第1話『Brand New Stories!!』
PART 7
セラス | あ。 |
花帆 | あ、せっちゃんだー。 |
さやか | こんばんは、お風呂上がりですか? |
セラス | うん。 |
セラス | 蓮ノ空、すごい……。 適当にうろうろしてるだけで、構ってくれる人が見つかる……! |
瑠璃乃 | あはは。 寮生活って大変なこともいっぱいあるけど、賑やかで楽しいよね。 |
瑠璃乃 | どう? もう慣れた? |
セラス | うん、とてつもなく慣れました。 |
さやか | それはよかったです。 |
セラス | なんと、友達もハチャメチャできました。 もはやなんの憂いもありません。 |
セラス | あとは蓮ノ空が3年間、廃校にならないことを祈るだけ……。 |
瑠璃乃 | トラウマになってるじゃん……。 |
セラス | それはさておき……。 花ちゃんたちは、なにしてたの? |
花帆 | あたしたちはねー。 今、Fes×LIVEに向けたユニット曲を作ってたんだよ! |
セラス | おおー。 |
セラス | 新曲ってこと? |
花帆 | そういうこと! |
瑠璃乃 | やー、105期一発目のFes×LIVEだから、なんてゆーかやっぱ、 ガツーンとしてドッカーン!って感じの作りたいんだけど~。 |
さやか | なにぶん、今年はわたしたちが最高学年なもので、 ユニット曲を作るのも必然的にわたしたちということにもなり……。 |
花帆 | えー! 瑠璃乃ちゃんもさやかちゃんも作曲できるんだから、いいじゃんー! |
花帆 | あたしは吟子ちゃんと毎日、 夜遅くまでジタバタしてるよー! |
さやか | できると言っても、簡単にできるわけではありませんし! |
瑠璃乃 | 先輩ズの卒業前に、もっともっと習っておけばよかったよねえ……。 |
花帆 | ほんとそれー! |
花帆 | 三年生はやっぱり考えることが多くて、大変だあ。 |
花帆 | Fes×LIVEで、みんなを花咲かせるためのライブとはこういうものだ~! っていうなにかをしたいのに、それもまだ考え中だし……。 |
花帆 | まあ、大変なのが楽しいんだけどね! |
セラス | ……わたし、手伝う? |
花帆 | え? |
セラス | こないだも話したけど、曲作りなら、たぶん、そこそこできるから。 |
瑠璃乃 | 確かに、瑞河の曲作ってたの、セラスちゃんだもんね! |
セラス | それに、泉もできると思うよ。 |
セラス | 曲作ったのはわたしだけど、いろいろ意見交換をしてるうちに、 泉も作れるようになってたみたいだから。 |
さやか | それは、さすが泉さんですね……。 |
花帆 | ん~~……。 |
花帆 | うん、ありがと、せっちゃん。 でも、とりあえずはあたしたちでがんばってみるね。 |
セラス | ……どうして? |
花帆 | 今回の曲は、105期の新しいユニット曲だから、 やっぱりユニットごとに作らなきゃいけないって思うんだ。 |
花帆 | 完成した後に、もっと良くしたいから~って相談するのは、 いいと思うんだけど。 でも、作るのはあたしたちでやんなきゃ。 |
さやか | はい。 蓮ノ空の今を作っていくのは、他でもないわたしたちですしね。 なにより、自分たちでやってこそ、です。 |
瑠璃乃 | 花帆ちゃんも立派になったねえ……。 去年は、吟子ちゃんに衣装作り手伝ってもらったのに~。 |
花帆 | あれは、吟子ちゃんがスリーズブーケに入ってくれるって信じてたから、 お願いしたの! |
花帆 | あ、だからね! せっちゃんがスリーズブーケに入ってくれるなら、別だよ! |
花帆 | そのときは同じユニットの仲間だから、一緒に作ろうね! 思いっきり頼らせてもらうんだから! |
瑠璃乃 | 手のひらドリルかよ~! |
