第7話『わがまま色の存在証明』
PART 1
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まず、面談室前の廊下が映る。
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面談室の看板(教室の前に下がっているようなもの)が映る。
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がらがらがら、と扉が開く音がして、さやかが出てくる。
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扉の方へ向き直り、一礼。
- さやか
ありがとうございました。
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それから颯爽と歩き始める。
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暗転。いったんシーンを切る。ここで沙知と合流したのだということをのちに明かすための伏線。
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さやかが沙知と話したあと。
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さやかは廊下を部室に向かって進んでいる。
- さやか
さて、と。 部活に向かわなくては。
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横から花帆と瑠璃乃が合流。楽しそうに。
- 花帆
やっほーさやかちゃん。 意外と早かったね。
- さやか
おふたりとも待ってくれていたんですか?
- 瑠璃乃
そりゃまあ、どうせこのあと一緒に部活だし。
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さやかの脇腹を肘で小突くように、ノリノリで問いかける花帆。
- 花帆
で、で、でー、さやかちゃんの進路相談はどうだったー?
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困った顔をしてから、当然のことのように言う。
- さやか
そんなテンションで聞くことですか???
- さやか
わたしの進路は変わっていませんよ。
- 瑠璃乃
進路決めたって言ってたっけ。
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さやか、きょとんとして、当然のことのように語る。
- さやか
言ってませんでしたか。 卒業後は大学進学です。
- さやか
スクールアイドルとしての経験は、
これからのフィギュアスケートに活かしたいと。 - 花帆
そっかー。 ちゃんと決まってて、相変わらずさやかちゃんは立派だなー。
- さやか
立派というか。
この時期には基本的に進路なんて決まっているものじゃないですか。 - さやか
なぜ目を逸らすんです????
- 花帆
いやあ。
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ふたりのそっぽ向いたままの照れ笑いに、さやかはびっくり。
- 瑠璃乃
へへへ。
- さやか
まさか、三年生にもなってまったく進路を考えていないんですか!?
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そのさやかのツッコミに、一斉にさやかの方へ振り向く花帆と瑠璃乃。
- 花帆&瑠璃乃
まったくってわけじゃないよ!?
- 花帆
やりたいことはたくさんあるもん!
だから大学には行く! - 花帆
でも、大学でまたやりたいこと増えちゃうだろうし、
これがやりたいんですって今言うのが難しいっていうか! - 瑠璃乃
ルリはその、まだ悩んでることがあって。 たぶん大学には行かないけど。
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遠い目をして、真面目な顔で。
- 瑠璃乃
めぐちゃん追いかけて、
一緒に世界中を夢中にする……で、本当に良いのかなって。 - 花帆
え、ダメなの!?
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困ったように笑う瑠璃乃。
- 瑠璃乃
ダメではないとは、思う。 だから悩んでるんだよねえ。
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さやかはため息。
- さやか
おふたりの悩みは分かりましたが、もう三年の10月ですよ……?
- 瑠璃乃
ルリだって分かってらい!
- 花帆
じゃあ逆になんでさやかちゃんはそんなにすぱっと決まったの?
- さやか
えっ?
- 瑠璃乃
そうそう! 天下に、全国にその名が轟くさやかちゃんなら、
色んなところから声かかってそうなのに! - さやか
金沢の一般生徒ですよ!
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そう困り顔でツッコミを入れてから、さやかは冷静になる。
- さやか
まあ確かに瑠璃乃さんの言う通り、いくつか声をかけていただきました。
- さやか
それこそフィギュアやスクールアイドルと、直接関係のないところからも。
- さやか
でもやっぱり、ここまで続けてきたフィギュアが、
なんだかんだで向いていると思うんですよ。 - さやか
みなさんも、たくさん期待してくれますしね。
- 花帆
期待、か……そう言われると、さやかちゃんらしいかも。
- さやか
そういうわけなので、わたしの進路はそんな感じです、が。
問題はおふたりの方ですね。 - 花帆&瑠璃乃
うぐ。
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さやか、やれやれと首を振って。
- さやか
仕方ありません。
これからしばらく、1日のどこかに将来のことを考える時間を設けましょう。 - さやか
わたしも付き合いますから。
- 花帆
ええ!?
