第13話『いずれ会う約束の桜』
WILL
花帆 | ここからはあたしが、最上級生だ。 この、スクールアイドルクラブの。 |
花帆 | でも、うん。 やっぱりーー |
小鈴 | すっごく良い景色ですー! |
姫芽 | ね~。 ピクニックとか来たいね~。 |
瑠璃乃 | ……ここにみんなで来たのは久しぶりだね。 |
さやか | そうですね……昨年、ラブライブ!優勝を誓った時以来になりますか。 |
姫芽 | そんな伝説の場所だった……!? |
さやか | 伝説というほどではありませんが……そうですね。 わたしたちにとっては、それなり以上に思い入れのある場所ではあります。 |
吟子 | 去年、ここで……。 |
花帆 | ……あのさ、みんな! |
花帆 | ここに来てもらったのは、ちょっと話したいことがあって。 夢の話っていうのは、そうなんだけど。 |
花帆 | ……まずは、ありがとね。 |
花帆 | センパイたちともう一度ライブがしたい…… その気持ちを、ちゃんと形にできたのは、みんなのおかげ。 |
花帆 | あたしには、あたしたちにはできるって、 そう信じさせてくれたみんなのおかげだよ! ありがと! |
花帆 | そうして曲を作って、センパイたちを送り出して…… また戻ってきてくださいって言えて……嬉しかった。 |
花帆 | ーーあたしは、みんなの花を咲かせたい。 |
花帆 | ここにいる6人。 応援してくれる人たち、 戻ってくるセンパイたち、出会った人たち。 |
花帆 | みんなみんな……大勢の笑顔の花を咲かせたい! |
花帆 | みんなが、誰もが花咲けるステージ。 センパイたちが帰ってきた時には、そういう場所になっててほしい。 |
花帆 | ……ううん、そういう舞台をあたしは作りたい! |
花帆 | ただね、みんな。 ちゃんと考えれば考えるほど、あたし、思ったんだ。 |
花帆 | そのためには、今年のラブライブ!か、 新しい舞台を選ばないといけないって。 |
さやか&瑠璃乃&吟子&小鈴&姫芽 | ! |
姫芽 | ラブライブ!を諦める……ですか~。 |
花帆 | 諦める、とはちょっと違うかな。 |
花帆 | あたしの目指す『誰もが花咲けるステージ』と、 ラブライブ!は、やれることが違うんだよ。 |
花帆 | ……ラブライブ!はすごいよ。 あの栄冠を目指してみんな一生懸命になる。 |
花帆 | そこに輝きが生まれて、夢が生まれて、奇跡が起きる。 本当に光のおとぎ話みたいな場所だった……。 |
花帆 | でも、スクールアイドルはラブライブ!に出ることだけじゃない。 |
花帆 | もっともっと色んな人がいるはずなんだ。 あたしはそういう、色んな人に花咲いてほしい。 |
花帆 | 目指す夢が違うから。 だからあたし……ラブライブ!には出ない! |
花帆 | ……そういうこと、だから。 |
花帆 | 実は……あたしね、スクールアイドルクラブそのものを、 離れようかと思ってるんだ。 |
小鈴 | えええええええ!? |
瑠璃乃 | なんで!? |
小鈴 | ど、どうして。 |
吟子 | ……。 |
姫芽 | なんでですか~? べつに、辞めるとまでいかなくたって~。 |
小鈴 | そうですよ! 徒町は、花帆先輩の夢も全力で応援したいです! |
小鈴 | 徒町が何かすることで、花帆先輩の夢に少しでも近づくなら……。 ううん、徒町じゃなくたって! |
花帆 | うん、そうだよね。 ありがとう、本当に嬉しいよ。 でもね、そう言ってくれるから、こそ……かな。 離れないといけない。 |
花帆 | だって同じ場所で、あたしがみんなと違う夢を追い始めたら…… 今回みたいに、みんな手伝ってくれちゃう。 それが分かってるから。 |
