第12話『明日の君に花束を』

PART 5

107 セリフ4 人物
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  1. ごめんなさい。

  2. 花帆

    え……?

  3. 吟子

    梢先輩、今、なんて……。

  4. ……できないの。

  5. 私にはもう、曲が作れないの。

  6. だから……スリーズブーケの曲は、あなたたちで作って頂戴。

  7. 花帆

    どうして、梢センパイ……!

  8. 吟子

    そ、そうですよ。
    どうしちゃったんですか。

  9. 吟子

    あの、まだまだスランプが続いてるんですか?
    だったら私、コンサートならいくらでもお付き合いしますから。

  10. 花帆

    あ、あたしも! もっといろんなアイディア出しますよ!
    梢センパイが、元気になるようなアイディア!

  11. ……そうではないの。

  12. 私の夢は……もう、叶ってしまったから。
    曲を作る力も、情熱も、すべて抜けていってしまったの。

  13. 私のスクールアイドル活動は、もう、終わってしまったんだわ。

  14. 花帆

    あっ。

  15. 吟子

    梢先輩……。

  16. 処分するものが、たくさんあるわね……。

  17. ……それもそうね。
    私の3年間はずっと、スクールアイドルクラブと一緒にあったんだから。

  18. 本当にずっと……スクールアイドルのことばかり、考えていたわね。

  19. 楽譜も、こんなにたくさん……。

  20. 懐かしいわ。

  21. これは、メンバーみんなに宛てて、考えていた曲ね。
    アイディアばかり先行して、未完成だった曲も、たくさん。

  22. 練習して、勉強して、へとへとになっても机に向かって、曲を考えて……。
    よくやっていたわね、私も。

  23. ……どうしてかしら。

  24. 遥か遠くのゴールに向かって走り続ける時間は、果てしなくて……
    ずっと、苦しかったはずなのに……。

  25. 楽しかったのね……私は。

  26. もう二度と、戻らない日々……。

  27. 綴理

    こず、いる?

  28. ……綴理?

  29. 綴理

    ちょっと、聞きたいことがあって。
    今作ってる曲のことで。

  30. DOLLCHESTRAの、ユニット曲?

  31. 綴理

    うん。
    とりあえずできたんだけど、もっとよくしたいんだ。

  32. 綴理

    聞いてくれる? こず。

  33. ……ごめんなさい、綴理。
    私は、あなたの力にはなれないわ。

  34. 綴理

    ……どうして?

  35. 私にはもう、曲が作れないの。

  36. きっと、理由がなくなってしまったからだわ。
    スクールアイドルを、する理由が。

  37. ……って、こんな有様じゃ、スクールアイドルどころじゃないわね。
    音楽だって、続けられるかどうか。

  38. そういうわけでね、ごめんなさい。

  39. 綴理

    待って、こず。

  40. 綴理

    こずは、他にやりたいことができたの?

  41. ……それは、どうかしらね。

  42. とりあえず大学に進学して、そこで、
    ゆっくりと決めてゆくことになるかしら。

  43. 綴理

    じゃあ、こずはスクールアイドルをやめたいの?

  44. 続けられるものなら、最後まで続けていたかったけれど……。

  45. 綴理

    それなのに、やめちゃうの?

  46. 花帆も吟子さんも、もう私がいなくても大丈夫。
    ふたりならきっと、いい曲を作ってくれるわ。

  47. 仕方がないの。
    私の夢は、すべて叶ってしまったのだから。

  48. ……情熱も一緒に、燃え尽きたのよ、きっと。

  49. 綴理

    こずがそう決めたのなら……ボクは、寂しいけど……
    わかった、って言うよ。

  50. 綴理

    でも、そうじゃないのなら。
    夢だって一緒だよ。 終わりを決めるのは、自分だけなんだ。

  51. だけど、終わってしまったのよ、もう、ラブライブ!は。

  52. 私たちはみんなで優勝した。
    最高の仲間たちと築き上げたそれは、最高のステージだったわ。

  53. ずっと待ち望んでいた瞬間は、もう過ぎたの!

