第7話『Link to the FRIENDS!』
PART 5
トレーニングウェアを着た一年生の前に、今度は同じくトレーニングウェア姿の二年生が勢ぞろい。 | |
三年生との戦いより、だいぶ圧は軽減されている。 | |
吟子 | あ、なんか安心する。 |
花帆 | なにが!? |
姫芽 | レベルを下げてみたよ~。 |
姫芽にコクコクとうなずく吟子。今回は緊張はほとんどない。 | |
吟子 | うん、勝てそう。 |
瑠璃乃 | なにこれ謀反? 謀反? |
くわっという勢いで、小鈴が一年生組に振り返る。 | |
小鈴 | でも向こうにはさやか先輩がいますよ!? |
小鈴 | スクールアイドルとフィギュアスケートを両立させながらも 日々たゆまぬ努力を続けて先輩としても人間としても余すところなく 尊敬する部分だけでできてるあのさやか先輩が! |
小鈴の褒め言葉連打に、顔を赤くして照れながらツッコミを入れるさやか。 | |
さやか | なんですか!? なんなんですか!? |
吟子 | うわ、みらぱ!語りするときの姫芽みたいになってる。 |
姫芽 | やるね~、小鈴ちゃん。 吟子ちゃんも負けてらんないね~? |
吟子 | 負けてていいよ別に! |
姫芽 | ハイ吟子ちゃんもどうぞ~。 せんぱいの大好きなところを、1億文字以内に~。 |
吟子 | やらんよ! |
花帆 | わくわく。 |
吟子 | わくわくせんで! |
吟子 | じゃなくて! |
吟子 | 勝負だよ! 花帆先輩! |
指を突き付けてくる吟子に、二年生組がコソコソと言い合う。(一年生には聞こえている) | |
花帆 | だって。 さやかちゃん、瑠璃乃ちゃん。 |
瑠璃乃 | ん、なるほど。 この学年対抗戦は、 勝敗を競うっていうより、勝負自体が目的って感じのやつとみた。 |
さやか | ああ、そういうことですか。 大会を目前に控えたこの時期…… 型破りでもなにかを掴もうと、小鈴さんたちなりに一生懸命なんですね。 |
姫芽 | しゅっしゅっ、しゅっしゅっ。 |
さやか | でしたら……コホン。 |
さやか、胸に手を当てて、まるで悪役のように胸をそらす。 | |
さやか | いいでしょう! 不肖この村野 さやか、 全身全霊であなた方のお相手をして差し上げましょう! |
さやか | 命が惜しくなければ、かかってきてください! |
ガクガクして、吟子と姫芽の後ろに隠れる小鈴。 | |
小鈴 | ひいいいいい! |
そんなさやかを見て、ぱちぱちと手を叩く花帆と瑠璃乃。 | |
瑠璃乃 | さやかちゃん、めちゃキマってる~。 |
花帆 | 命が惜しくなければ! だって! もう1回言って、もう1回! |
顔を赤らめるさやか。 | |
さやか | なんでおふたりがハシゴ外してくるんですか! もぅ! |
そのまま、一年生組に向き直って。 | |
さやか | それで! なにで勝負するんですか! |
姫芽 | やっぱガチるってんなら、アタシたちのストロングポイントをぶつけて~。 みるみるうちに自信をつけちゃいたいから~。 そうだな~。 |
るんるんと語る姫芽に、吟子が真顔でツッコミ。 | |
吟子 | 待って。 ……そもそも、私たちのストロングポイントって、なに? |
顔を見合わせる三人。そういえばその話してなかったね!の微妙な間。 | |
姫芽 | それは~…………ええっと。 |
小鈴が手を挙げる。 | |
小鈴 | し、しばしまたれよ、です! |
輪になって相談する一年生たち。 | |
吟子 | どーする……? |
姫芽 | ってことは、勝負しつつ自分たちのストポも 見つけられたら、一石二鳥じゃない~? |
吟子 | ああ、それしかないか……。 |
小鈴 | おっけー! |
小鈴、二年生たちに向き直る。 | |
小鈴 | おまたせしました! |
姫芽 | やっぱガチるってなら、相手の土俵でやんなくっちゃね~。 せんぱい方のいちばん得意なもので、勝負しましょ~! |
花帆 | さっきと言ってることが違う! |
姫芽の言葉に、顔を見合わせる二年生。 | |
花帆 | というか、あたしたちのいちばん得意なもの……? |
瑠璃乃 | ソロ活動、お料理、それに……お花のお世話とか、読書? |
苦笑いのさやか。 | |
さやか | スクールアイドル、あんまり関係ありませんね……。 |
花帆 | ……あっ、じゃあはいはーい! あたし、思いつきました! |
花帆 | その名も……『変則カラオケ対決』だよ! |
ニコニコの花帆 | |
