第8話『Not a marionette』
PART 7
さやか | わがままというから、何かと思いましたよ。 |
綴理 | ボクは、ボクひとりがやろうと思ったんだけど。 |
綴理 | 一緒にやりたいって人、結構多かったんだ。 嬉しかった。 |
梢 | 私は結局、趣旨がよく分かっていないのだけれど、これはなんなの? |
綴理 | すずを見てて……思ったんだ。 やりたいって。 これはーービッグボイス選手権だよ。 |
小鈴 | では、僭越ながら徒町、トップバッターいかせて貰います!! この場所を作ってくれた綴理先輩に、感謝を!! |
小鈴 | すぅ……徒町は!!! スクールアイドルがどうあるべきとか! 全然分かりません!! |
小鈴 | だから、スクールアイドルとはそういうものだって言われて、そうなんだ、 と思って諦めることしかできませんでした!! でも!! |
小鈴 | 徒町は、綴理先輩が卒業しないって言った時…… すっごく嬉しかったんだ!! |
小鈴 | 綴理先輩に、あんな悲しい顔させるものなんて、嫌いだ! 卒業なんて……卒業なんて! |
小鈴 | 時間、止まれえええええええええ!!! |
小鈴 | ……以上です!! |
小鈴 | ここでは、なんでも言っていいと聞いて、ぶちまけました!! せっかく、綴理先輩が作ってくれた舞台です! みんなも色々言おうね!! |
綴理 | ……ボクが先に進むためにひとつ、区切りが欲しかったんだ。 気持ちを吐き出す機会。 |
綴理 | そうしたら、すずも、みんなも、やりたいって言ってくれた。 ボクだけじゃなかったみたい。 区切りが、欲しかったのは。 |
さやか | ……。 |
梢 | そうね……抱えたままでは居られない気持ちを、吐き出す機会……か。 |
綴理 | そう、ビッグボイス選手権。 |
梢 | ……先輩と離れたくない。 卒業せずにここに居たい。 様々な、未練。 |
梢 | もしかしたら、 蓮華祭という催しは、そこから始まったのかもしれないわね。 |
綴理 | そうなの? |
梢 | どうかしら。 先輩の先輩の、さらに先輩…… その人たちの考えは、断定はできないけれど。 |
梢 | きっとそうかも……と思ったの。 どんなに先輩でも、その時の高校生だったんだから。 |
綴理 | じゃあ、そうだよ。 |
さやか | ふふ、かもしれませんね。 ……あ、花帆さんですよ。 |
梢 | そ、そう……やっぱり、花帆もなのね……。 |
花帆 | あの、あたしは今、ラブライブ!優勝を目指して、がんばっているので…… それ以外のことは、あんまり、考えられません! |
花帆 | 梢センパイとは、一生一緒にスリーズブーケです。 その想いにも、変わりはありません。 |
花帆 | でもやっぱりあたしは、 部室の雰囲気が、好きでした。 |
花帆 | スクールアイドルクラブの……梢センパイが紅茶を淹れてくれて、 慈センパイと綴理センパイが、お喋りしてくれて……。 |
花帆 | あたしたちのこと、いっぱいいっぱい構ってくれて……。 |
花帆 | みんな、みんな大好きなんです! |
花帆 | センパイ方がいないスクールアイドルクラブなんて、 ぜんぜん想像できません! |
花帆 | やだよー! 卒業しないでー! |
花帆 | ずっとずっと、あたしたちと一緒にいてくださいー! 一生スクールアイドルクラブしましょうよぉー! |
花帆 | ……これがあたしの本当の気持ちです! ご清聴ありがとうございました! |
梢 | ……。 |
さやか | ……わたしもですよ、梢先輩。 |
さやか | ユニットの先輩だけじゃなくて。 みなさん、102期生の先輩方が、大好きなんです。 |
さやか | 3人もいなくなってしまうなんて……それはちょっと、寂しすぎますよ。 |
梢 | ……ふふ、そうね。 賑やかなステージの後が、いちばん……寂しいものね。 |
慈 | 愛されてるね、私たち。 いやー、面白そうなことやってるじゃん? |
綴理 | こんなに大きくなるとは、ボクも思ってなかったよ。 |
慈 | ふぅん。 ……意外とそんなこともないんじゃないかな。 なんて。 |
綴理 | ? |
慈 | 綴理もやるんじゃないの? |
綴理 | ボクは、最後にやる……らしい。 |
慈 | そっか。 ちょっと来るの早かったかな……と。 |
姫芽 | ども~……なんでも言っていい場所と聞いて、 アタシも立たせていただきます。 |
姫芽 | ……言いたいことは1個だけなんですけどね~。 |
