第2話『踊り続けよう、きみが見てる』
PART 7
さやか | はぁ、はぁ……あれは……人だかり? |
小鈴 | ……リベンジしに来ました!!! |
さやか | ……小鈴さん!? |
小鈴 | か、徒町はっ……は、蓮ノ空女学院の、スクールアイドルクラブで、 えと。 今からっ……ライブを、します! |
小鈴 | 伝え方なんて、まだ全然分からない。 |
小鈴 | 徒町ごときが、すぐ正解なんて出せると思ってない。 でも。 |
小鈴 | どうしても伝えたいことならーー今はあるんです!! だから見ててください、徒町のライブを! |
小鈴 | あぅっ! |
さやか | 小鈴さん!! |
小鈴 | ぁう……。 ぐ。 ……失敗なんて、全然平気! 徒町は失敗ばっかりだけど……。 |
小鈴 | でもーー届いて……徒町の気持ち!! 行きます!! 曲はDOLLCHESTRAのーーSparkly Spot!! |
さやか | ……。 |
さやか | ……。 ……っ。 |
さやか | これ、は……! |
小鈴 | 間違いなんかじゃないっ……間違い、なんかじゃっ。 |
小鈴 | ーー決めるのはっっ!! 自分だ!!!! |
さやか | っ……! |
さやか | ああ……そっかーー。 |
さやか | わたしも、おねーちゃんみたいになりたいんだ! |
さやか | ……がんばれ。 |
さやか | がんばれっ、がんばれぇ!! |
さやか | がんばれっ……がんばれ、小鈴さん!!! |
小鈴 | はぁ……はぁ……。 全然、ダメだった……転んだし、 振りも間違えたし、最後もきめられなかった。 |
小鈴 | ……もっかい。 もっかいやってーーあ。 |
さやか | いいえ。 全然ダメなんかじゃ、なかったですよ。 |
小鈴 | ぁ……さやか、先輩。 |
さやか | ねえ、小鈴さん。 わたしは昔、ほんとうによく転ぶ子だったんです。 小鈴さんよりずっと。 |
小鈴 | え……? |
さやか | お姉ちゃんを追いかけて、お姉ちゃんのまねばかりしようとして。 |
さやか | 失敗しては笑われて……でも、楽しかった。 よく……こうして起こしてもらいました。 |
さやか | 痛みはありませんか? |
小鈴 | は、はい。 |
さやか | 今のライブは、失敗なんかじゃありませんよ。 |
小鈴 | で、でも。 ダメだって言われた方のライブより、ずっとへたっぴで。 |
さやか | へたっぴだって、良いんです。 だって……伝わりましたから。 あなたの気持ちが。 |
さやか | ーー間違いなんかじゃ、ないんだって。 |
小鈴 | ぁ。 |
小鈴 | はいっ……さやか先輩に憧れることは、それだけは……! |
さやか | はい……。 がむしゃらに、まっすぐに。 頑張りたい気持ちを伝えてくれた。 |
さやか | それはね、小鈴さん。 あなただけの、応援したくなる魅力なんですよ。 |
小鈴 | ……。 |
さやか | 「さやとボク」と、「さやとすず」は違う。 綴理先輩の言葉は……あなたのライブが、意味を教えてくれました。 |
さやか | 憧れを追いかけたい……あなたの気持ちは、間違っていないって。 |
小鈴 | さやか先輩……。 |
さやか | わたしも、気づかされました。 |
さやか | きっとーーあの日お姉ちゃんの背中を追いかけていたことそれだけは、 間違ってなかったんだって。 |
さやか | あなたのライブはきっと、わたしの過去を救ってくれた。 |
さやか | そんな人の心を打つライブをする、“スクールアイドル”が、 間違っているだなんて言えるわけがない。 |
さやか | だからね、小鈴さん。 |
小鈴 | はい。 |
さやか | わたしはーーあなたの目標であり続けます。 あなたが、追い続けてくれる限り。 |
小鈴 | ぁ……はい! |
さやか | ありがとう、小鈴さん。 |
さやか | わたしは、あなたのライブでーー大事なことを思い出しました。 |
小鈴 | あ……あはは。 あれ、なんか、なんで……。 |
小鈴 | 失敗したはずなのに、できた時みたいに、 胸の底から熱いものがこみ上げてきて……なんかすごく、すごいーー! |
さやか | 今なら、すごいことができそうな気がしませんか? |
小鈴 | はい!! |
さやか | いきましょう。 わたしもーー最高の歌詞が書けそうです。 |