幕間

『Brightness』

過去回想シーンからスタート。
時系列としては、竜胆祭前。一年生の三人(+沙知)がいちばん仲良く、これから仲間としてやっていくんだ!というムードに包まれていた時期。
部室に向かう梢を見つけて、綴理が声をかけてくる。
綴理
こず、こず。
あ、ゆうぎ……つ、づり。
綴理
『つ、づり』じゃないよ。
……わかっているわ、綴理。
その、まだ、ちょっと言い慣れてないだけ。
綴理
ふぅん?
綴理
えと……ボクの話をしても、いい?
もちろん。
なにかあって話しかけてきたんでしょう?
綴理
DTMって、すごいんだね。
ああ……今、慈とふたりで勉強しているのよね。
綴理
音と音の手を繋げるだけで、あの子が曲にしてくれる。
すごく、がんばりやさん。
それは……すごいわね。
普通は、もっと時間がかかるものだけれど。
綴理
こずとかめぐみたいに、
ギターが弾けないと作曲ってできないのかと思ってた。
今は、楽器で作る人の方が珍しいかしらね。
綴理
自分の曲を形にできるのって、楽しいね。
それは、よかったわね。
ふふ、お気に入りの曲ができたら、私にも聞かせてくれる?
綴理
いいの?
ええ、聞いてみたいわ。
DOLLCHESTRAの……あなたと、沙知先輩の曲。
綴理
うん……うん。
ボク、いっぱい作るね。
お、来た来た。
慈、ジト目になり、照れつつも口を尖らせる。
早いわね。
め……慈。
いちいちつっかえるの、やめてくれない?
なんか、こっちがハズいんだけど。
ふん……。
まあいいや。
沙知先輩が、これ書いといて、って。
ぴらと紙を差し出す慈。
綴理
うわ、“しょるい”だ……。
そう。 だから梢が来たらでいいかなって思ってた。
あなたたち……。
DTMを扱うほうがよっぽど難しいでしょう……。
えー? あれは楽しいじゃんー。 ねー?
すでにこの頃から波長が合って仲良しな慈と綴理が「ねー」と言い合う。
綴理
ねー。
これ……。
ラブライブ!のエントリーシート!
綴理
こずの、夢だ。
ええ。 そう、ようやく始まるのね……。
スクールアイドルの憧れの大会が……!
よっしゃ! それじゃあ、ちゃちゃっと優勝しますか。
ちょっと、慈!
ラブライブ!はそんなに、簡単なものじゃ。
いけるいける。
梢だって焼きついてるでしょ。
私たち3人プラス沙知先輩で立った、撫子祭ステージの熱狂。
そして、大成功。
はっきり言って、敵ナシだから。
私たち『蓮ノ大三角』は。
……その名前、沙知先輩がつけたって噂を聞いたのだけれど。
まあなんでもいいじゃん!
強そうだし!
ねー。
綴理
あ……うん。
つづりー? またお口が「いー」ってなってるよー。
どしたー? ラブライブ!やだー?
綴理
ううん……。
綴理
スクールアイドルの大会にボクが出るのは、まだ怖いけど。
綴理
こずと、めぐ、さちが一緒なら。
ボクもスクールアイドル見習いとして、がんばれる気がするんだ。
綴理
いつか……ボクが初めて見たスクールアイドルみたいに。
誰かの心に届く舞台を作れるように。
綴理
やりたい。 みんなで。
おーし!
盛り上がってきたんだよ!
そうね。 このメンバーで、優勝……。
お、その気になってきた?
……い、いえ。
そのためには、決して慢心せず、一歩一歩歩んでいくことが大事だと、
己を戒めただけよ。
わー、ユートーセー的発言ー。
綴理
……最高を、迎えに……。
綴理?
綴理
うん。
綴理
楽しみになってきた。 曲作るよ。 ボクも。
みんなの曲を、作りたいんだ。
現代に戻ってきて。
シチュエーションとしては、102期生で学校終わりに衣装で使う小物を買いに来たイメージです。衣装は制服。
(※それぞれのユニットで衣装のデザインが違うことはよくあるので、3人は同じものを買いにきたというよりは、同じ店にいくついでに集まった)
綴理
……。
お店から出てきて、ぼんやりと雨空を眺める綴理。
その横に、梢が並んでくる。
あら……雨だわ。
うわ、しかも強くなりそう。
こりゃ、るりちゃんと姫芽ちゃんに、
迎えにきてもらうわけにもいかないかな。
……あなた、よく後輩を迎えに来させているの?
私、愛されてるからね☆
羨ましいんだったら、梢もたまに甘えてみれば?
まったく……。
うーん、今夜いっぱい続くみたい。
しょうがない。 ここはずぶ濡れ覚悟で、バス停まで走るかなあ。
そうね。 きょうの買い出しは、アクセサリー用の小物ばかりだから、
幸い濡れても平気………………あ。
ん?
……。
……ねえ、綴理。
綴理
うん?
ここから、近かったわよね。
……今夜は、あなたの家にお邪魔しても、いいかしら。
ん??
綴理
嬉しいけど……なんで?
それほど濡れていないという体で、三人は制服のままです。
三人はそれぞれ髪や体を拭き終わって、綴理にタオルを返す。
タオル、ありがとうね。
綴理
ううん。
ていうか、なんで綴理の家に?
