第12話『ずっと花咲く僕らの桜』
CODA3
- 小鈴
わっとっと……おっとっと……。
- 小鈴
よし、だいじょぶ。
いっぱい練習したんだ……よし! - 小鈴
さやか先輩! できましたー!
- さやか
待ってましたよ。
- さやか
……これは。
- 小鈴
はい。 徒町……いつか、いつかさやか先輩にちゃんと胸を張って
作れるものをと思って、実は毎日がんばって練習してました! - 小鈴
使うのたまごだけだから、簡単だと思ってたんですけど。
徒町、これも時間かかっちゃいました。 - さやか
こんなきれいなオムレツを作れるのは、本当にがんばった人だけなんですよ?
- 小鈴
えへへ、はい!
- さやか
わかってなさそう……。
- さやか
それでは、いただきます。
- 小鈴
はい! 召し上がってください!
- さやか
美味しい。
- 小鈴
やった!
- さやか
このオムレツは、小鈴さんそのものですね。
- 小鈴
……ん? え?
- さやか
大したことないだろうと思って突っ走るそのきらめきが、
どんなものよりも美しく映る。 - 小鈴
わ、わあ……。
ありがとうございます、さやか先輩! - 小鈴
そう言ってもらえるものを最後に作ることができて……よかった!
- さやか
はい。
……ごちそうさまでした。 - さやか
最後に本当に素敵な贈り物でした。
……もう、泣かないんですね。 - 小鈴
はい!
- 小鈴
だって……徒町、先輩になるんです。
さやか先輩みたいに、今度は、後輩を導くんです! - さやか
……そうですね。 そうでしたね。
- 小鈴
はい。
……えへへ。 - さやか
後輩を導くのは、すごく大変です。
- さやか
後輩に心配をかけて、たくさん不安にさせて、
困らせてしまうこともあるかもしれません。 - さやか
でもね。
それでも……信じてくれるんです。 - さやか
だから、いつでも、胸を張って……わたしは先輩なのだと、
あなたのまっすぐさを見せてあげてください。 - 小鈴
はい!
- さやか
バッジは、どのくらい埋まりましたか?
- 小鈴
あ、バッジですか!?
ちょ、ちょっと待ってくださいね! - さやか
もう、こんなに……。
- さやか
……わかってはいたことですが。
- さやか
埋まるそのときを……わたしが見ることはない。
- さやか
……来年度も、がんばってくださいね!
同じペースで進めないと、目標達成できませんよ! - 小鈴
は、はい!!
がんばります! - 小鈴
あ、でもさやか先輩!
- さやか
はい?
- 小鈴
全部埋めたら、いのいちばんにさやか先輩に見せますからね!!
だから……またいつか、です!! - さやか
っ。
- さやか
そうですね。
心から、楽しみにしていますよ。 - 吟子
花帆先輩、本当に大丈夫ですか?
- 吟子
来月からひとり暮らし、ちゃんとできます……?
- 吟子
ご飯だって作らなきゃですし、
お洗濯やお掃除だって自分でやらなきゃいけないんですよ……。 - 花帆
できるってば。
もー、そんなに心配なの? 吟子ちゃん。 - 吟子
そりゃそうですよ……。 もう花帆先輩の身の回りの面倒を見てくれる人は、
いなくなっちゃうんですからね。 - 吟子
朝だって起きれるかどうか心配ですし……友達に関しては、まあ、
花帆先輩のことですから、大丈夫だと思いますけど……。 - 花帆
……ねえ、吟子ちゃん。
- 花帆
アルバムツリーは完成して、離れていても一緒だって、
そう思えるようになった。 - 花帆
でもあたしは寂しがり屋だから、
きっとしばらくは寂しいと思うんだ。 - 花帆
だから……吟子ちゃんがよかったら、連絡してもいいかな?
- 吟子
そ、それは……。
- 吟子
……もちろん、です。
- 花帆
ふふふ。 ごめんね、吟子ちゃん。
ありがとね。 - 花帆
吟子ちゃんと出会えて、よかった。
あたしの高校生活は、吟子ちゃんのおかげで、こんなにも華やいだよ。 - 花帆
最後にひとつだけ、お願いしてもいいかな?
- 吟子
……なんですか?
- 花帆
あたしね、寮母さんにお願いして、花壇のひとつを借りてて……。
そのお花の面倒をね、誰かに見てもらわなくっちゃいけなくてさ。 - 花帆
園芸部の子に頼んではいるんだけど、よかったら吟子ちゃんにも、
時々様子を見てもらっていいかな? - 吟子
私……お花とか、花帆先輩のお手伝いでしか、
お世話したことありませんけど……。 - 花帆
枯らしてもいいんだよ。
なにかを育てた経験ってきっと、吟子ちゃんのためにもなると思うから。 - 吟子
……。
……ずるい、です。 - 花帆
え?
- 吟子
花帆先輩、最初から友達のつもりでいいって私に近づいて……。
- 吟子
でも結局、最後まで花帆先輩は……私にとって、先輩、でした。
- 花帆
そうかな?
あたし、先輩できてた? - 吟子
……これ以上、ないくらい。
- 花帆
えへへ、やったぁ。
- コメント
吟子が花帆の裾を掴みながら、まるで小さな子のように口を尖らせて、つぶやく。徐々にその気持ちが、高ぶっていく。
- 吟子
……私からも、連絡しますから。
- 花帆
うん、楽しみにしてる。
- 吟子
お花だって、完璧にお世話してみせます。
- 花帆
ムリはしないでね。
- 吟子
部長として、106期スクールアイドルクラブを盛り上げてみせます!
- 花帆
吟子ちゃんなら、きっとできるよ。
- 吟子
だから。
- 吟子
私のことは、できればでいいので、時々は、思い出してくださいね。
- 花帆
忘れないよぉ。
- 花帆
あたしの大好きな仲間で、後輩で、親友のこと。
- 花帆
ずっとずっと、忘れないよ。
離れていても、繋がっているんだから。 - 吟子
……はい。
- 吟子
ありがとうございました。
私の、先輩。 - 花帆
うんっ。