花帆 | それはラブライブ!を目指すみんなの、 足を引っ張ることになっちゃう。 |
小鈴 | うっ……でも。 |
花帆 | ラブライブ!は、本当に大きな夢。 あたしの夢も、ラブライブ!に出たからこそ得られたもの。 |
花帆 | みんなと一緒にあの輝きを追って、追って、追いかけて…… あの経験は、何よりもあたしの宝物だよ。 |
花帆 | だけどね、それと同じくらい凄く大変な道のりだった。 それはよく分かっているつもり。 |
花帆 | だからみんなの邪魔をしたくない。 |
小鈴 | うぅ……。 |
吟子 | でも、だったら。 ……アルバムの約束は、どうするの。 |
吟子 | “いつかまた、みんなで”! ステージに立つって決めたのは、花帆先輩なんだよ!? |
花帆 | そうだね。 自分勝手なことを言ってると思う。 でも、あたしひとりでも。 絶対に新しい夢は実現するから。 |
花帆 | その舞台には吟子ちゃんたちも、梢センパイたちも呼ぶから。 それは、約束する。 誓うよ。 |
さやか&瑠璃乃&吟子&小鈴&姫芽 | ………………。 |
瑠璃乃 | その決心を伝えるために……みんなをここに呼んだんだね。 花帆ちゃんは。 |
花帆 | うん……ここは、来年への想いを決意する場所。 |
花帆 | 大好きなライブ、みんなとのステージ…… たとえそういうものを全部封じたとしても……。 |
花帆 | あたしはそれでも、この夢を叶えたい。 |
瑠璃乃 | 待って、花帆ちゃん。 |
花帆 | 瑠璃乃ちゃん……? |
瑠璃乃 | 気持ちは分かるけどね。 |
瑠璃乃 | それを決めるのは、ここに居るみんなの気持ちを聞いてからでも、 遅くはないんじゃないかなって。 |
瑠璃乃 | ね、花帆ちゃん。 今の話はさ。 ラブライブ!に出なければ、新しい夢は追える。 ってことでしょ? |
花帆 | え……? |
吟子 | 新しい夢を追うのは、みんなに迷惑かけるから、 自分だけどこかに行きますって……。 |
吟子 | 先輩たちを呼び戻したいってわがままより、 ずっと身勝手やがいね。 |
姫芽 | まあまあ。 吟子ちゃんは、 これからふたりでスリーズブーケを盛り立てていこうって思ってたから、 急にそんなこと言われたら寂しいんですよ~。 |
吟子 | そりゃ……そうでしょ。 |
花帆 | 吟子ちゃん、えっと。 |
吟子 | 寂しいとかじゃない。 でも、一緒にやってくれるかどうかくらいは聞くべきなんじゃないの。 |
吟子 | 私は少なくとも……その夢は、 スクールアイドルクラブで追っていいものだと思う。 |
吟子 | 私のやりたいことは、変わってない。 |
吟子 | ラブライブ!では届かない誰かに、 もっと金沢のことを好きになってもらえるのなら、 私はやるよ。 |
花帆 | ! |
瑠璃乃 | ひめっちは、どうかな。 |
姫芽 | アタシは、正直ちょっとまだよく分からないことはありますが……。 |
姫芽 | 新しく面白いと思うものを思い浮かんだんだったら、 そこに突っ走るのは良いことですよ~。 |
姫芽 | そりゃラブライブ!は凄い楽しかったし、 あのめっちゃヒリヒリして盛り上がる空気は最高だと思いますけど。 |
姫芽 | でも、協力プレイも悪くないもんですよ~。 |
姫芽 | アタシは新しく誰かを引き込むことができるなら大歓迎。 |
姫芽 | なんでもそうやって、 人の輪っていうのは広がっていくものだと思うんで! |
花帆 | ……でも。 |
小鈴 | 徒町も、お手伝いしたいです! |
花帆 | 小鈴ちゃんまで。 |
