第13話『いずれ会う約束の桜』
ED2
梢 | それじゃあ。 |
梢 | 私に一杯、紅茶を淹れてもらえるかしら? 花帆さん。 |
花帆 | は、はい。 |
吟子 | 花帆先輩、大丈夫……? やっぱり私が代わろうか……? |
花帆 | ううん、あたしにやらせて。 |
梢 | ……うん、おいしいわ。 |
花帆 | ! |
梢 | これなら、安心ね。 いいでしょう。 カップとポットは、部室に置いていってあげる。 |
花帆 | やったぁー! |
梢 | 大切に使ってね。 |
花帆 | もちろんです! 神棚に飾って、毎日抱きしめて寝ます! |
梢 | 使ってね……? |
吟子 | 花帆先輩、確かに上手になったよね。 |
吟子 | 私が初めて部室に来たときは、 てんやわんやした挙句、ティーパックしか使えなかったのに。 |
花帆 | 伸びしろだよ、伸びしろ! |
梢 | 次からは、あなたがみんなに淹れてあげてね、花帆。 |
花帆 | 任せてください! 新入生がやってきたら、あたしが『どうかしら?』ってしますよ! |
吟子 | 全員、コーヒー党だったりして。 |
花帆 | そのときは、紅茶も好きになってもらうもん! |
花帆 | あたしが、あたしがすっごく大切なひとから教えてもらった味なんだよ、 って……言って……。 |
花帆 | そのひとに、あたしはスクールアイドルの楽しさを、 ぜんぶ、おしえてもらって……。 |
花帆 | そのひとがいたから、あたしは、 スクールアイドルで花咲けたんだよ、って……。 |
吟子 | ……。 |
梢 | 花帆は、泣き虫ね。 |
花帆 | 泣いてないです。 |
花帆 | だって、そのひとに言ってもらったから。 あたしの笑顔が、大好きだ、って。 |
花帆 | また会う日まで。 ちゃんと、覚えていてほしいですから。 あたしの、笑顔を。 |
梢 | 忘れるはずがないわ。 |
梢 | 一瞬のようで、永遠のようだった、共に過ごした日々を。 忘れるはずがないでしょう。 |
梢 | ありがとうね、花帆。 |
花帆 | 梢センパイ……。 |
梢 | ほら、吟子さんも。 |
吟子 | ……。 |
梢 | 今夜は、三人で少し、夜更かしをしましょう。 |
花帆 | ……いいんですか? |
梢 | 一緒に夕食を食べて、お風呂に入って、星を見て、それから。 |
梢 | 笑顔で、お別れをしましょう。 |
梢 | ね? |
吟子 | ……はい。 |
花帆 | はい! |
花帆 | 梢センパイ、約束ですからね。 |
梢 | 花帆? |
花帆 | いつかまた、ライブしましょうね。 あたしたち、一生スリーズブーケ、ですからね。 |
梢 | ええ。 |
綴理 | 夢の味がするね。 |
小鈴 | え!? さやか先輩、ついにそんな領域まで! |
さやか | いやどういうことですか。 |
さやか | ……ここで、三人でする最後の食事だから、ですかね。 |
小鈴 | うぅ。 |
綴理 | ……泣かないで、すず。 |
綴理 | それはもう、胸を縛り付けるほどつらいことじゃない。 もちろん、寂しいことではあるけれど。 |
綴理 | 昨日のお弁当も、一昨日のお弁当も、もう帰ってこない。 |
綴理 | だったら、いつも楽しんでいた煮っころがしだって和え物だって、 あれが最後なんだ。 |
さやか&小鈴 | ……。 |
綴理 | だから、最後であるということに、 ボクはあまり意味を見出してないよ。 今はもう、ね。 |
綴理 | むしろ……何か、大きなことが始まるような。 |
綴理 | 違うな、大きなことを始める、そんな気持ちの表れかな。 さや。 |
さやか | ……わたしは、ここでの最後の食事だから、 と気合を入れたつもりだったのですが……。 |
さやか | 綴理先輩にそう言われると、 もしかしたらその気持ちも強かったのかもしれませんね。 |
さやか | この先にやることは、もう決めています。 明日からーー105期から。 未来にみんなを繋ぐ夢のために。 |
綴理 | うん。 だからやっぱり、夢の味だ。 |
さやか | はい。 夢のために、頑張る味です。 この味を綴理先輩に知っていてもらいたい。 いつかのために。 |
綴理 | うん。 ちゃんと覚えたよ。 |
小鈴 | しょっぱいよお。 |
綴理 | ばかな。 |
さやか | あはは。 それはひとえに、小鈴さんがここでの最後の食事に、 気持ちを持っていかれてしまっているからかもしれませんね。 |
綴理 | すず、泣かないで。 |
小鈴 | でもぉ。 |
