第6話『未来への花』
PART 5
当日の金沢中央観光案内所はスタンプラリーの「宮殿」ということに。 | |
お姫様の衣装(過去のライブ衣装から近いものを使っているイメージ)に身を包んだセラスが、スタンプラリー参加者と向き合っている。 | |
そして、今向き合っている参加者は、広実とその友人たち。 | |
※セラスの衣装は、エーデリート。 | |
セラス | よく来ましたね、旅のお方……。 わたしは王国の姫、セラス。 |
セラス | 早速ですが、この国は魔物によって危機に瀕しています……。 そして、魔物は、倒されたはずの魔王を復活させようとしているのです……。 |
セラス、真剣な表情で、身振り手振りを交えて迫真の演技。(普段はセラスも「してるのです」など、「い」抜き敬語で喋るんですが、ここでは大仰に丁寧な言葉遣いになっています) | |
セラス | それを止めるためには、 かつて魔王を倒した伝説の冒険者たちの力が必要です……。 |
セラス | 旅のお方……どうか力をお貸し下さい! |
広実 | ……。 |
セラス | 旅のお方。 旅のお方! |
ぜんぜん響いてない広実に、何度も声をかけるセラス。ハッとする広実。 | |
広実 | アタシのことか……!? |
セラス | 旅のお広実様! |
広実 | アタシのことじゃねぇか! |
広実 | いやよくわかんねぇけど、なんで魔王が出てくるんだ……? これ、伝統の文化を体験できるっつースタンプラリーじゃねぇのか? |
セラス | やっていただけるんですねありがとうございます旅のお方! それではあなたたちに「旅の地図」を授けましょう! |
広実 | お、おう。 |
広実の友達 | えっ、すごい! めっちゃ凝ってる! |
広実 | お~、すげえなこいつは。 |
セラス | とにかくその順番で進んでください。 疑問を持たず。 ただひたすらに。 それがあなたの使命なので。 |
広実 | ああ、まあ、やることはわかったよ。 そういうストーリー? ってやつなんだな。 |
セラス | ではがんばってください、旅のお方。 さあ、冒険の始まりです。 |
広実 | スタンプラリーじゃ。 |
広実の無粋な言葉をさえぎって。 | |
セラス | 冒険の! 始まりです! |
とにかく冒険を始めさせようと、大きな声で明後日を指差すセラスであった。 | |
鞠屋は「光の神殿」で、魔法使いのさやかと妖精の小鈴がいる(2人も過去のライブ衣装から近いものを着用) | |
だが、施設の一角が半透明の幕で仕切られており、小鈴はその向こうで目を閉じてじっと座っている。 | |
広実たちは施設の人の指導で加賀てまりの作成体験をしており、さやかがアシスタントをしている。 | |
※妖精の小鈴が魔王の部下によって封印されてしまい、みんなで作ったてまりを「伝説の御守り」として、その力で封印を解いて小鈴を救い出そう! というクエストのイメージ。 | |
※さやかの衣装はアンペア。小鈴の衣装は、オーロラフラワー。 | |
広実、加賀てまりを完成させて、さやかを見る。 | |
広実 | できたぞ! |
さやか | ええ、その御守りの力があれば、 小鈴さんを閉じ込めている魔物の封印を壊せるはず。 |
広実 | 加賀てまりってそんな力があるのか……? |
自分の作ったてまりを見下ろして驚く広実。そしてハッとして。 | |
広実 | てか、さやかサン、今なんて!? |
さやか | え? ええ、わたしは魔法使いさやかですが……。 |
広実 | 師匠が、閉じ込められてるのか!? もしかしてまた倉庫とかに……!? |
さやか | いえ、魔物に。 |
広実 | 魔物に!? 魔物ってなんだ!?!? |
さやかに食って掛かる広実。まだぜんぜん趣旨を理解していないが、とにかく小鈴がピンチなので火が付いた。 | |
さやかは真剣な表情で迫真の演技。小鈴に向き直って手をかざし、 | |
さやか | それでは皆さん、御守りを小鈴さんに向けてください! |
広実の友達 | こんな感じでいいの? |
