第9話『ALL Link to YOU』
PART 8
- 吟子
……そんなことが。
- 花帆
うん……。
……話を聞いてくれて、ありがとね、吟子ちゃん。 - 花帆
これぐらいで挫けちゃ、だめだよね……。
ぜんぶの人の願いを叶えることが、できなくなっても……。 - 花帆
それでも、今できることを、精一杯がんばるしか、ないもんね……。
- 吟子
……。
- 吟子
花帆先輩が、夢を潰した……。
- 吟子
私、ちょっと行ってくる。
- 花帆
……え?
- 花帆
ぎ、吟子ちゃん?
- 吟子
そんな好き勝手言われて、黙ってらんないよ。
- 吟子
花帆先輩がどんな想いで、今まで……!
- 花帆
ま、待って!
- 花帆
でも、あたしが自分勝手だったのは、本当だし……。
- 吟子
今まで、何度も言ってきたよね。
私は、花帆先輩に救われた、って。 - 吟子
花帆先輩のおかげで、夢を見つけられた。
芸楽部のことも、Bloom Daysのことだって、そう。 - 吟子
先輩のことを、よく知らない人に、言ってほしくない。
- 花帆
よく知らないなんて、そんな。
- 吟子
だって、悔しいんやもん!
- 花帆
吟子ちゃん……。
- 吟子
花帆先輩がそんな風に言われるの……!
自分のことより、よっぽど……! - 花帆
……ごめんね。
ありがとうね、吟子ちゃん。 - 花帆
でも、あの子に言われて、あたしもわかっちゃったんだ。
- 花帆
あたしも一緒なんだ、って。
- 花帆
あたしも、きっと……優勝できなかったら……
梢センパイを優勝させられなかったら、後悔してた、って……! - 花帆
あたしは、自分を許せなかった……!
- 吟子
……違うよ。
- 吟子
違う。
- 花帆
……え?
- 吟子
ケンカしたよね、去年のラブライブ!決勝大会前に。
- 吟子
優勝できなければ意味がないって言った花帆先輩に、
そんなの間違ってる、って。 - 吟子
花帆先輩があのときのままだったら、言う通りだったかもしれないけど。
今はもう、違う。 - 吟子
この一年、誰よりも花帆先輩のそばにいた私が、言うよ。
- 吟子
花帆先輩はラブライブ!に優勝できなくても、誰かを恨んだり、
後悔なんてしない。 そんなもしもは、ありえないよ。 - 花帆
……どうして? 吟子ちゃん。
あたしは、そんなに強くなんて……。 - 吟子
知ってる。
- 吟子
でも、花帆先輩は、ひとりじゃないから。
- 吟子
私が、いるから。
- 吟子
花帆先輩がそんなことになってたら、引っ叩いてでも正気に戻すよ。
私と過ごす最後の一年が、そんなんでいいの? って。 - 吟子
花帆先輩にとって、梢先輩が恩人なのは、わかってる。
私にとっても大事な人だよ。 だけど、花帆先輩の後輩は、私だから。 - 吟子
花帆先輩のそばには、私がいる。 何度ケンカしたって、絶対に、
花帆先輩の手を、離さない。 離してやらないから。 - 花帆
吟子ちゃん……。
- 吟子
私は、いつだって花帆先輩の後を追いかけていくだけの後輩じゃ、ないよ。
わかる? これだって『繋がる力』でしょ。 - 吟子
芸楽部に憧れてた私をスクールアイドルクラブに引き戻してくれたのが、
花帆先輩なら。 - 吟子
間違った方向に進もうとする先輩を引き留めるのだって、そうだよ。
- 吟子
わかるでしょ?
想いはぜんぶ、繋がってるんだよ。 - 吟子
私が生まれて、伝統を好きになって、おばあちゃんの母校に入学して、
そして、花帆先輩に出会ったみたいに。 - 吟子
人はひとりになんて、なれないんだから。
- 花帆
……うん。
- 花帆
想いはぜんぶ、繋がってるんだね……。
- 吟子
そうだよ。
私がこうなったのだって、花帆先輩のせいなんだから。 - 吟子
責任……取らせるから。
- 花帆
……え?
