第4話『昔もいまも、同じ空の下』
PART 5
吟子 | ……お風呂でたよ。 |
姫芽 | あ、おかえり~。 |
小鈴 | 今ね、体験会楽しかったね~って、姫芽ちゃんと話してたんだ。 |
姫芽 | 楽しかった~。 |
姫芽 | めぐちゃんせんぱいも、 るりちゃんせんぱいも、ライブかってぐらい気合入れて和菓子作ってて~。 |
姫芽 | アタシの推し、ちょ~かわいかった~。 |
小鈴 | さやか先輩は手先が器用で、すごかったなあ。 |
小鈴 | あと綴理先輩の発想がすっごく独創的でね、 まるで風鈴に金沢という土地の魂を表現してるみたいで……! |
吟子 | あの……。 今さらなんだけど……なんか、ごめん。 |
小鈴 | え、なにが? |
吟子 | いや、なんというか……ぜんぶ……? |
吟子 | おばあちゃんなら伝統の衣装を直せるはずだって言って、 ここまでけっこうムリヤリみんなを引っ張ってきちゃって……。 |
姫芽 | 今さら~?? |
吟子 | お風呂入ったら、なんか冷静になってきて……。 |
吟子 | みんなのこと、伝統だなんだって引っ張りまわしたり、 |
吟子 | おまけに部屋足りなくて、 ふたりは私の部屋に泊まることになっちゃったし……。 |
小鈴 | ええ~? 楽しいよ! 徒町の家、人いっぱいでいっつもこんな感じだもん! |
姫芽 | それに、吟子ちゃんの部屋って、すごく吟子ちゃんって感じする~。 |
吟子 | そう、かな。 確かに、地味で私っぽい部屋かも……。 |
姫芽 | あはは……。 |
吟子 | ……きょうはね、私も楽しかった。 付き合ってくれて、ありがとう。 |
吟子 | 花帆先輩も、なんだかんだ最後には、楽しかったよって言ってくれて……。 こんな私でも、伝統の良さをみんなに伝えることができたなら、よかった。 |
吟子 | みんな、知らないだけなんだよ。 伝統って本当にかっこよくて、いいものなんだって。 |
吟子 | だから、私がラブライブ!を優勝して、言うんだ。 金沢にはこんなに素敵なものが、いっぱいあるんだよ、って。 |
姫芽 | 吟子ちゃんのきもち、わかるな~。 アタシもそ~ゆ~つもりで、スクールアイドル始めたからさ~。 |
姫芽 | 好きなものを好きだ~って、思いっきり叫びたいよね~。 その気持ちでラブライブ!が優勝できたら、最高だって思う~! |
小鈴 | ふたりは、ちゃんとしてるなあ。 |
吟子 | ……小鈴さん。 |
小鈴 | 徒町がラブライブ!優勝できるなんて、ぜんぜんまったく思ってないけど。 |
小鈴 | でもそれは徒町個人の話で。 蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブは違う。 だから、足を引っ張らないように、全力でがんばるよ。 |
小鈴 | ただ……徒町だけじゃなくて、 日本中のスクールアイドルがそう思ってるんだよね……。 |
姫芽 | ……そ~だね~。 言っても仕方ないことだけどさ~。 |
姫芽 | アタシたちが急に上級生になれるわけじゃないからねえ~……。 |
小鈴 | うん……でも、吟子ちゃんも、姫芽ちゃんも、 徒町の目から見たら眩しいっていうか。 |
小鈴 | 姫芽ちゃんはすっかりみらくらぱーく!に馴染んでるし、吟子ちゃんなんて、 きょうもすごかったし、みんなと衣装作ったりしてて……。 |
小鈴 | 徒町だけ、まだなんにもできてなくて。 |
吟子 | ……私だって。 |
吟子 | すごく不安だけど! でも、くじけたくないから! とにかく前だけ向かなきゃって、決めてるだけ! |
吟子 | だって……迷ってる間に、 花帆先輩も、梢先輩も、どんどん進んでいっちゃうから。 |
吟子 | 置いてけぼりにならないように、必死で……。 |
