第1話『未来への歌』

PART 14

花帆
……。
吟子
おはようございます。
花帆
あっ、吟子ちゃん!
吟子
……な、なんですか? そんな、顔色を変えて。
花帆
だって、吟子ちゃん、昨日……。
あたし、具合悪いのかな、って。
吟子
あ……いえ。
すみません。 先に帰っちゃって。
吟子
でも、大丈夫。
きょうはちゃんと、練習するから。
花帆
う、うん! そうだね、がんばろうね!
じゃあまずは、いつもの基礎練から!
花帆
わんつー、さんしー。 にいに、さんしー!
吟子
……。
花帆
そ、そうだ、吟子ちゃん!
そういえば、ライブでやる曲のことなんだけど!
吟子
…………。
花帆
吟子ちゃん?
吟子
え? あ、すみません。
なにか、言いましたか?
花帆
えっと……。
う、ううん! 続けよっか!
吟子
……はい。
吟子
おつかれさまでした。
それじゃあ、また明日。
花帆
うん……また、明日。
吟子
…………っ。
花帆
あ……。 吟子、ちゃん……。
吟子
……。
花帆
……なんでだろ。
声、かけられなかった……。
瑠璃乃
はぁ~……。
ごぞーろっぴーしみわたるぅ~……。
さやか
五臓六腑でしょうか……。
でもそうですね、この時間は二年生になっても変わらず、いいものです。
花帆
うん……。
さやか
……花帆さん、なにかあったんですか?
瑠璃乃
吟子ちゃんの話~?
花帆
あ、うん。 ご、ごめんね、気を遣わせちゃって。
あたし、もう二年生なのに。
瑠璃乃
そんな急に進化したりするもんじゃないっしょー。
花帆ちゃんは花帆ちゃんだよー。
さやか
そうですよ。 二年生になった瞬間、
花帆さんの考え方や話し方が変わったらびっくりします。
さやか
ええ、びっくりしました。
花帆
あはは……だよね。
花帆
あのね、吟子ちゃんの話なんだけど。
花帆
なんだか、最近元気がなくて。
練習には来てくれるんだけど、きもちが入ってないっていうか。
花帆
でも、普段はなんでもないように振る舞ってて。
……もしかしたら、あたしがなにかしちゃったのかな。
さやか
心当たりが?
花帆
それが、よくわかんなくて。
花帆
梢センパイに言われて、
あたしのやり方で仲良くなろうってがんばってたつもりなんだけど……。
花帆
でも、あたしってほら、空気読めなかったり、
喋り過ぎちゃったりするから……
知らないうちに、嫌なことしちゃってたのかな、って。
瑠璃乃
……それ、その吟子ちゃんが、言ってたの?
花帆
わかんない……。
吟子ちゃんがなにを考えてるのか、ぜんぜんわかんなくて。
花帆
あたし、先輩なのに……。
瑠璃乃
花帆ちゃんはできることを一生懸命がんばってるって、ルリは思うよ。
花帆
でも、梢センパイのときは、あたしのことをなんでもわかってくれて……。
あたしがどうすればいいのか、ちゃんと正解を教えてくれて……。
瑠璃乃
んー……。
さやか
ねえ、花帆さん。
花帆さんには花帆さんの、いいところがありますよ。
さやか
梢先輩にはない、花帆さんだけのいいところが。
花帆
……そんなの、あるのかな。
瑠璃乃
あるよ。
瑠璃乃
今の花帆ちゃんはさ、こずパイセンの良いとこと、
花帆ちゃんのダメなとこで勝負してるようなもんだよ。
さやか
花帆さんは明るくて、お話するだけで元気をくれる。
さやか
……どうでしょう。
それはきっと、あなたにしかない魅力ですよ。
瑠璃乃
花帆ちゃんなんだからさ、しっかり踏み込んだ方が良いよ。
ルリもそれで、ようやく仲間になれたんじゃん?
花帆
瑠璃乃ちゃん……うん。
さやか
わたしは少なくとも、理想の“センパイ”より、
ありのままの“花帆さん”の方が好きですよ。
さやか
わたしたちも晴れて、先輩として一年生なんです。
一歩一歩、ともに頑張りましょう。
瑠璃乃
だいじょーぶ。
瑠璃乃
ジッサイ、さやかちゃんが言った通り、
花帆ちゃんは話すだけで魅力的なんだしさ!
花帆
瑠璃乃ちゃん、さやかちゃん……。
ありがとう。
花帆
あたし、話してみようと思う。
花帆
拒絶されるんじゃないかって、怖かったけど……。
でも、今のままよりは、そっちのほうがいい!
花帆
だってあたしも、梢センパイとスリーズブーケになれたのは、
しっかり自分の気持ちを伝えられたからだもん!
花帆
いってみるね!
さやか
あっ、花帆さん!
瑠璃乃
ぅわわわっ……! あ、いっちゃった。
さやか
……うまく、いくといいですね。
瑠璃乃
ん! さやかちゃんもね!
さやか
はい、瑠璃乃さんも!