第1話『Brand New Stories!!』
PART 8
セラス | ……。 |
セラス | ……うん? |
セラス | あれ、小鈴先輩……? |
セラス | 先輩。 |
小鈴 | え? あ、セラスちゃんーー。 |
セラス | な、なにしてるんですか。 |
小鈴 | えへへ……。 桜、きれいだなあ、って思って。 |
小鈴 | 落ちてくる桜の花びらを空中でキャッチするチャレンジ、してたんだ。 |
セラス | ……なんで? |
小鈴 | なんで?? |
小鈴 | 徒町がやりたいと思ったから……? |
セラス | えっと……。 |
小鈴 | あ、こういう話は知ってる? 蓮ノ空の生徒は、卒業するまでに四回の桜を見るんだー、っていう。 |
小鈴 | 去年卒業した先輩の受け売りなんだけどーー。 |
セラス | ……あの。 |
小鈴 | ? |
セラス | 小鈴先輩。 |
セラス | わたし、DOLLCHESTRAに入ろうと思うんです。 |
小鈴 | ーーほんとに!? |
セラス | う、うん。 |
小鈴 | やったやった、嬉しいな! セラスちゃんと一緒に活動できるんだ! 今年も三人だー! |
小鈴 | ね、ね、どうしてDOLLCHESTRAに決めてくれたの? |
セラス | それは……。 |
セラス | 部の役に……立つと、思って。 |
小鈴 | 役に……? |
セラス | わたし、曲作りができるから……。 だから、それなら貢献できるかな、って……。 |
セラス | 泉と違うユニットに入った方が、いいと思って……。 |
セラス | みんなに、助けてもらったし……。 恩返し、したかったから……。 |
小鈴 | ……セラスちゃん。 |
セラス | その気持ちは、ウソじゃなくて。 |
セラス | どのユニットも魅力的で、選びきれなくて! |
セラス | だったら、どこでもいいや、って ……違う、そんな軽い気持ちじゃ、なくて……。 |
小鈴 | ね、セラスちゃん。 この学校の隣に、湖あるでしょ? |
セラス | え? |
小鈴 | あれ、蓮ノ湖っていうんだけど。 徒町ね、入学式の日、その湖をイカダで横断しようと思ったんだ! |
セラス | ……えっと。 |
小鈴 | だけど、ひとりじゃ何回やってもうまくいかなくて……。 溺れそうになったところを、さやか先輩と綴理先輩に助けてもらったの! |
セラス | ……どうしてそんなこと。 |
小鈴 | わかんない! |
小鈴 | でも、やりたくなったんだ。 |
小鈴 | 新しく高校生になって、この学校でどうにかやってやるんだぞー! って思って。 |
小鈴 | 今までのなにもなかった徒町から、なにかある徒町になるために、 チャレンジしたんだ! |
セラス | ……チャレンジ。 |
小鈴 | うん。 春の湖は冷たかったけど……でも、 さやか先輩と綴理先輩が見守ってくれてたから、 徒町はやり遂げることができた。できたんだ。 |
小鈴 | きっとそれはね、徒町には大事なことだった。 |
小鈴 | あのとき、イカダで湖を横断できたから、今もスクールアイドルクラブで、 がんばっていられるんだって、思うから! |
小鈴 | セラスちゃんにも、あるんじゃないかな? 誰かのためにとかじゃなくて、セラスちゃんにとって大事なチャレンジが! |
セラス | ……っ。 |
セラス | あの、わたし! |
セラス | わたしにも、やりたいことがあって……! だから……! |
セラス | ちょっと、花ちゃんのところに、行ってきます! ありがとうございました、徒町先輩! 本当に、ありがとうございました! |
小鈴 | がんばって、セラス後輩ちゃん! 徒町先輩が、ついてるからねー! |
小鈴 | ちぇすとー! |
セラス | あの……。 |
花帆 | せっちゃん? どうしたの? |
セラス | あのね。 実は、花帆部長にお願いがあって……。 |
花帆 | お願い? |
セラス | でも、その……かなり無茶なお願い、っていうか……! 蓮ノ空の伝統的に、ありえないっていうか……。 |
セラス | いやでもやっぱりありえないっていうか……! |
セラス | それでも、やりたいことがありまして! |
花帆 | あたし、今年はどんな新入部員が来るかなーって、ワクワクしてたの。 |
花帆 | そう思ったら、まさかの新入部員ゼロ! ぜんぶあたしのせいなんだけど……すっごくショックで……。 |
花帆 | そんなとき、来てくれたせっちゃんと泉ちゃんは、 あたしにとって救世主だったんだ。 |
花帆 | あたしは去年、吟子ちゃんと小鈴ちゃん、それに姫芽ちゃんと出会えて、 本当に嬉しかったから。 |
花帆 | 二年生のみんなに後輩ができないって、それはそれはすごく、 寂しいことだなって思ったの。 |
セラス | ……うん。 |
セラス | 寂しいよ。 先輩がいないのも、後輩がいないのも。 |
セラス | わたしも、一緒にいてくれた人に……とても、感謝してるから。 |
花帆 | せっちゃん。 あたしの気持ちは『ありがとう』だよ。 |
花帆 | 蓮ノ空に来てくれて、ありがとう。 104期生の後輩になってくれて、ありがとう。 |
花帆 | みんなね、すごく! 嬉しそうだった! |
花帆 | だから……。 |
花帆 | 蓮ノ空の伝統とか、気にしなくてもいいんだよ! |
セラス | ……え? |
花帆 | 友達として、先輩として。 そして、このあたし、日野下花帆は、 蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブの部長として! |
花帆 | 自分のためにスクールアイドルをしてほしいと、そう、願います! |
花帆 | そのためには、どんなことだって、なんだって、やってもいいんだよ! |
セラス | 花ちゃん……。 |
花帆 | ねえ、せっちゃん。 |
花帆 | もしも、この瞬間だけ、なんでも夢が叶うとしたら。 せっちゃんは、なにがしたい? |
セラス | わたしは。 |
花帆 | ……瑞河に、帰りたい? |
セラス | ううん。 |
セラス | 違う。 |
セラス | わたしは。 |
セラス | わたしは、スクールアイドルがしたい。 |
セラス | あの人と、一緒に! |
セラス | だから、花ちゃん。 |
花帆 | なぁに? |
セラス | じゃなくて。 あの、その。 |
セラス | 花帆部長。 |
セラス | わたしの一生のお願い、聞いてください! |
セラス | わたしーー。 |
セラス | ーー。 |
花帆 | うん。 |
花帆 | あたし、いいと思う! |