第9話『ルリ・エスケープ』
PART 6
花帆 | 瑠璃乃ちゃん、部活一緒にいこ! |
瑠璃乃 | う、うん。 いこっか、花帆ちゃん。 |
瑠璃乃 | あれ、さやかちゃんは? |
花帆 | 先に部室に行っているよ。 ほら、瑠璃乃ちゃんも早く早く。 |
瑠璃乃 | 花帆ちゃんは、いつでも元気満点だねえ……。 |
花帆 | ……もしかして、きょうも、もう閉店間近だったりする? |
瑠璃乃 | 転入生ってことで、しばらくは動物園のパンダ状態だからねえ……。 |
花帆 | そ、そっかぁ。 うん、でも大丈夫! なんたってあたしたちには、秘策もあるから! |
瑠璃乃 | 秘策ぅ……? |
花帆 | さ、瑠璃乃ちゃん。 これが生まれ変わったスクールアイドルクラブだよ! |
瑠璃乃 | そんなこと言ったって、なにも変わってなくない……? |
瑠璃乃 | ええと、おつかれさまでーす。 |
さやか&梢&綴理 | ……。 |
瑠璃乃 | え……。 |
瑠璃乃 | あの。 おつかれさまデース……? |
綴理 | えっと、おつかれーー。 |
さやか | しっ、綴理先輩! だめです! |
瑠璃乃 | ナニコレ。 いじわる? |
花帆 | ふっふっふ。 |
花帆 | どうかな、瑠璃乃ちゃん。 みんなできる限り瑠璃乃ちゃんに構わないようにするから。 これで、部室にいても、独り気分が味わえるってわけだよ! |
瑠璃乃 | ぜーー。 |
花帆 | ぜ? 絶好調? |
瑠璃乃 | ぜんぜんちがう…………。 |
花帆 | 違う……!? そっかぁ。 |
さやか | やっぱり、だめじゃないですか……。 |
花帆 | いいのいいの。 じゃあ、次の作戦はねー……。 |
瑠璃乃 | て、ていうか! なんなんですかね、これは……。 |
花帆 | ほら、きょう一日しかチャンスがなかったから、 手当たり次第に試してみようと思って。 |
花帆 | 瑠璃乃ちゃんがスクールアイドルクラブでも居心地よく過ごせるように! いろんなアイディア考えてきたから、期待してて! |
瑠璃乃 | え、ええー……? なんで、そこまで。 |
花帆 | だって、ひとりで考えてうまくいかなくっても、 みんなで考えたらもしかしたら、抜け道とかあるかもしれないじゃん! |
綴理 | ボクたちも、そうだったもんね。 |
梢 | ……そうね、その通りだわ。 |
花帆 | 瑠璃乃ちゃんも辞めずに済んで、バッテリーが切れなかったり、 あるいはバッテリーが切れても気にしなくていいような、そういうの! |
花帆 | ね、もっとあたしたちに、瑠璃乃ちゃんのこと、教えて。 |
瑠璃乃 | ルリは……。 ……小学校の頃ね。 |
瑠璃乃 | ルリ、楽しいだけの空間が好きだったんだ。 周りのみんながニコニコしてて、ずっと楽しいことだけ続いていく。 |
瑠璃乃 | でも、それってほんとはすっごく難しくて。 |
瑠璃乃 | 誰かがイライラしたり、不機嫌になったりするたびにね。 ルリががんばって、みんなの空気を和らげようとしてたら……。 |
瑠璃乃 | 最初は楽しいことを守るためだったのに、 すっかり、それが癖になっちゃってた。 |
瑠璃乃 | いつでも、気になっちゃうんだ。 |
瑠璃乃 | グループで、誰かつまんなそうにしてる子はいないかな、 疲れたりしてないかな、って。 |
瑠璃乃 | もしそういう子がいたら、 ルリがぜったい楽しませてやるんだぞー、って思ってた。 |
さやか | そんなことを続けていたら、瑠璃乃さんのほうが……。 |
瑠璃乃 | うん……。 ルリのほうが先に、へたっちゃうよね。 だから、徐々に独りでいる時間が増えていって……。 |