広実 | うおおおおお! よくわかんねぇけど、なんとかなれ! |
広実と友人たち、加賀てまりを小鈴に向けてかざし、 | |
さやか、真剣な表情で手を舞わせる。 | |
さやか | 修行で得た新しき力で……。 |
さやか | 古き神々よ! その御業をお貸しください! |
鞠屋の照明が暗くなり、ライティングが小鈴に当たる(照明の操作はイベントに協力している蓮ノ空の生徒たちが行っている) | |
想像していなかった演出に、驚く広実と、ちょっとびっくりする友人たち。 | |
広実 | 師匠!?!? |
広実の友達 | なんか結構すごいねー。 |
さやか | いにしえの奇跡を今、ここに! 封印よ、退け!! |
ライティングがひときわまぶしくなり、雷鳴がとどろくような効果音が鳴ると、その隙に、小鈴を隔てていた半透明の幕が、さっと落ちて回収される。 | |
ライティングが明るくなり、小鈴、目を開けて立ち上がると、驚いた顔で自分の両手を見つめて、 | |
小鈴 | 封印が、解けた……。 |
広実 | 師匠! |
広実、小鈴の手を握る。 | |
小鈴 | わっ!? |
広実 | 大丈夫か!? なんともなってねぇか!? |
小鈴、役になり切って儚く微笑む。 | |
小鈴 | う、うん。 大丈夫だよ! ありがとう、広実さ……じゃなかった、旅のお方。 |
広実 | アタシは広実だよ! ちくしょう! 魔物にやられて記憶が飛んじまったのか……!? |
広実 | しばらくゆっくり休んでくれよ! |
小鈴 | でもね、このまま魔王を放っておくわけにはいかないから……。 |
広実 | だったらアタシがその魔王ってやつのところに行って、 カタつけてやるからよ! |
小鈴 | 本当!? 旅のお方! |
広実 | ああ……。 師匠をこんな目に遭わせたやつを、許すわけにはいかねぇよ……。 |
歯を食いしばる広実。なんてやつだ魔王って……! | |
広実の友達 | 広実、これただのスタンプラリーだよ? |
広実 | なに言ってんだ! 実際、師匠が魔物に封印されてるじゃねぇか! 現実見ろよ! |
広実の友達 | あんたが見なよ……。 いやまあ、面白いからいいか別に。 |
さやかがその会話に割って入る。 | |
さやか | コホン……。 ありがとうございます。 あなたたちのおかげで小鈴さんを救い出すことができました。 |
さやかと小鈴が広実たちの前に並び、 | |
さやか | わたしたちは、この地を守るために今は動けません。 ですが、最後の戦いには必ず馳せ参じます。 |
小鈴、広実たちの手にある加賀てまりを指さして、 | |
小鈴 | そのときは、その御守りがあれば私たちを呼び出せるから! 一緒に、このカナザワを救おうよ! |
広実 | 一緒に、金沢を……。 そんな立派なモンに、この、あたしが……? |
小鈴 | うん、なれるよ。 |
小鈴 | 私が、背中を押してあげる。 |
ニッコリ笑って、小鈴、7月のパートのセリフを広実に投げかける。広実は目を見開いて、小鈴を見返す。 | |
広実 | 師匠……! |
広実 | アタシに…………任せてくれ!!! |
広実たち、スタンプラリーも後半にさしかかっている。 | |
※スタンプラリーは、「宮殿」からスタートし、蓮メンバーがいる三箇所の「神殿」以外にも幾つもポイントを回るイメージ(神殿以外のポイントには蓮ノ空の生徒たちがいて、賢者や錬金術師など、さまざまなファンタジー世界の住人に扮して参加者の相手をしているイメージ) | |
金沢くらしの博物館は「伝承の神殿」で、ここには巫女の吟子とビーストテイマーの花帆がいる(2人もそれっぽい衣装を過去のライブ衣装から選んで着込んでいる) | |
※ここのクエストは、「魔王の結界」を突破するための「伝承の言葉」を、神殿に収められた無数の伝承の中から探すというもので、実際には虫食いクイズ形式のカードを渡され、館内からそこを埋める言葉を探し出すイメージ。 | |
