第2話『踊り続けよう、きみが見てる』
PART 6
花帆 | 今日はみんな、集まってくれてありがとー!! |
吟子 | ご覧いただき、本当にありがとうございました。 |
花帆 | それじゃあ、次はみらくらぱーく!です! |
花帆 | いえーい、おつかれさまー! |
小鈴 | いえーいです! |
吟子 | 私……花帆先輩とふたりで、うまくやれたでしょうか……。 |
さやか | ここから見ている限りでは、とても魅力的なパフォーマンスでしたよ。 |
吟子 | ……なら、良かったです。 |
花帆 | じゃあ、ふたりも頑張ってね。 |
さやか&小鈴 | はい。 |
さやか | さて……どうでしょうか。 今日1日で……伝え方については、皆さんのやり方は参考になりましたか? |
小鈴 | はい、やっぱりこうするのが良いんだろうなっていうのは、 決まりました! |
さやか | ! それなら……良かったです。 |
瑠璃乃 | それじゃあーーDOLLCHESTRAに、バトンタッチしまーす! 今日はほんとにありがとー! |
姫芽 | ありがとうございました~!! |
さやか | それではーーこれが最後の“特訓”です! |
小鈴 | やるぞー! |
さやか | やりきれた、かな。 |
さやか | 小鈴さんも最後までパフォーマンスをやり遂げられたことを、 素直に喜んでいたし……うん、良かった。 |
さやか | 本当にわたしが誰かの指導をしていい人間なのか…… 不安でいっぱいだったけど。 |
さやか | でも、きっと敦賀ライブフェスタでは、 小鈴さんはご家族に向けて立派な姿が見せられるはず。 |
さやか | ……って、ダメダメ。 |
さやか | 何か改善できる点が残っているかもだし、小鈴さんの最高の舞台のためにも、 最後まで気を抜かない。 |
さやか | ……。 |
さやか | ……。 |
さやか | ……これ、は? どうして……。 |
さやか | まさか……。 |
さやか | 小鈴さん……踊れてるのに、踊れてるだけだ。 見たことある、わたしはこれを、見たことがある……。 |
さやか | 誰かを追いかけることだけで、 頭がいっぱい、の……! |
さやか | わたしは、小鈴さんになんてことを……。 |
小鈴 | さやか先輩、みんなが夕食行くタイミング合わせましょーって話を…… さやか先輩? |
さやか | ぁ……小鈴、さん。 |
小鈴 | ど、どうしちゃったんですかさやか先輩! なにか変なものでも食べてーー。 |
さやか | ごめんなさい。 |
小鈴 | ……え? |
さやか | わたしは……小鈴さんへの指導を、誤りました。 |
小鈴 | どうしたんですか、さやか先輩。 突然そんなこと言われても……だって徒町、けっこううまくできて……。 |
小鈴 | 今日のライブ……ですか? |
さやか | 小鈴さんは……踊れていました。 間違えずに、しっかり。 会場を見つつ、最後まできちんと踊り切る。 |
さやか | それが、ちゃんと出来ていました。 |
小鈴 | じゃあ、 |
さやか | でもーーそれだけです。 そしてそれだけじゃダメなんです。 |
小鈴 | それは、えっと。 伝えるもの……? |
さやか | 小鈴さんには伝えたいものがあったはず。 でも伝わってこない。 |
さやか | それはひとえにっ……このパフォーマンスが、 ただわたしを真似ることしかできていないからなんです……。 |
小鈴 | ……。 |
小鈴 | それは、徒町がまだ未熟だからなんじゃ。 |
さやか | そんなことはありません! |
さやか | でも……教えてください。 今日のライブで……どんなことを、伝えようとしましたか? |
小鈴 | えと……それ、は。 |
小鈴 | さ、さやか先輩みたいに立派なスクールアイドルになりたいって…… 思って……さやか先輩みたいに、 真摯に向き合うのがかっこいいなって……。 |
さやか | そう、でしたか。 ……わたしの、やり方なんですね……? |
小鈴 | だ、だってその。 確かにみんなが色んな伝え方を教えてくれて、 徒町もどんなのがいいかなって考えたけど……。 |
小鈴 | でも、しょせん徒町の考えですし。 |
小鈴 | やっぱり、さやか先輩のがいちばんかっこよくて、いいなって……。 さやか先輩みたいになれたらって、徒町、ずっと。 |
さやか | ……小鈴さんが悪いわけではありません。 間違っていたのは、わたしの指導。 |
さやか | わたしは、小鈴さんの特訓をしているようでいて、 小鈴さん自身のことを何も見てあげられていなかった……。 |
さやか | 指導者はおろか…… わたしにあなたのきらめきを乗せた歌詞なんて書く資格もない。 |
さやか | わたしみたいになりたいと言ってくれているひとに、 そのわたしがするような練習をさせるのが間違いでした。 |
さやか | 去年のことに味を占めて、綴理先輩みたいに自分も憧れてきた子を 指導できると思ったのが間違いでした。 |
さやか | あなたの熱意を踏みにじる結果にしてしまって、ごめんなさい。 |
小鈴 | そんな……全部、間違いだなんて……そんなの。 |
さやか | 小鈴さん。 あなたには、あなたにしかない魅力があります。 |
さやか | わたしみたいになろうとするのは間違いで、 あなたらしいやり方というものがーー。 |
小鈴 | 今そんなの聞きたくありません! |
さやか | っ。 |
小鈴 | さやか先輩はっ……さやか先輩は! そもそも徒町が、さやか先輩に憧れるのが間違いだっていうんですか!? |
さやか | それはっ……。 |
さやか | そういうことかも、しれません……。 |
小鈴 | っ~~~! そんなっ、そんなのっ! 徒町はっ……!! |
さやか | 小鈴さんっ……! |
さやか | 小鈴、さん……。 |
さやか | わたしは……分かってるはずなんです、あなたには、 あなただけの魅力があることを……なのに……どうして、わたしは……。 |
さやか | やった、できた! はじめてできた! みてた? みてたー!? |
つかさ | うまくなったねーさやかー。 もーわたしがおしえることはない! |
さやか | え、そんなのおかしいよ! だってぜんぜん、おねえちゃんみたいにできてないし! もっともっと、いっしょにやろーよ! あはは! |
つかさ | ふふっ……ん、そうだね。 ねえ、さやか。 |
さやか | んー? |
つかさ | あのねーー。 |
さやか | どんなに楽しくたって……。 わたしは……間違ってたんですよ、小鈴さん。 |
さやか | ……小鈴さんを、追わないと。 |