にやりたい。 |
瑠璃乃 | そうして一緒に苦しいことを乗り越えた先には、 これまで以上に『楽しかった!』って思えるような、 素敵な景色が待ってるって思うから。 |
瑠璃乃 | ルリとおんなじ気持ちを、隣で分かち合ってほしい、って。 |
瑠璃乃 | お互いさ、遠慮するのやめようよ。 |
瑠璃乃 | ひとりじゃ難しいかもだから、せーので一緒にさ。 そしたらルリたち、もっといいユニットになれるんじゃないかな? |
姫芽 | ……っ、るりちゃんせんぱい……! |
瑠璃乃 | なろうよ、一緒に。 世界中を夢中にさせる、そんな最強のユニットに! |
姫芽 | ーー! |
瑠璃乃 | あ……。 ……ルリ、勝った? |
瑠璃乃 | はは、勝っちゃった……姫芽ちゃんに。 びっくり……。 特訓の成果……かな? |
姫芽 | るりちゃんせんぱい~! |
瑠璃乃 | おわっ!? |
姫芽 | アタシ、アタシ~! |
姫芽 | るりちゃんせんぱいと、めぐちゃんせんぱいの存在が大きすぎて~! だからアタシはなるべく迷惑かけないようにしなきゃって思って~! |
姫芽 | でも、それってまだチームのお荷物って思われてるみたいで、悔しくて~! せめてダンスとか歌とかがんばりたくて、企画も一生懸命考えて~! |
姫芽 | でも……でも悔しいって思うことすら、 なんかおこがましいんじゃないかって~! |
姫芽 | アタシが楽しいだけじゃなくて! 大好きなおふたりの力になりたくて、ほんとに、ほんとに~! |
姫芽 | るりちゃんせんぱいの楽しいことも、 お手伝いさせてほしかったんですよぉ~~! |
瑠璃乃 | あ、あはは……。 そっか、そうだったんだ……。 |
瑠璃乃 | ルリが思うみたいに、姫芽ちゃんも、そう思ってくれてたんだ。 なんだか、すごく遠回りしちゃってたんだね……。 |
姫芽 | うう~! うう~! |
瑠璃乃 | よしよし、よしよし……。 |
姫芽 | るりちゃんせんぱい~……。 |
姫芽 | ……それはそうとして、負けて悔しいので、 また今度リベンジマッチにはお付き合いください~……。 |
瑠璃乃 | えっ!? う、うん、わかった……! |
瑠璃乃 | ……ルリのバッテリーが切れない程度に、お願いね……? |
慈 | 一件落着……なのはいいとして。 それ、どういうこと? |
姫芽 | うう~! うう~! |
瑠璃乃 | 仲間だから、と言ってます。 |
慈 | え? どういうこと?? |
瑠璃乃 | つまりね、 ルリと姫芽ちゃんはようやく心と心を通わせることができたんだよ。 |
慈 | ……心を通わせると、そんなんなっちゃうの? |
瑠璃乃 | や、わかんないけど。 でもさ、たまにはこういうのもいいな、って。 |
瑠璃乃 | ルリとめぐちゃんも……そうだったよね? いっぱい、いろんなことでぶつかって……。 |
瑠璃乃 | あれ、ひょっとして、その人とぶつかるごとに、 次から消費バッテリーが軽減されてゆくってシステムだったり……!? |
慈 | そうだったの!? |
瑠璃乃 | だ、だったらいいな~って……。 |
姫芽 | ……るりちゃんせんぱい~。 |
慈 | あ、喋った。 |
姫芽 | アタシもこれから遠慮しないようにがんばりますから~…… 一緒に、一緒にがんばりましょうね~……。 |
瑠璃乃 | うん、がんばろうね、一緒に、一緒にね。 |
瑠璃乃 | そういえば今回、ゲーム中に姫芽ちゃんが『うりゃりゃりゃー!』 って感じにならなかったのは、あれも遠慮してたからなのかなあ。 |
姫芽 | ? なんですかその『うりゃりゃりゃー!』って~。 アタシ、普段そんなこと言ってます~? |
瑠璃乃 | 自覚なかったの!? |
慈 | え? こわ。 |
姫芽 | でも、確かにそうですね……。 |
姫芽 | るりちゃんせんぱいに果たし状で呼び出されたときから 『うわ~……やだ~……』って思いながら戦ってたので……。 |
瑠璃乃 | テンションのせいだったかあ。 |