小鈴 | 徒町は……ステージに立ちたくても立てない人って、 もしかしたらたくさんいるのかなって。 |
小鈴 | 徒町自身も、スクールアイドルのことは全然知りませんでしたし、 なんにもできないなって思ってる人がいたら……。 |
小鈴 | 一歩を踏み出す機会が増えるのは、 すごくいいことだと思ったんです! |
小鈴 | 徒町に、昔の徒町が目を輝かせるような舞台を作れるなら、嬉しいです! |
瑠璃乃 | ね、花帆ちゃん。 ……一年生は、みんなやる気だよ。 |
花帆 | うん……びっくり。 まさか、三人も賛成してくれるなんて……。 |
瑠璃乃 | ルリもだよ。 |
花帆 | えっ? |
瑠璃乃 | 本当に、素敵な夢だと思う。 |
瑠璃乃 | どんな人でも楽しめる場所…… そんな場所が、本当に作れるならって、ルリもどきどきしてる。 |
花帆 | 瑠璃乃ちゃぁん……。 |
瑠璃乃 | ルリはね、ラブライブ!に出て……優勝して。 |
瑠璃乃 | そのおかげで、大きな夢を見ることの大事さを、 知ることができた気がするんだ。 |
瑠璃乃 | 高校生活を使い切る勢いで、やりたいことをやり遂げる…… それが、スクールアイドルなんだって。 |
花帆 | だけど……。 あたしは、そのラブライブ!には、出ないって……。 |
瑠璃乃 | ルリがめぐちゃんと見た夢は、“世界中を夢中に”することだよ。 その手段はたくさんある。 ラブライブ!だけじゃない。 |
瑠璃乃 | それに、ルリがなりたいスクールアイドルは、楽しむ準備ができていない子が、一緒に楽しめるような舞台を作ることだよ? |
瑠璃乃 | どうだろ、花帆ちゃんの夢と、ぶつかっちゃうかな? |
花帆 | う、ううん! そんなこと、ないよ! 瑠璃乃ちゃんの言ってる人とも、一緒に花咲きたいって思う! |
瑠璃乃 | そういうこと。 |
瑠璃乃 | あはは。 |
花帆 | えへへ……。 |
さやか | さて。 花帆さん。 最後にわたしから。 |
花帆 | うん……さやかちゃん。 |
さやか | 花帆さんの夢は、みんなの花咲く舞台。 |
さやか | だとするなら、あなた自身が言ったように、 ここに居るメンバーの気持ちが乗ってこそ“みんな”だと思います。 |
さやか | そして今、みんなの夢が乗った以上……やるべきです。 |
花帆 | さやかちゃんは、それでいいの……? |
さやか | ええ。 あの花帆さんが、誰にも相談せず、 スクールアイドルクラブを離れてひとりでもやろうと決めた夢です。 |
さやか | 本気なのは、言うまでもありませんよね? |
花帆 | うん。 あたし、この夢を、叶えたい。 |
さやか | でしたら……。 |
さやか | その夢に、誰かの想いが乗るならば…… わたしはその想いを叶え、あなたの期待に応えられれば、それで十分です。 |
花帆 | ってことは……! |
さやか | やりましょう、一緒に。 花帆さん。 |
花帆 | さやかちゃん……ありがと! うん、あたしには、さやかちゃんが必要だよ! |
花帆 | すごいすごい! みんな、ほんとにありがとう! |
花帆 | 吟子ちゃん! 小鈴ちゃん! 姫芽ちゃん! 瑠璃乃ちゃん! さやかちゃん! |
花帆 | みんな、ありがとう~~~! |
さやか | ああもう、花帆さん……! |
花帆 | だってあたし、ほんとに……ひとりで、 ひとりでがんばろうって、思ってたから……! |
瑠璃乃 | 安心しちゃったんだね、花帆ちゃん。 よしよし……。 |
さやか | もう、すぐ突っ走ろうとしちゃうんですから……。 |
花帆 | うん……でも、嬉しい……。 ほんとに! |
さやか | ねえ、花帆さん。 わたし、考えていたことがあるんです。 |
