第8話『あの日のこころ、明日のこころ』
PART 4
綴理 | おぅ。 |
梢 | ……これは。 |
花帆 | 今の、すっごく良かったです! |
さやか | はい、以前よりずっと、息ぴったりって感じがしました! |
綴理 | ん。 これまででいちばん。 |
花帆 | ばっちりです! |
綴理 | ん。 ばっちり……まであと少し。 ばっちぃ、くらい。 |
さやか | それはむしろダメそうな感じが……。 |
梢 | ……私も。 |
梢 | ……できて、いたかしら。 |
花帆 | はい! すっごくかっこよかったですよ、梢センパイ!! |
さやか | 本当に良くなっています。 録画もしていますので、是非確認してください。 |
梢 | そう。 |
梢 | ……そうなのね。 |
花帆&さやか | ふふっ。 |
綴理 | 良い感じ。 このまま頑張ろう。 もうちょっと足りない感じもする。 |
梢 | そうね。 まだ完璧ではないはず。 しっかりあとで確認させて。 |
綴理 | ん。 でも、このままやれば大丈夫。 |
梢 | それから、花帆さんと村野さんの振り付けも考えないと。 |
さやか | あ、それなんですけど! |
梢 | うん? |
花帆 | あたしたち、自分の振り付けを考えてきたんです。 見てもらえませんか? |
梢 | えっ? ふたりで、考えたの? |
花帆&さやか | はい! |
花帆 | ふっふっふ。 驚きましたね、梢センパイ、綴理センパイ。 |
花帆 | 四人で頑張るって決めたんですから、 あたしたちにできることはあたしたちで頑張ります! |
花帆 | そういうことです! |
綴理 | ん。 かほすごい。 |
花帆 | やった! |
さやか | あ、あの……わ、わたしも。 |
綴理 | ん。 さやも。 |
さやか | はい! |
梢 | ……ふー。 |
梢 | ありがとう、ふたりとも。 あなたたちのおかげで、たくさん練習できるわね! |
花帆&さやか | はい! |
梢 | じゃあ、しっかり合わせて…… 撫子祭までに、必ず完成させましょう! |
梢 | 撫子祭を観に来る人たちに、 みっともないスクールアイドルクラブなんて見せられないわ! |
花帆&さやか&綴理 | おー! |
花帆&さやか&梢&綴理 | ……お? |
校内放送(沙知) | あー、二年の乙宗梢。 乙宗梢。 生徒会室まで来てください。 いじょー。 |
綴理 | ……なにしたの、こず。 |
さやか | なにかしちゃった前提ですか!? |
花帆 | そんな! あたしも一緒に謝りに行きますよ! |
梢 | なにもしていないし、ひとりで行きます! まったく、呼び出しくらいで騒ぎすぎよ。 |
花帆 | か、代わりに行ってきましょうか! |
梢 | どういうことなの。 大丈夫よ。 |
梢 | 綴理、少しの間ふたりの練習見てあげて。 |
綴理 | ん。 なんだろうね、呼び出し。 |
梢 | ……まあ、予想は付いているわ。 それじゃあ、あとで。 |
綴理 | せっかく気合入れたのにねー。 |
さやか | 一日居なくなるわけじゃないんですから! 乙宗先輩に迷惑をかけないためにも、今頑張りましょう! |
花帆 | ! そうだね! 綴理センパイ、あたしのこともよろしくお願いします! |
綴理 | ん。 もちろん。 じゃあ、こずが戻ってくるまで、軽くやろっか。 |
綴理 | ふたりとも、凄い。 |
花帆 | ど、どうですか……! これがあたしたちの、全力です……! |
綴理 | ん。 ほんとに感動した。 ふたりで振り付け考えたところも、それが凄くいいものなことも。 |
花帆 | はあ。 はあ。 ……えへへ、やったね、さやかちゃん。 |
さやか | あ、の……。 |
綴理 | なにかな。 ボクは嬉しいよ、本当に。 |
綴理 | ボクとこずのためって言って、 こんなに頑張ってくれる子たちが居ることが。 |
さやか | え、っと……なんですか急に……。 |
綴理 | 今見てて思ったんだ。 ふたりとも頑張ってるなあって。 |
さやか | 褒めてくださるのは嬉しい、ですけど……! あの……乙宗先輩が帰ってくるまで、軽くやる、という話は……。 |
綴理&花帆 | あ。 |
梢 | 綴理……なにをしたらこうなったの? |
綴理 | ごめん、嬉しくて舞い上がった。 ふたりとも、振り付け凄く良いよ。 |
梢 | そう。 それを私もしっかり見たかったのだけれど、 今から出来るか怪しいものね。 |