さやか | ……ねえ、綴理先輩。 小鈴さん。 104期DOLLCHESTRAとしての最後の夜に、何をしようか考えていたんですが。 |
綴理 | うん。 |
さやか | 映画を、撮りませんか? あの日完成できなかった、映画の続き。 ラブライブ!優勝をしてから撮ろうと思っていた、エンディングを。 |
小鈴 | あっ……! 夏の映画……。 |
綴理 | お、いいね。 |
小鈴 | ……。 |
さやか | あの映画については、わたしも悔いが残った結果になりましたし、 ちゃんと完成させておきたいんです。 どうでしょうか。 |
小鈴 | ……だったら。 |
小鈴 | 綴理先輩! 約束してください! |
綴理 | ん、なんでも。 |
小鈴 | 必ずーー 一緒に続きを撮ってください! |
綴理 | ……もちろん。 きっと、さやが……みんなが、叶えてくれるんでしょ? |
さやか | はい。 いずれ会う、102期と。 |
小鈴 | よーし!! じゃあ撮りましょう! 徒町、いつでもできるように台本書いてたんです! |
小鈴 | 花帆先輩に相談して、慈先輩に見てもらって……だから! |
さやか | 準備は万端だったんですね。 |
綴理 | それじゃあ、撮ろう。 ボクたち、104期スクールアイドルクラブのエンディングを。 |
さやか&小鈴 | はい! |
慈 | ありがとうね、ゴミ出し付き合ってくれて。 |
瑠璃乃 | ううん、ぜんぜん。 にしても、よく取っておいたね、あんなにいっぱい、運動靴。 |
慈 | なんとなく、捨て損ねちゃって。 るりちゃんが帰ってきたら、捨てるつもりだったんだけどね。 |
瑠璃乃 | 靴なくてもルリいるしね。 |
慈 | そゆこと。 |
慈 | 約9000キロ。 |
瑠璃乃 | え? |
慈 | ここからカリフォルニアまでの距離だって。 |
慈 | 365日。 晴れの日も、雨の日も、 毎日走ってきた私は、約1万キロの旅を終えたわけだけど。 |
慈 | 果たして、今度は私に追い付けるかな? るりちゃん。 |
瑠璃乃 | めぐちゃん……。 |
瑠璃乃 | めぐちゃんが算数できるなんて……。 |
慈 | そっちかーい! |
瑠璃乃 | あはは。 ごめん、うそうそ。 |
瑠璃乃 | すごく、がんばってきたんだね、めぐちゃん。 かっこいいよ。 ほんとに。 |
慈 | むぅ。 |
慈 | 素直すぎ、るりちゃんは。 |
瑠璃乃 | そうでもないことも、あるよ。 |
慈 | うん? |
瑠璃乃 | だって。 |
瑠璃乃 | ……やっぱり、寂しいは寂しいもん。 めぐちゃんと、離れるの。 |
瑠璃乃 | ……寂しい。 |
慈 | う、うん……。 そ、そーかそーか、寂しいかー! |
慈 | じゃあそんな寂しがりちゃんに、めぐちゃんがいいものをあげよう。 |
瑠璃乃 | いいもの? |
慈 | 目をつむって、るりちゃん。 |
瑠璃乃 | う、うん。 |
慈 | もういいよ。 |
瑠璃乃 | あ……。 |
瑠璃乃 | これ……!? |
慈 | ママに教わってね。 素人でもこれぐらい作れるんだよ。 |
瑠璃乃 | プラチナと、ラピスラズリだ……。 |
慈 | 練習中は邪魔になるだろうから、どこかに飾っておいて。 |
瑠璃乃 | 嬉しい……。 |
慈 | よかった。 また無駄遣いー、って怒られなくて。 |
慈 | 一緒だよ、ずっと。 |
瑠璃乃 | ……っ、めぐちゃん。 |
瑠璃乃 | うん! |
慈 | ん? |
瑠璃乃 | あれ、ひめっち? |
姫芽 | はっ。 おかえりなさい~! |
姫芽 | さ、それではきょうは夜通し遊びましょう~! |
瑠璃乃 | おー! いいねー! |
姫芽 | さあさあ~! なにからいたしますか~? |
慈 | その前に……。 お前はブローチじゃー! くらえー! |
姫芽 | ええーっ!? なんですかこのプレゼント!? アタシに!? アタシに~!? |
慈 | あー、プラチナだから錆びないと思うけど……。 練習中とかは外しときなよ……? |
姫芽 | めぐちゃんせんぱい~っ。 |
慈 | るりちゃんのこと、頼んだよ。 |
姫芽 | っ。 |
慈 | 見ててあげてね。 誰かのために、がんばりすぎちゃう子だから。 |
姫芽 | はいっ! |
瑠璃乃 | じゃあじゃあ、なにして遊ぶー? トランプ? ゲームー? |
姫芽 | あ! ゲームと言えば、ちゃんとアタシ、サブPCも持ってーー。 |
慈 | それやったら明日の朝までコースでしょ!! |
姫芽 | ええ!? |
瑠璃乃 | あはは。 じゃあそれはまた今度。 |
姫芽 | 今度って言っても……あ。 |
瑠璃乃 | “また”三人で、ね? |