第2話『踊り続けよう、きみが見てる』
PART 5
花帆 | んー! 来ました、福井の中心福井駅!! 新しい新幹線、乗り心地よすぎて寝ちゃうかと思ったよ! |
吟子 | いや、花帆先輩は誰よりも元気だったでしょ。 ずっと窓に張り付いてたし。 |
姫芽 | でも、良い景色でしたね~。 まったりできました~。 |
瑠璃乃 | いやいや、姫芽ちゃんは逆に誰よりも早く寝たじゃん……。 |
小鈴 | 新幹線を乗り過ごさないチャレンジ、成功しました! |
さやか | あはは、些細なことでも一歩一歩……というのなら全然良いのですが……。 小鈴さん、誰よりも降りる準備ができていなかったような……。 |
さやか | さて、ともあれしっかりこの後のスケジュールを決めないとですね…… と、あれ? |
花帆 | 探し物は~、これかなっ? |
さやか | あ、すみません助かりました。 ありがとうございます! |
花帆 | 椅子の下に落ちてたよ。 気を付けてね。 |
さやか | お手数おかけしました。 少しわたしもたるんでいたかもしれません。 |
瑠璃乃 | あはは、だいじょぶだいじょぶ。 さやかちゃん最近大変だったし、少しくらい緩んでくれていーよー。 |
瑠璃乃 | 完璧すぎない方が後輩も安心するかも、なんて。 |
小鈴 | そ、そんなことは思ってません! |
姫芽 | 確かに、さやかせんぱいって完璧なイメージはありますけどね~。 |
吟子 | むしろ花帆先輩がさやか先輩を支えることができるなんて、ほっとしました。 |
花帆 | どういう意味!? |
さやか | あはは。 花帆さんにはいつも助けられていますよ。 |
さやか | 瑠璃乃さんが入ってからは、瑠璃乃さんにも。 わたしひとりで完璧に物事がこなせるとも、思っていません。 |
花帆 | 昔のさやかちゃんはとんがってたからね! この学校で人と仲良くする気はありません! って。 |
瑠璃乃 | 誰だそのひと。 |
さやか | いつの話をしてるんですか! ほぼ最初じゃないですか! |
小鈴 | え、ほんとうにさやか先輩がそんなことを? |
さやか | そ、そんなに見ないでください! |
さやか | 入学当初のわたしは、その。 本当に余裕がなかったと言いますか! 人と仲良くなるよりとにかく頑張らなきゃいけなかったといいますか! |
花帆 | 初々しかったねえ。 |
さやか | もういいじゃないですかその話は! |
さやか | ともかく! 花帆さんのおかげで助かりました。 予定を詰めていきましょう。 |
さやか | ここからしばらく自由行動になります。 まず、花帆さんと吟子さんは駅前観光でしたね。 |
花帆 | うん! 大都会福井を見てくるよ! |
吟子 | お店の雰囲気も、新しいものと古いものが混在していて、 気になるものが多いんです。 |
さやか | 瑠璃乃さんと姫芽さんは……ゲームセンター? |
瑠璃乃 | そう、ゲーセン! クレーンゲームのプライズとか色々見たくって。 姫芽ちゃんも乗り気でさ! |
姫芽 | ゲーセンでおめめきらきらなるりちゃんせんぱいを いっぱい撮りたいんです~。 |
瑠璃乃 | そーゆー目的!? |
小鈴 | クレーンゲーム……! |
瑠璃乃 | お、好きなの!? いいよねえ、プライズとか、見てるだけでも楽しくなってくるよね! |
姫芽 | じゃあ小鈴ちゃんも来る~? 全然大歓迎だよ~。 ふたりが並んでるとことか、絶対可愛いし~。 |
小鈴 | あ、で、でも……! 徒町、我慢します! |
花帆 | ん? 小鈴ちゃんも、もしかしてさやかちゃんとどこか行ったり? |
さやか | いえ。 わたしたちは、特訓の続きです。 ……で、良いんですよね、小鈴さん。 |
小鈴 | はい! 頑張りが優先です! お世話になりますっ! |
花帆 | 特訓……。 せ、せっかくの旅行先でも? |
さやか | なにせゴールが敦賀ライブフェスタですから。 前日の今日に最終調整をしないで何をするんだという話です。 |
瑠璃乃 | おー、すといっくー。 |
姫芽 | でもそうしたら~、小鈴ちゃんは何をするんですか~? |
さやか | 今日まで頑張ってきた総仕上げ……どうやって、 ご家族に気持ちを伝えるか……それを見つけるんです。 |
さやか | 本当は、去年わたしがやったように、 近江町市場に行こうとも思っていたんですが、時間がなくて。 |
花帆 | そっか、来てくれる人に気持ちを伝える…… さやかちゃんがやってたことだし、 あの時のさやかちゃんすごく楽しそうだったもんね! |
さやか | こほん。 ……でもその分、小鈴さんはしっかり最後まで 会場の皆さんを見てパフォーマンスができるようになりました。 |
さやか | それこそ、去年のわたしなんかよりずっとです。 |