さやか | わかります……。 大変ですよね、人間関係って……。 |
瑠璃乃 | そんなある日ね、気づいたの。 |
瑠璃乃 | え、ヤバ! 独り、めっちゃ楽しいじゃん! って! |
さやか | え? 思ってた展開と違う……。 |
瑠璃乃 | 誰にも気を遣う必要がなくって、ぜんぶ自分の好きなようにできる! 地平線の向こうまで広がるような自由! |
瑠璃乃 | ここには楽しいことしかない! いっつぁわんだふるわーるど! |
瑠璃乃 | 以降ね、ルリはガマンするのやめたんだ。 ルリが好きなのは楽しいこと。 |
瑠璃乃 | だから、楽しいことだけ追い求めて、そして! |
花帆 | そして、スクールアイドルクラブに来てくれたんだよね! |
瑠璃乃 | いや、それは。 |
花帆 | ありがとうね、瑠璃乃ちゃんのこと、 いっぱい聞かせてくれて。 |
花帆 | あたし、昨日までは瑠璃乃ちゃんのこと、ぜんぜん知らなかった。 だから、いっぱい新しく知れて、嬉しい。 |
瑠璃乃 | そ、それは、でもでも。 今から知ったって、もう手遅れっていうか。 |
瑠璃乃 | ルリ……昨日、花帆ちゃんにも嫌なこと、 いっぱい言っちゃったし……。 |
花帆 | あたしは、そんなことないと思う。 |
花帆 | 楽しそうって感じたから、スクールアイドルやってみようって、 来てくれたんだよね。 |
花帆 | だったら、続けられる方法、 一緒に考えようよ! |
瑠璃乃 | ……で、でも。 |
花帆 | あたしね! もうちょっとで学校辞めるところだったんだ! |
瑠璃乃 | えっ!? なんで!? |
花帆 | この学校じゃ、あたしの夢が叶えられないって思ったから。 でも、大丈夫だった。 大丈夫になったの! |
瑠璃乃 | えっと。 |
さやか | そういうことでしたら、わたしももう少しで部活を辞めるところでした。 今は、フィギュアとスクールアイドルの両立を、がんばっています。 |
花帆 | センパイたちなんて、 つい最近まで半年ぐらいずっとケンカしてたんだよ! |
梢 | ケンカではありません。 |
綴理 | こずのステージ、すっごくかっこよかったもんね。 |
梢 | あなたそれ一生言うつもり? |
瑠璃乃 | ……どうして? |
花帆 | え? |
瑠璃乃 | さっきから聞いてたら、やっぱりみんなの個性えぐくて。 |
瑠璃乃 | でもおんなじ方向を向いて、スクールアイドルを続けられているのって、 なんで!? どうやってるの!? |
瑠璃乃 | 今までは、ルリががんばらなきゃだめだったのに……。 みんなはどうして、そんなことができるの!? |
梢 | それはね。 |
花帆 | みんなが、スクールアイドルだから! |
瑠璃乃 | スクールアイドル、だから……? |
花帆 | うん! スクールアイドルはね、すごいんだよ。 なんだっていいの、すごく自由なんだ。 |
花帆 | 自分のためにやっててもいいし、応援してくれる人のためでも、 ラブライブ!優勝のためでも、楽しいからやっててもいいの。 |
花帆 | 違うから、ときにはぶつかったり、 ケンカするかもしれないけど。 |
花帆 | でも、同じだから、 お互いを認めて、一緒に手を取り合えるんだ。 |
花帆 | やりたいっていう気持ちがあれば、 どんな個性だって受け入れられるのが、スクールアイドルなの! |
花帆 | 瑠璃乃ちゃんはどう? スクールアイドル、やってみたくない? |
花帆 | もしやってみたいんだったら、あたしたちみんな、 もちろん協力するよ! |
花帆 | だって、同じスクールアイドルが大好きな、仲間なんだもん! |
