第18話『いずれ会う四度目の桜』
PART 8
綴理 | ……ふぅ。 |
梢 | これは……。 |
慈 | えっ……とりあえず合わせてみただけだよね? |
梢 | そうね、そのはずよ。 3人で集めたものを、合わせただけ。 |
梢 | もちろんある程度、歌詞に合わせてテンポを取ったけれど……。 |
綴理 | みんなすごい。 |
慈 | すっごい! 私たち最強じゃん! できすぎ!! |
綴理 | できすぎじゃないよ。 みんなすごい。 |
慈 | あ、綴理が全肯定マシーンに……。 |
梢 | でも、それぞれの持ち寄ったものの完成度が高かったからこそ、 できたもの。 |
梢 | 綴理の言う通り、少しは誇っていいのかもしれないわね。 ……成長の証として、披露できるものだと思うわ。 |
慈 | やっぱり、私たち成長したよね! |
梢 | ええ、ただ……。 |
綴理 | ただ? |
梢 | いえ……。 私は、花帆に手伝ってもらったから。 私ひとりの全力と言うには。 |
綴理 | ? それが全力でしょ。 ボクもさやにお願いしたよ。 めぐは? |
慈 | 私も当然るりちゃんを巻き込みました! それも私の力! |
梢 | ……そうね。 あなたたちが正しいわ。 私も、全力を尽くしたのよ。 |
綴理 | 今のボクたちの全力が詰まった曲になった。 きっと、さちもすごく喜ぶはずだ。 |
綴理 | 今日はぐっすり寝られる。 昨日ちょっと寝付けなかった。 |
梢 | ぜひ寝不足は回避してほしいところではあるのだけれど。 うーん……。 |
慈 | まだ、なんか足したいとことかある感じ? |
綴理 | ボク、今日も寝れない……? |
梢 | なんというか……。 いえ、言うだけ言うわね。 少し冷静になって、思ったのだけれど。 |
梢 | この曲、少し沙知先輩に寄りすぎていないかしら……。 |
綴理&慈 | ……。 |
綴理 | ? |
慈 | 言われて、みると……先輩に貰った気持ち、 優しさ……先輩に与えられたものに、 嬉しかったって伝えたい……大好きだった……。 |
慈 | もしかして、これラブレターみたいになってない!? |
梢 | そう! そうなのよ! |
慈 | うわー、なんか恥ずかしくなってきた! |
綴理 | ……えっと、ごめん。 何がダメなの? すごくいいよ、これ。 |
慈 | え~~~っとねえ? 確かに私たちは120点…… いや、沙知先輩に対して言えば150点のものを作れたと思う! |
慈 | それはとてもいいことなの! |
綴理 | うん。 |
梢 | でも私たちが作るべきは、蓮華祭で発表する曲なの。 沙知先輩への感謝の気持ち、はもちろんそうなのだけれど……。 |
慈 | 沙知先輩にしか届かなくて、周り全員ぽかーんとしてたら、 それはそれで先輩が安心して卒業できないよね! |
綴理 | そう、なんだ。 ごめん、よく分からなくて。 じゃあ、どうすればいいの? |
慈 | 分からん! |
梢 | ……少し、手立てを考えましょうか。 |
綴理 | ……さちにしか届かない曲、か。 |
梢 | 蓮華祭の準備は、これで十分かしらね。 |
花帆 | はい! 準備万端ですね! あとは、その。 先輩たちが作っていた曲なんですけど。 |
梢 | そうね……もういっそ、新しい曲を作ろうかしら。 |
花帆 | 何度だってお手伝いしますよ! |
綴理 | これだと、どうかな。 さちのことは、それなりに好きみたいな。 |
さやか | た、たぶん、変えない方が良いと思います。 せっかく完璧に作れた振り付けですし……。 |
慈 | るりちゃん、こっちきて。 |
瑠璃乃 | またー? はいはい、どーぞ。 |
慈 | ぎゅー。 もう1個絞り出さなきゃー。 |
瑠璃乃 | がんばれー。 |
沙知 | やー諸君、元気に……。 |
花帆 | あ、沙知センパイ。 こんにちは。 |
沙知 | あ、ああああ。 こんちゃー。 |
花帆 | どうしたんですか? |
沙知 | いや、なんでもない。 キミたち一年生も、だいぶ部室に馴染んだなーって思ってさ。 |
慈 | あー分かった。 卒業前でセンチになってるんだ、沙知先輩はカワイイなー。 |
綴理 | そうなの、さち? |
沙知 | こほん……去年あれだけ自慢してた大好きな幼馴染に、 ぴったりくっついてる慈後輩もなかなか可愛いぞ。 |
慈 | ま・ね♡ |
慈 | おかげさまで、一緒だよ。 |
瑠璃乃 | へいめぐ、ルリなんも知らねー話出てきた。 |
慈 | 知らなくていいよ★ |
さやか | あの、沙知先輩はお仕事で来たんじゃ……。 |
沙知 | あはは。 いやすまない。 お仕事じゃないんだ。 というか、もう生徒会長としての業務は全て終えている。 |
沙知 | 卒業式の前に、部室を見納めに来たんだ。 |
花帆&さやか&梢&綴理&瑠璃乃&慈 | ……。 |
綴理 | 留年すれば? |
慈 | 確かに。 |
沙知 | さらっととんでもないこと言うんじゃないよ。 |
綴理 | でもさち、寂しそう。 |
沙知 | ……やれやれ。 綴理というやつは相変わらず。 |
梢 | 沙知先輩。 蓮華祭は出席されますよね? |
沙知 | ああ、そうだね。 |
沙知 | 蓮ノ空の卒業は、卒業式よりも実質蓮華祭みたいなところあるしね。 キミたちのパフォーマンスにも、心から期待しているよ。 |
梢 | ええ、任せてください。 |
梢 | スクールアイドルクラブとして、 これまでの先輩方に恥じないライブをお届けします。 |
梢 | 私たちが沙知先輩以外の先輩を知らない以上、 あなたに判断していただく他ありませんから。 |
沙知 | そうだね。 キミたちは、あたし以外の先輩を知らない。 |
沙知 | ……思えば、蓮華祭も未経験だったよねぃ。 |
梢 | 沙知先輩? |
沙知 | ……。 |
沙知 | 生徒会長としての仕事は終わったとはいえ、 蓮華祭でもあたしのやりたいことはあるんだ! |
沙知 | キミたちには最高のステージを用意するよ! |
瑠璃乃 | 最高の、ステージ……!? |
さやか | 最高とは……期待させていただきますね、沙知先輩! |
花帆 | じゃあ、あたしたちも最っ高のライブでお返ししますね! |
沙知 | ふっ……ああ、頼んだよ、キミたち! |
沙知 | ぃよし! |
沙知 | それじゃあ、また明日とか! |
さやか | もう、見納めは良いんですか? よろしければ部室の鍵をお渡しするので、いつでもーー。 |
沙知 | 見納めは、 キミたちスクールアイドルがいることが大事だったからね。 |
沙知 | べつに、まだ3月中は校舎中どこにでも生息してるから、 また会う時もあるさ! |
瑠璃乃 | 生息。 |
沙知 | それじゃ。 |
梢&綴理&慈 | ……。 |