第10話『ルリめぐ・ファンファーレ』
PART 6
瑠璃乃 | めぐちゃん、すっごーい! ダンスじょうず! まるで、大人のお姉さんみたい! |
慈 | ふふーんっ、でしょでしょー☆ まっ、家でほんのちょっと練習しただけなんだけどねー☆ |
瑠璃乃 | えー!? めぐちゃん天才じゃーん! |
慈 | ……ほんとは3日ぐらい練習してたけど。 |
瑠璃乃 | え? なになにー? |
慈 | あ、ううん! なんでもない! |
慈 | ほらほら、次はるりちゃんの番だよ。 私がちゃーんと教えてあげる。 ふたりで踊ったら100万倍かわいいんだから! |
瑠璃乃 | 世界中が、めぐちゃんとルリに夢中になっちゃうねー! |
慈 | そゆこと! |
慈&瑠璃乃 | いえーい! |
慈 | えー!? るりちゃん、転校しちゃうの!? |
瑠璃乃 | ……うん。 |
瑠璃乃 | やだ……。 ルリ、めぐちゃんと離れ離れになりたくない……。 |
瑠璃乃 | ずっと、めぐちゃんと一緒にいる……。 |
慈 | るりちゃん……。 |
瑠璃乃 | ライブまで、あと3日……。 |
瑠璃乃 | 今度こそだよ、めぐちゃん。 ルリたちで、世界中を夢中に……。 |
瑠璃乃 | 歌もダンスもがんばってきたし、 体力だってついた! |
瑠璃乃 | あとはステージにあがって、 べりーべりーがんばるだけ……なんだけど。 |
瑠璃乃 | はぁぁ……ルリ、大丈夫かなぁ。 もしライブ中に充電が切れちゃったら……。 |
瑠璃乃 | あ、終わりです。 ではさよなら……。 |
慈 | る、るりちゃん……!? |
瑠璃乃 | ぜんぜんだめじゃん! だめすぎる! |
瑠璃乃 | でもこればっかりはどうしようもないし! |
瑠璃乃 | ソーラーパネルでも背負ってればいいのかなー! らーいぶ天気になーれー! |
慈 | るりちゃん、なにしてるの。 |
瑠璃乃 | て、てるてる坊主作ってる……。 |
慈 | そう。 まあ、ライブは晴れててほしいもんね。 |
瑠璃乃 | う、うん……。 あ、っていうかどうしたの、めぐちゃん。 |
瑠璃乃 | 部活復帰する気になった!? |
慈 | いいえー。 梢に借りたノートを、返しに来ただけでーす。 |
瑠璃乃 | ふーん。 めぐちゃん、勉強だけは苦手だったもんね。 |
慈 | 私が苦手なのは『学校の』勉強だから。 テストの点が取れないだけだよ。 |
瑠璃乃 | だから蓮ノ空に入れられちゃったんだもんねー。 |
慈 | そう! せっかくタレント活動もうまくいってたのに! |
慈 | お願いだから一般教養を身に着けてねって 寮に閉じ込められちゃって! 人生終わったーって思ったよ! |
瑠璃乃 | めぐちゃん、魑魅魍魎って書ける? |
慈 | ばかにしないでくれる? それぐらい簡単に……。 簡単に…………書けるわけないでしょうがぁ! |
瑠璃乃 | あははっ。 |
慈 | るりちゃんのライブ、もうすぐだね。 |
瑠璃乃 | んっ! めぐちゃんは、もちろん来てくれるよねっ? |
慈 | まあ……。 |
慈 | でも、大丈夫なの? |
瑠璃乃 | え、なにが? あ、いや、確かに合宿では、 まだまだ実力が足りてないところも見せちゃったけど! |
瑠璃乃 | でも、ちゃんと努力は続けているんだからね! 梢先輩も綴理先輩も、こんなに!? ってぐらい親身になってくれてるし! |
慈 | そうじゃなくて、ほら。 るりちゃん、人と一緒だと、すぐよわよわになっちゃうじゃん。 |
瑠璃乃 | そ、それは。 |
慈 | なのに、ほんとにみんなの前でライブができたりするのかなー、って。 |
瑠璃乃 | る、ルリだって! 留学でパワーアップしたんだよ! 前より、ずーっとたくましくなったんだもん! |
慈 | そうかな、どうかなー。 失敗するかもしれないんだったら、 もうちょっと練習を積んでからのほうがいいんじゃない? |
瑠璃乃 | のーぷろぶれむ! |
瑠璃乃 | ルリのスペシャルでマーベラスなステージを見せて、 めぐちゃんに元気になってもらうんだから! |
慈 | それなんだけど……。 私のためにライブを開きたいっていうんだったら、やめたほうがいいよ。 |
