第15話『夢を信じる物語』
PART 6
梢 | どうぞ。 |
花帆 | あ、いただきます……。 ……ん、甘くて、おいしいです。 |
梢 | 今度の紅茶は、メイプルシュガーよ。 外を回ってきたから、甘い方が落ち着くでしょう。 |
花帆 | あの、でも、あたし……。 他のみんなみたいに、落ち込んだりとかは。 |
梢 | そうね、だったら……。 少し、聞いていってくれるかしら。 |
花帆 | え? あ、ギター……。 |
梢 | ええ。 |
花帆 | なんだか、懐かしいです。 |
花帆 | あたしがまだマネージャーって言ってた頃にも、 梢センパイがギターを弾いてくれて。 |
花帆 | センパイのギターに合わせて、 軽く踊ってみたりして……。 |
花帆 | それで、 もしかしたらあたしにもスクールアイドルができちゃうのかも、 って。 |
梢 | あなたがスクールアイドルに興味をもってくれたらいいなって、 いろいろ考えたのよ。 |
花帆 | ……。 センパイ、どうして。 |
花帆 | どうしてあたしだったんですか? 梢センパイだったら、他にもっといい人が……。 |
梢 | この子となら、きっと、ラブライブ!を目指せると思ったの。 |
梢 | あるいは…… この子と一緒に、ラブライブ!を目指したいと思ったのよ。 |
花帆 | でも、あたし。 |
花帆 | あたし、初めてのステージで舞い上がって、 ずっと梢センパイに頼り切っちゃって。 |
花帆 | 応援してくれる人の顔も、ぜんぜん見えなくって……。 |
花帆 | あたし、梢センパイの足、引っ張っちゃってました……。 |
花帆 | あんなにいっぱい、練習したのに……。 |
花帆 | 負けちゃった……。 |
梢 | 花帆さん、あなたは私の期待以上に、がんばってくれたわ。 最初はずっと朝練も嫌がっていたのにね。 |
梢 | 楽しそうにライブをするあなたの笑顔が、好きよ。 一緒だから、私もこんなに毎日がんばれているの。 |
梢 | あなたがいてくれて、よかった。 |
花帆 | 梢センパイ……。 |
花帆 | ごめんなさい、梢センパイ……。 |
花帆 | ごめんなさい……。 |
花帆 | ……うう、すみません。 あたし、こんなつもりでは……。 |
梢 | いいのよ。 ただ、花帆さんがずっとモヤモヤを抱えているように見えたから。 |
梢 | そういうのはぜんぶ、吐き出してしまったほうがスッキリするでしょう? 慈みたいにやれとは、言わないけれどね。 |
花帆 | はい……。 少し、スッキリしました……えへへ。 |
花帆 | ラブライブ!の本戦が、なにがなんだかわからないうちに終わったのって、 もったいなかったなあって……今は、思います。 |
花帆 | せっかく、あたしが花咲けるチャンスだったのになー、って。 |
梢 | そうね。 みんなで東京に行ったのに、観光する暇もなかったものね。 |
花帆 | ハッ……そ、それはそうですね! あたし、なんにも覚えてないです! |
梢 | ふふっ。 また来年、ね。 明日からの練習は、がんばれそう? |
花帆 | はい。 もう、大丈夫です。 本当に、ぜんぶ、梢センパイのおかげです。 |
梢 | それは、よかったわ。 |
梢 | きょうは、部屋でゆっくりするのよ。 |
花帆 | はい、せっかくなので、ずっとゴロゴロします! あっ、でもさやかちゃんみたいに少しは練習をした方が……? |
梢 | ふふっ、それは任せるわ。 いい加減あなたも、自己管理できるでしょう? |
花帆 | それはあんまり自信ないですけど! |
花帆 | 梢センパイは、寮には戻らないんですか? |
梢 | 私はまだ、少しやることがあるから。 それじゃあね。 |
花帆 | はい、おつかれさまです! |
花帆 | きょうは、どうしよう。 練習しようかな。 でも、配信もしたいな。 |
花帆 | 応援してくれた人に、ありがとうって、 ちゃんと言わなくっちゃ。 |
花帆 | って、あ! 紅茶のカップ、そのままにしてきちゃった! 梢センパイに片付けさせちゃう! |