第8話『あの日のこころ、明日のこころ』
PART 6
梢 | 綴理!! |
綴理 | ……こず。 |
梢 | ……話が、あるの。 |
綴理 | ……なに。 ボクにも話すことは、なくはないけど。 さっきと変わんないよ。 |
綴理 | だってーー。 |
梢 | そうね。 綴理の言う通りだったわ。 |
綴理 | っ……。 |
綴理 | じゃあ……どうするの。 行くの? ……その、学校に。 |
梢 | ……。 |
梢 | ……勘違い、していたの。 |
綴理 | ……。 |
梢 | 私にとって、大切なのは立派なスクールアイドルになることで、 ラブライブ!優勝で、 伝統ある蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブを守ること。 |
梢 | だから、スカウトを受けるつもりはないし…… 勝手に、振り付けも変えたのだと。 |
綴理 | さっきまで、そう言ってたよ。 |
梢 | そうね。 だからそれが、私の勘違い。 |
梢 | でも、違った。 違ったって、分かったの。 |
綴理 | こず。 さっきから、なにを。 |
梢 | ねえ綴理。 私ね。 |
梢 | ーーあなたと離れたくなかったのよ。 |
綴理 | ……えっ? |
梢 | スクールアイドルクラブに入って、すごく楽しかった。 尊敬する先輩が居た。 楽しい仲間がいた。 |
梢 | たとえそれが欠けていってしまっても……。 |
梢 | ……出会った時から憧れていた、あなただけは残っていた。 |
綴理 | えっ……? |
梢 | なんの取り繕いもできない、これが私のほんとう。 私自身も気付いていなかった、本当の気持ち。 |
綴理 | こず……。 でも、きみは。 |
梢 | スカウトの話には、乗らないわ。 さっき言った理由は忘れて。 |
梢 | 今から伝える理由だけを、聞いてほしい。 |
梢 | 私はただ……あなたたちと離れたくない。 あのとき、綴理と……離れたくなかった。 |
梢 | だから、どこにも行きたくない。 |
梢 | ーー私の夢はもう、私だけの夢じゃない。 あなたたちと一緒に叶えたい夢。 |
梢 | だから、ここで夢を叶えたい。 |
綴理 | それが、こずの、本当……? |
梢 | 今までずっと、何も言わなくてごめんなさい。 何も言えなくてごめんなさい。 |
梢 | ……あなたに言いたいこと、言わなきゃいけないこと…… 今の今まで、気付いてもいなかった。 |
梢 | どうかしら。 |
梢 | きっと私の気持ちに、もう嘘はないはず。 ……だと、思うけれど。 |
綴理 | ……ん。 こずの気持ち、ようやく聞こえた。 |
梢 | ……そう。 それなら、良かった。 |
綴理 | ごめんね、こず。 |
梢 | あなたが謝るようなことは、なにもないわ。 |
綴理 | んーん。 ……ボクね、こずが何かを隠して予選に出たことだけは、分かってたんだ。 |
綴理 | 聞けば、良かった。 ちゃんと、ボクも、聞けば良かったな。 |
梢 | ……そう。 |
梢 | ……言えば、良かった。 たとえ、わがままだったとしても。 |
花帆 | 梢センパーイ! |
さやか | 綴理先輩! |
梢 | あら……かすがいだわ。 |
綴理 | かす……? |
梢 | そこで区切らないでほしいのだけれど。 |
梢 | ふたりとも! こっちよ! |
梢 | お待たせしました。 あなたたちのおかげで、もう大丈夫! |
梢 | って……大丈夫に信用が無かったわね。 困ったわ、なんて言えばいいのかしら……。 |
花帆 | あはは、分かってますよ梢センパイ!! 梢センパイも綴理センパイも、ふたり揃って大丈夫ってことですよね! |
さやか | 本当に良かったです。 ーー綴理先輩がなかなか見つからなくて、本当にどうしようかと。 |
綴理 | ごめんね。 ボク、もう元気。 |
さやか | はい。 |
梢 | 心配をかけてごめんなさいね。 本当にありがとう。 |
花帆 | えへへ。 |
さやか | ……はい。 |
綴理 | でもきっと、最高のパフォーマンスができそうだよ。 |
梢 | そうね。 今なら、あの曲も完璧に踊れる気がする。 だってーー今の気持ちは、みんなとひとつだもの。 |
花帆 | よし……じゃあ、うまくまとまったところで! 梢センパイ、気合入れ直しましょう! |
梢 | 私? ……今私がやるのは、気が引けるのだけれど。 |
さやか | だからこそ、いつも通りにやりましょうよ。 |
綴理 | ん。 信じてる。 |
梢 | 分かったわ。 じゃあ……明日から改めて撫子祭に向けて、全力で練習するわよ! |
梢 | 撫子祭を観に来る人たちに、 みっともないスクールアイドルクラブなんて見せられないーーいいえ。 |
梢 | あなたたちと一緒に、最高のライブがしたいからよ! |