第12話『明日の君に花束を』

PART 2

97 セリフ3 人物
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  1. コメント

    風呂上がりに、梢と吟子でラウンジにやってきた。辺りに人はあまりいない。ラウンジの片隅で、深刻な顔をした梢と、そんな梢に影響されて深刻な顔をした吟子が、向かい合って座っている。

  2. 吟子

    進捗……よろしくないんですか?

  3. ……ごめんなさい。

  4. 吟子

    いや、謝られるようなことでは!

  5. 本当はもっと早くに相談するべきだったの……。
    それなのに、蓮華祭までの貴重な時間を浪費してしまって……。

  6. 吟子

    な、なかなか難しいですよね! 1年間の集大成となると!

  7. 吟子

    それに梢先輩はきっと、ラブライブ!が終わったばかりで、
    疲れてるんですよ!

  8. もうしばらく経っているのよ……。

  9. 吟子

    じゃ、じゃあ! なんというか、こう、気が抜けちゃったんですよ!
    肩の荷が下りた、みたいな!

  10. そうね……私のスリーズブーケにかける想いは、
    その程度だった、ということなのね……。

  11. 吟子

    いえそうではなく!

  12. 吟子

    ううう……すみません、
    なにを言っても余計なことばっかり言いそうで……。

  13. 吟子

    でも、どうしてこんなことに……。

  14. ……わからないわ。
    私も、3年間で初めてのことなの……。

  15. 吟子

    梢先輩……。

  16. ……もしも、ずっとこのままだったら……。

  17. 吟子

    そんな。

  18. 蓮華祭で、スリーズブーケだけ新曲を披露できない……
    なんてことになったら、あなたたちに申し訳がないわ。

  19. それなら……。 私があなたたちのサポートに回って、
    ふたりに曲を作ってもらった方が、確実かもしれないわね……。

  20. 吟子

    ……! それは……。

  21. コメント

    吟子、息を呑んで、うつむく。

  22. 吟子

    でも、あの……これも余計なことかもしれませんが……。

  23. 吟子

    あくまでも今回の曲は、私、
    梢先輩に作ってほしいです。

  24. ……それは、もうすぐ私が卒業してしまうから?

  25. 吟子

    それも、ありますけど……。

  26. 吟子

    なにより私、梢先輩の作った曲が、好きなんです。
    繊細で、どこか儚く、だけど雅やかで……。

  27. 吟子

    蓮ノ空の伝統となり、100年後も残り続けるのでしたら……
    梢先輩の曲がいいなって、そう思ったんです。

  28. 吟子

    ですから……。

  29. 吟子

    もちろん! 任せっきりというわけではなく、
    私も、できる限りはなんでもお手伝いします!

  30. 吟子

    まだ蓮華祭までは時間があります!
    最終的に曲ができていれば、いいんですよ!

  31. 吟子

    練習時間なんて、どうにかしますから!

  32. ……そう、そうなのね。

  33. ありがとうね、吟子さん。
    あなたの気持ちは、受け取ったわ。

  34. ……本当は私も、自分の手で作りたいの。

  35. スリーズブーケの最後を飾り、
    私のスクールアイドルとしての幕引きとなる曲だもの。

  36. やっぱり……悔いは残したくないから。

  37. コメント

    梢の言葉を大切に聞いている吟子。

  38. 吟子さんと、花帆と、3人で歩んできた道のりが、私にとって、
    どんなに大切な花道だったのかを、ちゃんと伝えたい。

  39. 言葉も想いも、いつかは忘れてしまうかもしれない。
    でも、歌は遺り続ける。たとえ50年だって……。

  40. そして歌が遺る限り、きっといつまでも、思い出は蘇り続ける。
    そんな歌を作りたいの。

  41. あなたたちのために。 応援してくれる人のために。
    そしてなにより……これから蓮ノ空を好きになってくれる人たちのために。

  42. コメント

    胸に手を当てる梢。それから、すがるように吟子を見る。

  43. だから、吟子さん。

  44. ……お願い。 もう少しだけ、一緒にもがいてくれる?

  45. 吟子

    はい! 私でよければ!

  46. コメント

    梢がやる気を見せてくれたことが嬉しくて、吟子は大きくうなずく。

  47. ……ふぅ。

  48. ……それじゃあ、ちょっと、無茶をしましょうか。

  49. 吟子

    お……お供いたします……!

  50. コメント

    花帆の部屋を訪ねる梢。先ほどの吟子とのラウンジのシーンの後、自分の部屋に帰って、コンサートやライブなどのチケット取りをしてから、花帆の部屋にやってきた、という体。

  51. コメント

    控えめなノックの音。

  52. 花帆

    はーい。

  53. 花帆、入るわね。

  54. 花帆

    梢センパイ!

