第13話『追いついたよ』
PART 5
慈 | 沙知せんぱーい。 なんか機嫌よくないですか? |
沙知 | ん?ああ、慈か。 まーね。 ほら、窓の外。 |
慈 | 雨嫌いじゃなかったっけ。 |
沙知 | 嫌いというと強い言葉だなー。 得意ではない、くらいだよ。 ほら、湿気がね。 髪をぺたんと。 |
慈 | ああ、余計にちっちゃくなるから……。 |
沙知 | ちっちゃいゆーな! |
梢 | 大丈夫ですよ。 沙知先輩は、ちっちゃくても頼りになりますから。 |
沙知 | 梢ぇ……フォローに見せかけて背中から刺したな……? |
梢 | ふふ。 どうでしょうね。 |
綴理 | ……雨でちっちゃくなるのに、雨でご機嫌? |
沙知 | ちっちゃくなるわけじゃないんだが! むしろ、そろそろ止みそうなんだよねぃ。 |
慈 | なんか午後、外出る予定ありましたっけー。 |
綴理 | 市場。 |
梢 | あなたは市場好きねぇ……。 |
沙知 | あっはっは。 予定があるわけじゃないよ。 |
沙知 | ただ、そうだな。 せっかくだし、キミたちにもあたしの好きなものをシェアしようじゃないか。 |
沙知 | ……ほら、もうすぐだ。 |
綴理 | わ……。 |
沙知 | あたしはさ。 この、雨が止む瞬間が一番好きなんだよねぃ。 |
梢 | あ、慈。 |
慈 | なにがイベント日和だよー! |
梢 | 急に雲行きが変わったみたいね。 なんて間の悪い……! |
慈 | どうしよっか……。 天気予報も晴れだったし、私の六号車グループは、 傘なんて誰も持ってないよ。 |
梢 | それは私のところも同じね。 あら……みんな! |
花帆 | 中学生のみんなは一応、屋内に案内終わりました! |
さやか | 実行委員さんたちが先導してくれて、今は繋ぎのために体育館のスクリーンで 学校説明会の動画を流してくれてます! |
瑠璃乃 | でも、どーするの、このあと! 実行委員の人たちも、なんかノープランらしいよ! |
慈 | ノープランというよりは、 もうほとんどのプランが終わってるからでしょうね……。 |
慈 | ちなみに、中学生の子たちは傘持ってた? |
さやか | いえ、それが。 |
花帆 | 誰ももっていなくて。 |
梢 | なるほど……どうすれば良いのかしらね。 |
さやか | あの、綴理先輩はーー。 |
綴理 | みんなここに居たの。 良かった。 |
綴理 | 今日来た子たちに聞いたらね、一日ずっと、すっごく楽しかったって。 |
綴理 | 案内してくれた人のおかげって言ってたから……みんなが凄かったんだ。 |
梢 | それは嬉しいお話ね。でも綴理、今はそれよりーー。 |
綴理 | そうだね、ライブの準備をしないとね。 |
花帆 | わ、ライブできるんですか!? |
綴理 | するよ? |
瑠璃乃 | うぉー、まじか。 それならそれで気合入れ直さないとだー。 |
梢 | 綴理。 ……大丈夫なの? |
綴理 | うん。 このオープンキャンパスは、絶対に成功させる。 |
慈 | ……そ。 分かった。 じゃあどうすればいい? |
綴理 | 色々探したいんだ。 どうにかして、予定通りライブするための、なにか。 |
慈 | ん、おっけ。悩むより行動だね。 ちょっと実行委員の人たちに話してみようか。 行こう、るりちゃん。 |
瑠璃乃 | 分かった、最後までやりきりたいもんね! |
梢 | ……ライブがしたいのは、私も同じ。 体育館とか、他に使える場所がないか聞いて回りましょう。 |
花帆 | あたしも行きます。 それから、綴理先輩! |
花帆 | 今日、みんなと色んな話が出来ました。 |
花帆 | 凄く楽しかったし、ライブのことを楽しみにしててって言ったら、 みんな本当に期待してくれて……。 |
花帆 | あたし、約束したんです! みんなの心に、おっきなお花を咲かせるって! だから、最後まで絶対に成功させましょうね! |
綴理 | うん。 |
花帆 | 行きましょう、梢先輩! |