※C16の衣装。使用できなければ月夜見海月。花帆はSpecialThanksの衣装。 | |
館内で、吟子、広実たちを前に真剣な表情で演技している。 | |
吟子 | 魔物たちは、かつて魔王の宮殿だった場所で、 魔王を復活させようとしています。 |
吟子 | 近づくためには、宮殿を守る結界を突破しなくてはなりません。 そのためには「伝承の言葉」が必要なのですが……。 |
花帆、困り顔の演技。 | |
花帆 | その言葉はこの伝承の神殿のどこかにあるんだけど、 まだ見つからないんだよ~! |
吟子 | 旅のお方、どうか、手を貸してはいただけませんか? |
広実、極めて真剣に、シリアスな態度で花帆や吟子に向き合っている。 | |
広実 | もちろんだ。 アタシは、どうすりゃいい? |
花帆 | わぁ、広実ちゃん、やる気満々だね! 嬉しい! |
広実 | ああ……。 誓ったからな、師匠に。 この世界を……救うって。 |
どこか様子のおかしい広実に「熱中してくれるんだなあ」と思う吟子と花帆。 | |
花帆が穴埋めクイズの書かれたカードを広実たちに配る。 | |
吟子 | その札を見てください。 そこに記された言葉には失われた箇所があります。 |
広実の友達 | あぁー、穴埋めクイズだ! |
意気込んでいた広実は、肩透かしを食らった顔をする。 | |
広実 | く、クイズぅ……? |
広実 | おいおい、そんなんで金沢を救えるのかよ! 本気でやってくれよ! |
吟子 | 私はこの伝承の神殿の巫女! 伝承を正しく理解していない者に、カナザワを救うことはできません! |
吟子 | その資格があなたにあるのかどうか、見極めさせてもらいます! |
広実 | ……へっ、そうかよ。 アタシを試してるってわけだな。 |
広実 | 吟子サン。 確かにアタシは、スクールアイドルの件では、 迷惑かけたし、世話にもなった。 |
広実 | だがな、今のアタシはもう、本気で生きてるんだ。 |
広実 | アタシの根性、見くびらないでくれよ? |
吟子 | それでは、お願いできますね? |
広実 | 上等だァ! |
時間経過。館内を探索中の広実と友人たち。 | |
広実の友達 | あっ、これ……! |
広実 | どうした? 見つかったか? |
広実の友達 | あったあった! これだよね! |
広実 | おお、これだ! 間違いねえ! でかした! |
広実の友達 | やったね! これでこの国救えるっしょ! |
広実 | ああ、救える……。 アタシが、救ってやるんだ……。 |
胸に手を当てて、情感たっぷりにつぶやく広実。 | |
そんな広実に、純粋な疑問をぶつける友達。 | |
広実の友達 | 広実、どこまで本気なの?? |
時間経過。再び吟子・花帆と広実たちが向き合っている。 | |
吟子 | あなたたちは、長き旅を終え、 3つの神殿に伝わる伝承の遺物を全て集めました。 |
吟子 | その力を結集すれば、魔王の復活を阻止できるはず! |
花帆 | 最後の戦いにはあたしたちも駆けつけるから! |
吟子 | 魔王の宮殿には、セラス姫の騎士、泉も向かっていると聞いています。 彼女とも力を合わせて、共に、この国に救いを! |
広実 | いよいよ、か。 |
グッと拳を握る広実。明後日を見上げて、決意のまなざし。 | |
広実 | よっしゃ……アタシが、決着をつけてやるぜ!! |
しいのき迎賓館が「魔王の宮殿」で、ガーデンルームがラストバトルの場所。 | |
ガーデンルームの窓は暗幕で覆われ、光量を抑えたライティングの中、泉と広実たちが対峙している。 | |
広実たちの近くにはスクリーンがあり、そこに泉以外の蓮メンバーが映っている(※これは録画。泉は合わせて演技をしている) | |
泉の背後のスクリーンに禍々しいオーラのエフェクトが映っており、泉が手にした剣を一閃。 | |
ライティングが一瞬、まぶしく輝き、 | |
吟子 | ぐぅっ……! |
スクリーンの蓮メンバー、攻撃を食らった体で、転倒したり片膝をついたりする。 | |