  55. 調子はどう?

  56. 花帆

    もうすっかりよくなりました!
    明日からは、練習もできますよ!

  57. 確かに、顔色はいいみたいね。

  58. 熱も、下がっている。

  59. 花帆

    はい、おりこうさんにしてましたから!

  60. そう、偉いわね。

  61. 花帆

    えへへ。

  62. 花帆

    でもこれで、せっちゃんのためにがんばってくれた人たちにも、
    お礼を伝えることができました。

  63. 花帆

    あたしのラブライブ!は今度こそ、めでたしめでたし、です!

  64. ……1月の花帆は、すごかったものね。

  65. 花帆

    そうでした?

  66. ええ。
    ラブライブ!に優勝できたのも、
    悔いなくプレーオフを果たすことができたのも、

  67. 間違いなくあなたの活躍が大きかったわ。

  68. まるで花帆が、スクールアイドルの神様になってしまうのかと思ったぐらい。

  69. 花帆

    あたしが神様になったら、とりあえず蓮ノ空の周りにショッピングモールと、
    デパートと、遊園地と、中華街と、

  70. 花帆

    あとおいしいご飯のお店も、いっぱい作りたいですねえ……。

  71. 増えているわね、欲が……。

  72. ラブライブ!の後もあんなにがんばっていたんだから、
    もう少し休んでいてもいいのよ。

  73. 花帆

    そういうわけにはいきません!

  74. 花帆

    聞きましたよ。104期スリーズブーケの最後の曲を作ろうとしてる、って!

  75. あら……。
    花帆に言ったら無理をするかもしれないから、って、

  76. 具合が良くなるまで内緒にしようと思っていたのに。

  77. 花帆

    もう大丈夫です!
    なので、いつまでも寝てるわけにはいきません!

  78. 花帆

    この2年間、梢センパイとともに過ごした思い出をぜんぶ乗せて、
    できることなら4時間ぐらいの曲を作りたいんですけど……

  79. 花帆

    さすがにそれじゃあ、ライブが1曲で終わっちゃうので……!

  80. 曲は曲でも、戯曲になっちゃうわね……。

  81. 花帆

    なので、最高のユニット曲を作るために、
    あたしもできる限りのことがしたいです!

  82. 花帆

    かつてこの蓮ノ空女学院にいた、乙宗 梢という麗しき美女……。
    その伝説を、いつまでも語り継いでほしいんです、あたしは……。

  83. 待って。

  84. 花帆

    彼女の微笑みに生徒たちは心奪われ、歩けば足跡には花が咲き誇り、
    歌声には世界中の小鳥が集まってきたという……。

  85. やっぱりもう少し休んでいたほうがよさそうね……。

  86. 花帆

    こじゅえせんぱぁ~い。

  87. 別に、あなたを仲間外れにしようとしているわけじゃないのよ。
    ただ、まだ病み上がりでしょう。今は大人しくしていなさい、ね?

  88. 花帆

    わかりましたぁ……。

  89. それにね……。 今はちょっと私も調子を崩してて……。

  90. 花帆

    えっ、そうなんですか?
    一緒に寝ます!?

  91. 体調ではなくてね。 どうも、その……スランプになってしまって。
    曲作りが、ぜんぜん進まなくて……。

  92. ついさっきも、吟子さんに話を聞いてもらったばかりなの。
    上級生なのに、情けないわ。

  93. 花帆

    あたしも、あたしもいつでも話を聞きますよ!

  94. ……そうね。
    優しい後輩がいて、恵まれているわね、私は。

  95. 花帆

    スランプって、あの、すごい人がなるやつですよね。
    梢センパイでもそうなっちゃうこと、あるんですね。

  96. ……そうみたいね。
    私も、ずっと他人事だと思っていたわ。

  97. 花帆

    でも大変ですね、伝説の曲を作ろうってしてる時期に……。

  98. 花帆

    うーん……スランプ……スランプの解消法……。

  99. 花帆

    じゃあじゃあ、そっちのほうでもなにかお手伝いできるよう、
    いろいろと考えてみますね!

  100. ええ、ありがとう。
    とりあえずは、ジタバタもがいてみるつもり。

  101. 花帆

    ってことは、なにか名案が……!?

  102. そういうわけではないのだけれど……。

  103. 明日、私ね。
    吟子さんとデートしてくることにしたの。

  104. 花帆

    えっ……えええええええ!?