第2話『Dream Match!』
PART 2
部室でのミーティングで、姫芽が皆に説明している。 | |
花帆 | ゲームのイベント? |
姫芽 | そ~なんですよ! アタシがずっと布教し続けてきたゲームの新作発表イベントなんです~! |
姫芽が布教し続ける姿を間近で見続けてきた瑠璃乃、びっくりした顔に。 | |
瑠璃乃 | えぇ、マジで!? |
姫芽 | マジもマジ、大マジなんですよ~! |
姫芽、ぐっと決意の表情になり、 | |
姫芽 | そこで皆さんにお願いがあります! このイベント、皆さんにも手伝ってもらえないでしょうか~! |
姫芽 | アタシ、このイベントにはど~しても全力で挑みたいんです~! やれること全部やり尽くしたいんですよ~! |
姫芽 | そのためには皆さんの力が必要なんです~! どうか! どうか力をお貸しください~! |
姫芽が勢いよく頭を下げる。 | |
と、真っ先に花帆が笑顔になり、 | |
花帆 | いいじゃん! すっごく楽しそう! |
お! という表情で姫芽が顔を上げる。 | |
花帆、さやかを見て、 | |
花帆 | え、いいよね? みんなでやっちゃって。 |
さやか | いいんじゃないでしょうか。 今までも、色んなことをやってきたわけですし。 |
さやか | これも立派なスクールアイドル活動ということになると思いますよ。 |
セラスはびっくりした顔になっている。 | |
セラス | 姫芽先輩、すごい……。 こんなお誘いがくるなんて……。 |
ゲームについては全く知識のない泉が、さらっとセラスに問いかける。 | |
泉 | これは、どれくらいすごいことなのかな? |
セラス | えっ? |
セラス、泉がぜんぜんピンときていないことに一瞬驚くも、泉が知らないことを自分が知っているという優越感から、ふっと余裕のある笑顔に。 | |
セラス | しょうがないなあ泉は。 そんなことも知らないなんて。 |
泉 | 私は、ゲームには今まで全く興味がなかったからね。 セラスは知っているのかい? |
セラス、自分のことであるかのように誇らしげな感じで、 | |
セラス | 当たり前でしょ? ゲームは現代人の基礎教養だよ。 遅れてるね! |
苦笑いするさやか。 | |
さやか | すみません、私もあまり詳しくはなくて。 |
小鈴も手を挙げて、セラスの言葉を無邪気に受け止める。 | |
小鈴 | 徒町もです! 遅れてました! |
苦笑いするグループのメンバーたちを見て慌てるセラス。そのまま、悔しそうに泉に八つ当たりする。お前、やりやがったな……! | |
セラス | あっあっ、みなさんに言ってたわけではなく。 あっ、スミマセン、あっ。 |
セラス | 泉……っ! |
泉、さらっと流す。 | |
泉 | 今のはどう見てもあなたの自爆だよ。 |
瑠璃乃 | まー、世界中にプレイヤーがいる、すっごく有名なゲームだねー。 |
瑠璃乃 | 新作の発表に呼ばれるなんて、本当にすごいことだとルリ思う。 |
泉 | なるほど。 それほどのゲームのイベントとなると、これはなかなか楽しめそうだ。 |
小鈴がワクワクした笑顔で吟子を見る。 | |
小鈴 | どんなことやるのかな? 何だかもうワクワクしてきた! |
吟子 | 早速、楽しそうなチャレンジだね。 |
小鈴 | ね! やっぱり今年も何が起こるか分からないよ! |
そんな皆の様子を見た瑠璃乃、にっこり笑って花帆を見る。 | |
瑠璃乃 | こりゃ、満場一致で決まりだね。 |
花帆 | そうだね! |
花帆、笑顔で姫芽を見て、 | |
花帆 | みんなでやろうよ、姫芽ちゃん! |
やる気に満ちた姫芽がこぶしを握る。 | |
姫芽 | ありがとうございます~! |
姫芽 | それでは~! やるからにはぜひ! このイベントで、たっくさんの人たちと、い~っぱいつながっちゃいましょ~! |
姫芽 | 蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブの、新たなる明日へ~! |
花帆&さやか&瑠璃乃&吟子&小鈴&姫芽&泉&セラス | おー! |
翌日。さやかの部屋にセラスと姫芽がおり、イベントの打ち合わせをしている。 | |
姫芽 | と、いうわけで。 |
姫芽 | メンバー皆さんそれぞれゲームの知識には差があるみたいでしたので、 聞き取りした後、熟考に熟考を重ねて、 |
姫芽 | 配置を決めさせていただきました~。 |
さやか | おー。 |
拍手するセラス。 | |
セラス | わー。 |
姫芽 | さやかせんぱいには、ズバリ、イベントの司会を。 そしてせらりんにはその補佐をお願いしたわけですが~。 |
姫芽 | 進捗のほうは、いかがですか~? |
さやか | そうですね。 もともとは、友達とちょっとゲームしたことがある、 程度の知識しかないわたしでしたが……。 |
さやかがノートを持ち上げる。中身は、FPS用語やゲームで使う単語がぎっしりと書き込まれている。 | |
さやか | でも、姫芽さんが作ってくれたこの用語表、 とてもわかりやすくていいですね。 |
姫芽 | アタシとせらりんで夜なべして作ったんですよ~。 |
セラス | 手伝わせていただきました。 |
さやか | それはそれは。 とても助かってます。 |
さやか | FPSはファースト・パーソン・シューティングの略。 |