さやか | 部を引っ張っていくのは、みんなに夢を示せる人であるべき。 わたしはそう思っていたんです。 |
花帆 | えっ? |
さやか | 梢先輩から、来年度の部長にならないかと言われていたのですが、 それを保留にしていた理由は、これです。 |
さやか | 部を引っ張っていくなら、それはきっと大きな夢のある人が良い。 |
さやか | 花帆さん、あなたが部長をやりませんか? |
花帆 | ええ……!? あたしが、あたしが部長……!? |
さやか | はい。 あなたが部長として引っ張っていくなら、 わたしはあなたをフォローします。 |
さやか | 後ろは気にせずとも大丈夫です、 瑠璃乃さんがみんなを支えてくれる。 |
瑠璃乃 | うん。 任せて。 |
花帆 | もしかして、瑠璃乃ちゃんは知ってたの? |
瑠璃乃 | うん。 もともとは、さやかちゃんが部長になるなら、 周りを支えるのは任せてって言ってたんだけど。 |
瑠璃乃 | 今のさやかちゃんの言いたいことも、分かるんだよ。 |
瑠璃乃 | 花帆ちゃん部長は、きっとすっごく楽しい一年になると思うから。 |
小鈴 | みんなの夢を引っ張るのが、部長……! だから、花帆先輩なんですね! |
花帆 | ……あたしが、部長。 あたしの夢は、みんなの夢で、それを引っ張っていく……。 |
さやか | はい。 |
花帆 | ……分かったよ。 あたし、部長やるよ! |
花帆 | だからふたりで部長やろう!? |
さやか | ええ!? それはどういう意図でーー。 |
花帆 | あたしだけじゃ、梢センパイの次は務まらないよ! |
花帆 | 梢センパイがさやかちゃんを指名したのだって、 さやかちゃんが誰よりもしっかりしてるから。 |
花帆 | さやかちゃんのできることを、あたしはできない。 |
花帆 | でも、さやかちゃんが、 さやかちゃんにできないことをあたしに託してくれるなら…… あたしが引っ張る! |
花帆 | そういう部長になる! あたしにできないことを、さやかちゃんに任せる! |
花帆 | どうかな、そうしたらもっと凄いスクールアイドルクラブに、 なれる気がする! |
花帆 | あたしたちみんなの夢も、きっと叶うよ! |
さやか | え、それは、良いんでしょうか……。 |
瑠璃乃 | あはは。 良いんじゃないかな。 |
瑠璃乃 | 全部が全部、去年と一緒じゃなくたっていい。 今回ってそーゆー結論だったでしょ? |
瑠璃乃 | 花帆ちゃんが夢を見つけられたのだって、 そーゆーことっしょ? |
瑠璃乃 | だったらさ。 さやかちゃんなら…… みんなを引っ張る花帆ちゃんの期待にだって、応えていいんじゃないかな。 |
花帆 | 瑠璃乃ちゃんが居てくれるから、あたしの後ろは安心だね! |
瑠璃乃 | いえーい。 |
さやか | ……分かりました。 |
さやか | 花帆さんが、みんなを夢で引っ張ると言ってくれた。 瑠璃乃さんが、みんなを支えると言ってくれた。 |
さやか | なら、わたしも……お姉ちゃんや、綴理先輩の期待だけでなく。 |
さやか | すべての人の期待に応える、そういうわたしになります。 |
瑠璃乃 | さやかちゃん……! |
花帆 | かっこいい! |
吟子 | さやか先輩も部長なら安心かな。 |
姫芽 | またまた~。 アタシたちも来年が楽しみになりましたよ~。 |
小鈴 | はい! 卒業した先輩たちのためにも、全力で夢を叶えましょう! |
瑠璃乃 | ふふっ、決まりだね! |
花帆 | うん……うん! よーし……105期、蓮ノ空女学院スクールアイドルクラブ!! |
花帆 | 行こう! 新しい花を咲かせるために!! |