第4話『わたしのスクールアイドル』

PART 1

綴理
……。
さやか
花帆さーん!乙宗せんぱーい!
さやか
わー!ふふっ、つい声が出ちゃいますね!
さやか
胸がいっぱいで、吐き出さずにはいられないというか。
さやか
花帆さーん!乙宗せんぱーい!とっても綺麗ですよー!
花帆
みんなー!楽しいねー!
さやか
はーい、楽しいですねー!!
さやか
って、さすがに聞こえませんよね。わたしったら。
さやか
でも、ほんとにライブってすごい。
さやか
わたしも、もっともっと頑張らないと。
皆さん、本当にありがとうございました!
綴理
こず……。きみは、なれたんだね。
ーースクールアイドルに。
さやか
何か言いましたか、夕霧先輩?
綴理
いや……。
綴理
なんでもないよ。
ほら、最後のパフォーマンスだ。
さやか
……?
さやか
はい!花帆さーん!がんばってー!
さやか
はー……!楽しかったー……!
さやか
ライブって、本当に良いものですね。
花帆さんの気持ち、今ならよく分かる気がします。
綴理
そうだね。本当に楽しかった。
とても……良いライブだった。
さやか
はい!
さやか
先輩のおかげで、スクールアイドルっていう素敵なものを知ることが出来て……
本当に感謝してるんです。
綴理
そっか。それなら、良かった。
さやか
はい!
さやか
わたしも早く……もっと上手くなりたい。
頑張らないと……。
綴理
……さやは、自信なくした?
さやか
えっ!?
さやか
それは……そうかもしれません。
さやか
蓮ノ空に入学するまで、
ほとんど人前でパフォーマンスをすることも無かった花帆さんが、
あれだけ素敵なライブをした……。
さやか
凄いと思いますし、羨ましいとも思います。
さやか
とはいえ、もともと自信なんて有って無いようなものでしたけど。
あの、夕霧先輩。わたし、頑張りますから。
綴理
うん?うん。さやは頑張ってる。
さやか
は、はい。頑張ります。
って、なんですかねこのやり取り。あはは。
さやか
ゆ、夕霧先輩!
えーっと、明日のお弁当は何がいいですか!
綴理
急に話変わった。
さやか
い、良いじゃないですか!
さあほら、お答えください!
綴理
う、うん。
そうだなぁ……。さやは、どう料理しても美味しいし……。
さやか
まるでわたしが食料みたいな言い方。
綴理
でもさやは、ボクがなんでもいいって言うと……。
さやか
では明日は草です。
綴理
草はやだな……。苦いし……。
じゃあ、おでん。
さやか
草食べたことあるみたいな言い方も気になりますが……し、汁物かぁ……!
ざ、材料が足りないのでそれはまた今度に……。
綴理
……なんか、いつもごめん。
さやか
いえいえ!なんでも良いと言ったのはわたしですから!
綴理
じゃなくて、お弁当作ってくれて。
さやか
なんですか急に。初めて言われましたけど。
綴理
え、そっか……
ボク、ありがとうも言えない子だったんだね……。
さやか
せ、先輩はちゃんとお弁当を受け取る時に
ありがとうが言える良い子ですよ!
さやか
というか、だって、作ってるのもわたしの勝手ですし。
だからまさか謝られるとは思わなかっただけで。
綴理
さやが居ないと、
ボクはお昼ご飯食べるの忘れがちだから。
さやか
まあ、はい。
だから作るようにしたんですけれども。
綴理
さやが居ないと、
ボクは起きるのも忘れがちだから。
さやか
まあ、はい。
それは別名お寝坊というんですけれども。
綴理
……さやが居ない時どうしてたっけ。
さやか
さあ……仰る通り居なかったのでわかりません……。
綴理
ボク、明日から頑張って自分で起きる。
あら?
村野さん、おはよう。
なんだかお疲れね……。
さやか
あ、乙宗先輩。おはようございます。
大丈夫ですよ。起きない人を起こしただけなので……。
……あの子、昨日の夜はすごく気合入れてたはずなのだけれど。
明日は頑張って起きるんだーって……。
さやか
気持ちだけは、嬉しく思っておきます、はい。
かわいそうに。
さやか
かわいそうに!?
綴理がごめんなさいね。
あの子、たちが悪いでしょう。
さやか
えっ。
さやか
た、たちが悪いだなんて、
乙宗先輩も言うんですね……。
ふふっ、綴理とはもう丸一年の付き合いだから。
……それで、やっぱりあの子の相手は大変じゃない?
さやか
いえ、そんな。
さやか
わたしはただ、夕霧先輩の演技をもっと見ていたくて、
もっと勉強させてもらいたくて、そのためならやれることは何でもやろうって、
そう思っているだけで。
さやか
……学ばせてもらっている立場ですから
そうねぇ。綴理の演技は、魔性だわ……。
努力だけでは到達できないと思わせる、見る者全てを魅了するような……。
さやか
乙宗先輩?
ああ、ごめんなさい。村野さん、頑張ってね。
綴理が同じ舞台に招待したあなたのことを、私も心から応援しているから。
もちろん、困ったことがあったらいつでも聞いて?
さやか
は、はい……ありがとう、ございます。
これからも大変でしょうけど、
私はあなたの苦労が分かると思うから。
さやか
あ、はは。大丈夫ですよ!
好きでやってることですから!
くじけないでね、村野さん。
さやか
まったくもう。
今度は教室でずっと寝てるんですか。
さやか
補習で先生に捕まってるんですか。
お弁当渡したのに食べるの忘れて倒れてるんですか。
さやか
カワウソがおなかに乗っちゃって動けないんですか。
さやか
二年生の廊下も慣れちゃいました!
もう珍しいとも思われません!
さやか
逆に恥ずかしい……。
さやか
ん?なんでしょう。……あ。
綴理
ーー♪
綴理
……ふう。
ありがとう。えっと、ボクはそろそろ……。
綴理
……じゃあ、もう一回だけだよ。時間が……。
沙知
はいはい、通行の邪魔になってるよー。
ゲリラライブは終わり終わり。
綴理
あ。
沙知
ほら、行くとこあるんでしょー?行った行った。
綴理
あ。うん。ありがと。
沙知
良いってことよ。
そらお前ら、悪者はあたし一人だ、かかってこーい!
綴理
……あ、さや。
さやか
あ……夕霧先輩。
えっと、素敵なライブ?でした。
綴理
ありがとう。嬉しい。
……ん?あれ?さや怒ってないな……?
さやか
先輩のダンスは、本当に凄いですね。
すっかりわたしも見入ってしまいました。
さやか
あれ、花帆さんたちの曲ですよね。
夕霧先輩が踊るとこうなるんだなあ、ってところも含めて感動しました。
綴理
……そっか。そういえば、あの曲だったね。
さやか
そういえばって何ですか、まったくもう。
でもおかげでやる気が出てきました!……あれ?
さやか
そういえばわたし、なんでここに。
綴理
ぎく。
さやか
あーー!もう!何時だと思ってるんですか、先輩!
練習時間が短くなった分、しっかり見てくださいね!!
綴理
やっぱり怒られた!