第1話『未来への歌』
PART 3
梢と綴理、慈がいる。 | |
花帆が梢に気まずそうな顔をしている場面からスタート。 | |
梢はちょっと悩んだ顔だが、花帆を責めている風ではない。 | |
梢 | それで……なんて言われたの? |
花帆は『あれはまずかったかな~……』とひとり反省している。 | |
花帆 | か、考えてみますって言われて……。 そのまま、解散に……。 |
梢 | ……急にそんな風に声をかけられたら、さぞびっくりしたでしょうね。 |
頭を抱える花帆。 | |
花帆 | うう。 |
慈も綴理もお風呂上がり。横からはやし立ててくる。 | |
慈 | いやー、大胆だねー、花帆ちゃん。 それって一目惚れってやつー? |
花帆 | わかんないですけど……なんか、すごくビビっときたんですよぉ! あたし、この子とスクールアイドルやりたーい! って! |
花帆と同じことをした綴理は、花帆の気持ちがメチャわかる。 | |
綴理 | わかる。 |
梢 | ……そういえばそうだったわね、あなたとさやかさんも。 でも、普通はだめなのよ。 普通はもう少し手順を踏むの。 |
無責任な慈の言葉に、梢も淡々と言い返す。 | |
慈 | 梢はお堅いなぁ~。 いいじゃん、もっとノリで生きてみれば~? |
梢 | その結果がギリギリでの進級というのなら、私はお堅くて結構。 |
慈 | ギリギリかどうかはわかんなくない!? |
綴理 | 進級できてよかったね、めぐ。 ボクもめぐと進級できて嬉しい。 |
慈 | 急に普通のこと言うなー! 綴理も大概だからね!? |
綴理と慈が低レベルな争いをしている横で、花帆が梢に元気よく手を挙げる。 | |
花帆 | それで、センパイ! 入部希望の吟子ちゃんのことなんですけど! どうですか!? |
梢、少し思案顔。 | |
梢 | ええ。 初日から門戸を叩いてくれるなんて、嬉しいし、大歓迎よ。 入部してもらうことには、もちろん異存ないわ。 |
梢 | 望めば誰でもなれるのが、スクールアイドルなんだから。 |
花帆 | やったー! それじゃあ! |
梢 | ただし。 |
梢 | スリーズブーケに入るかは、まだ検討の余地があるわね。 |
花帆 | ええー!? |
悲鳴を上げるも、梢はしっかりと花帆に告げる。 | |
梢 | その子がどんなスクールアイドルになりたいかを決めるのは、 私たちではないでしょう? |
花帆 | そ、それは……。 |
梢 | スリーズブーケ、DOLLCHESTRA、みらくらぱーく!、 |
梢 | 蓮ノ空には3つのユニットがあり、 ユニットごとに活動内容も、音楽性も違う。 |
梢 | 話を聞いていると、 その子は明確な目的意識をもって蓮ノ空に来てくれたみたいだし。 |
梢 | だったら、私たちがするべきなのは、まずはヒアリングじゃないかしら? |
理路整然と語る梢に、感動する花帆。 | |
花帆 | さ……さすが梢センパイ……。 三年生になって、ますますかっこよく……! |
梢 | そ、そうかしら? |
花帆 | わかりました、梢センパイ! あたし、吟子ちゃんにいろいろ聞いてみます! |
花帆 | それでいて、スリーズブーケのいいところをいーっぱい紹介して、 吟子ちゃんがスリーズブーケに入りたーい! |
花帆 | って思ってくれるようにがんばります! それならいいですよね! |
梢 | それは。 |
綴理 | こずがやったのと同じだね。 |
横からの声に、眉を寄せる梢。 | |
梢 | む……。 |
慈 | なるほど。 無垢でいたいけな一年生を、言葉巧みに誘導したんだね。 |
もちろん梢にそんなつもりはないが、やっていることはまさしくそうなので、反論ができない梢。 | |
梢 | 人聞きが悪いでしょう! |
梢 | コホン……。 まあ、そうね……。 でも、あんまり強引にしてはだめよ、花帆。 |
花帆 | はい! 梢センパイをお手本に、あたしがんばります! |
綴理 | がんばれがんばれー。 |
慈 | そーだそーだ。 花帆ちゃんだってもう二年生なんだからねー。 |
梢 | ……それは、確かにそうだけれど。 |
花帆がグッと拳を握って宣言する。 | |
花帆 | 見ててください、梢センパイ! 新入生獲得大作戦です! |
屋上にて、花帆、梢、吟子が集合。 | |
それぞれ練習着。吟子、初めての練習のイメージ。 | |
梢を大げさに紹介する花帆。 | |
花帆 | じゃーん! このすっごい美人の三年生が、乙宗 梢センパイ! あたしと一緒に、スリーズブーケっていうユニットをやっているんだ! |
花帆 | 文武両道! 容姿端麗! なんでもできちゃうんだよ! |
吟子も梢の前だと、緊張している様子。 | |
吟子 | は、初めまして! 蓮ノ空女学院一年生、百生 吟子です! どうぞ、よろしくお願いします! |
にっこりと微笑む梢。 | |
梢 | ……少し、花帆が大げさに紹介してくれたけれど。 乙宗 梢よ。 よろしくね、吟子さん。 |
花帆が吟子にささやく。 | |
花帆 | ……どう? 梢センパイと一緒なんだよ? 吟子ちゃんもスリーズブーケに入りたくなってきたでしょ? |
花帆 | よし、スリーズブーケに決めちゃお! |
吟子 | えっと……。 |
笑顔のまま花帆を注意する梢。 | |
梢 | 花帆さん。 |
花帆 | あっ、いえ、なんでもないです! |
梢はまったくもう、という顔で。 | |
梢 | それじゃあ、吟子さんの基礎練習についてだけれど。 当面の指導は、花帆にお願いするわね。 |
花帆 | えっ? あっ、はい! わかりました! |
花帆に名誉を挽回するチャンスを与える梢。そのモチベをあげるために、励ます。 | |
梢 | 二年生らしいところを見せてあげてちょうだい。 ね? |
花帆、嬉しそうに吟子の手を引く。 | |
花帆 | ~~っ、はい! いこっ、吟子ちゃん! |
吟子 | は、はい。 |
ここから花帆のうまくいかない空回りパート。場所は変わらず。 | |
梢の真似をして、吟子に基礎練を教える。 | |
花帆 | それじゃあ、まずは基礎練習だよ、吟子ちゃん! |
花帆 | 最初から楽しい応用編をやりたいのはわかるけど、 なんでも大事なのは基礎なんだからね! |
吟子 | いえ、基礎の大切さは、わかってますけど……。 |
花帆 | あ、そ、そう? そうだよね。 じゃあね、最初は柔軟から! |
吟子 | はい。 |
柔軟を始める花帆と吟子。花帆はチラチラと吟子の様子を窺う。 | |
ついつい梢の真似をして話す花帆。 | |
花帆 | ……。 どう? 地味で大変でしょ。 でもね、この積み重ねが明日の筋肉を作るのよ! |
生返事を返す吟子。花帆はひとり空回り。 | |
吟子 | はあ。 |
花帆 | そ、そうだ、吟子さん! あたくしね、今度こそちゃんと紅茶をいれてきたの! |
花帆 | ほら、水筒! ね、喉渇いてないかしら!? |
吟子 | えと……まだ、大丈夫ですけど……? |
花帆 | え? あ、そう!? |
梢 | ……。 |