- 瑠璃乃
友達にやってもらうことじゃないよぉ……。 いいよぉ。
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腰に手を当てるさやかで〆。
- さやか
よくありません! 単位が足りていないわけでもありませんし、
半年後には必ず卒業するんです。
ちゃんと進路のことは考えてくださいね! - コメント
さやか、トレーニングウェアに着替えて走っている。
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今日の部活は、進路相談があったこともあり、三年生は遅れて合流する流れ。
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さやかはやれやれといった表情。
- さやか
まったく。 進路相談なんて二年生の頭から何度もあったでしょうに。
- さやか
もしかしたらあのふたりより、
今の二年生の方がちゃんと考えているのでは……? - さやか
小鈴さんの将来とか……どんな風になるのか、楽しみだな……。
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ふふ、と微笑んでから、我に返る。
- さやか
っと、いけないいけない。
ただでさえ今日は遅れてるんだし、急がないと。 - さやか
小鈴さーん、すみません遅れましたー……。
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たったった、と走っていった先で、さやかは足を止める。思わず、と言った感じでうめくように首を傾げるさやか。
- さやか
ええ?
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カメラが小鈴に映る。小鈴、中庭にうずくまっている。
- 小鈴
しょぼーん。
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さやかが小鈴のもとへ。
- さやか
ど、どうしたんですか小鈴さん!
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小鈴、顔だけ上げる。寂しそう。
- 小鈴
あ、さやか先輩……。
三年生の進路相談、終わったんですか? - さやか
え、ええ。
そんなことより、何がどうしてそんなにしょぼくれているんですか。 - 小鈴
うう。 徒町の進路には何もない……。
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顔をうずめたまま、小鈴は語る。
- さやか
ここにも進路を何も考えていない人が!?
でもあれ? 今月、二年生の進路相談はまだ先ですよね? - 小鈴
今日は先輩たちが進路相談だから、徒町たちもそういう話題になりまして。
- 小鈴
姫芽ちゃんも吟子ちゃんも、将来やることがすっごいはっきりしてるのに、
徒町だけ何も思いつかなくて……。 - 小鈴
もう二年生の10月なのに、こんなことでいいのかなって……!
- さやか
小鈴さんは十分立派ですよ……。
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苦悩する小鈴に、なんだか生暖かいものを見る目のさやか。
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なんて立派なんだ。いや、ふつうはこうあるべきだよな……と同級生ふたりを思い浮かべる。
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小鈴、ばっと顔を上げる。
- 小鈴
そんなことないです!
姫芽ちゃんと吟子ちゃんの方がとっても立派です! - 小鈴
泉ちゃんも、やろうと思えばなんでもできるってさらっと言ってて、
徒町は、徒町は……! - さやか
小鈴さん。
- さやか
そうやって真剣に将来のことを考えるだけで十分立派です、
というのはいったん置いといて。 - さやか
気づいていますか。
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そう言ってさやかは小鈴に手を差し伸べる。
- さやか
一年前の小鈴さんだったら、
同級生と比べて自分が足りないところがあるということで、
こんなに凹まなかったと思います。 - さやか
それは紛れもない成長ではないですか。
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言われてみれば、と目を丸くする小鈴。
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小鈴が手を取ると、さやかが立ち上がらせる。
- 小鈴
!
- さやか
それに、こうして悩みを打ち明けてくれたのがわたしは嬉しいです。
- さやか
そして聞かせてもらえた以上……あなたの先輩として、
できることはなんでもしますから。 - さやか
一緒に考えていきましょう。
- 小鈴
先輩……! 徒町、嬉しいです!
さやか先輩がいてくれるなら、徒町が心配することはなにもないんですね! - さやか
え? ん? まあ、はい!
- 小鈴
決めました!!
- さやか
もうですか?
- 小鈴
はい! さやか先輩、徒町の進路決めてください!!
- さやか
……。
- さやか
……はい?
- 小鈴
どんな進路でもやってやります、ちぇすとー!
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なんでもこい、とテンション高めの小鈴に対して、さやかは真っ当に怒るツッコミ。
- さやか
それは自分で決めなきゃ意味ないんですよ!?