慈 | 姫芽ちゃん……。 あの子が言いたいことって……。 |
姫芽 | るりめぐ、離れ離れなんて嫌だ~~~!! |
慈 | ふふっ……そう、だよねえ。 |
姫芽 | めぐちゃんせんぱいは割り切ってる感じだし、 るりちゃんせんぱいも、そこに何も言ってなかった……。 |
姫芽 | それなら、アタシから言えることは、ほんとは何もないんですけど! でも! るりちゃんせんぱいだって、離れ離れにはなりたくないはずで! |
姫芽 | だから、その……めぐちゃんせんぱい!! どーすかもう1年!!! |
姫芽 | るりちゃんせんぱいだって……アタシだって、 もっともっと最強のみらくらぱーく!を、ずっとずっと見てたいんです~!! |
姫芽 | 以上です!! わがまま失礼しました~!!! |
梢 | 愛されているわね。 |
慈 | ま、そうだね。 姫芽ちゃんの気持ちとも、向き合ってあげなきゃ、か。 |
慈 | ……ん? |
瑠璃乃 | あー……いや、来るつもり、なかったんだけど。 |
瑠璃乃 | ひめっちがあれだけ言ったら、 ルリも言っておこうかなって思いました。 まる。 |
瑠璃乃 | こう、ちゃんとね。 ルリの思ってることは、ルリが言わないと、なんて。 ルリ思った。 ゆえにルリあり。 |
慈 | るりちゃんまで。 |
気持ちを纏めるために一度目を閉じて、瑠璃乃はゆっくり語り出す。 | |
瑠璃乃 | ……みんなさ。 未練とか、辛いこととか、すぐそこに来てるお別れとか。 大変なこと、いっぱいあるよね。 |
瑠璃乃 | ルリも、寂しいことはあるんだよ。 一緒に高校生活を送れるのは、もう少しの時間しかないんだなーって。 |
瑠璃乃 | ないんだ、なーって……。 |
瑠璃乃 | ……過ぎ去る時間って寂しいね! だから一日一日、大事にします! |
瑠璃乃 | そういう気持ちをしっかり固める機会を作ってくれて、ありがと! |
瑠璃乃 | ルリは……ルリが思う、世界中を夢中にするために…… これからも、頑張っていくよ。 |
瑠璃乃 | 離れていたって、 気持ちは同じだって信じてるから。 |
瑠璃乃 | だからっ…… めぐちゃんも、がんばれ!! 応援してる!! |
慈 | ……。 |
梢 | 改めて、良い催しだと思うわ。 |
慈 | 私も、そう思うよ。 |
綴理 | ん、だと嬉しい。 |
綴理 | それじゃあ、ボク行ってくるね。 みんなにも、聞いててほしい。 |
梢&慈 | ええ。/ん。 |
さやか | いってらっしゃい。 |
綴理 | みんな、今日は付き合ってくれて、ありがとう。 |
綴理 | ……ボクは、未来に進むのが怖かった。 でも、今は進める気がしてる。 |
綴理 | だから今日は、最後の錨を引き上げるために、これがやりたかったんだ。 みんな、聞いて欲しい。 |
綴理 | スクールアイドルは、未完成でも熱を持ったみんなで作る芸術。 この3年間でボクは、夢だったスクールアイドルになれたよ。 |
綴理 | だからありがとう、スクールアイドル。 ボクの踏ん切りは、もう着いてた。 だから最後の錨は、簡単だ。 |
綴理 | ボクはただ、 大好きなみんなと一緒に、スクールアイドルができなくなること…… 大好きなみんなと、離れること……それだけが、未練だったんだ。 |
綴理 | ありがとう、大好きだよ。 |
綴理 | ボクをスクールアイドルにしてくれたみんな。 ボクと一緒に、スクールアイドルをしてくれた……みんな。 |
綴理 | これからもずっとずっと大好きだよ。 |
綴理 | ボクは……ボクを頼りにして、卒業しても、頑張っていくから! |
綴理 | ……ありがとう。 |
綴理 | ……ボクのわがままは、これで終わり。 聞いててくれて、ありがとう。 |
梢 | ……こちらこそ、と言っておこうかしらね。 |
綴理 | ぁ……うん。 |
梢 | あなたのわがままは、確かに終わったみたいね。 |
綴理 | えっ……? |
慈 | ほら、聞いてあげなよ。 後輩の、晴れ舞台。 |
さやか | まったく…… わがまま言える場所なんてものを作るからこうなるんですよ。 |
さやか | わたしはこれから、自分の想いを叫ぶためではなく、 聞かせるために、この場をお借りします。 よろしいですね。 |
さやか | すう……。 |
さやか | 他の、どこの誰よりも!!! |
さやか | ーーわたしが、一番、あなたとずっと一緒に居たい! 決まってるでしょうが!!! |
綴理 | っ……! |
さやか | ……おしまい。 |