第1話『Brand New Stories!!』
PART 5
最後はみらくらぱーく!瑠璃乃と姫芽の練習に参加する、セラスと泉。このシーンは全員、制服。 | |
真っ先にセラスが名乗る。 | |
Yoとラップっぽい手の動きで挨拶をするセラス。 | |
セラス | 楽しいが好き~。 めんどいがキラ~い。 生涯スクールアイドル、夜露死苦~。 セラスっち、だぜ~。 |
セラスというフィルターを通して語られるみらぱ!の姿に、びっくりする瑠璃乃。 | |
瑠璃乃 | みらぱ!ってそんなイメージ!? |
姫芽 | 確かにそういうのはありましたね~。 |
なんだか納得できない瑠璃乃。 | |
瑠璃乃 | あったかなあ……? |
セラスは姫芽になんとなく許容されたこともあり、泉にドヤ顔を向ける。 | |
セラス | ふふん。 |
泉 | 負けてはいられないね。 |
瑠璃乃 | やるの!? |
泉 | 任せてください。 |
泉、かわいいポーズを取って、ウィンクをする。 | |
泉 | 桂城 泉と一緒に、世界中を夢中にしよう☆ |
泉 | みんな、愛してるよ☆ |
泉の熱いファンサービスには、セラスも驚愕。 | |
セラス | !? |
かわいこぶった泉に、同じく驚愕する瑠璃乃。 | |
瑠璃乃 | やったー!? |
瑠璃乃 | ていうかそれほとんどめぐちゃんの物真似じゃん……! |
慈の名前を聞いたことで、姫芽が心にダメージを負う。 | |
姫芽 | うっ……めぐちゃんせんぱい。 |
姫芽は部室のテーブルにそっと慈の写真立てを置く。慈がこちらにウィンクしてくれている写真だ。 | |
姫芽 | めぐちゃんせんぱいのいないスクールアイドルクラブに、 今年も新人が入ってきました……。 |
姫芽 | どうか遠くから、アタシたちを見守っててください……。 |
瑠璃乃 | ひめっち、 テーブルにめぐちゃんの写真立て置くの、そろそろやめよーよ……。 |
姫芽がスッと両手を合わせる。 | |
姫芽 | ……。 |
シャレにならんから!とツッコミを入れる瑠璃乃。 | |
瑠璃乃 | 拝むのはもっとやめよう! |
泉 | ここも、先輩が抜けた穴が、だいぶ堪えているようだね。 |
しかしブンブンと姫芽は首を振る。 | |
姫芽 | それじゃだめなんだよ~! |
セラス | そうなの? |
姫芽 | なぜならば~! 今年はめぐちゃんせんぱいがいなくなって、 応援してくれる人も寂しいと思うんです~! |
姫芽 | だからその分、アタシが2倍……3倍……100倍ぐらいがんばって、 みらぱ!を盛り上げると決意した次第であります~! |
姫芽の早口に圧倒されつつも、大きくうなずくセラス。 | |
セラス | おお……。 わかる。 |
セラス | わたしも瑞河の先輩がいなくなった後は、 自分ががんばらなきゃって思いました。 |
姫芽 | お~……。 セラス同志……。 |
セラス | シンパシー感じます、姫芽先輩……。 仲良く一緒に、みらくらぱーく!を盛り上げましょうね。 |
えいえいおー、とふたりで盛り上がる姫芽、セラス。 | |
姫芽 | うんっ、がんばろ~! |
そして、瞬きを繰り返して、今のやり取りを反芻する瑠璃乃。 | |
瑠璃乃 | ……えっ? 今さりげなく言ったけど、 セラスちゃん、みらくらぱーく!に入るって決めたの!? |
泉 | セラスはぜんぶのユニットに言っているよ。 |
泉の言葉に、思わず苦笑いする瑠璃乃。 | |
瑠璃乃 | そっか……。 3つ掛け持ち? そりゃあだいぶハードだと、ルリ思うゆえにルリあり。 |
瑠璃乃先輩天才じゃん!と一瞬、目を輝かせるものの。 | |
セラス | そういう手も! |
泉 | まあ、やめたほうがいいだろうね。 蓮ノ空はユニットごとに活動することもあるみたいだから。 |
泉 | そのつど取捨選択をしなければならない状況になったら、 セラスの心がもたないと思うよ。 |
ついに頭を抱えるセラス。 | |
セラス | むきゅ。 |
セラス | わたしは~、わたしはどうすれば~。 |
瑠璃乃 | ……ひとまず、みらくらぱーく!の 今年の主な活動内容について、お話してもよい? |
泉は爽やかに微笑む。 | |
泉 | お願いします。 |
セラス | します! |
瑠璃乃 | まあ、とゆーわけで、なるべく発信していきたいんだよね、今年は。 めぐちゃんがとにかく外向きのパワーがものすごかったから。 |
泉 | ああ、確かに。 動画作りも得意そうだったね。 |
瑠璃乃 | うん。 それが急にパワーダウンしちゃったら、 やっぱりみんな『寂しい』って思うだろうから。 |
瑠璃乃 | 意識的に力を注いでいこうって、ひめっちと話し合ったんだ。 |