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さやかが言っていた、「進路を考える会」がマジで始まっている。
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そんな中で、小鈴の話題になったというイメージ。
- 瑠璃乃
ふーん。
小鈴ちゃんが同級生に置いていかれて悩んでた、ねえ。 - コメント
小鈴ちゃんもちゃんと考えていてえらいなー、というテンションの瑠璃乃の横から、花帆がひそひそと瑠璃乃に話しかける。
- 花帆
瑠璃乃ちゃん瑠璃乃ちゃん。 これは当てつけだよ。
あたしたちより一年も下の後輩も、ちゃんと将来に悩んでいますよ、っていう。 - 瑠璃乃
まじかよ。
さやかちゃん、いつの間にそんなやり口を……! - コメント
さやかちゃんやるぅ、とニヤニヤした花帆と、さやかにドン引きする瑠璃乃。
- さやか
違いますが!?
- さやか
むしろこうやって将来を考える時間を取ったからこそ、
おふたりにも何か意見があればと思って……。 - 花帆
そっか、じゃあほんとに小鈴ちゃんも悩んでるんだ。
- さやか
信じてなかったんですか!?
- 花帆
あはは、冗談だよ冗談。
んー……そのうち決まるよーって言っちゃダメだよねえ。 - コメント
ふむー、と考え込む花帆に、今度は瑠璃乃が冗談交じりに言う。
- 瑠璃乃
実際にちゃんと決まってない人たちがいるしねえ。
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花帆、瑠璃乃に振り向いてから、ふたりで笑い合う。
- 花帆&瑠璃乃
あははっ。
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さやかが頭痛を耐えるように眉間を押さえる。
- 花帆
でもさ。 たとえばなんだけど、吟子ちゃんが将来やりたいことはさ。
元々したかったことを突き詰めた結果生まれたものだと思うんだ。 - 瑠璃乃
Bloom Daysの演説、すっごく良かったもんね。
- 瑠璃乃
そーゆー意味では、姫芽も同じかも。
大好きなことを貫くって決めてるから、将来にも迷わないというか。 - 花帆
ふたりはそもそも入部時点から、好きなもの、
やりたいことが固まってたもんねえ。 - 瑠璃乃
いやあすごいですなあ、イマドキの若者は……。
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目を細めてまるで老人のように茶化す瑠璃乃。
- 花帆
その点、小鈴ちゃんはスクールアイドルクラブに入って、
いつも新しいことにチャレンジし続けてるから。 - 花帆
むしろやりたいと思うことが多すぎて、これって決められないのかも。
- さやか
……。
- 瑠璃乃
さやかちゃん?
- さやか
おふたりとも、ちゃんと考えてくれるんですね……。
- 瑠璃乃
うおおおい、すごい、しつれい!
- さやか
すみませんすみません。
- さやか
おっしゃる通りだと思います、小鈴さんは色んなことに、
やりたいって思って突っ走れる、元気な人ですから。 - コメント
花帆はにこっと笑ってから、
- 花帆
小鈴ちゃんは、あたしタイプだからね!
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苦笑いする。
- 花帆
そういう意味では、そのまんまあたしにも跳ね返ってくるんだけど……!
- さやか
それはそうですね。
- さやか
小鈴さんも口には出していないだけで、
花帆さん同様にやりたいことがありすぎて迷っているのかもしれません。 - コメント
ふむ、とさやかが腕を組む。
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とはいえ、とさやかの眉が下がる。
- さやか
でもさっき、わたしに進路決めてほしいとまで言われましたよ。
- 瑠璃乃
ええ……?
そ、それはちょっと……。 - コメント
瑠璃乃もこれには苦笑い。
- さやか
どんな進路でもチャレンジ成功してみせるという気概だけは良いんですけど。
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花帆も同様に苦笑い。
- 花帆
あはは。
小鈴ちゃんらしいっちゃらしいけど。 - さやか
はい……。
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と、さやかが苦笑いしてから、少し考える。
- 花帆
さやかちゃん?
- さやか
でもまあもし決めるとするなら。
- 瑠璃乃
ん???