……濡らしたら、まずいと思って。
あ。
綴理
ラブライブ!の、エントリーシートだ。
みんなのを回収してきたばかりだったの。
だから……。
濡れてガビガビになったら、また書いてもらえばいいだけじゃん!
これだから、『でも、みんなの想いが……』とか言いそうなやつは……。
……勝手に人の気持ちを想像しないで頂戴。
明日休みでよかったよ。
あとで学校にも電話しとかないとね。
でも、綴理の家は、久々だなー。
えっ……?
あなた、来たことあるの?
そりゃあるでしょ。 友達だし。
そう……。 私もあるわ。
お、おう。
あるのよ。 どう?
だから私もあるって言ってるでしょうが!
綴理
きょうは、賑やかだ。
綴理が『うるさい』って言っているわよ。
言うわけないでしょ綴理が。
綴理は私のこと大好きだもんね~~。
綴理
うん。 ずっとこれがいい。
愛してるよ、めぐ。
!?
私も愛してるぞ、夕霧 綴理☆
なん、なの……?
綴理
こないだ、めぐから教えてもらった。
最上級の感謝の言葉は『愛してる』だって。
それは間違いだからもう二度と言わないように。
さやかさんや小鈴さんには言ってないわよね?
綴理
うん、まだ。
やめておきなさい。
すごくびっくりするから。
綴理
? わかった。
梢は、恥ずかしがり屋さんでちゅねえ。
あなたたちは、どうして恥ずかしくないのよ……。
愛してるからかな。
梢と違って~。
綴理
こず、ボクのこと愛してない……?
煽られても言いませんからね。
綴理、もう少し首を傾けて。
そうそう、かわいらしい感じを盛って。
よし、いけるよ。
綴理
こず、ボクのこと。
言いませんからね!
ぷぷぷと笑う慈。
そういえば梢って、綴理の名前を呼ぶのも、相当時間かかってたよね。
私のときはすぐだったくせに。 やっぱり顔かー……?
……あなたたちは、仲良くなるの早かったわね。
綴理
めぐは、初めてボクの言葉が聞こえる人だったんだ。
綴理
めぐはすごい。 めぐは言葉。
綴理
ボクに、『それってこういう意味?』って、ずっと、ずっと聞いてくれた。
嬉しかった。
綴理
ありがとうございます。
ふじしまめぐみさん。
え? いやいや。 暇だったし。
てか綴理って、ふつーにめっちゃかわいくない?
顔じゃなくて。 いや顔もだけど。
私、こういう系に弱いのかも……。
おっきな犬も飼ってるし……。
綴理
そっか~。
怒っていいところだと思うわよ、綴理。
綴理
いけませんよ、めぐみせんぱい。
なんなんですかー。
梢&慈
ふふふ/あはは
迫力ないなあ。
……もう、2年も経ったのね。
そうだねえ。
一年生の頃、初めてこのエントリーシートに名前を記入したとき。
私には自信の欠片もなかったわ。
全国どころか、地方大会を突破するビジョンすら、見えなかった。
でもね。
ここに書かれたあなたたちの名前を見たら……
不思議と、勇気がわいてきたの。
結果として……少し、綴理には、寄りかかりすぎてしまったけれど……。
綴理
うれしいよ。
今は、ぜんぶが。
綴理
こずは、いちばん長い間、ボクの名前を呼んでくれた友達。
綴理
ボクが、いちばん名前を呼んでる友達だから。
それは……たぶん、私もそうなのだけれど……。
今度はあんたがみんなの勇気になる番だよ。
乙宗 梢。
……そうね。 『任せて』って胸を張らなきゃ。
そのために、ずっと走ってきたんだもの。
エントリーシート出すとき。 今の一年は、なにか言ってた?
綴理
すずは、がんばりますーちぇすとー、って。
吟子さんは、相変わらず緊張していたみたいだったけれど。
でもそれも、強い想いを抱いてくれているからだわ。
姫芽さんは?
ん~……まあ、ひと悶着あったけど、でも最後にはやる気満々で。
もうね、みらくらぱーく!の秘密兵器だよ。
ふふ……いい子たち。 本当に。
そりゃ、私たちの後輩だもん。
ふふっ、よく言うわ。
綴理
かほと、さやと、るりの後輩だからね。
きっと……叶えましょうね。
私たちの夢を。
うん!
綴理
目指せ……ラブライブ!優勝。
梢&綴理&慈
ふふふ。
綴理
あ……。 このあと、お風呂、入る? 入るよね。
お風呂は、入らなきゃ……だよね?
え、なに?
あ……。
そういえばあなた、そんなこと言ってたわね。
綴理
うん。 ボクも思い出した。
先に言うほうがいいって。
仕方ないわね。
なんのこと?
綴理
ボク、友だちと一緒に、家のお風呂に入るのが、夢だったんだ。
それじゃ、おやすみなさーい。
綴理
おやすみ。
……おやすみなさい。
……。
綴理
あったかいな……。
綴理
……目を閉じてるのに、光が見えるよ。
1、2、3……9つ。
……。
私も……。
梢、目を閉じたままつぶやく。
綴理にだけ聞こえるように、小さな声で。
……愛しているわよ、あなたたちのこと。
綴理
……こず。
な……!?
え、なんか言いましたぁ? 乙宗さん☆
~~~~~~っ!