えっへん!と胸を張る瑠璃乃。 | |
瑠璃乃 | 発信がんばる、露出がんばる、輪を広げる。 105期みらくらぱーく!は、この3本柱でがんばろうって思ってます! |
そこに、幼馴染の絆を尊く感じる姫芽が、笑みを浮かべながら補足する。 | |
姫芽 | ぬふふ、でもそれって、あれですよね~。 |
姫芽 | かつて、るりちゃんせんぱいがお引越しをして、寂しい思いをしてたら、 めぐちゃんせんぱいがテレビに出て励ましてくれたときのように~。 |
アタシは愛、わかってますからね~、とニコニコする姫芽。 | |
姫芽 | 今度は遠い空の下でがんばってるめぐちゃんせんぱいを励ますために、 より発信をがんばる……そういうことですよね~! |
瑠璃乃はさすがにちょっと照れる。 | |
瑠璃乃 | あ~……。 まあ、それもないわけじゃないけど。 |
自分の胸に手を当てて、その言葉を噛み締めるセラス。 | |
セラス | スクールアイドルの……真実の愛じゃん……。 |
照れていた瑠璃乃は、改めてえっへんと胸を張る。 | |
瑠璃乃 | でも! いちばんはやっぱり、応援してくれてる人のためだよ。 巡り巡って、それがめぐちゃんのためにもなるって、信じてるからね。 |
瑠璃乃 | 楽しいんだよ。 楽しませようと思って声をあげて、 そして実際に『楽しい』って声を返してもらえるのは。 |
瑠璃乃 | セラスちゃんも、泉ちゃんも、 ステージ中心のスクールアイドルをしてたんだよね? |
瑠璃乃 | だったら、また新しい楽しみに挑戦してみるのも、 きっとやりがいあると思うな。 |
泉 | なるほど。 確かにそれは、今まで考えたことがなかったね。 |
やりたいやりたい、と目を輝かせるセラス。 | |
セラス | 配信……。 確かに、花ちゃんがいっつも楽しそうだった。 |
瑠璃乃 | というわけで、いきなり配信をするのは大変だから。 |
グッと親指を立てる瑠璃乃。 | |
瑠璃乃 | 今から着替えて、Vlog撮りにいこーぜー! |
全員私服に着替えて、公園にやってきた。 | |
そこでスマホを構えながら、なんでもいいので、撮影をする、という形。 | |
セラス | やってきました。 |
泉 | Vlogというのは、どうすればいいのかな? |
瑠璃乃 | ルリがカメラ回しておくから、そうだなあ。 せっかくだから、なにかトークテーマ決めて話そうか。 |
瑠璃乃 | お互いの好きなところとか、どう? |
ニコニコとする姫芽。 | |
姫芽 | ではアタシは、るりちゃんせんぱいの好きなところを思う存分……。 |
瑠璃乃 | それじゃいつもと一緒じゃん! |
瑠璃乃 | ほら、セラスちゃんは泉ちゃんの。 泉ちゃんはセラスちゃんの! |
顔を見合わせて悩むセラスと泉。 | |
セラス | お互いの……。 |
泉 | 好きなところ。 |
瑠璃乃 | えっ……な、ないの? |
セラスの好きな部分はもちろんたくさんある。ただ、どういう風に言おうかな、と首を傾げる泉。 | |
泉 | そういうわけではないんだけど。 |
そうこうしている間に、セラスが手を伸ばして決意の顔。 | |
セラス | じゃあ、わたしが言う。 |
口を開いたところで。 | |
セラス | 泉の好きなところは…………。 |
セラス | ………………いや、やっぱちょっと待って。 |
瑠璃乃 | ぜんぜん出てこないじゃん! |
顔を赤らめるセラス。 | |
セラス | ……なんか、はずかしくなってきた。 |
セラスのかわいらしい部分を見て、なぜか嬉しそうな姫芽。 | |
姫芽 | あらあら~。 |
セラス | 泉は、わたしが初めて一緒にステージに立ったひとで……。 わたしがスクールアイドルになれたときに、隣にいたひとだから……。 |
セラス | こう……。 |
あまりに感謝の念が多く、また、しっかりと憧れている面もあり、しかしそれらを告げることが恥ずかしすぎて、言葉が途中で出てこなくなってしまった。ガチ照れして、泉をぺしぺしと叩くセラス。 | |
セラス | ……。 |
泉 | なぜ叩くんだ。 |
姫芽 | ひゅ~ひゅ~ですね~。 |
ウンウンとうなずく瑠璃乃。 | |
瑠璃乃 | これはこれで撮れ高が。 |
姫芽が楽し気に、はやし立てる。 | |
姫芽 | ほらほら、いずみんも、せらりんに言ってあげなきゃ~。 |
首を傾げる泉。 | |
泉 | いずみん。 |
自分を指差して聞き返すセラス。 | |
セラス | せらりん……? |
ニコニコとピースする姫芽。 | |
姫芽 | いちおー、これからやってく仲だし。 親愛の気持ちを込めてみたり~。 |
セラス、嬉しそうに顔を輝かせた | |
セラス | 姫芽ちゃん先輩、優しい……! |