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流れ変わったな?とめちゃくちゃ首を傾げる瑠璃乃。
- さやか
せっかくおひとりで飛び出してきて、蓮ノ空でたくさんの経験をしたんです。
そして来年もきっとスクールアイドルとして大成することでしょう。 - さやか
その先は家族のもとに戻るのではなく、大学に進学して活躍してほしいですね。
小鈴さんの元気を活かして、所属学部でもイベントをたくさんする。 - コメント
花帆と瑠璃乃が顔を見合わせる。さやかは淡々と語る。
- さやか
そうして社会にも認知された小鈴さんは、
その後は会社のスカウトを受けてその先でも
たくさん可愛い小鈴さんとして在り続ける。 - さやか
会社のプロモーションを一手に担い、その会社を大きくすることに貢献。
- さやか
わたしが手助けできるところは手助けしつつ、キャリアを築き、
旅行や趣味で日々に彩りを加えながら、ご家族からも『徒町家の誉れだ』と
太鼓判を押してもらい、胸を張っていただいて。 - さやか
そうして自信を培ったうえで、軌道に乗ればこっちのものです。
あとはもう、120歳くらいまで生きると。 - さやか
ふむ。 悪くないですね。
これでいきましょう。 - コメント
これまで我慢してた瑠璃乃が限界を迎えてツッコミ。
- 瑠璃乃
どれで!?
- さやか
え、なんですか!?
- 瑠璃乃
なんですかじゃねーよ!
小鈴ちゃんの人生決めちゃったよこの人! - コメント
苦笑いする花帆に対して、さやかはマジで何が問題なのか分かっていない。
- 花帆
さ、さやかちゃんはさやかちゃんだなあ……。
- コメント
瑠璃乃、腕を組んで考え始める。
- さやか
な、何か問題がありましたか!?
であればご指摘いただいて、それを踏まえて小鈴さんにお伝えを。 - 瑠璃乃
伝えるな伝えるな。 そうじゃなくて、えっとぉ……!
- 花帆
瑠璃乃ちゃん?
- 瑠璃乃
言わない方が……いや、でもなあ……。
- さやか
何か、問題でしょうか……?
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瑠璃乃は改めてさやかに向き直る。
- 瑠璃乃
いや、言おう。 こういうこともちゃんとぶつけあってこそって、
それこそルリは三年生になって学んだんだ。 - コメント
瑠璃乃の真面目な顔に、さやかも居住まいを正す。
- 瑠璃乃
さやかちゃんさ。
- さやか
は、はい。
- 瑠璃乃
小鈴ちゃんが自分の進路決めてほしいなんて言ったの、
- 瑠璃乃
これまでもこうやってさやかちゃんが
答えをあげすぎちゃったせいなんじゃないの!? - さやか
そう、でしょうか!?
もしかして花帆さんもそう思いますか!? - 花帆
あたし!? え、あ、ど、どうだろう……?
- コメント
花帆はそのまま救いを求めるように瑠璃乃を見る。瑠璃乃は変わらずちゃんと悩んだ顔。
- 瑠璃乃
綴理先輩の時は、なんていうかこう、綴理先輩だったからいいとして。
- 瑠璃乃
小鈴ちゃんは、実はそこまでお世話してあげなきゃいけない子だとは
思わないんだよ、ルリは。 - コメント
さやかと花帆が瑠璃乃を見る。ふたりとも真面目な顔。
- 瑠璃乃
小鈴ちゃんが悩みを抱えたりしなければ、言うつもりはなかったんだけど……
ルリもクラブ全体を見てて思うことはあるんだよ。 - 瑠璃乃
めぐちゃんたちがいなくなって、みんな変わったじゃん。
- 瑠璃乃
変わらざるを得なかったというか。
たとえばルリがこうやって言うようになったみたいに。 - 花帆
それは、そうかも。
それこそ、さっき話してた吟子ちゃんも、姫芽ちゃんも。 - 瑠璃乃
自分で言うのもなんだけど、吟子ちゃんは梢先輩、
姫芽はめぐちゃんを凄く慕ってた感じがあるから。 - 瑠璃乃
精神的支柱とゆーか。
……先輩がいなくなって変わらなきゃって思ったのは、
あのふたりも同じなんだと思う。 - 花帆
あれ!? 吟子ちゃんはあたしのことが大好きだよ!?
