第2話『ダメダメ⇒世界一!?』
PART 2
花帆 | みんなー!おはよー! |
えな | 花帆ちゃん、おはようー。 |
しいな | 毎日ライブやってて、すごいね。 |
花帆 | うん、ありがとう! みんなの前で歌うのって、すっごく楽しいんだよ。 |
びわこ | こないだは見に行けなくて、ごめんねえ。 |
花帆 | えっ、いーよいーよ! あたしが好きでやってるんだもん! |
びわこ | できれば、全通したかったんだけど、練習があって。 |
花帆 | 練習? |
えな | 実はわたしたち、合唱部に入ったんだ! |
花帆 | え、そうなの!? |
びわこ | 毎日ライブしている花帆ちゃんを見てたら、なにか始めたくなっちゃって。 花帆ちゃんの笑顔に、背中を押されたんだよ。 |
しいな | あんなに学校のみんなを楽しませようとがんばっているんだから、 わたしたちももうちょっと蓮ノ空のこと、好きになりたいなって思って。 |
花帆 | み、みんなー! コンクールとかあったら、ぜったい呼んでね! 駆けつけるからね! |
えな | 気が早いよ、花帆ちゃん。まだ入ったばかりなのに。 |
花帆 | あたしたちみんなで有名になって、蓮ノ空にショッピングモール誘致しようね! |
びわこ | その夢、まだ諦めてなかったんだ!? |
さやか | うーん、うーん……。 |
花帆 | さーやかちゃん。部活行こっ。 |
さやか | あ、はい。すみません、今準備しますね。 |
花帆 | どうかした? |
さやか | いえ……あ、そうだ、花帆さん。 わたしのスマホで、写真を一枚撮ってもらえますか? |
花帆 | え? うん、いいけど。 |
花帆 | はい、笑って笑って。フラワー! |
花帆 | どうぞ! |
さやか | ありがとうございます。 うん、いいですね。プロフィール写真は、これにしようと思います。 |
花帆 | プロフィール? なんの? |
さやか | はい、スクールアイドルのアプリの、なんですが。 |
花帆 | スクールアイドルのアプリ? |
さやか | わたしも、夕霧先輩に言われて、自分のチャンネルを作ったんですよ。 |
さやか | でもそこに載せる写真がなかなかうまく撮れず。 そもそも自分の写真を撮るのに、あまり慣れていないものでして……。 |
花帆 | ま、待って! チャンネルってなに? |
さやか | えっ? |
さやか | ええと、こういうのです。 |
花帆 | これって、さやかちゃんのチャンネル……? |
花帆 | え、誰でも作れるの?あたしでも? |
さやか | たぶん。 詳しくは知らないんですが、主に配信活動をするためのアプリだそうです。 |
さやか | ライブを配信したり、雑談や練習風景を配信して、 多くの人に自分を知ってもらえるそうで。 |
さやか | スクールアイドルを始めたばかりのわたしにとっては、 いい機会だと思って、始めてみようかと。 |
花帆 | なにそれ! 楽しそう! やりたい! やっていい!? |
さやか | きょ、興味があるなら、乙宗先輩にやり方を聞いてみると、 いいのではないでしょうか……! |
花帆 | わかった! さやかちゃんありがとう! いってくるね! |
さやか | あ、あの! わたしも行きますけど、部室! |
梢 | どの紅茶にしようかしら。 きょうもこの後ライブだから、喉にいいものがいいわね。 |
花帆 | 梢センパイ! スクールアイドルのアプリってなんですか!? |
梢 | きゃっ。 ど、どうしたの? そんな勢いで。 |
花帆 | さやかちゃんにちょっと聞いたんですけど、 なんだか楽しそうだったので、始めてみたいなーって思って! |
梢 | そ、そう。でも、日野下さんはまだライブも始めたばかりで、 新しいことを覚えるのは、大変じゃないかしら……? |
花帆 | えっ、やめたほうがいいですか…………? |
梢 | い、いえ、そういうわけじゃないのだけれど。 |
梢 | ……そうね、自分のライブを見直せば、 なにか新しい発見があるかもしれないわねえ。 |
梢 | わかったわ。 ライブまではまだ時間があるから、今、説明してあげる。 |
花帆 | やった! ありがとうございます! |
梢 | ……その前に、お茶をいれても構わないかしら? |
花帆 | はい、どうぞ! じゃなくて、あたしも手伝いますよー! |
梢 | というわけで。 |
