第6話『わがままon the ICE!!』
PART 4
さやか | お姉ちゃんが、ここを待ち合わせ場所にするなんて。 二度と来ないって言ってたのに。 |
つかさ | さーやーかー。 |
さやか | お姉ちゃん!……久しぶり。 |
つかさ | 久しぶりだねぇ。 優勝おめでとっ!やるじゃん! |
さやか | ……うん。ありがとう。 |
さやか | 演技……見て、くれてた? |
つかさ | 見た見たー。 ほんと……綺麗になったねー、さやかー。 |
さやか | うん。……うん。わたし、頑張ったよ。 約束した通り、頑張ったよ。 |
つかさ | そうだねー。 |
つかさ | ……うん、そうだねぇ。さやか……ありがとね。 |
つかさ | わたしが腐ってたせいで、色々嫌な思いさせてごめんねぇ。 |
つかさ | ほんと……お姉ちゃんの分も頑張るって言って…… 今、こんな風に凄い子になって…… |
つかさ | わたし、嬉しいよ。 |
さやか | ぁ……うん。うん! |
つかさ | でも、色々あってわたし、元気になれたよ。 それこそ……また、ここに来ようって思えるくらいに。 |
さやか | ……まあ、正直に言うと驚いたよ。 お姉ちゃんが、ここに来たのは。 |
つかさ | でしょー。 秘訣があったんですよ、秘訣がー。聞きたい? |
さやか | えっ。気にならないわけじゃないけど、 その言い方するお姉ちゃんからちゃんとした話が出てくるとは……。 |
つかさ | ひどっ!? |
さやか | 大げさにする時に限って、動画の影響とかだったりするんだもん。 |
つかさ | ぶー。全然違いまーす。 ひどいなー。 |
綴理 | ん。良かったら、最後まで見て行ってほしい。 |
さやか | ……え? |
つかさ | んふふー。 |
さやか | ……知ってたの? |
つかさ | 知ったのは、偶然。 でも……さやか、ほんとーに楽しそうだったねー。 |
さやか | ……。 |
つかさ | きっと、あの場所がさやかを、 すっごく綺麗にしてくれたんだなーって…… |
つかさ | すぐに分かったよ。それが、わたしに元気をくれたんだー! |
さやか | お姉ちゃん……。 |
さやか | うん。 わたし今、スクールアイドルやってるよ。 |
さやか | 素敵な出会いがあって…… 今のわたしがあるのは、スクールアイドルクラブのおかげ。 |
つかさ | うん。……だからさ、さやか。 今日言いに来たのは、実はその話なんだ。 |
さやか | え? |
つかさ | もし……もしフィギュアを頑張るのが、 わたしのためだーって言うんなら、もう無理しなくて良いからね? |
つかさ | もうろくにジャンプも出来ないし、 出来ない自分が悔しくて、二度と来るかって思ってたけど……。 |
つかさ | ご覧の通り、またここに来られるくらい元気になれたから! |
つかさ | スクールアイドルが凄く楽しそうなのは、 見ただけですぐわかるよ。 |
つかさ | ……そんなスクールアイドルに元気をもらったわたしはわたしで、 また頑張れる! |
さやか | っ、ちがっ……わたしはそんなつもりじゃ! |
つかさ | 分かってるよ。 そりゃわたしだって、フィギュアで活躍するさやかは見たいから。 |
さやか | ……分かった。 |
つかさ | 怒らないでよー。 |
さやか | 怒ってない。 ……ただ、わたしは、別に無理なんてしてないってだけで……。 |
つかさ | ……そう思ってて、怪我したからさ。わたしは。 |
さやか | っ……ずるいよ、それは。 |
つかさ | ごめんってー。 でも、それだけ言いたかったんだー。 |
つかさ | もしこの先、さやかがさ。何か決めることに迷った時は…… わたしのことは気にしなくていいからね。 |
さやか | 別に、迷ってることなんてないし。今は凄く充実してるよ。 お姉ちゃんこそ、自分のことを棚に上げて人を心配しすぎなんだよ。 |
つかさ | そ……っか。そっか。 強くなったねえ、さやか。別人みたい。 |
さやか | 褒めてるんだよね? |
つかさ | もちろん。 |
つかさ | ……ねえ、さやか。 |
さやか | なに? |
つかさ | こんなこと言っておいてなんだけど…… わたし、けじめをつけようと思ってるんだー。 |
さやか | けじめ? |
つかさ | そう、けじめ。 さやかが、わたしの気持ちを背負ってまで頑張るって言ってくれて。 |
つかさ | 一人で凹んでたわたしも、色々考えたんだー。 結果が出なくて、苦しそうにしてるさやかに、わたしは何も言えなくて……。 |
さやか | お姉ちゃん。 |
つかさ | ごめんごめん、もう言わない。 何が言いたいかっていうとね…… |
つかさ | ちゃんと、引退しようと思うんだ。 |
つかさ | 怪我してから、みんなに何にも言わずに引き籠っちゃったからさ。 |
つかさ | それでね。引退することをみんなに言ったら…… 最後にアイスショーをすることになったんだー! |
さやか | アイスショー……! お姉ちゃん、滑るの? |
つかさ | ううん。わたしを送り出すために、みんなが出てくれるって。 お世話になった、先輩とか、友達とか。 |
つかさ | ……それで、その。良かったらなんだけど、さやか。 |
さやか | 出るよ。 |
つかさ | ……いいの? |
さやか | もちろん。だって、これはわたしのやりたいことだから。 無理もしてないしね。 |
つかさ | ありがとさやか!! |
さやか | お姉ちゃん、苦しいよ。 |
つかさ | っとと、ごめんごめん。つい愛が溢れたー。 |
さやか | なに言ってるんだか。 |
つかさ | ……ごめん。ほんとは言い出しにくかったんだー。 |
つかさ | 無理しないでって言いに来た口で、 アイスショーには出て欲しいなんて、ねえ? |
さやか | まったく……変なところで気を遣うんだから。 |
さやか | わたしのフィギュアには、ずっとお姉ちゃんが居たんだよ。 だから、見送りくらい、させてよ。 |
つかさ | ……ありがと。ほんとに。 |
さやか | ん。 |
つかさ | あ……。 |
つかさ | っと、いけない。わたしそろそろ帰らなきゃ! |
さやか | えっ……じゃあまさかこの話のためだけにここに来たの!? |
つかさ | ふははー、それがわたしの意思表示! それじゃあ行くね! |
つかさ | またね、さやか! |
さやか | ……ん、またね。 |
さやか | ……はあ。 なんだか気持ちがごちゃごちゃだあ。 |
さやか | でも、頑張る理由が増えた。 |