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瑠璃乃は真顔のまま、淡々と。
- 瑠璃乃
大好きと支えは違うからねえ。
ルリはもちろん、花帆ちゃんだって支えてもらってる側でしょ。 - コメント
ちくしょうその通りだ、と花帆は悔しそうに頷く。
- 花帆
それは、そう……!
- さやか
つまり……瑠璃乃さんが言いたいのは、もしかして。
- さやか
わたしのこの行動が、小鈴さんの成長機会を奪っていると!?
- 瑠璃乃
まあ、えっと……うん、そう!!
- 瑠璃乃
さやかちゃんはどっちかというと、
姫芽にとってのめぐちゃんみたいなポジションだとルリ思う!
憧れの対象でしょ!? - 瑠璃乃
仮にめぐちゃんが姫芽のお世話をするような人だったら、
姫芽今頃蕩けてなにもできなくなってるよ、絶対!! - さやか
なる、ほど……!
- コメント
一方で慈のたとえがちょっとよく分からない花帆。
- 花帆
なるほどなの……?
- コメント
さやか、むむむと難しい顔。
- さやか
言われてみれば確かに、花帆さんや慈先輩はどちらかというと反面教師……。
- 花帆
慈センパイと一緒にされた!?
- 瑠璃乃
そこでショック受けるのおかしーだろ!
いやめぐちゃん引き合いに出すのもおかしーだろ! - コメント
慈の尊厳をかけてツッコむ瑠璃乃だが、さやかはスルーして考え込む。
- さやか
わたしのお世話が、小鈴さんの悩みを……。
- 瑠璃乃
聞いてねーし!
- コメント
瑠璃乃は慈の復権を諦めて肩を落とし話を戻す。
- 瑠璃乃
……まあ、小鈴ちゃんの件はルリも推測だけど。
- コメント
さやかは瑠璃乃の言葉に緩く首を振る。
- さやか
いえ。 瑠璃乃さんが一番周りを見ているのは事実です。
あなたからそう見えるなら、きっとそうなんでしょう……。 - さやか
わたしがあの子に悪影響をもたらしていた張本人だとするなら……
このままでは、わたしのせいで小鈴さんがダメになってしまう……! - コメント
ぎゅっと拳を握るさやか。
- 瑠璃乃
ま、まあ……もちろん悪影響だけってわけじゃないけども……。
- 花帆
そうだよ、べつに今のも小鈴ちゃんに直接言ったわけじゃないんだし!
- さやか
あ……花帆さんから見ても直接言ってはいけないことなのですね……。
あとで言おうと思ってました……。 - コメント
Oh……みたいなニュアンス。花帆は自分の口元を押さえる。
- 花帆
おぅ……。
- さやか
……。
- コメント
さやか、めっちゃ凹む。瑠璃乃もそこまで凹ませるつもりはなかったので慌てる。
- 瑠璃乃
そ、そこまで落ち込んでほしいわけじゃないんだ。
えーっと、お夜食でも食べて落ち着く? 今日はルリが作ったげるから……。 - コメント
瑠璃乃がキッチンの方へ向かおうとすると、さやかがゆらりと立ち上がる。俯き気味の顔は見えない。
- さやか
瑠璃乃さん。 花帆さん。
- コメント
ふたりがさやかを見る。
- 花帆
ふぇ?
- コメント
俯いたまま、さやかが呟く。
- さやか
決めました。
- 瑠璃乃
……なにを?
- コメント
なに言い出すつもりなんだ……? と見通しが立たず首を傾げる瑠璃乃。
- コメント
それに対して、さやかは顔を上げて誓う。
- さやか
わたしはーー小鈴さんのお世話を禁ずることを誓います!
- 花帆
どゆこと!?
- さやか
竜胆祭までの間、
小鈴さんにはできる限りご自分の力でスクールアイドルを頑張ってもらいます! - コメント
瑠璃乃、すこぶる不安そうに、マジで言ってんの?って顔で首を傾げる。
- 瑠璃乃
さやかちゃんに……できる?
- さやか
やってみせますとも!!