さやか | だから、あとは気持ちの伝え方。 なのでわたしが考えたのは、 色んな場所で今日の福井駅でのライブの宣伝をすることなんです。 |
小鈴 | 徒町、まだよく分からないですけど、頑張って宣伝します! |
さやか | それで小鈴さんなりの想いの伝え方を掴んでいけたらと。 目指すべきは、自分の想いをきちんと伝えられるスクールアイドルですから。 |
小鈴 | が、がんばります! |
瑠璃乃 | ……。 んー、あのさ、姫芽ちゃん。 |
瑠璃乃 | ルリ、ちょっとさやかちゃんたちと一緒に頑張りたいかも。 ルリたちだって、ライブはあるんだしね。 |
さやか | えっ? |
姫芽 | さっすがるりちゃんせんぱい! |
姫芽 | いや~、アタシとしても小鈴ちゃんの特訓は 最後まで見届けたい気持ちはあるものでして~。 |
吟子 | ……いちおう、私も。 |
花帆 | むふふー…… これがスクールアイドルクラブの絆だよ、さやかちゃん! |
さやか | ……よろしいんですか? 皆さん、行きたいところなどたくさんあったはずなのに。 |
瑠璃乃 | みなまで言うなみなまで言うな。 |
瑠璃乃 | それに、さやかちゃんたちも色んなところ回るつもりなら、 みんなで回った方がきっと楽しいよ! |
花帆 | それにあたしは先輩ですから! きっと、小鈴ちゃんの参考になることとかも出来ると思うよ! |
小鈴 | わわわ……みなさん、徒町などのために、本当にありがとうございます! |
吟子 | まあ、友達だし。 |
姫芽 | ひたむきに頑張るって、そうそうできることじゃないからね~。 そゆとこ、ほんとに尊敬してるよ~。 |
さやか | ありがとうございます、皆さん。 |
さやか | 小鈴さん、最後まで頑張りましょうね。 これができればきっと、 敦賀ライブフェスタでご家族にも気持ちが届くと思いますから。 |
小鈴 | はい! |
さやか | それでは皆さん……何卒宜しくお願いいたします。 |
花帆 | あたしの場合はね! やっぱり、全力かな! |
小鈴 | 全力! |
吟子 | もうちょっと……具体的にならない? |
花帆 | ぐ、具体的に。 んー、とぉ……こ、こういうのは実践だよ吟子ちゃん! 小鈴ちゃんも、見ててね! |
花帆 | フーラワー! 蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ、日野下 花帆です! |
花帆 | 今日はなんと! 福井駅前であたしたち、蓮ノ空のライブが開催されるので! たーくさんの人たちと、素敵な時間を過ごしたいなーって思ってます! |
花帆 | 来てねー!!! |
小鈴 | おお……これが全力……。 ふ、ふーらわー! |
吟子 | そこじゃないと思うな……。 練習するとしても……。 |
瑠璃乃 | ルリは……そんなに特徴ないとルリ思う。 強いて言うなら、そうだなあ。 ひとりひとりに、かな。 |
姫芽 | るりちゃんせんぱいのあったかい魅力が引き立ちますよね~。 |
瑠璃乃 | プレッシャーで漏電するからハードル上げるのやめようね。 えっと……。 |
瑠璃乃 | ねね。 もしよければなんだけど、今夜福井駅でライブがあるんだ。 ルリたちは蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブって言うんだけど……。 |
瑠璃乃 | 知ってる? ふへへ、ありがと。 じゃあ、楽しみにしてて。 すっげーライブにするからさ。 |
小鈴 | おお……あったかい魅力……。 ひとりひとりに話しかけに行くの……が、がんばるぞー! ちぇすとー! |
姫芽 | あはは……ちぇすとで突っ込んだらみんなビビるんじゃないかな~。 |
小鈴 | さやか先輩! さやか先輩のやり方も教えてください! |
さやか | わたしのやり方、ですか。 そうですね、分かりました。 |
さやか | サンプルのひとつになれば良いですが……心堅石穿、 真摯に向き合うのがわたしのやり方になります。 |
さやか | 御通行中の皆さん。 蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブの、村野 さやかという者です。 |
さやか | 本日、この場所でわたしたちのライブが行われますので、 どうかお時間をいただけますと幸いです。 |
小鈴 | ふわあ……。 |
さやか | スクールアイドルの魅力は人それぞれ。 小鈴さん自身が持つひたむきな想いを、どうしたら伝えられるか……。 |
さやか | わたしを含めメンバーのやり方が、小鈴さんの参考になればと思います。 |
小鈴 | はい! すっごく参考になりました! |
さやか | それなら、よかったです。 皆さんにも、お礼を言わないといけませんね。 |
小鈴 | はい! |
さやか | それではーー福井でのライブ、頑張りましょう! |