吟子 | 先輩たちの力になりたいって思うから! 一緒だよ! 小鈴さんと。 |
小鈴 | ……そうなんだ。 |
小鈴 | じゃあ、がんばろ、一緒に。 |
吟子 | うん……。 |
姫芽 | うれしいね~。 吟子ちゃんがまた少し心開いてくれて~。 |
吟子 | え、なにそれ! |
小鈴 | えへへ。 徒町たち、前より仲良くなれたよね。 |
吟子 | それは、まあ……。 というか、ふたりは最初からノーガードだったし……。 私が勝手に、小鈴さんと姫芽さんに壁作ってただけ、っていうか……。 |
吟子 | ああもう、ごめん。 なんかずっとめんどくさいよね、私。 ……ふたりとも、どうして仲良くしてくれるの? |
小鈴 | え、わかんない! ふつうこうなる! |
吟子 | そうかなあ……!? |
小鈴 | それに、どうしてって言われても。 吟子ちゃん、ちゃんとしてるし……んー、むしろ、こちらこそ……? |
姫芽 | アタシはね~。 |
姫芽 | 勝つためにやることやるのは当たり前~って思ってるから、 あんまり人に『努力してるな~』って思わないんだけど~。 |
姫芽 | 吟子ちゃんも小鈴ちゃんも、努力してるよね~。 ちょ~リスペクトしてるから~☆ |
吟子 | ……そうなんだ。 |
吟子 | あの……。 私、今まで同年代で仲良い人って、 あんまりいなかったから、なんかいろいろと間違えるかもだけど……。 |
吟子 | これからもどうぞ、よろしくお願いします。 |
吟子 | 仲良くしてくれたら、嬉しい、です。 |
姫芽 | あはは、態度かた~い~。 |
小鈴 | 徒町こそ、不束者ですが、なにとぞ……! |
お互い頭を下げ合う吟子と小鈴。 | |
顔をあげて、微笑む小鈴と、照れる吟子。 | |
小鈴 | ……えへへ。 |
吟子 | ん……。 |
姫芽 | あ、ね~ね~。 アタシ、いいこと考えちゃった~。 吟子ちゃんと、もっと仲良くなる方法~。 |
吟子 | え、なに……? |
小鈴 | なんで身構えてるの!? |
吟子 | だって姫芽さんも距離が近いから…… なんか、すごい無茶ぶりされそうで……。 |
姫芽 | しないよ~。 |
姫芽 | ただね、ときには呼び方ひとつでグッと距離が縮まってしまうということを アタシはこないだ実体験してねふふふ。 |
小鈴 | あ、瑠璃乃先輩とのことだ。 |
姫芽 | そう~! だからね、ここは吟子ちゃんもアタシたちのこと 『姫芽ちゃん』『小鈴ちゃん』って呼んでみるのはどう~? |
小鈴 | いいかも~! |
吟子 | ええ~……? |
吟子 | 大丈夫かな、それ……失礼じゃない……? 怒られたりとか……。 |
姫芽 | アタシが提案してアタシが怒ったら、それはもう、 そんな人と仲良くしなくていいと思うな~! スパブロで! |
小鈴 | わくわく。 |
吟子 | うっ……。 |
吟子 | …………小鈴、姫芽。 |
小鈴 | わ~。 |
姫芽 | お~、そうきたか~。 |
吟子 | ……ちゃん付けで呼ぶのとか、なんか恥ずかしくて。 |
吟子 | これじゃ、だめですか!? |
小鈴 | ううん、徒町は嬉しい! |
姫芽 | じゃあそれでいこっか、吟子ちゃん~。 |
吟子 | う、うん……。 |
吟子 | ……ねえ、小鈴、姫芽。 |
姫芽 | なぁに~? |
吟子 | ……他の人なんて、関係ないよね。 |
吟子 | 私たちの力がどんなに小さくても、それでも、 足したら先輩たちのプラスになるって信じて、 |
吟子 | 伝統の衣装だって復活させて……そして、そして。 |
吟子 | 優勝目指そうね、ラブライブ! |
小鈴 | うんっ。 |
姫芽 | やろぉ~! 一年生3人、病めるときも健やかなるときも、ともに助け合いながら~! |
吟子 | それなんか違うやつ! |
小鈴 | あはは~! |