姫芽 | あ、でも次からは大丈夫ですよ! リベンジマッチが終わった後にでも! |
姫芽 | 何十戦でも! 何百戦でも! るりちゃんせんぱいにお付き合いしますよ! 永久に! |
瑠璃乃 | と、ときどき一緒に遊ぼうね、ときどき! |
姫芽 | あっ…………そう、ですか……。 |
瑠璃乃 | いや、ちがくて! 今のは遠慮したわけじゃなくて!! |
瑠璃乃 | ルリって基本的に白黒ハッキリつける対人戦があんま得意じゃなくて! だからで! |
瑠璃乃 | ん~~~、わかった! ーーじゃあ、ひめっち! |
姫芽 | !? |
瑠璃乃 | いや、なんかこう、仲間になった証……的な! |
瑠璃乃 | 姫芽ちゃんから、ひめっちに呼び名を変更するということで、 ルリの意思表示を……。 |
瑠璃乃 | エト、ちょっと安直すぎたかなーー。 |
姫芽 | ーーいえ、いいと思います~! |
瑠璃乃 | そ、そう? |
姫芽 | はい~! なんというか心の距離がグッと縮まったというか、 アタシもようやくるりちゃんせんぱいに認めてもらったんだって 心から思えるような本当にMVPな呼び名だと思います~! |
瑠璃乃 | そ、そこまで? |
姫芽 | はい! |
慈 | で、それはいいんだけど。 |
慈 | ラジオさ。 やっぱり放送室のスケジュール当たってみたけど難しそうだよ。 どうにか枠を譲ってもらうしかないかな……。 |
瑠璃乃 | あ、それについては、ルリに考えがあるんだ。 |
慈 | 考え? |
瑠璃乃 | うん、撫子祭当日にスケジュールが抑えられなくても、 ラジオはできるから。 |
瑠璃乃 | あ、でも、今からだと、ちょっと……いや、 かなり忙しくなっちゃうかもだけど。 |
瑠璃乃 | どうかな、めぐちゃん。 それに、ひめっち。 協力、してくれる? |
慈 | そりゃ、ねえ? |
姫芽 | その言葉、待ってました~! |
瑠璃乃 | ぴんぽんぱんぽーん! |
花帆 | あ、この声! |
吟子 | ほんとに毎日やるんですね……。 |
梢 | ふふ。 不思議と準備が、いつもより楽しくなってくるわね。 |
瑠璃乃 | お祭り準備中の、蓮ノ空の皆さまに、ルリノ・オーサワがお届けします、 みらくらラジオ~! |
瑠璃乃 | きょうもがんばってるみんなを、応援しちゃうぜ~! |
綴理 | ラジオの時間だ~。 |
小鈴 | きょうは、どの部が紹介されるんでしょうね! |
さやか | はぁはぁ、た、楽しみですね! |
瑠璃乃 | というわけで、吹奏楽部によるコンサートは、撫子祭当日の13時から! うおーがんばれがんばれー! ルリもメッチャ応援してるからね~! |
瑠璃乃 | さて、お次は~。 |
瑠璃乃 | お。 きょう撫子祭を紹介する新聞部の記事が完成したって! すごいすごい! お疲れさま~! |
瑠璃乃 | じゃあちょっと、記事を抜粋させてもらって……。 ん? |
瑠璃乃 | なんか黄色いマーカー振ってあるんだけど。 これ、読めってこと? |
瑠璃乃 | うわ、スクールアイドルクラブの…… しかも、みらくらぱーく!の紹介記事だ! |
瑠璃乃 | ルリがこれ読むの自画自賛みたいになっちゃわない!? 大丈夫!? |
瑠璃乃 | いや、でも書いてくれたうちの一年生を労うという意味もありますし……。 いかせていただきます、ルリ! |
瑠璃乃 | 記事はこちら! |
瑠璃乃 | 『みらくらぱーく!!!!! 神!!!!!!!!』 |
瑠璃乃 | …………ぷっ。 |
瑠璃乃 | あははははははは! |
瑠璃乃 | 紹介してないじゃんこれ! いいの!? いいわけないよね! だってスリーズブーケとDOLLCHESTRAはちゃんと書いてあるし! |
瑠璃乃 | あー笑った。 まったく、まったくもう~。 |
瑠璃乃 | それじゃあ、チームとしてもひとつにまとまって、 ますますパワーアップしていくみらくらぱーく!の活躍を、 これからもこうご期待! |
瑠璃乃 | ーーと、ルリ思う、ゆえにみらくらぱーく!あり! |