瑠璃乃 | ルリ、ルリは……。 |
瑠璃乃 | やってみたい。 |
瑠璃乃 | バラバラなのに同じ方向を向いて、 みんなで楽しいことができる、 |
瑠璃乃 | そんな蓮ノ空スクールアイドルクラブだから、 憧れて、ここにやってきたから……。 |
瑠璃乃 | ルリも、スクールアイドル、やってみたい! |
瑠璃乃 | カリフォルニアにいた頃から、ずっと見てたし! 楽しそうだなあ、って! |
瑠璃乃 | 蓮ノ空スクールアイドルクラブのこと見て、 ルリも、みんなと一緒にやってみたいって思ってた! |
瑠璃乃 | 同じだけど、ぜんぜん違うみんなと一緒なら、 ルリと同じだから、できるかもって思ったんだ。 |
瑠璃乃 | ルリにも……できるかなあ、スクールアイドル……。 |
さやか | ぜったい大丈夫です。 わたしにもできるんですから。 |
綴理 | きっとできるよ。 みんながいるから。 |
梢 | なりたいと思ったら、いつでもなれるのよ。 スクールアイドルには。 |
瑠璃乃 | でも、人と一緒にいるとすぐ充電切れちゃうし、 練習サボってどっかいっちゃう失礼なミジンコだし……。 |
瑠璃乃 | その上、独りが大好きなのに。 |
花帆 | でもでも、みんなと一緒にいるのも楽しいんでしょ? もう知ってるもん、瑠璃乃ちゃんのこと! |
瑠璃乃 | ……ルリがいても、迷惑じゃ、ない? |
花帆 | ぜんぜん! 充電が切れた瑠璃乃ちゃんだって、個性だよ! お花畑には、いろんなお花が咲いているから、きれいなんだもん! |
花帆 | あたし、瑠璃乃ちゃんと一緒に、 スクールアイドルやりたい! |
瑠璃乃 | ……うんっ! ルリも! |
瑠璃乃 | ありがとうね、花帆ちゃん。 みんな……。 |
瑠璃乃 | ……あいむふぁいん、さんきゅー! |
花帆 | ふふふっ。 |
花帆 | あっ、そうだ。 まだ秘策のことを、話してなかったよね。 |
瑠璃乃 | えっ、他にもなにかあったりするの? |
花帆 | ふふふふふ。 |
花帆 | じゃじゃーん! 名付けてぼっちハウス! |
瑠璃乃 | …………え? |
花帆 | どう!? この中に入れば、いつでも独りになれるんだよ! |
花帆 | 中もね、狭くて暗くて、きっと落ち着くよ! ナイスアイディアでしょ!? |
瑠璃乃 | ぜーー。 |
花帆 | ぜ? 絶品!? |
瑠璃乃 | ぜ・ん・ぜ・ん、ちがーーーーう!!! |
花帆 | ひょえ!? |
瑠璃乃 | というわけで、よければ正式入部させてもらいたいんですけど……。 ど、どうでしょーか! |
梢 | ええ、もちろん歓迎するわ。 |
梢 | 充電切れに関しても、大丈夫よ。 コミュニケーションが取れるだけ、十分すぎるほどありがたいわ。 |
梢 | ねえ、綴理。 |
綴理 | ボク取れてるよね? コミュニケーション。 |
梢 | それはさやかさんがとてもとてもがんばっているのよ。 |
さやか | わたしは最近もう慣れてきたので、大丈夫ですよ。 |
瑠璃乃 | あははは、うけるー! |
綴理 | うけたよ。 よかったね。 |
花帆 | そういえば瑠璃乃ちゃんって、どうするんですか? 蓮ノ空って、みんなユニットごとに活動するんですよね。 |
さやか | それは、梢先輩か、綴理先輩が掛け持ちをする、 ということになるんでしょうか。 |
瑠璃乃 | え? ううん! |
瑠璃乃 | ルリは、めぐちゃんと組むよ! だって、そのために日本に帰ってきたんだもん! |
花帆 | ………………めぐちゃん? |
さやか | って、どちらさまですか? |
瑠璃乃 | え!?!? |