第11話『みんなで、花咲きたい!』
PART 6
- 吟子
まさか私が事務作業に忙殺されてる間に、そんなことがあったなんて……。
- 花帆
うん! それでね、すごいんだよさやかちゃん!
- 吟子
いや、まあ、さやか先輩がすごいのは、
もうじゅうぶんわかってますけど……。 - 吟子
っていうか、花帆先輩のほうは、進路、大丈夫なんですかー?
- 花帆
大学には合格したよ!
成績はギリギリだったかもだけど……! - 花帆
でも、面接でいっぱいアピールしたから!
高校生活で打ち込んだこととか、がんばってきたこととか! - 吟子
合格したのは知ってますけど……。
- 花帆
吟子ちゃん、いちばんにお祝いしてくれたもんね。
ネットでの合格発表も、一緒に見てくれたし。 - 吟子
そ、それは!
なんか落ち着かなかったからです! 私が! - 花帆
あはは、ありがと、吟子ちゃん。
- 花帆
まあ、大学でやろうと思ってることもいろいろあるけど……でもひとまずは、
『トリプル・フラワー・大作戦』の、3本目のお花をがんばらなくっちゃ。 - 吟子
ライブ……ですね。
- 花帆
うん。
- 花帆
見て、吟子ちゃん。
- 吟子
これって……。
- 花帆
『私も花帆ちゃんみたいに花咲きたいです』
『がんばらなきゃって思いました』 『挫けずに、夢を追いかけたいです』 - 花帆
広実ちゃんのとこにも、いっぱいメッセージが届いてるみたいなんだ。
- 花帆
これって、あたしの今やってる『トリプル・フラワー・大作戦』が、
順調に実を結んでる証拠だよね。 - 花帆
だから、この作戦を締めくくるために……。
あたし、新しい曲を、作るつもり! - 吟子
えっ……新曲ですか……!?
- 花帆
うん!
- 花帆
あたしはこの3年間で花咲けました。 そして、3年間がんばれば、
きっとみんな花咲けるんだよって、そういう意味を込めた新曲。 - 花帆
テレビでたくさんの人に花咲いた姿を見せて、
配信ではあたしたちの軌跡を振り返ってきた。 - 花帆
だから、最後はライブで新曲を披露するんだ!
華々しくて、雅やかで、聞いた人が誰でも憧れちゃうような……。 - 花帆
そんな曲があれば、より強く想いを届けることができるって、そう思うから!
- 吟子
なるほど……。
- 吟子
……あれ? ってことは、このバスはどこに向かってるんですか?
私はてっきり、お外で練習するものとばかり……。 - 花帆
それはね。
- 花帆
ズバリーー山籠もりだよ!
- 吟子
なんでなん!?
- 泉
さて、もう少しで到着するみたいだよ。
- セラス
はぁ、はぁ……。
山道、しんど……! - 泉
がんばれがんばれ。
- 泉
花帆先輩は、どうやら『トリプル・フラワー・大作戦』の締めくくりの
ライブイベントを成功させるために、
去年の梢先輩と同じ特訓を行っているらしい。 - 泉
吟子も、それに付き合わされているようだ。
- セラス
わー……。 過酷だぁ。
- 泉
……ふふふ。きれいに花咲いた姿を見せるために、
見えないところでひたすらに努力を重ねる、か。 - 泉
それそのものが、きれいな姿だと思うよ、私はね。
- セラス
泉って。
- セラス
大好きだよね、何気に花ちゃんのこと。
- 泉
まあ、蓮ノ空に来た当初の目的は、花帆先輩がいたから、だったからね。
- 泉
光に向かって真っすぐに手を伸ばすあの姿は、憧れるさ。
夢をもたない……あるいは、諦めていた者にとっては、ね。 - 泉
ただ……。
- セラス
うん?
- 泉
いや、なんでもない。 その光がどれだけ多くの人を救うのか、
今は楽しみにしていようじゃないか。 - 泉
私たちも、やるべきことをやりながら、ね。
- セラス
くっ……。
- 泉
セラス?
- セラス
わたしの泉がわたしの花ちゃんを褒めてるっていう、
わたしがいちばんドヤれそうなシチュエーションなのに、
そういう気持ちにならない……! どうして……!? - 泉
……さあ?
- セラス
こんなの、ダブル浮気だよ!
- 泉
残念ながら、世界はあなたを中心に回っているわけじゃないんだ。
- 泉
やれやれ……。
……うん? - 花帆
うう……。
- 泉
……花帆先輩?
- セラス
えっ……花ちゃん!?
- セラス
どうしたの!? ワイバーンにやられたの!?
大丈夫!? - 吟子
はぁ、はぁ……。
花帆先輩、がんばりすぎ……って。 - 泉
やあ。
ずいぶんと厳しい修行をしているみたいじゃないか。 - セラス
吟子先輩まで、ボロボロに……!