梢 | ……立てる? |
花帆 | ありがとうございますぅ……! ぜぇ、ぜぇ……大丈夫です、まだやれます……! |
さやか | すみません……この体たらくで……。 |
梢 | 気にしないで。 綴理が喜ぶくらい素敵なものだったのよ。 だから、ふたりは何も悪くないわ。 |
綴理 | ボクが悪いのか?? |
梢 | ……呼び出された私のせいかしらね。 |
花帆 | あ、呼び出し! 梢センパイ、大丈夫でしたか? |
梢 | ああ。 大したことじゃ、ないから。 |
綴理 | なんだったの? |
梢 | だから、大したことじゃないわ。 |
綴理 | 言えないの? |
さやか | ま、まあまあ、言いにくいこともありますよね? なにせ呼び出しですし、その……やらかされてしまったのでしょうか。 |
梢 | やらかされてしまっていません……!! |
梢 | はあ。 本当に気にしなくていいのに。 そうね、簡単に言うとーー。 |
花帆&さやか | スカウトー!? |
さやか | そ、それはつまり、別の学校に移るってことですか!? |
梢 | そういう誘いが来ただけよ? |
花帆 | こ、この世の終わりだー!! あたしはここで蕾のまま萎れるんだー!! |
梢 | 誘いが来ただけだと言っているでしょう? |
花帆 | 行っちゃやだあああ! |
梢 | 大丈夫だから! |
梢 | もう。 どこにも行ったりしないから大丈夫よ。 |
さやか | 本当に、その。 慌てなくて良いのでしょうか。 |
梢 | 私とスクールアイドルがやりたい、と言ってもらえたのは光栄だけれど…… 受けるか断るかは私次第だもの。 |
梢 | だから、誘いが来ただけでこんな風になる必要はないのよ。 |
さやか | そういうもの、ですか……。 あ、だから呼び出しの予想はついている、と? |
梢 | お祭りでお店から席を外したときに、 彼女たちからお手紙を渡されていたの。 |
梢 | だから、この話じゃないかと思っていただけよ。 |
花帆 | じゃ、じゃあ……梢センパイがどこかに行ったりは……? |
梢 | しないしない。 大丈夫大丈夫。 |
綴理 | ーー本当にそれでいいの? |
花帆&さやか | えっ? |
梢 | それでいい、というのは……どういうこと? |
綴理 | だから、本当に断っていいの? |
梢 | んん? |
梢 | それはつまり……私にスカウトの話を考えろ、ということ? |
綴理 | ちゃんと考えた? |
梢 | 考えるもなにもないわ。 |
梢 | 蓮ノ空から私が抜けるだなんて、あり得ないことよ。 抜けられた側の気持ちも知っているつもり。 |
梢 | 花帆さんを誘って今のスリーズブーケを作ったのも私。 |
梢 | そしてなにより、 部長としてこの部活を引っ張っていくって決めているもの。 |
綴理 | ……。 |
梢 | それに今更この学校を離れて新しい場所に入っても、 馴染めるかどうかも分からないし、 その学校のスクールアイドルとして胸を張れるかも分からない。 |
梢 | ほら、私がスカウトに乗る理由なんて、 最初から無いのよ。 |
綴理 | じゃあ聞きたいんだけど……スカウトしてきた学校のスクールアイドル部、 蓮ノ空とどっちが有名なの? |
梢 | ……。 |
梢 | 過去の実績ではなく現状の話をするなら、あちらの方が上ね。 全国大会常連で、去年も結果を出しているし……。 |
梢 | この子たちよ。 真ん中の子が、私に会いに来た子。 |
さやか | あっ、知ってます、このひとたち。 すごく揃ったパフォーマンス、っていうので有名なひとたちですよね? |
梢 | そうね。素直に凄いと思うわ。 |
梢 | 向こうのスクールアイドル部についてはそんな感じね。 ……それで? |
綴理 | つまり、 ラブライブ!優勝するためにはそっちの方が近いってことだ。 |
梢 | 綴理……なにが言いたいの? まるで私に出ていってほしいみたいじゃない。 |
綴理 | そういうことじゃないけど。 |
さやか | ちょ、ちょちょちょっと待ってください!! 綴理先輩だって、乙宗先輩に出て行ってほしいわけないじゃないですか!! |
綴理 | さや。 |
さやか | せっかく良い感じに練習成果が出てきているところですよ! は、初めての文化祭でのライブが楽しみです、わたし! |
花帆 | れ、練習しましょうよ、センパイ!! |
梢&綴理 | ……。 |
梢 | 分かったわ。 |
綴理 | ……じゃあ、やろうか。 |