第12話『ずっと花咲く僕らの桜』
PART 8
- コメント
小鈴を追いかけてきた、セラス、吟子、姫芽、泉視点から。
- コメント
ここに小鈴が来たのは間違いないが、見失ってしまった。
- 吟子
小鈴ー!
- セラス
……いた!
- コメント
セラスが指さした方向。
- コメント
蓮ノ湖の水辺で、膝を抱えてうずくまっている小鈴の背中が見える。
- コメント
全員で駆け寄っていく。
- 姫芽
小鈴ちゃん!
- コメント
小鈴がびくっと震えて、目元を拭ってから振り返る。
- 小鈴
あ、みんな……。
- 小鈴
ご、ごめんね、変に飛び出して。
みんなびっくりしちゃったよね。 - 泉
あなたにびっくりさせられるのはいつものことさ。
- 小鈴
そ、それは褒められてるのかなあ。
あはは、よくわかんないや。 - 小鈴
すぐ戻るから、先に行っててくれないかな。
- 小鈴
徒町、ちょっと気が動転しちゃったというか、
やっぱり先輩たちに出会ってくれてありがとうなんて言われたら、 - 小鈴
ほんとうに、
ほんとうにもう終わりなんだなって思っちゃったっていうか。 - コメント
軽く事情を説明するだけのつもりが、思っていたことが口から全部出てしまい、ぼろぼろと涙を流し始める小鈴。
- セラス
小鈴先輩……。
- 小鈴
ご、ごめんね、勝手に出るの、困っちゃうねえ。
なかなか、その、止めるチャレンジ、うまくいかなくて。 - 吟子
いいよ、小鈴。
- コメント
吟子が、小鈴の両手をぎゅっと握る。
- 小鈴
ふぇ。
- 吟子
いいよ。 今は何を言ったって先輩たちを困らせたりしない。
吐き出すものは全部吐き出して。 涙は、そのうち勝手に止まるから。 - 小鈴
……ごめん。
- 吟子
謝らなくていいよ。
先に戻れなんて言わずに、話してくれれば。 - 小鈴
……何度もね。 がんばったんだ。
- 小鈴
アルバムを作るための写真を集めてる時も。
- 小鈴
先輩たちが卒業って言葉を口にした時も。
- 小鈴
……一緒に最後の思い出写真を撮ろうって言われた時も。
- 小鈴
乗り越えなきゃって。
何度も何度も、思ったんだぁ……! - コメント
小鈴はそのまま、吟子の胸元に顔を押し付けて泣く。
- 小鈴
でもダメなんだ……!! どうしたってダメなんだ!!
さやか先輩がいなくなることが、本当にいやだ!! - 小鈴
がんばったって笑えない!
卒業はお祝いするものなのに!! 『嫌だ』って気持ちしか出てこない!! - 小鈴
徒町には、さやか先輩の卒業をおめでとうって思う気持ちなんて、
どこにもないんだ!!! - 姫芽
……。
- コメント
姫芽が口元を抑えて、そっと自分の目元にこぼれる涙を拭う。
- 小鈴
もう一度!!もう一度一年生になりたい!!
やり直したい!!春の桜が咲くのと一緒に!! - 小鈴
徒町は、ここでいかだを作って!!
もう一度、先輩たちと会うところからやり直したい!! - コメント
ぎゅっと小鈴を抱きしめている吟子の顔がここで映る。
- コメント
吟子の目からぽろぽろと流れる涙は、みんなに背を向けて、小鈴を抱きしめている状態で、誰にも見えない。
- コメント
吟子は気丈に耐えている。
- 小鈴
……無理だよぉ。
- コメント
ぽつりと呟かれる小鈴のつぶやきは、姫芽と吟子の中にもある気持ち。
- コメント
どさっと、吟子の胸元からも崩れ落ちるように、小鈴が膝をつく。
- 小鈴
DOLLCHESTRAは……かっこよくて、すごいユニットなんだ……。
- 小鈴
綴理先輩と、さやか先輩が、
ふたりで、ほんとうに、ほんとうにあこがれた……。 - 小鈴
徒町がひとり残ってどうしろって、いうんだ……。
- 姫芽
小鈴ちゃん……。
- 姫芽
そうだね……そうだよね……。
大好きで入ったユニットを……背負うことになる……。 - 吟子
私だって……寂しいけど……!
- コメント
吟子も目に涙を溜めながら話す。
- 吟子
私たちはそれでも、受け継いで、進んでいかなきゃ、いけなくて……。
- 小鈴
わかってる……わかってるんだ……。
でも……つらいよぉ……。 時間……止まらないよぉ……。 - コメント
泉の横に立っていたセラスが、一歩小鈴の方へと歩みを進める。
- コメント
小鈴の涙にあてられて、セラスも涙目。
- セラス
小鈴先輩! わたしも、寂しいです……!
- セラス
病院から先に退院しちゃったときみたいに……また先に、
花ちゃんがいなくなっちゃう……。 - セラス
さやか先輩とも、瑠璃乃先輩とも、この一年で、すごく仲良くなれて……!
なのに、別れなきゃいけなくて……つらいです……。 - 小鈴
セラス、ちゃん……。
- セラス
先輩たちのやり取り、ずっと大好きで……。
ずっとずっと、ユニットの仲良い姿も、見てたくって……。 - セラス
だけど!
- セラス
わたしは……小鈴先輩が一年生に戻るのは、嫌です!
だってわたしだって、小鈴先輩のこと、大好きだから! - セラス
小鈴先輩とも、未来に向かいたいって、思ってるから……!
- 小鈴
未来……。
- コメント
寂しさをこたえながら、一生懸命自分を励まそうとしてくれているセラスの想いに目を潤ませる小鈴。
- セラス
Edel Noteだって、今年いっぱいで解散です……!
でも、だけど! - セラス
来年からはまた、楽しいことがいっぱいいっぱい、待ってるんだって!
そう、思いたいです……わたしは……! - セラス
うううう……!
でも、寂しい……! 寂しいよ~~~~!! - コメント
わんわんと泣き始めるセラス。
- セラス
うわあぁぁぁぁぁぁぁぁん!!
- 吟子
ちょ、ちょっと! なんであんたがいちばん泣くん!
- コメント
涙目になりながら突っ込む吟子。
- 姫芽
いいこと言ってたのにぃ~。
- 小鈴
ううう……セラスちゃん……。
- コメント
小鈴がセラスを抱きしめる。
- 小鈴
セラスちゃん~~~~~~……!
- セラス
小鈴先輩ぃ~~~~~~~!
- コメント
抱き合って泣きじゃくるふたり。
- コメント
そんな素直に感情を表す彼女たちを見て、泉も胸に手を当てる。
- 泉
……なるほど、これが別れの喪失感、か。
- 泉
胸を刺す甘い痛み……。
私はこんな想いすらも、今まで、取りこぼしてきたんだな……。 - コメント
一方、吟子と姫芽。吟子は泣きじゃくるセラスを見つめながら、自分のことよりも、泣きじゃくる下級生が安心して過ごせる未来を作りたいと思う。
- 吟子
……。 ねえ、姫芽。
- 姫芽
ん~?
- 吟子
私、やりたいことができた。
- コメント
姫芽、吟子の肩に自分の頭をもたげる。
- 姫芽
……応援するよ~。
- コメント
吟子、まだ目に涙をためたまま、くすっと笑う。
- 吟子
まだ、なにも聞いてないのに。
- コメント
姫芽が優しく微笑むのであった。
- 姫芽
わかるよ、吟子ちゃんのことなら。