……。

寒いでしょう、こんなところで。

そうかも。 どこなの、ここは？

屋上よ。
ていうか、この毛布はどこから持ってきたの？

それはこの毛布に聞いてみないと。

たぶん、さやかちゃんですよ。
綴理センパイが風邪を引かないようにって。

そっか。
ありがと、さや。

なんだか綴理センパイ、どよーんとしてますね……。

……そうね。

それで、どうしたの。
私はさやかさんみたいに、優しくはないわよ。

……よく、わからないんだ。

ちゃんとさやに、どういう気持ちなのか伝えようって、がんばったんだけど。
喉を通った端から崩れていくんだ。 ちょうど、今の雲みたいに。

それをそのまま、伝えればよかったんじゃない？ いつものように。

ラブライブ！に出られて、幸せだったんだ。

ええ。

さやが隣に立ってくれたんだ。
ボクはもう、他になにもいらないと思ってた。 なのに。

どうしてだろう。 ボクは、ぜんぜん満足できてないんだ。
これじゃあ、さやに嘘をついてたみたいじゃないか。

そんなの、だめだ。
だから、さやにだけは、まだ……言えない。

……そう、それで。

こずは、わかる？

難しいわね。 私は綴理じゃないから。

そうだよね。 こずがつづだったら……。
ふたりで雲を見上げてたかな。

去年の、あなたは。

このままラブライブ！本戦に出るわけにはいかないって言って、
ふたりで出場を諦めた。

けれど、今のような顔はしていなかったわ。

今年は、なにが違うのかしら。

楽しいよ。
去年が楽しくなかったわけじゃないけど、今年はもっと楽しい。

かほとるりがいて、めぐとこずがいて。
ボクの隣に、さやが立ってくれてる。

スクールアイドルになれたんだ。

だから……。

……だから？

だから、ボクは。
……あぁ、そっか。 そうなんだね。

蓮ノ空が、好きみたいだ。

なにかわかったみたいね。

うん。 ボクは……欲張りになっちゃったんだ…………。

えっ！？ さっきより落ち込んじゃいましたよ！？

蓮ノ空が好きだから、ボクにとって蓮ノ空がいちばんだから。
みんなにも、そう思ってほしかったんだ。

ボクが優勝できると思っていたのはきっと、
蓮ノ空がいちばんだっていう気持ちがあったからで。

それを届けられなかったから……
ボクは、悔しかったんだ。

自分の好きなものを、みんなにも好きになってほしい、ね。
まさかあなたが、そんなことを口にするなんて。

……おかしい？

いいえ、素敵だわ。

……そっか。 うん、よかった。
ボクは、さやに嘘をついてたわけじゃなかった。

あれ……でも、ボクは欲張りで……。
どうしよう。 どっちが悪いんだろう。

それこそ、さやかさんに聞いてみたら、どう？

……うん、そうする。
そうしたい。

ありがとう、こず。
かほも、話を聞いてくれて。

いえ、そんな。 あたしはなにも。

次はがんばろうね、こず。

……ええ、そうね。

綴理センパイも元気になってくれて、よかったですね。
さっすが梢センパイです。

これでみんな、明日からまた練習がんばれますよね。

ねえ、花帆さん。 もうちょっとだけ、付き合ってくれる？
まだ話したい人がいるの。

いいですけど……。

えっ？
それって、あたしのことですか？

部室に戻りましょう。