第1話『未来への歌』

PART 13

花帆
吟子ちゃんー、部活いこー!
吟子
あ、花帆先輩。
吟子
みんな。 それじゃ私、部活いってくるね。
吟子
すみません、わざわざ迎えに来てもらって。
花帆
え、ううん、ぜんぜん……。
それより! 吟子ちゃんお友達できたの!?
吟子
えっ、ええと……。
吟子
友達……というか、話に付き合ってくれる人は、
何人か、できたけど……。
花帆
それ友達だよね!?
やったー!
吟子
……なんで、花帆先輩が喜ぶの?
花帆
えー、だって嬉しいよ! あたしちょっと戻って、
吟子ちゃんと仲良くしてねって言ってこようかな。
吟子
本気でやめて!
吟子
……スクールアイドルクラブに入ったから、って。
花帆
え?
吟子
私がスクールアイドルやってるのを見て、声かけてくれたの。
吟子
なんか……スクールアイドルが好きみたいで。
応援したいって……言ってくれて……。
花帆
すごい、すごーい!
吟子
ちょっ、先輩っ。
花帆
それじゃあ、素敵なところを見せてあげなくっちゃ!
世界でいちばんの初ライブにしようね! 吟子ちゃん!
吟子
ああもう! 言わなきゃよかったー!
花帆
ふいー、おつかれさま~~~。
吟子
お疲れ様です。
きょうは、ステージ制作も、ずいぶん進んだね。
花帆
うん! あともう一息って感じ!
花帆
ふふっ、吟子ちゃんも楽しそうだったね。
ペンキ塗りながら、鼻歌歌ってたよ。
吟子
……歌ってないけど。
花帆
えー? 歌ってたよー。
物作りって、楽しいよね!
吟子
楽しいですね。 歌ってませんけど。
花帆
あたしもね、
スクールアイドルクラブに入って初めてのことばっかりだったけど、
ひとつひとつ丁寧に梢センパイが教えてくれたから!
花帆
なんとかやってこれたんだ!
吟子
そうですか。
花帆
だからね、吟子ちゃんも、なんでもあたしに頼ってくれていいからね!
吟子
……確かに、梢先輩は、すごく雰囲気ありますよね。
二年生の頃から、あんなに雅やかな方だったんですか?
花帆
みやびやか?
吟子
……上品で優雅、という意味です。
花帆
それはもう!
花帆
すごいんだよ梢センパイは!
なんでもできちゃうし、なにやっても大人っぽくて美しいの!
花帆
あたしが去年の梢センパイと同い年だなんて、信じらんないぐらい!
吟子
わかった、わかりましたから。
もう。 梢先輩の話になると、すぐ熱が入るんだから……。
花帆
えへへ。 吟子ちゃんにも、梢センパイのすごさをわかってほしくて。
あたしとはほんとに、ぜーんぜん違うんだから。
吟子
……花帆先輩も私から見たら、ちゃんとしてるけど。
花帆
え? なになに?
吟子
……なんでもない。
花帆
あーそうだった! 忘れてた!
そろそろライブの曲決めなきゃ、練習時間なくなっちゃう!
花帆
昨日、梢センパイに言われてたのにー!
吟子
……やっぱり、ちゃんとしてない。
花帆
ねえねえ、吟子ちゃんはどんな歌がいい?
吟子
えっ……? 花帆先輩、作曲もできるの?
花帆
ええっ!? で、できないよぉ!
花帆
お、お手伝いしたことは、あるんだけど……。
梢センパイに、キーボードをね、少しずつ教わってて……。
吟子
楽器弾けるんだ……。 花帆先輩、すごい……。
花帆
ぜんぜん! まだ、ぜんぜんへたっぴだから!
あ、だからね! 今回は、今ある曲の中から選ぼうね!
吟子
今ある、曲……。
……そっか、蓮ノ空の曲……!
吟子
あ、あの! リストを見せてもらっても、いい!?
花帆
え? うん。
大丈夫だよ。 そんなに焦らなくても、曲は逃げないからーー。
吟子
今ある曲……今ある曲……。 あれ……。
花帆
吟子ちゃん?
吟子
あの、これって、スリーズブーケのリストだよね?
吟子
DOLLCHESTRAと、みらくらぱーく!のも、見せてもらってもいい?
いいですか?
花帆
う、うん。
吟子
……ない。 あの歌も、あの歌も……。
どこにも……。
花帆
……吟子ちゃん?
花帆
えと、タイトルで気になるものがあったら、
曲を流すこともできるけど……。
吟子
…………。
花帆
え、えっと……?
吟子
……あ。 ごめんなさい、花帆先輩。
きょうは、帰ります。
吟子
お疲れさまでした。
花帆
う、うん……。
えと、また明日ね!
吟子
……。
花帆
吟子ちゃん……?