花帆 | だっていちばんいいステージを、届けたいんだもんー! |
セラス | ……そっか。 うん、わかった。 |
さやか | でも確かに、セラスさんと泉さんがどこに入るのかは、気になりますね。 |
瑠璃乃 | どこも似合いそうだよね。 |
花帆 | みらくらぱーく!の泉ちゃんは、さすがに面白いかも! |
瑠璃乃 | それが、実は似合うかもなのだよ! |
花帆 | えーそうなのー!? |
セラス | それじゃあ、曲作りがんばってください、先輩。 |
花帆&さやか&瑠璃乃 | うん!/はい/おうっ! |
セラス | ……。 |
泉 | 気に入ったのかな? 屋上が。 |
セラス | ここから見える景色……。 瑞河とは、ぜんぜん違うね。 |
セラス | 当たり前か。 もう、瑞河はないんだから。 |
泉 | そういえば、決めたよ。 |
セラス | なにが? |
泉 | 私は、スリーズブーケに入ろうと思うんだ。 |
セラス | えっ? |
泉 | 話を聞いたんだけれど、先輩がいなくなって、 曲作りに苦労しているみたいでね。 |
泉 | いちばん私が入って役に立ちそうなのが、 スリーズブーケじゃないかな、って。 |
セラス | ……そうなんだ。 |
泉 | Fes×LIVEの日程も迫っているしね。 早めに決めたほうが、お互いのためにもいいだろう。 |
セラス | ……理由、それだけ? |
泉 | 他になにかあるとでも? |
セラス | いや、なんていうか。 スリーズブーケを選んだ決め手? っていうか。 |
泉 | それならさっき言っただろう。 私がいちばん役に立ちそうだから、だよ。 |
セラス | そういうんじゃなくて……。 |
セラス | スリーズブーケは『花束』だって言ってた。 DOLLCHESTRAは『自己表現』。 |
セラス | そして、みらくらぱーく!は『発信』をがんばる、って。 |
セラス | その気持ちに共感したから、ユニットに入りたいって、 そう思うんじゃないの? |
セラス | 泉は、なんのために、この学校に来たの? 人の役に立つためじゃ、ないでしょ? |
セラス | 自分のために、この学校を選んだんでしょう? |
泉 | もともと、どこでもいいと思ってたんだ。 |
泉 | あなたとの契約は終わり、私は自由になった。 |
泉 | スクールアイドルそのものは、私にとってどうでもいい。 ただ、私たちを打ち破った蓮ノ空女学院という存在が、私には魅力的に見えた。 |
泉 | あの日、私にすべてを捧げると誓ったあなたと、同じ輝きを見た。 |
泉 | だから、ここでならきっとまた、味わえる。 去年のような、自分にも血が通っているのだと信じられる、その瞬間が。 |
セラス | でも、そんなの、結局……。 泉にとっては、ただの暇つぶしでしょ……!? |
セラス | どこでもいいなんて、そんなの……! |
泉 | あなたの言う『暇つぶし』は、私にとって、生きる目的なんだよ。 |
泉 | 瑞河を忘れ、すぐに新しい夢を見つけられたあなたには、 わからないだろうけれど、ね。 |
セラス | ……っ。 |
泉 | すまないね。 夢に歩き出したあなたに、水を差すつもりじゃなかった。 |
セラス | ううん……。 わたしも、ごめん。 その人にとってなにが大事なのかは、その人が決めることなのに。 |
泉 | ……。 |
セラス | ……泉は。 |
セラス | 瑞河で……。 スクールアイドル、楽しかった? |
泉 | あなたと夢を叶える旅路は、悪くなかった。 今は、ここでまた新しいなにかが見つかればいいと、願っている。 |
セラス | ……。 |
セラス | あれ……。 |
セラス | どうしてわたし、こんなに、ショックを受けてるんだろ……。 |
セラス | わたしと泉はもう、違う道を、歩いてるはずなのに……。 ……どうして。 |