- 吟子
いや、まあ、それは後でね!
- 吟子
とにかく! 花帆先輩がムリなら、私が行くから!
私は花帆先輩ほど、優しくないからね! - 花帆
吟子ちゃん……。
ほんとに、大きくなったね。 - 吟子
……私はずっと、花帆先輩より身長高いけど?
- 花帆
そうじゃなくて。
- 花帆
吟子ちゃんに初めて会ったとき、思ったんだ。
あたしはきっと、この子とスクールアイドルをやるんだ、って。 - 吟子
……なにそれ。
運命、みたいな? - 花帆
どっちかっていうと、あたしの願望、かも。
- 吟子
……だからあんなに、強引だったんだ。
- 花帆
あはは……。
- 花帆
吟子ちゃん、ほんとにありがとう。
- 花帆
そんなに言ってもらえて、あたしは、幸せ者だ。
- 花帆
あたしはなにもなくて蓮ノ空にやってきたから……
最初からやりたいことがあって、夢に向かって突き進んでいく吟子ちゃんを、
ずっと、きれいだなって思ってたんだ。 - 吟子
う、うん……。
- 吟子
でも、花帆先輩だって……子どもの頃から病気がちで、
あんまり遊んだりできなかったから。 - 吟子
だから今、あれもやりたいこれもやりたいって
想像してたことが、花帆先輩のパワーに繋がってるんでしょ。 - 花帆
そう信じられるようになったのは、たぶん、吟子ちゃんのおかげだよ。
- 花帆
吟子ちゃんが、過去の自分を肯定して、想いを未来に届けることの正しさを、
教えてくれたから。 - 花帆
吟子ちゃんに出会えて、よかった。
- 花帆
だから、あたし。
- 花帆
やっぱり、あたしがやりたい。
- 花帆
あの子には、あたしがもう一度、話しに行く。
伝えたい想いが、あるから。 - 吟子
また、傷つくかもしれないよ。
- 花帆
そうだね。
- 吟子
話したって、わかってもらえないかもしれないよ。
- 花帆
でも、いいんだ。
- 花帆
だって、あたしがそうしたいって、決めたんだから。
- 花帆
『すべての人の夢を叶えるステージ』を、作りたいって!
- 吟子
……そう言うと思った。
- 吟子
ま、だいたい、花帆先輩が『繋がる力』を自分のために使ってるだなんて、
そんなの言いすぎだよ。 - 吟子
花帆先輩は、そこまで大した人じゃないし。
- 花帆
えへへ……そうかな。
- 吟子
うん。 だからあれは、みんなの総意。
みんなが動くのは、みんなの意思だよ。 - 吟子
なにもかも花帆先輩が決めるなんて、そんなの無理に決まってるんだから。
- 吟子
みんな、花帆先輩の見た夢を一緒に見るのが、好きなだけ。
- 吟子
それで?
- 吟子
なにか思いついたんでしょ。
- 花帆
あ……。
うん! - 花帆
吟子ちゃんが言ってくれたでしょ。
『想いはぜんぶ繋がってる』って。 - 花帆
だったら、あの子だって、そうだよ。
- 花帆
人はひとりになんて、なれない。
繋がってるからきっと、あれだけ強い想いをもってるんだ。 - 吟子
……っていうと?
- 花帆
思い出したんだ。
新潟県立晴里高校。 - 花帆
ねえ、吟子ちゃん。
頼みたいことが、あるんだけど。 - 吟子
はいはい。
- 吟子
人手はいりますか? 花帆部長。
- 花帆
うんっ!
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部員が部室に集まってくる。そんなみんなの前で力説する花帆。
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全員で一斉に紙をひっくり返す。新潟県立晴里高校の反対署名を探す、という描写。
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それからみんなに手を振って、花帆が駆け出す。
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駆け出す花帆。夜の校舎を飛び出してゆく。