- 吟子
私はただの付き添いっていうか……。
ほんとにがんばってるのは、花帆先輩なんだけど……。 - 泉
ふむ……。
- 泉
なんだか面白いことになっているみたいだね。
- 泉
そうか、今から新曲を。
そのために自分を追い込むつもりで、山寺にこもっているのか。 - 花帆
うん。
今週末のライブが、やっぱり勝負だと思うから。 - コメント
ちらりと泉が吟子を見やる。
- 泉
……完成するのなら、もちろんそれは楽しみだけれど……。
- 吟子
ライブはもう週末。
今から曲を作って練習する時間があるのか、って話だよね。 - 泉
……そうだね。
- セラス
確かに!
さすがにムリだよ花ちゃん! - 泉
花帆先輩の作曲技術は、目まぐるしい速度で向上している。
普段の曲作りなら、確かに、やってできないことはないかもしれない。 - 泉
だが、フュージョンクラストを作るために、私は一か月を要した。
- 泉
今回の曲は、聞く限りあなたの集大成。 3年間を詰め込んだ曲のようだ。
誰だってみんな、自分の心に潜るためには、時間がかかる。 - 泉
その深度が深ければ、なおさら。
- 吟子
……泉に言われるのはなんか悔しいけど、私もそう思う。
花帆先輩。 - セラス
15分で作ったのどぐろの歌とは、違うんだよ!
- 吟子
それはほんとにそう。
- 花帆
……そうだね。
- 花帆
確かに、みんなの言う通りだと思う。
- 花帆
あたしも今年、曲をいっぱい作ってきて、自分にできることも、
できないこともわかってきたから。 - 花帆
それでも、やらなきゃ。
こうしてる今もきっと、膝を抱えてる子がいるんだから。 - 花帆
がんばって、がんばって、花咲いて。
そうしたらきっと、とても素敵な景色が待ってるって。 - 花帆
胸の中に咲いたお花は、いつだって自分に勇気をくれて、
自分が一歩を踏み出すための力になってくれるんだって。 - 花帆
だからみんな、花咲くことを目指して、がんばろう、って、そう言いたい。
- 花帆
そのために、曲を作って、歌で表現して、みんなを励ましたいんだ!
- セラス
花ちゃん……。
- 泉
……あなたは、不思議な人だね。
- 花帆
え?
- 泉
初めてあなたと言葉を交わしたのは、
まだ私たちが瑞河の生徒だった頃。 - 泉
自分たちの不利になるのも構わず、
セラスをラブライブ!のステージにあげるため、尽力してくれた。 - 泉
最初あなたのことを、さぞかし立派な人物なのだろうなと思ったんだ。
- セラス
花ちゃんは立派だよ!
- 泉
ああ。
でも、蓮ノ空に入学してから、その印象は、少しずつ変わっていった。 - 泉
あなたは私が思っているよりもはるかに……俗物だった。
- 花帆
えっ!?
- 吟子
ぷっ。
- セラス
泉!?
- 泉
寝るも好きだし、食べるのも大好きで、楽しいことには目がなくて、
勉強を嫌がっていて。 - 泉
だから不思議だったんだ。
あなたのような人物が『人を花咲かせる』という夢を掲げていたのが。 - 泉
でも、長い間、行動を共にして、わかったよ。
- 泉
あなたにとっては、他人を花咲かせることそのものが、
自分の情熱……欲望なのだと。 - 花帆
それは……うん。
泉ちゃんの言う通りだと思う。 - 花帆
これはね、あたしがやりたいからやってることなんだ。
- 泉
もちろん『誰かのために』という想いはウソじゃないだろう。
だけれどあなたの原初の願いは、自分のためだ。 違うかな? - 花帆
……泉ちゃん。
- 泉
改めて思うよ。 数々のお姫様に手を伸ばしてきた私も、
こんな人間は見たことがない、ってね。 - セラス
ちょっと泉。
お寺だからって、問答みたいなことして花ちゃんを困らせないでよ。 - セラス
花ちゃんのおかげでわたしたちが助けられたのは、事実でしょ。
- 泉
それはもちろんそうだ。
すまない、責めているつもりはないんだ。 ただ、興味深くてね。 - 吟子
……泉のツボは、相変わらずよくわからないけど。
でも、花帆先輩がそんな立派な人じゃないっていうのは、その通り。 - 花帆
吟子ちゃんまで。
- 花帆
そうだね。 今もこうして、みんなに助けてもらってる。
じゃなかったらあたし、いつまでも花咲けないままだった。 - 花帆
……そっか、あたし……。
- 花帆
花咲くってどういう気持ちなのか、伝えるためには……。
花咲くってなんなのか、その答えを、ちゃんと見つけなきゃいけないんだ……! - 花帆
うん、わかった! どういう曲を作ればいいか、イメージできたよ!
ありがとうね、みんな! - 泉
……そうか、それはよかった。
- セラス
でも……。
- 吟子
……まあ、大丈夫でしょ。
- セラス
吟子先輩……?
- 吟子
なんだかんだ今までずっと……こういう顔をしてるときの花帆先輩は、
壁を乗り越えてきたわけだし。 今回もきっと、大丈夫だよ。 - セラス
トリプル浮気…………?
- 吟子
なんの話!?