それを見た広実と友人たち、何すんだよ! という顔で泉を見る。 | |
花帆 | ああっ……! |
広実 | なにするんだお前ぇ!! |
広実の友達 | あんた、味方じゃないの? |
泉、普段より低い声で、 | |
泉 | ふふふ……よき肉体だ。 我が魂の新たな器にふさわしい……。 |
蓮メンバー、愕然とした顔に。 | |
さやか | 何て、こと……! |
瑠璃乃 | 泉ちゃん、魔王に体を乗っ取られちゃったんだ……! |
広実 | 体を……!? マジかよ……!! |
泉 | かつて、私を滅ぼした忌まわしき人間たちよ……今度は、 お前たちが滅びる番だ……。 |
広実 | こんなの、どうすりゃいいんだよ……! |
広実 | おい、泉サン!! 元のあんたに戻ってくれよ!! あんた、ものすごいスクールアイドルなんじゃねぇのか!? |
広実 | そのあんたが誰かを傷つけちまったら! |
広実 | すべてのスクールアイドルとスクールアイドルに憧れる子たちが、 悲しんじまうだろ! なあ、泉サン! |
広実が思わず歯をかみ締めたとき、セラスが必死の表情で泉に手をかざす。 | |
セラス | 泉! ダメーーっ!! |
泉の動きが、がくんと止まる。 | |
広実たちが驚き、蓮メンバーも困惑した顔に。 | |
広実 | せ、セラスサン……!? 今、なにを……!? |
セラス | 泉は、実は吸血鬼なの。 血によって、わたしの騎士としての契約を結んでるんだ。 |
泉、頭を抱えて苦しみだす。名演技。 | |
泉 | 貴様、何をした……! |
セラス | そして、わたしの血を飲むことで、真の力を引き出すことができる……! |
セラス、迫真の表情で泉を見つめ、 | |
セラス | 泉! あなたはわたしの騎士でしょう! その血の味を覚えているはずでしょう! |
セラス | いつものあなたに戻ってよ、泉っ!! |
すると、泉、頭を抱えて苦しみながら、いつもの泉の声で、 | |
泉 | セラ、ス……姫……。 |
セラス | 泉……! |
一瞬、希望に顔を輝かせるものの。 | |
広実 | おお……! |
泉 | 私ごと……魔王を倒すんだ……。 |
蓮メンバーと広実たち、愕然とした顔に。 | |
セラス | そんな……! どうして!? |
泉 | 魔王の魔力は、私より強い……このままでは、 間もなく完全に取り込まれてしまう……。 |
泉 | そうなる前にやるんだ……! チャンスは、今だけだ……っ!! |
すっかり引き込まれた広実、苦しげな顔で。 | |
広実 | おい! なに諦めてるんだよ、泉サン! そんなこと、できるかよ! |
そのとき、吟子が決意の表情で泉に手をかざす。 | |
吟子 | 泉さん! 私の血も飲んで! |
はっと吟子を見る広実。 | |
吟子を見た蓮メンバーたち、次々と決意の表情になり、泉に手をかざす。 | |
小鈴 | 泉ちゃん! |
姫芽 | アタシの血もあげるから~! |
泉の背後で禍々しいオーラが渦巻き、泉が別録りした魔王の苦悶の声が響く。 | |
泉 | おぉおおぉぉーー!! 無駄だ! これしきの力では、我が魔力を押しとどめることはできぬわぁーー!! |
瑠璃乃 | なんて執念……! |
花帆 | これでもまだ足りないの……!? |
泉 | あと、少し……。 あと、ほんのひとしずくの血があれば……っ! |
そのとき、泉と広実たちの目が合う。 | |
泉、苦しげに顔をゆがめながらも、真剣な表情で広実たちに手を伸ばす。 | |
ハッとする広実。 | |
広実 | ああ、そうか……そういうことか……! |
広実 | 誰の血でも、いいんだな……? だったら……! |
広実、ばっと手をかざす。 | |
広実 | アタシだって、この街、金沢が……そして、 スクールアイドルクラブが大好きな、仲間だ! |
広実 | 金沢を救うために! 桂城 泉を救うために! このアタシの血も! |
広実 | 持っていけぇーーーっ! |
ライティングがまばゆく輝き、画面がホワイトアウト。 |