さやか | 今までなんとなく聞いたことがあった単語も、 こういう意味だったんだな、と改めて勉強できました。 |
さやか | イベント当日までには、完璧に頭に叩き込んでおこうと思います。 |
セラス | 質問があれば、なんでもこのセラスにおまかせください。 |
さやか | ええ、頼りにしていますよ。 |
セラス、揉み手をしながら、自嘲気味に笑う。 | |
セラス | へへ、ゲームの経験なんて何の役にも立ちませんからね。 |
セラス | こんな知識がさやか先輩のお役に立てるなら、 本望です。 |
さやか | こないだと言っていることが真逆に……。 |
姫芽 | ゲームは役に立つよ~? 友達もいっぱいできるし~。 |
グルグル目になり、パニくるセラス。 | |
セラス | あっあっ。 じゃなくて、あっ。 なにを言ってもどこを向いても先輩に失礼を……! |
さやか | いいんですよ、誰かの意見におもねるのではなく、自然体のセラスさんで。 |
セラス | うう……すみません。 好感度をとりもどそうと、自分をみうしなってました。 |
セラス | わたしはゲームが好きです……。 ひとりでよくやってます……。 |
姫芽 | あはは。 吟子ちゃんには、呼び捨てして甘えたりしてるのに~。 |
セラス | でも、ひとの好きなものをからかったりするのは、なんか違うので~……。 |
姫芽 | 真面目なとこあるんだねえ~。 |
姫芽 | でも、せらりんがゲーム好きで、アタシは嬉しいよ~。 今度一緒に遊ぼうね~。 |
セラス | お供させていただきます……。 |
姫芽 | で、あとは、その用語を実際にどんな風に使ってるのか、 例としての動画もまとめておいたので~。 |
姫芽 | さらっと目を通しておいてもらえれば~。 |
さやか | おお……。 さすが姫芽さん、本気ですね。 |
姫芽 | ふふふ~。 |
さやか | わかりました。 座学は地道な積み重ね。 苦手ではありません。 |
胸を張るさやか。しかし、あまり自信がなさそうな苦笑いに変わる。 | |
さやか | あとは、ゲーム大会の司会という大役を、 わたしが立派に務め切れればいいんですが……。 |
姫芽 | さやかせんぱいなら、大丈夫ですよ~。 蓮ノ空でいちばん司会に向いてると思います~。 |
さやか | そうですか? |
姫芽 | はい~。 そもそも舞台度胸がありますし、声もきれいで通りがいいですから~ |
セラス | うんうん。 |
さやか | まあ……ただの進行役という意味なら、そうかもしれません。 ですが、ゲーム大会の司会であれば、他にも必要なものがありますよね。 |
姫芽 | はっ。 そこに気づくとは……さすがさやかせんぱい……! |
セラス | 必要なもの……! |
さやかを励ますようにグッと拳を握る。(※セラスはスクールアイドルに関することに対しては、いつものボケではなく、素で言っていることが多いです) | |
セラス | でも大丈夫です。 さやか先輩はとっくにもっています。 人の心を動かす“熱い血潮と魂”を。 |
さやか | そういう概念的な話ではなく! |
さやか | 手順は守りつつも、淡々と進行するわけにはいきませんよね。 みんなで楽しむイベントなのですから、 やはり要所要所で、盛り上げなければ。 |
姫芽 | ええ、ええ、それは百パーその通りです~。 |
ここから、さやかの顔つきが徐々に真剣なものになっていく。 | |
さやか | わたしも経験があります。 ステージを盛り上げたり、大爆笑をかっさらうのは、 並大抵の努力ではできません。 |
さやか | そう、あれは去年の撫子祭……。 |
セラス | なにをやったんですか? |
「あれかぁ……」という気持ちになる姫芽。 | |
姫芽 | あっ。 |
さやかは大真面目に答える。 | |
さやか | 一発芸大会です。 |
セラス | ……え? |
さやか | 一発芸大会です。 |
さやか | DOLLCHESTRAで、ステージにあがりました。 |
さやか | あのときの緊張感はライブとはまた別種の……まるで肌を刺すような空気。 とてもいい経験をさせていただきました。 |
セラス | おお……。 さやか先輩しゅごい。 芸達者。 |
さやか | というわけで! 任せてください、姫芽さん。 |
さやか | 今回もまた、ステージをどっかんどっかん! 大盛り上がりの渦に叩き込んでやります! |
姫芽 | あ、あはは……無理はしないようにしてくださいね~。 |
さやか | そうと決まったら、ネタも考えなければなりませんね……! 忙しくなりますよ! |
姫芽 | ……せらりん。 そなたにはゲームの知識の他に、 もうひとつ大事な使命を与えることになりました~。 |
セラス | 使命……? |
姫芽 | さやか先輩のネタ作り、協力してあげてね~……。 アタシもしっかりとサポートするから……! |
セラス | うん? わかりました。 でもさやか先輩なら。 |
姫芽 | よろしくね~! |
わからずうなずくセラス。でもどうせさやか先輩なんだから、うまくやるんでしょ?と思っている。 | |
セラス | は、はい。 |
そこで姫芽はうんとうなずいて、さやかにも聞こえるように。 | |
姫芽 | イベントの成功は、さやか先輩にかかってる……! |
さやか | ふふっ。 そんなに期待してもらえるとは、嬉しいですね。 |
思いっきり含みがある顔で、うなずく姫芽だった。大丈夫かいな! | |
姫芽 | そう…………ですね~!! |