  54. 終わったのよ……。

  55. 綴理

    ……。

  56. 綴理

    聞いて、こず。

  57. 綴理

    みんなの気持ちを導くのがうまいって、めぐに言ってもらったんだ。

  58. え?

  59. 綴理

    1月のラブライブ!で、思ったんだ。
    こういうの、すごくいいな、って。

  60. 綴理

    みんなで一緒にがんばって。
    目の前で、夢の形が花咲いて、きらめいていって。

  61. 綴理

    ボクはきっと、こういうのがしたかったんだ、ってわかったんだ。

  62. 綴理

    ボクは……。

  63. 綴理

    ……せ、先生になりたいんだ。

  64. あなたが……?

  65. 綴理

    ……うん。
    口に出すのは、これが初めてだ。

  66. 綴理

    でも、誰かを支えて、そばにいてあげたい。
    きらめきのそばに、寄り添っていたい。

  67. それがあなたの……次の夢。

  68. 綴理

    うん。

  69. ……誰にも言っていなかったのに。
    どうして、私に?

  70. 綴理

    それを打ち明けることが、寄り添うことだと思ったから。

  71. 綴理

    寄り添いたかったんだ。
    ずっとボクが大好きな、こずのきらめきに。

  72. 綴理

    ボクはスクールアイドルを卒業するけど。
    続けていくよ。

  73. 綴理

    やりたいから。
    熱をもった未完成な芸術を、いつまでも。

  74. 綴理

    こずは、どう?

  75. 私の、やりたいこと……。

  76. 私にとってラブライブ!は、憧れで、目標で……。
    だけど、終わってしまった……。

  77. 綴理

    それでも、なくならないよ。
    憧れに向かった気持ちは。

  78. 綴理

    胸の中に、残り続ける。

  79. 私の中に、残る気持ち……?

  80. 吟子

    むしろ、蓮ノ空に注目してもらっている今が、がんばり時かな、って。

  81. ラブライブ!を終えてなお、新しい夢に向かって進む、
    吟子さんのように……。

  82. そして……。

  83. 花帆

    ーー次は、どんな夢を見ましょうか?

  84. ラブライブ!が終わっても……
    また次のラブライブ!を、始めればいいの……?

  85. 私にとっての、また次のラブライブ!……。

  86. それが、夢の先……。

  87. 何度でも、あのステージを、これから先も……。

  88. でも、そんな……そんな夢のようなことが、
    本当に、できるのかしら……。

  89. 綴理

    こずは、できると思ったから、ラブライブ!優勝を目指したの?

  90. それは……。

  91. 綴理

    ボクだって思ってないよ。 自分に先生ができるなんて。
    でも、やりたいんだ。

  92. 綴理

    この気持ちがあれば、きっと、未来はずっと明るいから。

  93. ……でも、果てしないわ。

  94. ラブライブ!優勝だって、3年間必死になって走り続けて、
    ようやく叶えられた夢だったのに。

  95. 独りで、また新しい夢に向かって、ゼロからのスタート、だなんて。

  96. いったい、またどれほど努力すれば……。

  97. 綴理

    こずはひとりになんて、ならない。

  98. 綴理

    ボクと、離れたくないって、言ってくれた。
    だから、一緒だよ。 これから先も。 いつまでも。

  99. そう……そうなのね。

  100. どんなに離れていても、この3年間が、私の背中を押してくれる……。
    だったら、きっと……。

  101. ありがとう、綴理。
    あなたと同じ3年間を共に歩めたことは、私の誇りだわ。

  102. 綴理

    ボクもだよ。

  103. 私、ちょっと行かなきゃいけないところが、あるみたい。
    悪いけれど、曲の相談は、その後でね。

  104. 綴理

    うん。

  105. 綴理

    こず。

  106. 綴理

    ボクも知らなかったけど、どうやら、人生は長いらしい。
    きみの人生に、幸あれ、だよ。

  107. それなら、きっと大丈夫よ。
    私にも、あなたにも、みんながいるんだもの。