後、泉に挑発的な眼差しを向ける。 | |
セラス | 泉、わたし姫芽ちゃん先輩からあだ名もらったよ。 |
泉 | 私ももらったけれどね。 |
ほくそ笑む泉。セラスに向かってドヤ顔。 | |
泉 | イーブンだ、セラス。 |
セラス | ぐぬぬ……。 |
瑠璃乃 | どーゆー争い。 |
泉、少し考えた後で、まるでどの女の子相手にもそうしているかのように、サラッと褒め言葉を言い放つ。 | |
泉 | そうだね。 |
泉 | セラスは、かわいいよ。 同年代の少女たちに比べても、秀でた美貌をもっている。 |
正面から褒められ、意外そうに顔を赤くするセラス。 | |
セラス | ……は、はぁ? |
泉 | 歌も上手だし、曲作りも得意だ。 スクールアイドルとして人気になれる素質は、揃っているだろう。 |
セラス | いや、あの。 |
泉 | 一生懸命で、情熱家。 そういうところは純粋に、好ましいね。 |
顔を赤くしながら、両手を挙げて泉に威嚇するセラス。もうやめろー!のポーズである。 | |
セラス | しゃーっ! |
瑠璃乃 | ……威嚇? |
なんだかちょっと姫芽も顔が赤くなってしまった。 | |
姫芽 | いずみん、やりますなぁ~……。 |
肩をすくめる泉。 | |
泉 | 私はただ思ったことを口に出しただけさ。 |
泉 | それこそ、あなたたちの先輩である藤島 慈さんは、 もっと上手に人を褒めていただろう。 |
泉 | 私ももっと精進しなくっちゃね。 |
泉の意外なノリの良さや、藤島慈に似たファンサービスの強さを目の当たりにして、瑠璃乃が思わずうなる。 | |
瑠璃乃 | 泉ちゃん、意外とみらくらぱーく!でもアリかも……。 |
姫芽 | ですねえ~。 |
照れているセラスと、微笑んでいる泉をニコニコと見つめた後に、姫芽は空を見上げる。 | |
空に向かって拝む姫芽。 | |
姫芽 | ……アタシたち105期もがんばっていきますから……。 草葉の陰から見守っててくださいね……めぐちゃんせんぱい……。 |
瑠璃乃 | だからそういうのやめよ!? ね!? |
お風呂に浸かっているセラスと、泉。 | |
大浴場という文化に、セラスはほっこり。 | |
セラス | はぁ……。 蓮ノ空のお風呂……善き……。 |
並んでゆったりとお湯に浸かりながら、泉の顔もほころんでいる。 | |
泉 | 先輩方もみんな優しくて、いいところだね。 |
セラス | うん。 |
泉 | それで、どうするんだい? ユニットは。 |
悩みながらうなるセラス。 | |
セラス | ん~……。 |
迷う気持ちもわかるよ、と泉が続ける。 | |
泉 | ま、どこもそれぞれに良さがあったからね。 |
泉 | 花束のようなステージを届けるスリーズブーケ、 自己表現のDOLLCHESTRA、 発信に力を注ぐと決めたみらくらぱーく! |
泉 | それぞれ105期の目標もバラバラで、 だからこそ選びがいがあるとも言える。 |
セラス | むずかしいよ。 ほんとに、どこもキラキラしてて。 |
セラス | 花ちゃんだけじゃない。 どの先輩も、みんな、眩しい。 |
泉 | そうだね。 |
泉 | まあ、焦ることはないさ。 Fes×LIVEまでは、まだ少し、余裕がある。 |
泉 | 好きなように、決めればいい。 なんたって今年からは、途方もない目標も、激しい執着も必要ない。 |
泉 | あなたが心から望んでいた、 ただ楽しむためだけの、第2のスクールアイドル人生だ。 |
泉 | 私の引き立て役として奔走することもない。 ここでなら、あなたの夢が叶うはずさ。 |
その泉の言い方に、なんとなくの引っかかりを覚えるセラス。 | |
セラス | ……わたしは、第1の人生も、あれはあれで楽しかったけど。 |
泉 | うん? |
セラス | ううん。 泉ってときどきデリカシーないよね、ってだけ。 |
泉 | 優しくしてほしいなら、そうしてあげるけれど? |
煽るような泉の言葉に、挑発的な言葉を返すセラス。 | |
セラス | それはそれで気持ち悪い。 |
苦笑いする泉。 | |
泉 | わがままだね。 |
セラス | うん。 ……わたしも考えてみる。 もう少し。 |
セラス、泉ににっこりと当てつけのように笑う。 | |
セラス | 泉と過ごした1年間なんかより、 もっともっと楽しい思い出を、山ほど作ってやるんだから。 |
首を傾げる泉。 | |
泉 | なにか気に入らないことを言ってしまったかな? |
セラス | なんでもない! |
別に自分は怒ってないよ、と怒った声で言うセラス。そんなセラスの気持ちがよくわからず、泉は肩をすくめるのだった。 | |
泉 | ……やれやれ。 |