瑠璃乃 | えっ、どうして。 |
慈 | 気持ちは嬉しいし、るりちゃんのステージは、私も楽しみだけど……。 |
慈 | でもね、それを見ても、 私がまたステージで踊れるようになるとは、思えないから。 ごめんね。 |
瑠璃乃 | なんでそんなこと言うの!? 大丈夫だよ! ルリ、がんばるよ! |
慈 | がんばるとか、そういう話じゃなくてさ……。 |
慈 | るりちゃんと連絡取らなくなってからも、 どうにかまたステージに立てるようにって、 |
慈 | 私もあれこれ手を尽くしてたんだけど、結局、だめだったから。 |
慈 | 好きだったスクールアイドルのライブにいったり、 梢や綴理に手伝ってもらって、リハビリやってみたりしたけど。 |
慈 | でもね、なんにも変わらなかった。 |
慈 | 今さら、るりちゃんがライブをしたところで。 |
瑠璃乃 | ルリが……。 ルリがバッテリー切れになるかもしれないからって、 心配してそんなこと言ってくれているの……? |
慈 | 違うよ。 私は、るりちゃんに無駄な努力をしてほしくないだけ。 |
瑠璃乃 | やってみるまで、わかんないじゃん! ね、どうしてそんなこと言うの!? |
瑠璃乃 | やっぱりもう、スクールアイドルのこと、 好きじゃなくなっちゃったの!? |
慈 | 違うってば! |
慈 | 私のためとかじゃなくて、ちゃんと、 自分のためにスクールアイドルをしてほしいの。 |
慈 | きっと、楽しいことがたくさん待っているから。 だから。 |
瑠璃乃 | ルリは、めぐちゃんとスクールアイドルがしたいの! |
慈 | うるさいなあ! だったら、言ってあげるよ! |
慈 | スクールアイドルなんて、もう飽きたの! どうせ、ただの暇つぶしで始めただけだし! |
慈 | ねえ、これでいいの? こう言えば満足!? |
瑠璃乃 | ウソだよ! だって、電話であんなに楽しそうに……。 |
慈 | 今度はね、スクールアイドルで世界中を夢中にさせちゃうんだから。 |
慈 | ねえ。 るりちゃんも、早くおいでよ、蓮ノ空にーー。 |
瑠璃乃 | めぐちゃんのばか! なんて言われても、ルリは止まらないんだからね! |
瑠璃乃 | ぜったい、ぜったいぜったい、めぐちゃんとスクールアイドルするまで! |
瑠璃乃 | ばーかー! |
慈 | ……るりちゃん。 |
慈 | るりちゃんの、ばか……。 なんでこんな、私のために……そこまで。 |
梢 | なにか、あったの? |
綴理 | 今、るりが、飛び出していって……。 めぐ? |
慈 | え? ああ、うん、ぜんぜん、なんでもないよ! |
慈 | ただ、ちょっと軽くケンカしちゃっただけ。 ぜんぜん、だいじょーぶ。 |
慈 | あ、靴。 |
梢 | え? |
慈 | ふたりとも、まだこんなの取っておいたんだ。 |
慈 | 部室に置きっぱなしで、もう1年経っているんだから、 捨ててくれちゃってもよかったのに。 |
梢 | ……まだ、慈はスクールアイドルを辞めたわけじゃないもの。 |
綴理 | いつか戻ってきてくれるって、そう思ってたから。 |
慈 | うん。……うん。 |
慈 | こずえ、つづり……。 私、くやしい……。 |
慈 | るりちゃんに、あんなに言ってもらっているのに……。 |
慈 | 目を閉じるといつだって、 スポットライトの中で立ちすくんでいる自分が、浮かぶんだ。 |
慈 | 何度も、踊ろうとしたのに、でも、できなかった。 |
慈 | ふたりにはいっぱい付き合ってもらって、それでも、だめで……。 |
慈 | ステージぶち壊しそうになって、 そのたびに必死にフォローしてもらって……。 |
慈 | こんなの、もうやめようって、諦めたはずなのに……。 |
慈 | この、この……! 役立たず! |
梢 | 慈、自分の脚をそんな風に、叩いちゃーー。 |
綴理 | せっかく、きれいなのに。 |
慈 | だって! |
慈 | だって……。 ずっと悔しいんだ……。 |
慈 | なんで、ステージで踊れないんだろ……。 もう……どうすれば、いいのかな……。 |
慈 | やっぱり、諦めるしか、 ないのかなぁ……。 |
瑠璃乃 | ……。 めぐちゃん、ルリ、がんばるかんね。 |