花帆 | わぁい、みんなでカラオケだ~♪ |
ニコニコの花帆に、まったくもう、という顔の吟子。 | |
吟子 | 遊びに来たんじゃないからね、花帆先輩。 |
花帆 | もっちろん! それじゃあ、勝負の内容を説明するね。 |
ハンドマイクを手に、カラオケ機の前に立って、ノリノリで説明する花帆。 | |
花帆 | 1曲を選んだあと、その曲をパート分けして3人で歌うの。 点数が高いチームが勝ち! |
バトルマンガの解説役のように、手を打つ小鈴。 | |
小鈴 | なーーなるほど! |
小鈴 | 一見、なんてことのない遊びのように見えますけど、 お互いの得意なリズムや音域をしっかり理解してないと、 割り振りが難しい……! |
小鈴 | これは、ストロングポイントの発見に役立つ特訓ですね! |
花帆 | ふふふ! |
吟子 | いや、花帆先輩なんにも考えてないと思う……。 |
花帆 | よーし、それじゃあ作戦会議だよー。 集まれー。 |
楽しそうに集まっていく瑠璃乃と、ちょっと恥ずかしがりながらも瑠璃乃の真似をして集まっていくノリのいいさやか。 | |
瑠璃乃 | わー。 |
さやか | わ、わー。 |
姫芽 | こっちはなんの曲にしよっか~。 アタシは、有名どころだったら一通り知ってるけど~。 |
小鈴 | 徒町は、最近の曲はあんまり詳しくなくて……。 あ、でもね、お姉ちゃんたちがよく聞いてた曲なら、なんとか! |
姫芽 | ふむふむ~。 じゃあ定番ソングとかがいいかな~。 |
吟子、顔をそむける。 | |
吟子 | 昭和の、歌謡曲とかなら……。 |
姫芽と小鈴。あ、だめかも、の顔。 | |
姫芽&小鈴 | ……。 |
吟子 | な、なんか言ってよ! |
悪気なくレベルを下げる小鈴。 | |
小鈴 | どーしよ……? 童謡とかにする……? それか、授業でやった曲……。 |
あまりにも自分が足を引っ張っていることを突き付けられて、うめく吟子。 | |
吟子 | うう。 |
姫芽 | だいじょぶだいじょぶ。 これは本番じゃないんだし~。 負けて得られる経験値って大きいんだよ~。 気楽にいこ~。 |
吟子 | 姫芽……やさしい……。 |
吟子がすがるような目で見ると、姫芽は獰猛な笑みを浮かべて。 | |
姫芽 | もちろんやるからには全力で勝ちにいくんだけどね~! うおおおおいくぞおおおおお~~~~! |
吟子 | せっかく人が感動してたのに! |
シーン内時間経過。 | |
花帆 | いえーい! 大勝利ー! |
一方、両手で顔を抑えている吟子。あちゃーという顔の姫芽と、まだまだやる気の小鈴。 | |
吟子 | 知らんもん……流行りの曲とか……。 |
小鈴 | で、でもこれで、お互い普段どんな曲を聞いてるのか、わかったよね! |
花帆 | ふっふっふー……。 |
花帆が手のひらを頬に当て、悪役令嬢のように笑う。さらに瑠璃乃も乗っかる。 | |
花帆&瑠璃乃 | おーっほっほっほ! |
さやか | 息ぴったり!? |
花帆 | やっぱり、センパイが後輩に負けるわけには、いかないもんね~! |
花帆 | あたしはさやかちゃんのことも、瑠璃乃ちゃんのことも、信じてるもん! 二年生の絆は、カボチャよりも固いんだから! |
瑠璃乃 | ざぁこざ~こ~。 身の程を知ったら尻尾を丸めてとっととおうちに~~、 あ、だめだルリこういうのニガテだぁ……。 |
さやか | ムリしてまで煽らないでください! |
吟子 | くっ……ぐぬぬぬ。 |
吟子は小鈴と姫芽に、キッと目を向ける。悔しい!! | |
吟子 | 私、今から曲覚える! |
小鈴 | 今から!? |
吟子 | 30分ください、先輩! そうしたらお礼に敗北を味わわせてあげますから! |
そう二年生に言い放ってから、一年生に告げる吟子。 | |
吟子 | リベンジマッチだよ! 小鈴、姫芽! |
姫芽 | わ~お、燃えてる~。 |
姫芽 | そっかぁ……吟子ちゃんのストロングポイントは、 しっかり準備したことを発揮できる……なんだろ、マジメさ? なのかも~。 |
姫芽、小鈴と笑い合う。 | |
小鈴 | うん、きっとそうだよ。 |
小鈴 | 次は、いい勝負ができそうだね。 |
話がまとまった一年生に、花帆が意気込みをぶつける。 | |
花帆 | 望むところ~! きょうは徹夜で歌っちゃうよ~! |
吟子&小鈴&姫芽 | おー! |
やる気満々の一同に、保護者さやかがツッコミを入れる。 | |
さやか | 門限までには帰りますからねー! |