梢 | これがスクールアイドルコネクト。みんなは通称として、スクコネとも呼ぶわ。 主にはスクールアイドルが、配信をするために使うアプリね。 |
梢 | 本当は、日野下さんがもう少し慣れた頃にお話ししようと思っていたのよ。 |
梢 | インストールしたら、スマホを貸してもらえる? |
花帆 | はい! |
梢 | ……ええと……。 |
花帆 | ……梢センパイ? |
梢 | ちょっと待っていてね、操作が複雑で……。 |
花帆 | えっ、梢センパイが手こずるようなものなんですか!? |
綴理 | 大丈夫だよ。こずは機械がちょっと苦手なだけだから。 |
梢 | あっ。 |
梢 | ……後輩に間違ったことを教えないように、綴理。 私に苦手なことなんてないわ。これは得意になる途中なの! |
綴理 | そして、認めようとしないんだ。 ほら、かほ、登録したよ。 |
花帆 | 綴理センパイのほうが機械苦手そうなのに! |
さやか | それは失礼じゃないですか花帆さん!? |
花帆 | 確かに!すみません! |
綴理 | ううん、いいよ。できることはできるんだ、ボク。 できないことはぜんぜんまったくできないんだけどね。 |
梢 | ……ありがとうね、綴理。 |
梢 | コホン……では、少し手こずってしまったけれど、 これで使えるようになったわ。 |
梢 | スクコネはね、近隣のライブや、イベントもチェックできるのだけれど、 メインはさっきも言った通り、配信機能よ。 |
さやか | 配信は、まだわたしもやったことないんですよね。 なんだか大変そうで……。 |
梢 | 大丈夫よ、そんなに難しいものじゃないわ。 そうね、だったら日野下さん、試しに動画を撮ってみましょう。 |
花帆&さやか | ええっ!? |
梢 | それじゃ、いくわね。 |
花帆 | あたしなにをすれば! |
梢 | まずは、簡単な自己紹介だけで、構わないわ。 3,2,1,スタート。 |
花帆 | あのっ、初めまして!蓮ノ空女学院、日野下花帆です! |
花帆 | まだスクールアイドルを始めたばっかりの新一年生ですけど、 みんなを笑顔でいーっぱいにしてみせちゃうから、 応援よろしくお願いします! |
花帆 | ぴーすぴーす、みんなで一緒に花咲こうねっ! |
綴理 | おー……。 |
さやか | か、花帆さん、すごいです! とってもかわいかったです! |
花帆 | えへへ、ほんと!?嬉しいなあ! |
花帆 | こんな感じで大丈夫ですか?梢センパイ! |
梢 | 驚いたわ。 ライブのときもそうだったけれど、あなたは本当に物怖じしないのね。 |
花帆 | えへへ、そうなんです! あたし楽しいと思ったことはなんでもできちゃうんです。 |
花帆 | それ以外はなんにもできないんですけど! |
梢 | そ、そう。 なるほど、モチベーションの管理が、いちばん大事なのね……。 |
花帆 | センパイ? |
梢 | いえ、こちらの話。 日野下さんは配信が向いてそうだわ。 |
花帆 | えーへへ。そうかもしれません! あたし、配信向いているかも! |
綴理 | スクコネのことで質問があったら、なんでもボクに聞いてね。 |
梢 | 大丈夫よ、ちゃんと答えられるから。 私だって先輩からしっかりと教わったもの。 |
綴理 | 確かに、みっちりとメモ取っていたね。 こずは勉強熱心でえらい。 |
梢 | ……あなたの言葉が皮肉じゃないことはわかっているけれど、 なんだか釈然としないわ。 |
さやか | あはは……。 |
花帆 | あたし、もしかして学校だけじゃなくて……。 全世界で、笑顔を咲かせることができちゃうってこと!? |
梢 | とりあえずは、学校内の人を笑顔にできるように、 ライブがんばりましょうね。 |
花帆 | ハッ!そうでした! あたし、がんばります! |
綴理 | まるで、稲光みたいな子だね。 |
梢 | ……そうね。 眩しくて、でもときどき目がチカチカしちゃうわ。 |
梢 | じゃなくて。 綴理、後で少し話があるのだけれど、いいかしら。 |
綴理 | ?いいけど……。 あんまり、怒らないであげてほしい。 |
梢 | 怒るだなんてそんな。 少し私が、迷っているだけ。相談したいことがあるの。 |
綴理 | そっかよかった。 ボク、こずに怒られるの、苦手だから。 |
梢 | あなたの話ではなくて、日野下さんの話だけれどね。 |